異世界の南国リゾートでバカンスを楽しむつもりがいつの間にかハードモードに?でもモフモフたち力を借りて乗り切ります!

めっちゃ犬

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第1章 旅立ち

誰にでもできる簡単なお仕事です

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私のこわばった顔を見ると、女神は急にくだけたお友達モードになった。

「やあ~だぁ!沙世ったらそんな顔しないでよぉ」

甘ったれた声でそう言うと、ふざけるように私の肩を袖ではたくフリをする。

「たいしたことじゃないのよ、ティーダルの島を遊びながら移動するついでに、『綺麗な金の玉』を南から北へ移動してくれればいいの」

言いながら、物を動かすジェスチャーで左から右へと両手を動かす。いかにもたいしたことない風に言ってるのがかえって怪しい。私は聞いた。

「そのキレイなキン、いえ、金の玉ってなんなんです?」

「私があの島々を創造したときに一緒につくった、神力を込めた玉よ。島に流れる『気』に神力を乗せて巡らせることで、島の人々が豊かに暮らせるように守ってるの」

あの美しい島は女神が創ったのか。見た目は少女だけど、やっぱりすごいんだなと感心する。だけど、女神がそこにいて守ってるわけじゃないんだ?

「へぇー、女神さまが島にいて守り神になるわけじゃないでんすね」

「わ、私はいろいろ忙しいから!」

私は思い浮かんだことを口にしただけなのだが、女神はなぜかうろたえ始めた。

「他にも担当してる地域があるし、夫だっているし」

「えっ!?結婚してるんですか?」

ギリシア神話でも日本の神話でも神様の夫婦はいるけど、見た目が少女な女神に夫がいるというのは、悪いけどあまり想像できない。私の驚きようが気に入らなかったのか、女神は子どものように口をとがらせて言った。

「そりゃあ神だって誰かを好きになるし、結婚もするし、人間と同じよ。うちの夫なんか、ちょっと目を離すとすぐにうわ・・・コホンコホンコホン!」

話の途中で急に咳き込んだ女神は、むりやりに話題をもとに戻す。

「ともかく!その綺麗な金の玉を移動する必要があるのよ」

女神は人差し指を立てて、輪を描くように空中でまわした。

「海に潮の流れがあるように、島には気の流れがあるの」

今度は人差し指を逆回しにまわしはじめる。

「それが100年に1度くらいの間隔で流れの方向を変えるのよ。気の流れにあわせて綺麗な金の玉を適切な場所に移動させないと、災害とか干ばつとか、いろいろと不都合なことが起こるわけ」

ここでルリがスーッと前に出てくる。

「それには別の世界の人間、つまり沙世さまの世界に住んでる人の協力が必要なのです」

「どうして?」

「綺麗な金の玉に込められた神力は、女神さまご自身が触れると女神さまへと戻ってしまうのです。分身である私も同じです」

ルリの説明によると、磁石みたいに引き寄せられて消えてしまうのだそうだ。そうなると再度作り出すのは大変らしい。

「あちらの世界の人間には綺麗な金の玉を見ることができないし、触ることも不可能です」

「なんで?」と聞いたら、それは理屈抜きに「そういうもの」らしい。

「見たり触ったり出来るのは異世界人だけ。ですので綺麗な金の玉の移動が必要になるたびに、異世界から人を招待して移動を手伝っていただくのです」

「そう!バカンスに招待して、そのついでに綺麗な金の玉を移動させてもらうの。綺麗な金の玉の移動じたいはすごく簡単で、異世界人なら誰にでもできるお仕事なのよ」

ルリの話のあとを引き取って、女神が明るい調子で続ける。どうでもいいが、いちいち「綺麗な金の玉」って言わないとダメなのだろうか?

「あのぉ」

私は小さく手をあげて聞いた。

「それって私の世界の人なら誰でもOKってことですよね?なんで私なんですか?」

女神は私に向き合うと、優しい笑みを浮かべて私を見つめた。労わるように私の両肩にそっと手を置く。

「それはあなたが毎日頑張ってるからよ」

私の顔をのぞき込むその目は、これまでとは違って女神さまらしい慈愛にあふれていていた。なんだか胸のあたりが温かくなってくる。

「父親を亡くしてから、あなたは母を支えるために一生懸命だったでしょう?」

「それは・・・」

さまざまな思いが心に浮かんできて、私は言葉につまる。

父が亡くなったのは私が10歳の時だった。悲しかったし不安でいっぱいだったけど、私は母のために良い子でいなければと決心したのだ。友人との付き合いより家のことを優先し、母に心配かけないように行動するのは、社会人になった今でも変わらない。

「あなた自身も辛かっただろうに、本当に偉いわ」

女神は私を抱きしめた。神も人間と同じ体温をもっているらしい。その温もりが私の心を解かしていく。

「私はあなたのように頑張っている人を応援したいの。沙世、たまにはあなたも自分を優先して、好きなことをしてもいいのよ」

「女神さま」

「私がつくった美しい南の島で、バカンスを楽しんでらっしゃい、ね?」

その優しい言葉に、私はコクリとうなずいていた。

そう、私だってたまには羽目を外して遊んだっていいはずだ。しかも費用はかからないし、仕事も休まなくていい。さっきの時点に戻れるなら家を空けたことにならないから、母に心配かけることもない。

「なら決まりね!じゃあ沙世、気を付けていってらっしゃい!」

女神はそう言ってニマッと笑った。

その笑顔に違和感を覚える前に、私はまた虹色の光に包まれていた。

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