13 / 21
12かつての盟友
しおりを挟む
「代表。って事は彼らは俺達の味方って事か?」
「いえ、一概にそうとは言えません」
シャルルは小屋の周りを囲む火をジッと見つめていた。その瞳には赤い炎が反射している。
暗い表情をだしながら何か昔の事を思い出しているようだ。
――お父さん。お父さん!
――シャルル逃げろ、お前はまだこの火から……。
彼女の脳裏に浮かぶのは父親が亡くなった時のこと、業火に飲み込まれながらも自分に語りかける強き父の姿だった。
しかし、物思いにふけっている場合でも無い。リストの声が瞑想中に介入してきたのだ。
「……代表? シャルル代表、どうした?」
「ごめんなさい。少し昔の事を思い出していました」
頭を手で押さえて少しフラつくシャルル。
転びかけた彼女に手を差し伸べたのはリストであった。彼は心配そうに彼女に尋ねる。
「本当に大丈夫なのか。医者にでも行った方がいいんじゃ」
「大丈夫です。少しフラついただけですから」
「そ、そうか」
「それよりも、キング・シュナイザーの方達とお話ししなければなりませんね。一体どのようなご用件で来たのかをね」
「何か検討はないのか?」
「全くありませんね」
2人は顔を歪ませて、ただ松明を見ていた。ユラユラと赤く燃えるそれは、暗闇に美しく光る。
いや、単に光るだけではなくてあろう事か近づいてきた。
シャルルがキング・シュナイザー代表と言っていた人物である。
大柄な体に引き締まった筋肉。近づいてくると姿がよく分かるのだ。
白髪を短髪にして髭を生やす。豪快な人物である印象を受けた。
それを見てリストは少し驚いている。
「どうする代表。逃げるか?」
「逃げてどうするのですか。話を聞きましょう」
「あんなゴリラみたいな奴と話し合いなんて出来ないだろ」
「はは。ちゃんと出来ますよ」
シャルルが乾いた笑い声を発すると、緊張のあまりリストは生唾を飲んだ。
彼がここまで緊張したのは、こちらの世界に来て初めてだろう。
目の前のクマのような大男を見て、逃げ出さないだけで勇敢であると言える。
一方で、その大男の方から見て2人はあまりにも小さかった。
「シャルル。こんな時間までどこに行ってたんだ?」
近づいてきた大男の言葉は、どこか馬鹿にしていたような口調であった。
それに代表のことを、シャルル、と呼び捨てにしているところも気になる。
状況をつかめず呆気に取られているリストに代わって、シャルルが返答した。
「我がギルドはクエストに行ってきたのですよ」
「クエストねぇ~。オリエントにはもうそんな力ないんじゃないの?」
「まだ、我々はやれます!」
「そうか。俺的にはもう【オリエント】なんて潰しちまってもいいと思うんだけどな……」
大男の小馬鹿にしたような発言はリストを怒らせた。
「さっきから、うちのギルドを馬鹿にしすぎやしないか」
「これは失礼。新入りさんかな? 俺はキング・シュナイザーの代表、ガロスだ」
「俺はリストだ。今日は何の用だ?」
リストは腰に備え付けた木の棒に手をつけながら、ガロスを睨みつける。
回答次第では戦闘も辞さないつもりだ。
しかし、リストのこの殺気立った行動もじきに収まることになる。
そう。ガロスが手元から取り出した紙が要件を示していた。
ガロスはその紙もシャルルやリストに見せやすいように持ったのだ。そして、こう続ける。
「俺達が来たのは他でもねぇ。王政府からの命令でだ」
「命令ですか? その内容を教えてください」
「王政府からはこう通達がきたんだ。キング・シュナイザーとオリエント、双方が力を合わせてクエストを達成せよ。ってな」
「まさか……共同クエスト……」
「あぁ、そのまさかだ。内容は討伐クエスト、しかも難易度はAクラスだ」
「いえ、一概にそうとは言えません」
シャルルは小屋の周りを囲む火をジッと見つめていた。その瞳には赤い炎が反射している。
暗い表情をだしながら何か昔の事を思い出しているようだ。
――お父さん。お父さん!
――シャルル逃げろ、お前はまだこの火から……。
彼女の脳裏に浮かぶのは父親が亡くなった時のこと、業火に飲み込まれながらも自分に語りかける強き父の姿だった。
しかし、物思いにふけっている場合でも無い。リストの声が瞑想中に介入してきたのだ。
「……代表? シャルル代表、どうした?」
「ごめんなさい。少し昔の事を思い出していました」
頭を手で押さえて少しフラつくシャルル。
転びかけた彼女に手を差し伸べたのはリストであった。彼は心配そうに彼女に尋ねる。
「本当に大丈夫なのか。医者にでも行った方がいいんじゃ」
「大丈夫です。少しフラついただけですから」
「そ、そうか」
「それよりも、キング・シュナイザーの方達とお話ししなければなりませんね。一体どのようなご用件で来たのかをね」
「何か検討はないのか?」
「全くありませんね」
2人は顔を歪ませて、ただ松明を見ていた。ユラユラと赤く燃えるそれは、暗闇に美しく光る。
いや、単に光るだけではなくてあろう事か近づいてきた。
シャルルがキング・シュナイザー代表と言っていた人物である。
大柄な体に引き締まった筋肉。近づいてくると姿がよく分かるのだ。
白髪を短髪にして髭を生やす。豪快な人物である印象を受けた。
それを見てリストは少し驚いている。
「どうする代表。逃げるか?」
「逃げてどうするのですか。話を聞きましょう」
「あんなゴリラみたいな奴と話し合いなんて出来ないだろ」
「はは。ちゃんと出来ますよ」
シャルルが乾いた笑い声を発すると、緊張のあまりリストは生唾を飲んだ。
彼がここまで緊張したのは、こちらの世界に来て初めてだろう。
目の前のクマのような大男を見て、逃げ出さないだけで勇敢であると言える。
一方で、その大男の方から見て2人はあまりにも小さかった。
「シャルル。こんな時間までどこに行ってたんだ?」
近づいてきた大男の言葉は、どこか馬鹿にしていたような口調であった。
それに代表のことを、シャルル、と呼び捨てにしているところも気になる。
状況をつかめず呆気に取られているリストに代わって、シャルルが返答した。
「我がギルドはクエストに行ってきたのですよ」
「クエストねぇ~。オリエントにはもうそんな力ないんじゃないの?」
「まだ、我々はやれます!」
「そうか。俺的にはもう【オリエント】なんて潰しちまってもいいと思うんだけどな……」
大男の小馬鹿にしたような発言はリストを怒らせた。
「さっきから、うちのギルドを馬鹿にしすぎやしないか」
「これは失礼。新入りさんかな? 俺はキング・シュナイザーの代表、ガロスだ」
「俺はリストだ。今日は何の用だ?」
リストは腰に備え付けた木の棒に手をつけながら、ガロスを睨みつける。
回答次第では戦闘も辞さないつもりだ。
しかし、リストのこの殺気立った行動もじきに収まることになる。
そう。ガロスが手元から取り出した紙が要件を示していた。
ガロスはその紙もシャルルやリストに見せやすいように持ったのだ。そして、こう続ける。
「俺達が来たのは他でもねぇ。王政府からの命令でだ」
「命令ですか? その内容を教えてください」
「王政府からはこう通達がきたんだ。キング・シュナイザーとオリエント、双方が力を合わせてクエストを達成せよ。ってな」
「まさか……共同クエスト……」
「あぁ、そのまさかだ。内容は討伐クエスト、しかも難易度はAクラスだ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる