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第6章過去転移
110 魔法とスキル
しおりを挟む―――狩人の神器。
それは、神々の武具とも言われるほどの強大な力を有する。
空はうなり、大地が裂け、辺り一帯の地形が変形するとの伝承まである。
その大きな矢は、神々しい光を放ち地面と水平に、ただまっすぐと標的に向かって突き進む。
本来は、化け物に向かって解き放つシロモノだが、今回は違った。
【奴隷】の少年。
ただ1人に向かってのみ、この矢は放たれたのである。少年の近くにいる勇者アーサーも自身が巻き込まれると分かり、少し狼狽えている様子だ。
勇者といえども、この強大な力を前には無傷ではすまないようだ。
「さて、どうしたものか」
勇者は顔を引きつらせながら、迫り来る矢を見つめていた。
そんな彼の姿に、蓮は不思議そうな顔を浮かべて会話を続けた。
「困っているのか?」
「あぁ……」
「勇者さんなら、あんな弓矢くらい弾き飛ばすのは簡単そうだけど」
「あれを弾き飛ばす?」
勇者はまん丸な目を見せて驚きを表せた。
そして、笑いながら剣を振るった。
「見てみろ。サシャが直前になって矢を引く力を弱めたから、威力は少ないが……」
勇者の振るった剣の軌道から、斬撃が飛び出した。
風を切りながら進む勇者の斬撃は弓矢に向かって進んでいく。
「勇者さん。これなら、弓矢を真っ二つに出来るだろ」
「君は強いけど、目はふし穴のようだね」
「え?」
「見てみなよ。俺の斬撃なんて」
悲しそうな表情で、斬撃が弓矢とぶつかる瞬間を見ると、勇者は説明を続けた。
「あれ?……。消えた?」
「だから言っただろう」
蓮は、勇者の斬撃が弓矢とぶつかった瞬間に、斬撃が消えたの目撃したのだ。
そして、まるで何もなかったかのように進み続ける弓矢。
それを勇者は、苦い顔で見つめていた。
「あれは、魔法を無力化するんだ」
「魔法無効化。そんな武器があるのか」
「あるにはある。あれ以外、見たことがないけどな」
勇者と蓮が会話をしていると、遠くからサシャの大声が聞こえた。
「勇者様! 逃げて!」
力を使い果たしたのか、地面にぐったりとしているサシャは何とか声を振り絞っていた。
自身の仲間を、自らの攻撃で傷つけるなどあってはならない。
ましてや、相手は命の恩人である勇者だ。
もちろん。
勇者にとっては、この弓矢を避けることは容易い事ではあった。
しかし。
「逃げられないよ!」
「なんで……」
「俺が避けて、この奴隷も避ければ、弓矢は後ろへといってしまう。そして、ここら一帯を消しとばしてしまう」
勇者はそう言うと、両手で聖剣を握った。
そして、一呼吸置いて前を見つめるとこう言った。
「ここで止めねば」
剣を地に這うように寝かせて、もう一度深い呼吸を行った。
そして、自身に対して身体能力強化の魔法をかけまくったのだ。
「勇者の脚力、勇者の膂力、勇者の加護、勇者の知恵、勇者の伝説、勇者の遺言、勇者の栄光」
勇者の頭の中では、ステータスにそれらが加味されている音が鳴り響いていた。
【攻撃力が10000、防御力が5000、命中率+、回避率+、運+、集中力+……】
信じられないスピードで強化されていく勇者。
「本体にかかる魔法は無力化出来ないだろう。腕の一本は吹き飛ぶかもしれないが……」
「お願い! 避けて勇者様!」
「勇者だからこそ……。避けれないんだよ」
弓矢が蓮と勇者に当たりそうになった瞬間。
勇者の聖剣が下から弓矢の先に激突した。
「ぐっ」
勇者は顔を歪ませながらも、なんとか踏ん張っている。
全身全霊をかけて弓矢と衝突しているのだ。
そんな様子を蓮は目を細めて見ていた。
「勇者さん。俺ならもしかしたら……」
「奴隷。君は強いけど、無理はしなくていい。君も今のうちに」
勇者が必死に止めているが、蓮は気づいていたのだ。
魔力を無効にする弓矢。
これは、スキルでステータスを移動している蓮にとっては無意味だと。
「こんな弓矢さっさと壊して、ダンジョンに入ろうぜ」
「ふっ。簡単に止めているように見えるかもしれないが、これは簡単なことじゃない。ん? おい! 君はなにを……」
勇者は、蓮に逃げろと合図をしているが、一向に動こうとしない。
むしろ蓮は、勇者が進路を止めている弓矢の横に立ったのだ。
【ALL CHANGE発動します。HPから攻撃力へ999999✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎】
「ふんっ!」
蓮は、弓矢を片手で思い切り殴った。
するとどうだろう。
勇者とサシャが思いもしなかった音が響いたのだ。
――ポキ
という弱々しい音が。
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