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第3章 城下町のモフモフの宿
アヒルンゴと女将
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翌朝、私は朝食前にアヒルンゴたちのようすを見に行くことにした。外に出たついでに建物の周囲を調べてみると、昨日は白くて綺麗だった壁に今日は汚れた泥の跡がいくつかついている。こんなことをしたヤツには腹が立つけど、泥なので水をかけてブラシでこすればすぐに落ちそうではある。
気を取り直してルリとふたりで少し離れたアヒルンゴ待機所へ向かった。ここは何軒かの宿が共同で運営していて、ちゃんと世話人もいるそうだ。
待機所には石造りの小屋があって、アヒルンゴは丸太の仕切りで分けた部屋に隊ごとに入れられている。私たちが入っていくと、女将がアヒルンゴたちにエサをやっていた。朝からバッチリと髪をツリー状に結い上げている。その高さに、彼女はいったい何年髪を切っていないのだろうと、悲しい気持ちになった。
「「おはようございます」」
私とルリが挨拶をすると、女将は少し驚いたように顔をあげた。
「あら、おはようございます!昨夜はよくおやすみになれましたか?」
昨夜の騒ぎを気にしているのだろう。彼女は気遣わしげに聞いてくる。
「はい、快適でぐっすり眠れました!」
女将を少しでも元気づけたくて、私はできるだけ明るく答えた。もちろんウソではなく、部屋は快適で過ごしやすかったのだ。彼女はホッとした顔をする。
「いつも女将さんがアヒルンゴたちにエサをやっているのですか?」
ルリが少しばかり不思議そうに聞いた。世話人がいるのにどうして?と思っているのだろう。私も不思議だ。
「いつもではないんですけど、こうしてできるだけようすを見に来るようにしてるんです。お客さまの大切なアヒルンゴですから」
「そんなことまでしてるんですね」
その細やかな心遣いに私は感心した。掃除の行き届いた部屋といい、美味しくて栄養バランスのとれた食事といい、本当にお客のために心を砕いているのが分かる。
「クワックワ!」
女将の手が止まってしまったので、アヒルンゴが鳴いてエサを催促した。私たちのアヒルンゴ隊長である。頭の毛がクリンクリン跳ねているからすぐ分かった。口に果物を入れてもらった隊長は、女将の手に顔を寄せて甘えている。なんだかすごくなついているようだ。
「人懐っこいアヒルンゴちゃんですね。頭の毛が跳ねてるのも可愛らしいし」
隊長の頭を撫でながら、女将は「ふふふ」と笑った。私とルリは果物を分けてもらってエサやりを手伝うことにする。ほかの2頭に果物をあげながら私はなにげなく聞いた。
「クセ毛のアヒルンゴって他にはいないんですかね?」
「さあ、私は見たことがないですね」
うちのアヒルンゴ隊長は珍しいタイプのようだ。でも可愛いし、すぐに見分けがついていいと思う。隊長に凄く懐かれてしまったらしく、女将はずっとナデナデしている。なんだか申し訳ないくらいだ。あんなに甘えん坊さんだったかしら?
「今日はどちらかにお出かけですか?」
「はい、中央公園に行こうかと」
女将の問いかけにルリが答える。
そうなの?私は聞いてませんけど?
「あの公園は広くて見どころが多いですし、今頃はティンサーの花が見ごろですわ。美味しい屋台がたくさんあって食も楽しめます」
「ははん」と私は思う。ルリは屋台が目当てなのだろう。でも、綺麗なお花も見られるみたいだし、まあいいか。今日は公園でのんびりして屋台の買い食いを楽しもう。
「公園の東側は市場とつながっていますから、お買い物も楽しめるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、市場で買った食材をうちで調理することもできます」
「わあ、それはいいですね」
新鮮な魚があったら買って、宿の主人に美味しいものをつくってもらうことにしよう。
「中央公園はその名の通り城下町の中央に位置する公園で、敷地は東京ドーム10個分もあります」
朝食のあと、公園に行くために乗り込んだアヒルンゴワゴンのなかで、私はルリの解説を聞いていた。
「ずいぶんと広いんだね」
東京ドーム10個分がどのくらいの広さかは知らないけど、たぶんすごく広いのだろうと思って私は答えた。
「はい、公園は大まかに植物園エリア、水遊びエリア、アスレチックエリア、散策エリアに分けられています。まずは植物園エリアにご案内しようと思います」
公園は広いので、エリアごとにワゴンの駐車場が設置されているようだ。植物園ということは、ティーダル島のいろいろな花や木が見られるのだろう。
「女将がティンサーとかいう花が盛りだって言ってたね」
「はい、そこで沙世さまが大好きな小さくて可愛いモフモフが見つかると思うのです!」
ルリは何故かはりきっているようだ。心なしか目がキラキラしているように見える。
「植物園に可愛い生き物がいるの?」
何だろう?ウサギとかリスみたいな小動物かな?
「はい!私は沙世さまが小さいモフモフが好きだと知って、いろいろ考えたのです。それで公園のティンサーの場所によくいる種類が、一番お気に召すのではないかと思いまして」
「そんなことまで考えてくれてたの?」
私はちょっと感激してしまった。なんだかんだ言って、ルリは私のことをいつも一番に考えてくれるのだ。「どうせ屋台目当てだろう」と思った自分が恥ずかしくなる。私はルリに礼を言った。
「ルリ、いつもありがとう」
「私は沙世さまのツアコンですから当然です」
胸を張って答えるルリ。穏やかな空気のまま、ワゴンは目的の植物園入口へと向かっていた。
気を取り直してルリとふたりで少し離れたアヒルンゴ待機所へ向かった。ここは何軒かの宿が共同で運営していて、ちゃんと世話人もいるそうだ。
待機所には石造りの小屋があって、アヒルンゴは丸太の仕切りで分けた部屋に隊ごとに入れられている。私たちが入っていくと、女将がアヒルンゴたちにエサをやっていた。朝からバッチリと髪をツリー状に結い上げている。その高さに、彼女はいったい何年髪を切っていないのだろうと、悲しい気持ちになった。
「「おはようございます」」
私とルリが挨拶をすると、女将は少し驚いたように顔をあげた。
「あら、おはようございます!昨夜はよくおやすみになれましたか?」
昨夜の騒ぎを気にしているのだろう。彼女は気遣わしげに聞いてくる。
「はい、快適でぐっすり眠れました!」
女将を少しでも元気づけたくて、私はできるだけ明るく答えた。もちろんウソではなく、部屋は快適で過ごしやすかったのだ。彼女はホッとした顔をする。
「いつも女将さんがアヒルンゴたちにエサをやっているのですか?」
ルリが少しばかり不思議そうに聞いた。世話人がいるのにどうして?と思っているのだろう。私も不思議だ。
「いつもではないんですけど、こうしてできるだけようすを見に来るようにしてるんです。お客さまの大切なアヒルンゴですから」
「そんなことまでしてるんですね」
その細やかな心遣いに私は感心した。掃除の行き届いた部屋といい、美味しくて栄養バランスのとれた食事といい、本当にお客のために心を砕いているのが分かる。
「クワックワ!」
女将の手が止まってしまったので、アヒルンゴが鳴いてエサを催促した。私たちのアヒルンゴ隊長である。頭の毛がクリンクリン跳ねているからすぐ分かった。口に果物を入れてもらった隊長は、女将の手に顔を寄せて甘えている。なんだかすごくなついているようだ。
「人懐っこいアヒルンゴちゃんですね。頭の毛が跳ねてるのも可愛らしいし」
隊長の頭を撫でながら、女将は「ふふふ」と笑った。私とルリは果物を分けてもらってエサやりを手伝うことにする。ほかの2頭に果物をあげながら私はなにげなく聞いた。
「クセ毛のアヒルンゴって他にはいないんですかね?」
「さあ、私は見たことがないですね」
うちのアヒルンゴ隊長は珍しいタイプのようだ。でも可愛いし、すぐに見分けがついていいと思う。隊長に凄く懐かれてしまったらしく、女将はずっとナデナデしている。なんだか申し訳ないくらいだ。あんなに甘えん坊さんだったかしら?
「今日はどちらかにお出かけですか?」
「はい、中央公園に行こうかと」
女将の問いかけにルリが答える。
そうなの?私は聞いてませんけど?
「あの公園は広くて見どころが多いですし、今頃はティンサーの花が見ごろですわ。美味しい屋台がたくさんあって食も楽しめます」
「ははん」と私は思う。ルリは屋台が目当てなのだろう。でも、綺麗なお花も見られるみたいだし、まあいいか。今日は公園でのんびりして屋台の買い食いを楽しもう。
「公園の東側は市場とつながっていますから、お買い物も楽しめるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ、市場で買った食材をうちで調理することもできます」
「わあ、それはいいですね」
新鮮な魚があったら買って、宿の主人に美味しいものをつくってもらうことにしよう。
「中央公園はその名の通り城下町の中央に位置する公園で、敷地は東京ドーム10個分もあります」
朝食のあと、公園に行くために乗り込んだアヒルンゴワゴンのなかで、私はルリの解説を聞いていた。
「ずいぶんと広いんだね」
東京ドーム10個分がどのくらいの広さかは知らないけど、たぶんすごく広いのだろうと思って私は答えた。
「はい、公園は大まかに植物園エリア、水遊びエリア、アスレチックエリア、散策エリアに分けられています。まずは植物園エリアにご案内しようと思います」
公園は広いので、エリアごとにワゴンの駐車場が設置されているようだ。植物園ということは、ティーダル島のいろいろな花や木が見られるのだろう。
「女将がティンサーとかいう花が盛りだって言ってたね」
「はい、そこで沙世さまが大好きな小さくて可愛いモフモフが見つかると思うのです!」
ルリは何故かはりきっているようだ。心なしか目がキラキラしているように見える。
「植物園に可愛い生き物がいるの?」
何だろう?ウサギとかリスみたいな小動物かな?
「はい!私は沙世さまが小さいモフモフが好きだと知って、いろいろ考えたのです。それで公園のティンサーの場所によくいる種類が、一番お気に召すのではないかと思いまして」
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