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第4章 神殿を目指して森を行く
女神乱入
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ここは神々の住まう天界。
沙世とルリをティーダル島へ送り出したあと、この世で一番美しいスーパー女神である私は、綺麗な金の玉の儀式で忙しいふりをして旦那さまを油断させていた。何故って、今度こそ浮気の現場をしっかりと押さえるためだ。
私の旦那さまは雄々しくも美しい龍神なので、女にたいそうモテる。さらにはお優しい性格なものだから、ついつい誘いをかけてきた女に情けをかけてしまうのだ。
彼と一緒になって三千年、何度浮気されたか分からない。しかも旦那さまは浮気を隠すのが年々上手になっている。ここ数百年はずっと獣神の女との浮気を疑っているのだが、ルリでも確かな証拠がつかめないでいた。
なので私はこの機会を利用し、ルリを遠ざけて油断させ、自分は忙しいふりをしながら旦那さまを見張っていたのである。
旦那さまに手を出すふとどきな女め、今日こそギッタギタにしてやる!
そう決心した私は、拳を固めて目の前にある大きな赤瓦の屋根を見上げた。この大きな屋敷のなかに、旦那さまと女はいるはずだ。
さあ行くわよ!
屋敷の大きな門には封印が施されていたが、私はそれを難なく破ってなかに侵入する。こんな安い封印、この世で一番美しいスーパー女神の私には通用しないのよ。
屋敷のなかは静かで広かった。でも私には、かすかな旦那さまの匂いを感じ取ることができた。その匂いをたどって、屋敷の奥へと進んでいく。
ここね。
最奥に赤く塗られた両開きの扉があり、そのなかから不穏な気配がした。私はスッと扉を開けて、音もなく室内に踏み込んだ。
「嫌ぁああああああ!なんてことなの!!」
目に飛び込んできた光景が耐えがたく、私は叫び声をあげて手で顔をおおった。部屋の中央に置かれた大きな天蓋付きベッドのうえに、半裸の旦那さまと女が身を寄せ合っていたのだ。
「お、おまえ、何でここに!?」
跳ね起きて慌てている旦那さまをよそに、浮気相手の女はシラケた目で私を見た。顔をあげてにらみ合う。女の瞳は金色で、瞳孔が縦に開いていた。頭には髪の毛の代わりに無数の小さな蛇が生えている。この女は蛇の獣神なのだ。
蛇女はふてぶてしくもこんなことを言った。
「あら、勝手に人の家に入らないでくれる?」
彼女はほとんど裸で、ボン!キュッ!ボン!の豊満ボディのうえに申し訳程度の薄衣をまとっているだけだ。ベッドのうえに座ったままの姿勢で、手に持った耳かきを私に見せつける。
「せっかく龍神さまを気持ち良くしてあげていたのに」
私は叫んだ。
「ひどい!私というものがありながら、よその女に耳掃除をさせるなんてー!!」
「ち、違うんだ、落ち着け。これはその、あれだ」
慌てて言い訳する旦那さまをさえぎって女が続ける。
「ええ。今の今まで私の膝のうえに頭を乗せて、『お前は上手だ、最高だ』って、あえいでいたところよ」
「なんですって!?」
この女、私を挑発しやがったわ。もう許せない。
「このやろぉおおお!!」
私は蛇女につかみかかった。女が身にまとっている薄衣がビリビリと破れて、豊満な体があらわになる。私はアゴに一発パンチを食らわせてやった。
「痛ったぁああああい!なにすんのよ!」
つかみあったまま女が脚をゲシゲシと蹴ってくる。私も負けずに蹴り返した。
「やめなさい!ふたりとも離れて。痛てっ!私を蹴るんじゃない、こら!」
旦那さまがあいだに入って止めようとするけど、一度ゴングが鳴った女の戦いを止めることは誰にもできないわ。
だけど、体格では蛇女のほうが優勢だから、だんだん押され気味になってきた。女はバカにしたように鼻を鳴らす。
「ふん!あんたって子供みたい。そんな貧相な体だから旦那に浮気されんのよ」
「ふん!そんな下品でブヨブヨにたるんだ体よりましよ」
「なんだとコラァア!」
激昂した蛇女が腹を膝蹴りしてくる。このままではやられてしまうと思った私は、とっておきの技をお見舞いすることにした。
「アイアーーーン!」
頭を後ろに倒して、思い切り背をのけぞらせる。
「ハンマーァアアアアア!!」
雄叫びとともに、相手の顔に思い切り頭突きを食らわせた。私の頭は鉄のハンマーよりも硬いのだ。
「うっ」
鼻血を噴き出しながら、蛇女がよろめく。
勝ったわ!
そう思った瞬間、蛇女の頭の蛇たちが私の首や顔に噛みついた。だんだん視界が暗くなっていく。どうやらこの蛇たちは、毒蛇だったようだ。
この世で一番美しいスーパー女神にも効く毒とは、なかなかやるじゃないの。
薄れていく意識のなか、私はそんなことを思っていた。
沙世とルリをティーダル島へ送り出したあと、この世で一番美しいスーパー女神である私は、綺麗な金の玉の儀式で忙しいふりをして旦那さまを油断させていた。何故って、今度こそ浮気の現場をしっかりと押さえるためだ。
私の旦那さまは雄々しくも美しい龍神なので、女にたいそうモテる。さらにはお優しい性格なものだから、ついつい誘いをかけてきた女に情けをかけてしまうのだ。
彼と一緒になって三千年、何度浮気されたか分からない。しかも旦那さまは浮気を隠すのが年々上手になっている。ここ数百年はずっと獣神の女との浮気を疑っているのだが、ルリでも確かな証拠がつかめないでいた。
なので私はこの機会を利用し、ルリを遠ざけて油断させ、自分は忙しいふりをしながら旦那さまを見張っていたのである。
旦那さまに手を出すふとどきな女め、今日こそギッタギタにしてやる!
そう決心した私は、拳を固めて目の前にある大きな赤瓦の屋根を見上げた。この大きな屋敷のなかに、旦那さまと女はいるはずだ。
さあ行くわよ!
屋敷の大きな門には封印が施されていたが、私はそれを難なく破ってなかに侵入する。こんな安い封印、この世で一番美しいスーパー女神の私には通用しないのよ。
屋敷のなかは静かで広かった。でも私には、かすかな旦那さまの匂いを感じ取ることができた。その匂いをたどって、屋敷の奥へと進んでいく。
ここね。
最奥に赤く塗られた両開きの扉があり、そのなかから不穏な気配がした。私はスッと扉を開けて、音もなく室内に踏み込んだ。
「嫌ぁああああああ!なんてことなの!!」
目に飛び込んできた光景が耐えがたく、私は叫び声をあげて手で顔をおおった。部屋の中央に置かれた大きな天蓋付きベッドのうえに、半裸の旦那さまと女が身を寄せ合っていたのだ。
「お、おまえ、何でここに!?」
跳ね起きて慌てている旦那さまをよそに、浮気相手の女はシラケた目で私を見た。顔をあげてにらみ合う。女の瞳は金色で、瞳孔が縦に開いていた。頭には髪の毛の代わりに無数の小さな蛇が生えている。この女は蛇の獣神なのだ。
蛇女はふてぶてしくもこんなことを言った。
「あら、勝手に人の家に入らないでくれる?」
彼女はほとんど裸で、ボン!キュッ!ボン!の豊満ボディのうえに申し訳程度の薄衣をまとっているだけだ。ベッドのうえに座ったままの姿勢で、手に持った耳かきを私に見せつける。
「せっかく龍神さまを気持ち良くしてあげていたのに」
私は叫んだ。
「ひどい!私というものがありながら、よその女に耳掃除をさせるなんてー!!」
「ち、違うんだ、落ち着け。これはその、あれだ」
慌てて言い訳する旦那さまをさえぎって女が続ける。
「ええ。今の今まで私の膝のうえに頭を乗せて、『お前は上手だ、最高だ』って、あえいでいたところよ」
「なんですって!?」
この女、私を挑発しやがったわ。もう許せない。
「このやろぉおおお!!」
私は蛇女につかみかかった。女が身にまとっている薄衣がビリビリと破れて、豊満な体があらわになる。私はアゴに一発パンチを食らわせてやった。
「痛ったぁああああい!なにすんのよ!」
つかみあったまま女が脚をゲシゲシと蹴ってくる。私も負けずに蹴り返した。
「やめなさい!ふたりとも離れて。痛てっ!私を蹴るんじゃない、こら!」
旦那さまがあいだに入って止めようとするけど、一度ゴングが鳴った女の戦いを止めることは誰にもできないわ。
だけど、体格では蛇女のほうが優勢だから、だんだん押され気味になってきた。女はバカにしたように鼻を鳴らす。
「ふん!あんたって子供みたい。そんな貧相な体だから旦那に浮気されんのよ」
「ふん!そんな下品でブヨブヨにたるんだ体よりましよ」
「なんだとコラァア!」
激昂した蛇女が腹を膝蹴りしてくる。このままではやられてしまうと思った私は、とっておきの技をお見舞いすることにした。
「アイアーーーン!」
頭を後ろに倒して、思い切り背をのけぞらせる。
「ハンマーァアアアアア!!」
雄叫びとともに、相手の顔に思い切り頭突きを食らわせた。私の頭は鉄のハンマーよりも硬いのだ。
「うっ」
鼻血を噴き出しながら、蛇女がよろめく。
勝ったわ!
そう思った瞬間、蛇女の頭の蛇たちが私の首や顔に噛みついた。だんだん視界が暗くなっていく。どうやらこの蛇たちは、毒蛇だったようだ。
この世で一番美しいスーパー女神にも効く毒とは、なかなかやるじゃないの。
薄れていく意識のなか、私はそんなことを思っていた。
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