60 / 64
59(54)ストーリー・ライター
しおりを挟む
「アハハ!オード君!踊りがお上手になったのです!でもそれじゃあ、話にならないのです!帝国最強も形無しなのです!」
巨大な海蛇の機海獣、ウォルプタースの牙やなぎ払う尻尾を掻い潜り、空を泳ぐフォルトゥーナ。
「名乗った覚えはない」
その背に乗ったオードは額に汗を浮かべる。
「ならば無名の騎士として消えていれば良かったものを!」
一瞬の隙に、イッカクの機海獣イグノラムスが突進し、オードに迫る。
「くっ、一度名を捨てた以上、俺はオードだ、それ以外の……何者でもない!」
その場で宙返りし、イグノラムスの角を避ける。
「避けたか──だが!カノン!今だ!」
「言われなくても任せるの……です!」
速度が落ちたフォルトゥーナを狙って、ウォルプタースの尻尾が襲いかかる。
「──なぁに、私を無視してくれてんですかぁ?」
直撃寸前で鮫の機海獣モルスケルタがウォルプタースの尻尾に食らいついて回転し、オードとフォルトゥーナから引き離す。
「助かった!そのまま引き離してくれ!」
「このフーガを忘れてもらって困るぞ!」
「ああ!頼んだ!」
「逃すものかッ」
フォルトゥーナは上空へ離脱し、イグノラムスが追撃する。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「アリア!私のオード君との時間を邪魔するのは許さないのです!」
激しく動いてモルスケルタを弾き飛ばすウォルプタース。
「何が"許さないのです"ですかぁ?ずっと言いたかったのですが、なのですなのですって。それ正直キツいですよ?キャラ付けに必死なのですぅ?ご苦労様なのです!なのです!のです!」
それに対して、煽るようにシャカシャカと上下に動くモルスケルタ。
「アリアぁぁぁ!!言ってはならないことを!!」
カノンの怒りに呼応し、瞬時に牙を向けるウォルプタース。
「くひひ!効いてるのです!語尾はどうしたのです?でーすですです!」
それをモルスケルタは軽々と躱す。
「……ま、アリアみたいにすぐ裏切るガバガバなクソ◾︎◾︎◾︎よりマシなのです!」
「……………はぁ!?」
青筋を浮かべてブチ切れるアリア。
「お、落ち着けアリア!策士策に溺れるという言葉を知らないのかっ!」
補助をしていたフーガが落ち着けようとする……が。
「黙りなさい、フーガ君」
「はい!黙ります!」
「おいカノン……お前今なんて言った!」
「あれあれ、お耳もガバガバなのです?何がくひひ、なのです!"ひ◾︎◾︎く"の方がお似合いなのです!」
「私はこれでも貞淑な方なんですよぉ!黙ってろ行き遅れ◾︎◾︎◾︎がぁ!!」
「死ねよやぁぁぁ!」
「助けてくれオード……私はこんなところにいたく無い……早く来てくれ………!」
品性のカケラもない彼女達に、フーガ青年はただ震えていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「オード、今、引導を渡してやろう」
上空で相対するフォルトゥーナとイグノラムス、2体の機海獣。
「いいや、渡されるのはお前だ」
「……すまないな、元同僚とはいえ──」
「何を今更」
「──穿て、イグノラムビス」
「くっ──!?」
突然現れる、もう一体のイッカクの機海獣、その回転する角を紙一重で躱す。
しかし、避けきれず、浅く無い傷を負うフォルトゥーナ。
「……隠し球か」
「《イグノラムス・イグノラムビス》この二体揃って本来の機体だ。少しばかり頭が疲れる故に、使いたくはなかったが……さて、帝国最強の称号はどちらに相応しいか試そうでは無いか?」
「……さあな、《知らないし、知ることもない》だろう」
機体の名の意味をそのまま返すオード。
「口の減らない者よ──!」
スケルツォの操る二体の機海獣が捕鯨砲を大量に放ち、イムラーナの光を帯びた魚影がオードの視界の空を埋め尽くす。
「完全包囲、そして二体の同時攻撃、これを防ぐ術はあるまい──!」
「どうかな、フォルトゥーナァァ!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎!」
獅子の雄叫びを上げたフォルトゥーナはイムラーナの光の上を高速で泳ぎ、迫りくる魚影、そして二体の突撃を躱す。
「当たるかよ!」
「──そのお前の避けた先こそ、私の間合い!」
弾幕を掻い潜ったオードの目の前に、急旋回したイグノラムビスが突撃する。
「見せてやるよ、曲芸って奴を!」
オードはフォルトゥーナを足場にして跳躍し、紙一重でイグノラムビスを躱すと、さらにその機体の上に降り立ち、ハッチを掴む。
「悪いが使わせてもらうぞ!」
暴れるイグノラムビスをものともせず、ハッチをこじ開けて搭乗するオード。
「私の制御下にあるものを──」
「イグノラムビス!俺に応えろぉ!」
「◾︎◾︎◾︎──!」
オードの声に従い、その回転する角を本来の主へ向けるイグノラムビス。
「な、何故、接続は完璧な筈──」
「知ったことかぁぁぁ!!」
曲芸のような奇襲は成功し、イグノラムビスの角はイグノラムスを貫く。
「終わりだ。降参しろ、スケルツォ」
「あぁ、やはりお前が最強だ」
「まだ言うのか──」
「いいや、お前こそが帝国で最も強い騎士だったよ──」
「──!」
瞬間、イグノラムスは爆発し、空に凄まじい轟音が鳴り響いた。
巨大な海蛇の機海獣、ウォルプタースの牙やなぎ払う尻尾を掻い潜り、空を泳ぐフォルトゥーナ。
「名乗った覚えはない」
その背に乗ったオードは額に汗を浮かべる。
「ならば無名の騎士として消えていれば良かったものを!」
一瞬の隙に、イッカクの機海獣イグノラムスが突進し、オードに迫る。
「くっ、一度名を捨てた以上、俺はオードだ、それ以外の……何者でもない!」
その場で宙返りし、イグノラムスの角を避ける。
「避けたか──だが!カノン!今だ!」
「言われなくても任せるの……です!」
速度が落ちたフォルトゥーナを狙って、ウォルプタースの尻尾が襲いかかる。
「──なぁに、私を無視してくれてんですかぁ?」
直撃寸前で鮫の機海獣モルスケルタがウォルプタースの尻尾に食らいついて回転し、オードとフォルトゥーナから引き離す。
「助かった!そのまま引き離してくれ!」
「このフーガを忘れてもらって困るぞ!」
「ああ!頼んだ!」
「逃すものかッ」
フォルトゥーナは上空へ離脱し、イグノラムスが追撃する。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「アリア!私のオード君との時間を邪魔するのは許さないのです!」
激しく動いてモルスケルタを弾き飛ばすウォルプタース。
「何が"許さないのです"ですかぁ?ずっと言いたかったのですが、なのですなのですって。それ正直キツいですよ?キャラ付けに必死なのですぅ?ご苦労様なのです!なのです!のです!」
それに対して、煽るようにシャカシャカと上下に動くモルスケルタ。
「アリアぁぁぁ!!言ってはならないことを!!」
カノンの怒りに呼応し、瞬時に牙を向けるウォルプタース。
「くひひ!効いてるのです!語尾はどうしたのです?でーすですです!」
それをモルスケルタは軽々と躱す。
「……ま、アリアみたいにすぐ裏切るガバガバなクソ◾︎◾︎◾︎よりマシなのです!」
「……………はぁ!?」
青筋を浮かべてブチ切れるアリア。
「お、落ち着けアリア!策士策に溺れるという言葉を知らないのかっ!」
補助をしていたフーガが落ち着けようとする……が。
「黙りなさい、フーガ君」
「はい!黙ります!」
「おいカノン……お前今なんて言った!」
「あれあれ、お耳もガバガバなのです?何がくひひ、なのです!"ひ◾︎◾︎く"の方がお似合いなのです!」
「私はこれでも貞淑な方なんですよぉ!黙ってろ行き遅れ◾︎◾︎◾︎がぁ!!」
「死ねよやぁぁぁ!」
「助けてくれオード……私はこんなところにいたく無い……早く来てくれ………!」
品性のカケラもない彼女達に、フーガ青年はただ震えていた。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「オード、今、引導を渡してやろう」
上空で相対するフォルトゥーナとイグノラムス、2体の機海獣。
「いいや、渡されるのはお前だ」
「……すまないな、元同僚とはいえ──」
「何を今更」
「──穿て、イグノラムビス」
「くっ──!?」
突然現れる、もう一体のイッカクの機海獣、その回転する角を紙一重で躱す。
しかし、避けきれず、浅く無い傷を負うフォルトゥーナ。
「……隠し球か」
「《イグノラムス・イグノラムビス》この二体揃って本来の機体だ。少しばかり頭が疲れる故に、使いたくはなかったが……さて、帝国最強の称号はどちらに相応しいか試そうでは無いか?」
「……さあな、《知らないし、知ることもない》だろう」
機体の名の意味をそのまま返すオード。
「口の減らない者よ──!」
スケルツォの操る二体の機海獣が捕鯨砲を大量に放ち、イムラーナの光を帯びた魚影がオードの視界の空を埋め尽くす。
「完全包囲、そして二体の同時攻撃、これを防ぐ術はあるまい──!」
「どうかな、フォルトゥーナァァ!」
「◾︎◾︎◾︎◾︎!」
獅子の雄叫びを上げたフォルトゥーナはイムラーナの光の上を高速で泳ぎ、迫りくる魚影、そして二体の突撃を躱す。
「当たるかよ!」
「──そのお前の避けた先こそ、私の間合い!」
弾幕を掻い潜ったオードの目の前に、急旋回したイグノラムビスが突撃する。
「見せてやるよ、曲芸って奴を!」
オードはフォルトゥーナを足場にして跳躍し、紙一重でイグノラムビスを躱すと、さらにその機体の上に降り立ち、ハッチを掴む。
「悪いが使わせてもらうぞ!」
暴れるイグノラムビスをものともせず、ハッチをこじ開けて搭乗するオード。
「私の制御下にあるものを──」
「イグノラムビス!俺に応えろぉ!」
「◾︎◾︎◾︎──!」
オードの声に従い、その回転する角を本来の主へ向けるイグノラムビス。
「な、何故、接続は完璧な筈──」
「知ったことかぁぁぁ!!」
曲芸のような奇襲は成功し、イグノラムビスの角はイグノラムスを貫く。
「終わりだ。降参しろ、スケルツォ」
「あぁ、やはりお前が最強だ」
「まだ言うのか──」
「いいや、お前こそが帝国で最も強い騎士だったよ──」
「──!」
瞬間、イグノラムスは爆発し、空に凄まじい轟音が鳴り響いた。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
お前のような地味な女は不要だと婚約破棄されたので、持て余していた聖女の力で隣国のクールな皇子様を救ったら、ベタ惚れされました
夏見ナイ
恋愛
伯爵令嬢リリアーナは、強大すぎる聖女の力を隠し「地味で無能」と虐げられてきた。婚約者の第二王子からも疎まれ、ついに夜会で「お前のような地味な女は不要だ!」と衆人の前で婚約破棄を突きつけられる。
全てを失い、あてもなく国を出た彼女が森で出会ったのは、邪悪な呪いに蝕まれ死にかけていた一人の美しい男性。彼こそが隣国エルミート帝国が誇る「氷の皇子」アシュレイだった。
持て余していた聖女の力で彼を救ったリリアーナは、「お前の力がいる」と帝国へ迎えられる。クールで無愛想なはずの皇子様が、なぜか私にだけは不器用な優しさを見せてきて、次第にその愛は甘く重い執着へと変わっていき……?
これは、不要とされた令嬢が、最高の愛を見つけて世界で一番幸せになる物語。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる