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第二幕
38 キープ・ザ・カスタマー・サティスファイ.2◇
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◇◇◇◇◇◇◇◇
「……ふーん、でそこの子はなんだ?嫁かぃ?」
前髪を真っ直ぐ切り、サラサラな長い黒髪で炎の様な赤い瞳に鋭い目つき、長身でスラッとした物凄い美人の女性は、深々と椅子に座り、私を見てオードに聞いた。
何処となく誰かに似ているような気のする彼女は、私の薬によく似た煙を漂わせる管を咥えていた。
「いや……その」
オードは困ったような顔をした。
「そう。オード…私…結婚する?……した?大体…そんな…感じ」
「ま、マナ様!からかうのも程々にしてくれ……心臓が持たない」
「そう?顔…赤い?けど?」
「気の所為だ」
「照れてる…!オード…照れてる…でしょ!」
「……頼む、マナ様、この人の前では」
「目の前でイチャイチャしやがって、なぁ、誰の許しがあって帰ってきやがったんだ?"息子"よ」
剣呑な雰囲気でオードを睨みつける女性。
「えっ…お母様…なの?」
「かかっ、お母様って柄じゃねぇなぁ?」
ケラケラと笑い、照れたように頭を掻く。
「認めたくは無いがそうだ。……許しなんて必要ない。この街に戻ってきた訳じゃないからな」
「言うようになったじゃねぇか?えぇ?じゃあ何の用だ?」
煙を吐いてオードに問いかける。
「それは──」
「急に来られても何の準備もできやしないんだよ、分かる?これでも、手をかけ、塩をかけて育てたさ。あんたを養育する為ならギャングのトップにだってなった。それがこんな可愛らしい子を連れて帰ってきたってんだから嬉しくない訳ないだろう?だけど物事にはそれ相応の──」
一人で捲し立てる様に喋り続ける。
「ギャングのトップになったのは、あんたの望みだろ」
「あ、そうだ。嫁さん、名前はなんて?」
オードの言葉を全然聞かないで、私に話しかける。
「私、マナ」
「……へぇー、名前も可愛いねぇ。私は、ベストラってんだ、よろしくマナ」
「可愛い……?私?」
「言われたことないのかい?その面で」
「お父様…以外…初めて」
「おい馬鹿息子、褒め言葉の一つも知らねぇのか?」
「当たり前のことを言って何の意味がある?マナ様に向かってマナ様ですね、というようなものだぞ?」
私が私……?どう言う意味なんだろ。
「あーうん。言いたいことはわかるが、それじゃ伝わんないね。というか言って欲しいもんなの、言え」
「言われずとも、相応しい時に相応しい言葉を言う」
「そ。にしてもあんたがね……。マナ、この子は昔から喧嘩ばっかりでね、剣の師匠をつけてやったら随分強くなっちまって、それで折角、陛下直属の騎士にまでなったってのに、それっきり連絡もよこさねぇんだから、困ったもんだよ、ええ?」
……私が私で?……私が?……うん。分からない。
「おい、それ以上はやめろ」
「帝国騎士のなんだか知らねぇが、貰いは多いんだろう?恩返ししろよな?私に。先ずは金、次に服、後は家とか土地!あーそうだ、旧首都の街区がもう一つ欲しい」
もう一つって既に一つ所有してるって事……?
こんな街なのに凄いお金持ちなんだ……?
「俺はもう……違う」
「仕方ねぇなぁ、お父ちゃんも貰いが少なくて、アッサリくたばっちまったが、あんたも同じ血が流れてんだなぁ」
「半分は、あんたの血だ」
「私の血が悪さするわきゃねぇだろう、そんで、今の仕事は?」
「……俺はマナ様の騎士だ。今は第三王子の命令で、帝国を脱出する途中だ」
「……へぇ、第三王子の。……って事はその子、聖女だろ」
「え…なんで…知ってる?」
「そりゃ、今あんたが教えてくれたじゃないか?」
またも、ケラケラと笑うベストラさん。
「えっ……?えっ?」
「マナ様、この人はこういう人だ…諦めろ」
「第三王子の命令で帝国騎士が女の子一人連れ出すなんざぁ、言われて分かんねえ奴が間抜けよ。そんな事をするってことは恐らく王位の継承戦争に関係してる……てことは、陛下も亡くなったね?」
「す、すごい」
「そりゃ、これで生きてるからね」
「そこまで分かるなら俺の言いたいことは分かるだろう?最下層の魔導列車を使いたい」
「……南の風車塔に行くつもりかい?じゃあ、あれは機海獣か。しかも自立できる……皇帝の使ってた奴以外にそんなのは見た事がないね」
「はぁ……何でもお見通しか」
「そりゃ息子のことさ、何だって分かる」
「……そうか」
「ま、あんま無理すんじゃないよ。止めはしない。だけど責任を取るってのは、何も"そういう"ことだけじゃないんだから」
「なら…」
「んなこと、知らないよ、私に聞くな」
この梯子を外す感じ、オードにそっくりだった。あ、違うか、オードがそっくりなんだ。
「聞こうとした俺が馬鹿だった」
「ああ、そうだ。大事な事を人に委ねんな。ま、鍵はくれてやるよ、ほれ」
「……助かる」
「そこはありがとうお母様、とでも言えないのかねぇ、これから偉くなるってのに」
「……何を言ってるんだ全く」
「玉の輿だろう?どうせなら宮殿の馬鹿をのして、皇帝になっちまえ!」
「それ…いい…名案」
「……前向きに検討しておく」
……流石のオードも、母親には勝てないんだろう。多分。
「……ふーん、でそこの子はなんだ?嫁かぃ?」
前髪を真っ直ぐ切り、サラサラな長い黒髪で炎の様な赤い瞳に鋭い目つき、長身でスラッとした物凄い美人の女性は、深々と椅子に座り、私を見てオードに聞いた。
何処となく誰かに似ているような気のする彼女は、私の薬によく似た煙を漂わせる管を咥えていた。
「いや……その」
オードは困ったような顔をした。
「そう。オード…私…結婚する?……した?大体…そんな…感じ」
「ま、マナ様!からかうのも程々にしてくれ……心臓が持たない」
「そう?顔…赤い?けど?」
「気の所為だ」
「照れてる…!オード…照れてる…でしょ!」
「……頼む、マナ様、この人の前では」
「目の前でイチャイチャしやがって、なぁ、誰の許しがあって帰ってきやがったんだ?"息子"よ」
剣呑な雰囲気でオードを睨みつける女性。
「えっ…お母様…なの?」
「かかっ、お母様って柄じゃねぇなぁ?」
ケラケラと笑い、照れたように頭を掻く。
「認めたくは無いがそうだ。……許しなんて必要ない。この街に戻ってきた訳じゃないからな」
「言うようになったじゃねぇか?えぇ?じゃあ何の用だ?」
煙を吐いてオードに問いかける。
「それは──」
「急に来られても何の準備もできやしないんだよ、分かる?これでも、手をかけ、塩をかけて育てたさ。あんたを養育する為ならギャングのトップにだってなった。それがこんな可愛らしい子を連れて帰ってきたってんだから嬉しくない訳ないだろう?だけど物事にはそれ相応の──」
一人で捲し立てる様に喋り続ける。
「ギャングのトップになったのは、あんたの望みだろ」
「あ、そうだ。嫁さん、名前はなんて?」
オードの言葉を全然聞かないで、私に話しかける。
「私、マナ」
「……へぇー、名前も可愛いねぇ。私は、ベストラってんだ、よろしくマナ」
「可愛い……?私?」
「言われたことないのかい?その面で」
「お父様…以外…初めて」
「おい馬鹿息子、褒め言葉の一つも知らねぇのか?」
「当たり前のことを言って何の意味がある?マナ様に向かってマナ様ですね、というようなものだぞ?」
私が私……?どう言う意味なんだろ。
「あーうん。言いたいことはわかるが、それじゃ伝わんないね。というか言って欲しいもんなの、言え」
「言われずとも、相応しい時に相応しい言葉を言う」
「そ。にしてもあんたがね……。マナ、この子は昔から喧嘩ばっかりでね、剣の師匠をつけてやったら随分強くなっちまって、それで折角、陛下直属の騎士にまでなったってのに、それっきり連絡もよこさねぇんだから、困ったもんだよ、ええ?」
……私が私で?……私が?……うん。分からない。
「おい、それ以上はやめろ」
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もう一つって既に一つ所有してるって事……?
こんな街なのに凄いお金持ちなんだ……?
「俺はもう……違う」
「仕方ねぇなぁ、お父ちゃんも貰いが少なくて、アッサリくたばっちまったが、あんたも同じ血が流れてんだなぁ」
「半分は、あんたの血だ」
「私の血が悪さするわきゃねぇだろう、そんで、今の仕事は?」
「……俺はマナ様の騎士だ。今は第三王子の命令で、帝国を脱出する途中だ」
「……へぇ、第三王子の。……って事はその子、聖女だろ」
「え…なんで…知ってる?」
「そりゃ、今あんたが教えてくれたじゃないか?」
またも、ケラケラと笑うベストラさん。
「えっ……?えっ?」
「マナ様、この人はこういう人だ…諦めろ」
「第三王子の命令で帝国騎士が女の子一人連れ出すなんざぁ、言われて分かんねえ奴が間抜けよ。そんな事をするってことは恐らく王位の継承戦争に関係してる……てことは、陛下も亡くなったね?」
「す、すごい」
「そりゃ、これで生きてるからね」
「そこまで分かるなら俺の言いたいことは分かるだろう?最下層の魔導列車を使いたい」
「……南の風車塔に行くつもりかい?じゃあ、あれは機海獣か。しかも自立できる……皇帝の使ってた奴以外にそんなのは見た事がないね」
「はぁ……何でもお見通しか」
「そりゃ息子のことさ、何だって分かる」
「……そうか」
「ま、あんま無理すんじゃないよ。止めはしない。だけど責任を取るってのは、何も"そういう"ことだけじゃないんだから」
「なら…」
「んなこと、知らないよ、私に聞くな」
この梯子を外す感じ、オードにそっくりだった。あ、違うか、オードがそっくりなんだ。
「聞こうとした俺が馬鹿だった」
「ああ、そうだ。大事な事を人に委ねんな。ま、鍵はくれてやるよ、ほれ」
「……助かる」
「そこはありがとうお母様、とでも言えないのかねぇ、これから偉くなるってのに」
「……何を言ってるんだ全く」
「玉の輿だろう?どうせなら宮殿の馬鹿をのして、皇帝になっちまえ!」
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