62 / 70
第4章 神殿を目指して森を行く
食われるぅう!?
しおりを挟む
「「「クワックワァアアア!?」」」
私の悲鳴が聞こえたのだろう、アヒルンゴたちがいっせいに駆け寄ってきた。しかし、腰を抜かす私、吠えまくるきぃちゃん、池のほとりにたたずむ恐竜を見て、いっせいに静止する。
「ク、クワ?」
隊長に問われて首を横に振る。コレは何かって?私に聞かれたって知ってるわけがない。しかし隊長も知らないとなると、本当に未知の生物なのかもしれない。
「ぐぅうううう」
恐ろし気なうなり声をあげた恐竜は、トカゲにも似た頭をまわして私を見る。目が合った瞬間、瞳孔が縦に伸びた爬虫類の目がキランと輝いた。気のせいじゃない。確かにロックオンされたのだ。
ドスッ!ズルズルと、歩いてこちらへ近づいてくる。このズルズルという音は太い尻尾を引きずる音だったようだ。きぃちゃんは腰を抜かして動けない私の前に立って、勇敢にも恐竜を威嚇する。アヒルンゴたちも前へ走り出て、これまで聞いたことのないような雄叫びをあげた。
「ばふばふばふ!!」
「「「クェエエエ!!」」」
だけど恐竜の足は止まらない。太い足や尻尾に噛みつくきぃちゃんの鋭い牙も、平たいくちばしで体をつつきまくるアヒルンゴたちの攻撃も、一切効果がないようだ。恐竜はそれらに抗うこともなく、空気のように無視して、私だけを見ている。
その太い腕が私の胴をつかんだ。
「イヤぁああああああ!」
絶叫する私と尻尾に噛みついたままのきぃちゃんを連れて、恐竜は森へと引き返した。そして片手に私を抱えたまま大きな木にスルスルと登ると、木から木へと飛び移って移動していく。
「ひぃいいいい!」
地上ではアヒルンゴたちが私を必死に追いかけているけど、これでは何もできそうにない。きぃちゃんも尻尾から振り落されないようにするのに必死だ。
ダメだ。私はこの恐竜に食われてここで死ぬんだわ。
お母さんごめんなさい。
母の顔が脳裏に浮かんだのを最後に、私は意識を失った。
どのくらい経ったのだろうか、私はザリザリと顔を舐められる感触で目が覚めた。
「ばふばふ!」
目を開ければドアップのきぃちゃんの顔があった。気絶していた私の顔を舐めていたのだろう。私は今、何かフワフワとした寝心地の良い場所に寝かされているようだ。
「大丈夫?ケガはない?」
「ばうっ!」
元気な返事が返ってきてホッとする。どうやら大丈夫そうだ。だけど、いったいどこまで連れてこられてしまったのだろう?私は聞いても仕方ない質問をきぃちゃんにした。
「ここはどこ?」
「ばうっ、ばうばう!」
やっぱり分からない。首をかしげていると、可愛いモフモフのうしろから爬虫類の大きな顔が覗いた。私が起きているのを見てうなり声をあげる。
「ぐぅううう?」
「ひぃいいい!」
私はきぃちゃんを胸に抱えて身を縮めた。逃げ場はないかと慌てて周囲をみるけど、ここは高い木のうえのようだ。木のうえの、枝で編んだ大きなカゴのようなもののなかだ。カゴは底に藁や良い匂いのする草を敷き詰めて、居心地が良いようにしてある。
え?これってもしかして「巣」じゃない?
ここでようやく気が付いた。もしかしてこの恐竜は、ルリが言っていたワラバーアガチーなのではないだろうか?私はあらためて目の前の生き物を観察する。木のうえにいるときは四つん這いで歩いていて、その姿はトカゲそのものだ。
それにさっきは、攻撃するきぃちゃんやアヒルンゴにいっさい危害を加えていなかった。あの太い尻尾で振り払えば簡単に吹き飛ばすことができただろうに、しなかったのだ。ルリによれば、ワラバーアガチーは「恐ろしげな見た目に反して性格は穏やかで優しい」生き物なのだ。
「ぐぅううう」
そんなことを考えていたら、恐竜が手を伸ばして何かを差し出してきた。見れば、あの赤い実を握っている。「食べろ」と言っているようなので受け取って一口かじった。それを見ていた恐竜は満足そうに「ぐぅうう」とうなる。
やっぱり、ワラバーアガチーなんだわ。
とりあえず食べられたりする心配はなさそうなので安心する。くっついてきたきぃちゃんにも危害を加える気はないようだ。だけど、ルリが言っていたことをすぐに思い出して、私は顔から血の気が引いていくのを感じた。
「捕まえられたら一生ワラバーアガチーの子として森で暮らすはめになります」
どうしよう、家に帰れなくなっちゃう。
女神さまは私が異世界へ移動する直前のあの時点へ戻れると言っていたけど、ずっと帰れないままこの森で死んだらどうなるのだろう?私は行方不明ということになってしまうのかもしれない。そんなことになったら、お母さんはどんなに苦しむだろうか。
そんなの嫌だ。
帰りたいよ。お母さんに会いたい。
気づけば涙が頬を伝っていた。
「ばふぅ?」
きぃちゃんが心配そうに顔を近づけてくる。しかしそのモフモフの体は、すぐに長い爪の生えた爬虫類の手に押し退けられてしまった。
「ぐぅうう?」
爬虫類の大きな顔が私を見つめる。ワラバーアガチーは手を伸ばして私を抱き上げると、子供を抱くように横抱きにして、私の背をポンポンと叩き始めた。私が泣いているのに気づいて、あやしてくれているようだ。
その手は大きいが優しく、固い爪が私の体を傷つけることはない。アガチー母さんは本当に優しく、愛情あふれる母親のようだ。
だけどもちろん、一生アガチー母さんの子供でいるわけにはいかない。それに私が綺麗な金の玉を運ばないと、いつかティーダル島の人たちが食料に困る事態になるかもしれないのだ。
どうにかスキを見て逃げ出さないと。
アガチー母さんの優しい腕に揺られながら、私は何か方法はないかと考え始めた。
私の悲鳴が聞こえたのだろう、アヒルンゴたちがいっせいに駆け寄ってきた。しかし、腰を抜かす私、吠えまくるきぃちゃん、池のほとりにたたずむ恐竜を見て、いっせいに静止する。
「ク、クワ?」
隊長に問われて首を横に振る。コレは何かって?私に聞かれたって知ってるわけがない。しかし隊長も知らないとなると、本当に未知の生物なのかもしれない。
「ぐぅうううう」
恐ろし気なうなり声をあげた恐竜は、トカゲにも似た頭をまわして私を見る。目が合った瞬間、瞳孔が縦に伸びた爬虫類の目がキランと輝いた。気のせいじゃない。確かにロックオンされたのだ。
ドスッ!ズルズルと、歩いてこちらへ近づいてくる。このズルズルという音は太い尻尾を引きずる音だったようだ。きぃちゃんは腰を抜かして動けない私の前に立って、勇敢にも恐竜を威嚇する。アヒルンゴたちも前へ走り出て、これまで聞いたことのないような雄叫びをあげた。
「ばふばふばふ!!」
「「「クェエエエ!!」」」
だけど恐竜の足は止まらない。太い足や尻尾に噛みつくきぃちゃんの鋭い牙も、平たいくちばしで体をつつきまくるアヒルンゴたちの攻撃も、一切効果がないようだ。恐竜はそれらに抗うこともなく、空気のように無視して、私だけを見ている。
その太い腕が私の胴をつかんだ。
「イヤぁああああああ!」
絶叫する私と尻尾に噛みついたままのきぃちゃんを連れて、恐竜は森へと引き返した。そして片手に私を抱えたまま大きな木にスルスルと登ると、木から木へと飛び移って移動していく。
「ひぃいいいい!」
地上ではアヒルンゴたちが私を必死に追いかけているけど、これでは何もできそうにない。きぃちゃんも尻尾から振り落されないようにするのに必死だ。
ダメだ。私はこの恐竜に食われてここで死ぬんだわ。
お母さんごめんなさい。
母の顔が脳裏に浮かんだのを最後に、私は意識を失った。
どのくらい経ったのだろうか、私はザリザリと顔を舐められる感触で目が覚めた。
「ばふばふ!」
目を開ければドアップのきぃちゃんの顔があった。気絶していた私の顔を舐めていたのだろう。私は今、何かフワフワとした寝心地の良い場所に寝かされているようだ。
「大丈夫?ケガはない?」
「ばうっ!」
元気な返事が返ってきてホッとする。どうやら大丈夫そうだ。だけど、いったいどこまで連れてこられてしまったのだろう?私は聞いても仕方ない質問をきぃちゃんにした。
「ここはどこ?」
「ばうっ、ばうばう!」
やっぱり分からない。首をかしげていると、可愛いモフモフのうしろから爬虫類の大きな顔が覗いた。私が起きているのを見てうなり声をあげる。
「ぐぅううう?」
「ひぃいいい!」
私はきぃちゃんを胸に抱えて身を縮めた。逃げ場はないかと慌てて周囲をみるけど、ここは高い木のうえのようだ。木のうえの、枝で編んだ大きなカゴのようなもののなかだ。カゴは底に藁や良い匂いのする草を敷き詰めて、居心地が良いようにしてある。
え?これってもしかして「巣」じゃない?
