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09金色の強運
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勇者と別れた後もリストとシャルル、2人はコロコロの実を入手するためにスライム狩りを続けていた。
「はぁはぁ……これで9匹目」
「あと1匹ですよリストさん! がんばって下さい」
「こいつら一体一体動きが違うから、疲れるんだけど」
リストが疲労の為に棒を下ろして、地面に膝をついているとシャルルが急に踊り出した。
手を前に出して体を回転させている。どうやらリストを元気づけようとしているようだ。
「頑張れ~頑張れ~!」
「おい、なに踊ってるんだ?」
リストがそう尋ねるとシャルルは立ち止まって一言、「元気出ませんか?」と顔をニコッとしながら言い放った。
「出る……」(か、可愛い)
「あっ、あそこにスライムありますよ。ほら」
シャルルが指を指す方向には草むらしかなかったが、ガサガサと動いていた。この現象はモンスターがいる事を表している。
シャルルの励ましとモンスターを発見できたことにより、リストは最後の力を振り絞って立ち、棒をしっかりと握った。
「最後の狩りだ! 出てこいスライム!!!」
「その調子ですよ~。ってあれ?」
モンスターが草むらから姿を現した時、シャルルの顔が急に曇った。
先程までのさわやかな表情から青ざめた病人のような顔。
そのモンスターはスライムと形状やサイズは同じだが、色が青色ではない。金色である。
「シャルル代表。さっきまでのスライムと色が違うぞ」
「え、えぇ。あれは通常のスライムじゃありません。ゴールデンスライム。討伐すると1万Gを得る事が出来ます」
「1万Gってどのくらいの額なんだ?」
「新しい小屋が建てれるくらいです」
「あのオンボロな小屋が直せるのか」
【オリエント】の本拠地は、老朽化で床がきしみ、色合いも古くなった小屋である。
そんな場所にずっとはいたくないのだろう。新しい小屋が入れば綺麗な場所で暮らすことができるのだ。
リストはシャルルの言葉を聞いて、棒を持つ手に力が入ったようだ。顔をニヤつかせて大きく棒を上に上げる。
「とりゃあああ!」
高くジャンプして振り落とされた棒は黄金のスライムへと叩き込まれた。
しかし、先程までの青いスライムとは異なり一撃では倒せない。叩かれた後の黄金スライムは何もなかったように立ち続ける。
いや、それどころかリストに襲いかかってくる程だ。
獣のような雄叫びをあげて、それはリストに迫り来る。
「オォオオオオ」
「くそ。効かないのか」
「ここは任せてください」
うつむくリストに話しかけるのはシャルルであった。目を細めて少しニコッとした顔で、片手を自身の腰付近に近づける。
「シャルル代表、どうするつもりだ?」
迫り来る黄金スライム。しかし、リストはその状況にあっても後ろのシャルルを見つめていた。
彼女の右手に持つ装備品に見とれているからだ。
「ふふ。私の対人用装備【ディザーイーグル】が火を吹きますよ」
「銃か」
「はいそうです! 足止めくらいにはなるでしょう」
黄金スライムが迫り来る中、シャルルは颯爽と銃を腰から引き抜き、弾丸を数発リボルバーに込めた。
カチャカチャカチャ……とリボルバーを回転させるとスライムの方向に片手で持った銃を向ける。
「銀弾!」
シャルルが勢いよく引き金を引くと、バンッ、という大きな爆発音とともに銀の弾丸が黄金スライムに放たれた。
その銃弾には螺旋状の模様が刻まれており、直進する毎に風がその隙間を巡って弾を回転させる。
しかも1発だけでは終わらない。その後も立て続けに2発目、3発目、と銃弾を放った。
打ち終わった後の彼女は行儀悪く舌を出しながら、黄金スライムを睨みつける。
「どうですか、黄金のスライムよ。大人しく我がギルドの糧となりなさい」
「シャルル代表……顔つきが怖いぞ」
「しょうがないじゃないですか! 我がギルドにはお金が無いのです!」
シャルルのふてくされた表情はリストの顔を強張らせた。
しかし、シャルルの放った弾丸は確実に黄金スライムの頂点部分に当たってバランスを失わせた。
黄金スライムの重心が後ろへとずれてゆく。そのチャンスを逃すほど2人は甘く無かった。
「今です。リストさん」
「おう!」
シャルルが声をかけると同時に、リストは今にも倒れそうな黄金スライムに向かい走っていく。
木の棒をしっかりと掴み、これで決めると言わんばかりに真剣な表情をしていた。
スライムに向かって走り、勢いよく飛ぶ。
「おぉ!!!!!」
そして、空を切った棒は一直線に振り落とされた。
リストの力を振り絞った攻撃は、黄金スライムの急所に当たったようで黄金スライムは力無さ声を上げながら消えていった。
そして、代わりに現れたのは黄金に輝く金貨の入った袋である。パンパンに膨れ上がって今にも弾けそうだ。
「うわぁ。お金だぁ」
シャルルは子供のような声を出しながらその袋に走っていき、これは自分のものだと表すように袋に抱きついた。
それを見るリストはシャルルに言葉をかける。
「もういいんじゃないか? さっきのクエストはキャンセルで」
「う~ん。本当はそうしたい所なんですが、ギルドの信用に関わるんですよ」
「分かったよ……」
「あと1匹ですからね。あ……あそこに普通のスライムがいますよ!」
「これで最後だぞ!」
最後の獲物を見つけたリストの棒さばきは、洗練されていた。
棒を振る事、計100回。通常のスライムにかわされた分も合わせるとそのくらいになる。
今では彼もある程度の動きは出来るようになっていた。
ブンッという風切り音が鳴ると10匹目のスライムは切断され、コロコロの実というアイテムがドロップした。
「リストさん!」
「あぁ!」
「「これでクエスト達成だ!!!」」
喜びのあまり両腕を空に突き上げる2人。
その顔には、クエストを始めた頃の不安は感じられない。クエストを達成したという自信と喜びに満ち足りている。
(こんな達成感、今まで無かったなぁ)
中でもリストの感情は抑えられず、瞳から涙を流して喜んだ。
そして、コロコロの実10個を入手するというクエストを達成した2人は王国に向かって歩き出した。
「はぁはぁ……これで9匹目」
「あと1匹ですよリストさん! がんばって下さい」
「こいつら一体一体動きが違うから、疲れるんだけど」
リストが疲労の為に棒を下ろして、地面に膝をついているとシャルルが急に踊り出した。
手を前に出して体を回転させている。どうやらリストを元気づけようとしているようだ。
「頑張れ~頑張れ~!」
「おい、なに踊ってるんだ?」
リストがそう尋ねるとシャルルは立ち止まって一言、「元気出ませんか?」と顔をニコッとしながら言い放った。
「出る……」(か、可愛い)
「あっ、あそこにスライムありますよ。ほら」
シャルルが指を指す方向には草むらしかなかったが、ガサガサと動いていた。この現象はモンスターがいる事を表している。
シャルルの励ましとモンスターを発見できたことにより、リストは最後の力を振り絞って立ち、棒をしっかりと握った。
「最後の狩りだ! 出てこいスライム!!!」
「その調子ですよ~。ってあれ?」
モンスターが草むらから姿を現した時、シャルルの顔が急に曇った。
先程までのさわやかな表情から青ざめた病人のような顔。
そのモンスターはスライムと形状やサイズは同じだが、色が青色ではない。金色である。
「シャルル代表。さっきまでのスライムと色が違うぞ」
「え、えぇ。あれは通常のスライムじゃありません。ゴールデンスライム。討伐すると1万Gを得る事が出来ます」
「1万Gってどのくらいの額なんだ?」
「新しい小屋が建てれるくらいです」
「あのオンボロな小屋が直せるのか」
【オリエント】の本拠地は、老朽化で床がきしみ、色合いも古くなった小屋である。
そんな場所にずっとはいたくないのだろう。新しい小屋が入れば綺麗な場所で暮らすことができるのだ。
リストはシャルルの言葉を聞いて、棒を持つ手に力が入ったようだ。顔をニヤつかせて大きく棒を上に上げる。
「とりゃあああ!」
高くジャンプして振り落とされた棒は黄金のスライムへと叩き込まれた。
しかし、先程までの青いスライムとは異なり一撃では倒せない。叩かれた後の黄金スライムは何もなかったように立ち続ける。
いや、それどころかリストに襲いかかってくる程だ。
獣のような雄叫びをあげて、それはリストに迫り来る。
「オォオオオオ」
「くそ。効かないのか」
「ここは任せてください」
うつむくリストに話しかけるのはシャルルであった。目を細めて少しニコッとした顔で、片手を自身の腰付近に近づける。
「シャルル代表、どうするつもりだ?」
迫り来る黄金スライム。しかし、リストはその状況にあっても後ろのシャルルを見つめていた。
彼女の右手に持つ装備品に見とれているからだ。
「ふふ。私の対人用装備【ディザーイーグル】が火を吹きますよ」
「銃か」
「はいそうです! 足止めくらいにはなるでしょう」
黄金スライムが迫り来る中、シャルルは颯爽と銃を腰から引き抜き、弾丸を数発リボルバーに込めた。
カチャカチャカチャ……とリボルバーを回転させるとスライムの方向に片手で持った銃を向ける。
「銀弾!」
シャルルが勢いよく引き金を引くと、バンッ、という大きな爆発音とともに銀の弾丸が黄金スライムに放たれた。
その銃弾には螺旋状の模様が刻まれており、直進する毎に風がその隙間を巡って弾を回転させる。
しかも1発だけでは終わらない。その後も立て続けに2発目、3発目、と銃弾を放った。
打ち終わった後の彼女は行儀悪く舌を出しながら、黄金スライムを睨みつける。
「どうですか、黄金のスライムよ。大人しく我がギルドの糧となりなさい」
「シャルル代表……顔つきが怖いぞ」
「しょうがないじゃないですか! 我がギルドにはお金が無いのです!」
シャルルのふてくされた表情はリストの顔を強張らせた。
しかし、シャルルの放った弾丸は確実に黄金スライムの頂点部分に当たってバランスを失わせた。
黄金スライムの重心が後ろへとずれてゆく。そのチャンスを逃すほど2人は甘く無かった。
「今です。リストさん」
「おう!」
シャルルが声をかけると同時に、リストは今にも倒れそうな黄金スライムに向かい走っていく。
木の棒をしっかりと掴み、これで決めると言わんばかりに真剣な表情をしていた。
スライムに向かって走り、勢いよく飛ぶ。
「おぉ!!!!!」
そして、空を切った棒は一直線に振り落とされた。
リストの力を振り絞った攻撃は、黄金スライムの急所に当たったようで黄金スライムは力無さ声を上げながら消えていった。
そして、代わりに現れたのは黄金に輝く金貨の入った袋である。パンパンに膨れ上がって今にも弾けそうだ。
「うわぁ。お金だぁ」
シャルルは子供のような声を出しながらその袋に走っていき、これは自分のものだと表すように袋に抱きついた。
それを見るリストはシャルルに言葉をかける。
「もういいんじゃないか? さっきのクエストはキャンセルで」
「う~ん。本当はそうしたい所なんですが、ギルドの信用に関わるんですよ」
「分かったよ……」
「あと1匹ですからね。あ……あそこに普通のスライムがいますよ!」
「これで最後だぞ!」
最後の獲物を見つけたリストの棒さばきは、洗練されていた。
棒を振る事、計100回。通常のスライムにかわされた分も合わせるとそのくらいになる。
今では彼もある程度の動きは出来るようになっていた。
ブンッという風切り音が鳴ると10匹目のスライムは切断され、コロコロの実というアイテムがドロップした。
「リストさん!」
「あぁ!」
「「これでクエスト達成だ!!!」」
喜びのあまり両腕を空に突き上げる2人。
その顔には、クエストを始めた頃の不安は感じられない。クエストを達成したという自信と喜びに満ち足りている。
(こんな達成感、今まで無かったなぁ)
中でもリストの感情は抑えられず、瞳から涙を流して喜んだ。
そして、コロコロの実10個を入手するというクエストを達成した2人は王国に向かって歩き出した。
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