ここでようやく気が付いた。もしかしてこの恐竜は、ルリが言っていたワラバーアガチーなのではないだろうか?私はあらためて目の前の生き物を観察する。木のうえにいるときは四つん這いで歩いていて、その姿はトカゲそのものだ。
それにさっきは、攻撃するきぃちゃんやアヒルンゴにいっさい危害を加えていなかった。あの太い尻尾で振り払えば簡単に吹き飛ばすことができただろうに、しなかったのだ。ルリによれば、ワラバーアガチーは「恐ろしげな見た目に反して性格は穏やかで優しい」生き物なのだ。
「ぐぅううう」
そんなことを考えていたら、恐竜が手を伸ばして何かを差し出してきた。見れば、あの赤い実を握っている。「食べろ」と言っているようなので受け取って一口かじった。それを見ていた恐竜は満足そうに「ぐぅうう」とうなる。
やっぱり、ワラバーアガチーなんだわ。
とりあえず食べられたりする心配はなさそうなので安心する。くっついてきたきぃちゃんにも危害を加える気はないようだ。だけど、ルリが言っていたことをすぐに思い出して、私は顔から血の気が引いていくのを感じた。
「捕まえられたら一生ワラバーアガチーの子として森で暮らすはめになります」
どうしよう、家に帰れなくなっちゃう。
女神さまは私が異世界へ移動する直前のあの時点へ戻れると言っていたけど、ずっと帰れないままこの森で死んだらどうなるのだろう?私は行方不明ということになってしまうのかもしれない。そんなことになったら、お母さんはどんなに苦しむだろうか。
そんなの嫌だ。
帰りたいよ。お母さんに会いたい。
気づけば涙が頬を伝っていた。
「ばふぅ?」
きぃちゃんが心配そうに顔を近づけてくる。しかしそのモフモフの体は、すぐに長い爪の生えた爬虫類の手に押し退けられてしまった。
「ぐぅうう?」
爬虫類の大きな顔が私を見つめる。ワラバーアガチーは手を伸ばして私を抱き上げると、子供を抱くように横抱きにして、私の背をポンポンと叩き始めた。私が泣いているのに気づいて、あやしてくれているようだ。
その手は大きいが優しく、固い爪が私の体を傷つけることはない。アガチー母さんは本当に優しく、愛情あふれる母親のようだ。
だけどもちろん、一生アガチー母さんの子供でいるわけにはいかない。それに私が綺麗な金の玉を運ばないと、いつかティーダル島の人たちが食料に困る事態になるかもしれないのだ。
どうにかスキを見て逃げ出さないと。
アガチー母さんの優しい腕に揺られながら、私は何か方法はないかと考え始めた。
0
あなたにおすすめの小説
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~
たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。
たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。
薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。
仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。
剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。
ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
無才能で孤独な王子は辺境の島で優雅なスローライフを送りたい〜愛され王子は愉快なもふもふと友達になる才能があったようです〜
k-ing /きんぐ★商業5作品
ファンタジー
2023/5/26 男性向けホトラン1位になりました!
読みやすくするために一話の文字数少なめです!
頭を空っぽにして読んで頂けると楽しめます笑
王族は英才教育によって才能を開花する。そんな王族に生まれたアドルは成人しても才能が開花しなかった。
そんなアドルには友達と言える人は誰もおらず、孤独な日々を送っていた。
ある日、王である父親に好きに生きるようにと、王族から追放される。
ただ、才能に気づいていないのは王のみだった。
地図で一番奥にある辺境の島から、王国に戻りながら旅をしたら才能に気づくだろう。
そんなつもりで旅をしたが、着いた島は地図上にない島だった。
そこには存在しないと思われるもふもふ達が住む島だった。
帰ることもできないアドルはもふもふ達と暮らすことを決意する。
あれ?
こいつらも少し頭がおかしいぞ?
うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【完結】不遇スキル『動物親和EX』で手に入れたのは、最強もふもふ聖霊獣とのほっこり異世界スローライフでした
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が異世界エルドラで授かったのは『動物親和EX』という一見地味なスキルだった。
日銭を稼ぐので精一杯の不遇な日々を送っていたある日、森で傷ついた謎の白い生き物「フェン」と出会う。
フェンは言葉を話し、実は強力な力を持つ聖霊獣だったのだ!
フェンの驚異的な素材発見能力や戦闘補助のおかげで、俺の生活は一変。
美味しいものを食べ、新しい家に住み、絆を深めていく二人。
しかし、フェンの力を悪用しようとする者たちも現れる。フェンを守り、より深い絆を結ぶため、二人は聖霊獣との正式な『契約の儀式』を行うことができるという「守り人の一族」を探す旅に出る。
最強もふもふとの心温まる異世界冒険譚、ここに開幕!
喪女なのに狼さんたちに溺愛されています
和泉
恋愛
もふもふの狼がイケメンなんて反則です!
聖女召喚の儀で異世界に呼ばれたのはOL・大学生・高校生の3人。
ズボンを履いていた大学生のヒナは男だと勘違いされ、説明もないまま城を追い出された。
森で怪我をした子供の狼と出会ったヒナは狼族の国へ。私は喪女なのに狼族の王太子、No.1ホストのような武官、真面目な文官が近づいてくるのはなぜ?
ヒナとつがいになりたい狼達の恋愛の行方は?聖女の力で国同士の争いは無くすことができるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる