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第二幕
16. 秘密の求愛者-10(※三人称視点)
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◆◇◆◇◆◇◆◇
「アルサメナ様!貴方様の処遇が決まりました!」
扉を開け放ったのは兵士だった。
アルサメナの追放処分の解除を伝えに来たのだ。
「なぜ……ここが……」
そんなことは知らないルヴィは、殺気立ち、隠していたナイフを両手に構える。
「かつての同業者に随分な態度だな?」
ニヤリと笑う兵の顔はルヴィの見知った顔だった。
「……王に尻尾を振った裏切り者どもに話す言葉なんてありません……」
ナイフを差し向けて今にも飛び出しかねない勢いのルヴィ。
「用があるのはお前じゃない、下がれ」
「アルサメナ様に用があるとなれば、私が引くわけには参りませんから。何があろうと、私は殿下をお守りしなくてはならない」
「邪魔をすると言うなら──」
剣を抜こうとする兵。
「"そっち"の方が話が早い──」
対して一瞬で間合いを詰めたルヴィは、片手のナイフで剣を抑え、もう片方を喉元へ突きつける。
「腕だけは変わっていないらしい、だがその細腕で」
「……そこまでだルヴィ。一応は用件を聞こうじゃないか」
「アルサメナ様!こんな奴らの話を聞くことはありません!」
「……命令が聞けないのか?」
「……かしこまりました」
ナイフを袖に収納したルヴィは、アルサメナの隣へ戻る。
「よろしいですかな、王弟殿下。貴方様は王宮への呼び出しがかかっております、我々と来て貰えますよね?」
「……ああ、どこでも行こう、それが地獄であろうとも」
「アルサメナ様……兵が無事にここに来ると言うことは……恐らく、失敗したという事ですよ……無事ではすみませんよ……?」
「良い。兄上とはいずれ決着をつけねばならない。その結果……命を落とすことになろうとも」
「……あの……もう良いでしょうか?殿下?」
何故そこまで決死の表情なのか分からない兵士は、呆れたように尋ねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、ルヴィに顛末を伝えたアイリスは、ベルミダを探して彼女の部屋へ向かっていた。
「……まだ何か手はあるはず……幾らでも探りは入れられる……早まるな私……早まるんじゃあ、ないぞ……剣は最後……剣は最後よ……」
考えながら歩いていた彼女は、部屋の前に辿り着いている事すら気がつかず、扉へ頭を強かにぶつけた。
「ふぎゃっ!」
「騎士様……?ここで何を?」
その背に声をかけたのはベルミダだった。
「……い、いえ、なんでもありません。王よりベルミダ様の護衛を命じられましたので、参りました次第で」
「あら、そうなの。さ、お入りになって」
「え、あ、はい。しかし……」
アイリスからすれば、部屋の主でもないのに、中へ連れようとする娘に戸惑う。
「……私の護衛なのに、外にいるわけにもいかないでしょう?」
「…………え?」
微笑むその口から出た言葉をアイリスは理解することが出来なかった。
「それにもう、とぼける必要もなくってよ、王様はもう、貴方を疑う事なんてしないわ」
「──っ!」
この瞬間、アイリスは理解した。
暗号を手渡したのは、ベルミダではなく、以前話で聞いていた妹の方だったのだと。
◆◇◆◇◆◇◆◇
自身の迂闊さを後悔したアイリスだったが、もう一つ気がついた。
様子を見るに、ベルミダは暗号を妹から受け取っていない事を。
受け渡した妹は、暗号が誰から届いた物なのか察しがついていたように見えていた。
その場でナローシュではない、と言っていたのを思い出したアイリスは、この結果が持つ意味をすぐに見出した。
──アトランタが意図的に暗号を隠しているのだと。
「……あの、ベルミダ様、アトランタ様から何か受け取ってませんか……?」
「……何も」
ベルミダは妹が自分の事を好きなのだと思ったままだったので、それを隠した。
「……そうですか」
その所為でアイリスの中ではアトランタが黒であることが確定してしまった。
しかし、不可解な点が残っていた。
彼女覚えている限りでは、ナローシュはアトランタから恋文を受け取っていた。
アイリスからしてみれば、もし、王の事を好いているなら、王が無中な姉に対して贈られる恋文など、そのまま渡して不貞の証拠にした方が、よっぽど話は簡単なように思えた。
そうしない理由は何か、そう考えた時、アイリスの脳裏に浮かんだのは、姉の妨害だった。
「不躾な事をお聞きしますが、妹君とはあまり仲がよろしくないのですか?」
「……私はあの子の味方よ、それ以上でも以下でもないわ」
「失礼いたしました」
しかし、返答は予想外だった。
まさか、アルサメナに横恋慕しているとは知らないアイリスには、もはや状況が理解できなかった。
これで多少仲が悪そうならば、姉の妨害の為に隠したとしても、おかしくなかったかもしれなかったが、そうでもなさそうな様子にしか見えなかった。
ベルミダの方は、この質問でナローシュが軽々しく口を開いたのだと思い、下がり続ける彼の好感度が底を抜いてしまった。
もう考えても、分かりそうにないのでアイリスは諦めて観察をしようと決めた時──
「失礼、ベルミダ様はいらっしゃいますでしょうか、ナローシュ様がお呼びです」
戸を叩き、部屋へ現れたのは兵士。
再びナローシュから呼び出しがかかった。
「今度は何かしら、たいした用事じゃあ、ないのでしょうけど……騎士様、行きましょう?」
アイリスは混迷極まる事態に、少しでも光明が指すことを祈った。
「アルサメナ様!貴方様の処遇が決まりました!」
扉を開け放ったのは兵士だった。
アルサメナの追放処分の解除を伝えに来たのだ。
「なぜ……ここが……」
そんなことは知らないルヴィは、殺気立ち、隠していたナイフを両手に構える。
「かつての同業者に随分な態度だな?」
ニヤリと笑う兵の顔はルヴィの見知った顔だった。
「……王に尻尾を振った裏切り者どもに話す言葉なんてありません……」
ナイフを差し向けて今にも飛び出しかねない勢いのルヴィ。
「用があるのはお前じゃない、下がれ」
「アルサメナ様に用があるとなれば、私が引くわけには参りませんから。何があろうと、私は殿下をお守りしなくてはならない」
「邪魔をすると言うなら──」
剣を抜こうとする兵。
「"そっち"の方が話が早い──」
対して一瞬で間合いを詰めたルヴィは、片手のナイフで剣を抑え、もう片方を喉元へ突きつける。
「腕だけは変わっていないらしい、だがその細腕で」
「……そこまでだルヴィ。一応は用件を聞こうじゃないか」
「アルサメナ様!こんな奴らの話を聞くことはありません!」
「……命令が聞けないのか?」
「……かしこまりました」
ナイフを袖に収納したルヴィは、アルサメナの隣へ戻る。
「よろしいですかな、王弟殿下。貴方様は王宮への呼び出しがかかっております、我々と来て貰えますよね?」
「……ああ、どこでも行こう、それが地獄であろうとも」
「アルサメナ様……兵が無事にここに来ると言うことは……恐らく、失敗したという事ですよ……無事ではすみませんよ……?」
「良い。兄上とはいずれ決着をつけねばならない。その結果……命を落とすことになろうとも」
「……あの……もう良いでしょうか?殿下?」
何故そこまで決死の表情なのか分からない兵士は、呆れたように尋ねた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方、ルヴィに顛末を伝えたアイリスは、ベルミダを探して彼女の部屋へ向かっていた。
「……まだ何か手はあるはず……幾らでも探りは入れられる……早まるな私……早まるんじゃあ、ないぞ……剣は最後……剣は最後よ……」
考えながら歩いていた彼女は、部屋の前に辿り着いている事すら気がつかず、扉へ頭を強かにぶつけた。
「ふぎゃっ!」
「騎士様……?ここで何を?」
その背に声をかけたのはベルミダだった。
「……い、いえ、なんでもありません。王よりベルミダ様の護衛を命じられましたので、参りました次第で」
「あら、そうなの。さ、お入りになって」
「え、あ、はい。しかし……」
アイリスからすれば、部屋の主でもないのに、中へ連れようとする娘に戸惑う。
「……私の護衛なのに、外にいるわけにもいかないでしょう?」
「…………え?」
微笑むその口から出た言葉をアイリスは理解することが出来なかった。
「それにもう、とぼける必要もなくってよ、王様はもう、貴方を疑う事なんてしないわ」
「──っ!」
この瞬間、アイリスは理解した。
暗号を手渡したのは、ベルミダではなく、以前話で聞いていた妹の方だったのだと。
◆◇◆◇◆◇◆◇
自身の迂闊さを後悔したアイリスだったが、もう一つ気がついた。
様子を見るに、ベルミダは暗号を妹から受け取っていない事を。
受け渡した妹は、暗号が誰から届いた物なのか察しがついていたように見えていた。
その場でナローシュではない、と言っていたのを思い出したアイリスは、この結果が持つ意味をすぐに見出した。
──アトランタが意図的に暗号を隠しているのだと。
「……あの、ベルミダ様、アトランタ様から何か受け取ってませんか……?」
「……何も」
ベルミダは妹が自分の事を好きなのだと思ったままだったので、それを隠した。
「……そうですか」
その所為でアイリスの中ではアトランタが黒であることが確定してしまった。
しかし、不可解な点が残っていた。
彼女覚えている限りでは、ナローシュはアトランタから恋文を受け取っていた。
アイリスからしてみれば、もし、王の事を好いているなら、王が無中な姉に対して贈られる恋文など、そのまま渡して不貞の証拠にした方が、よっぽど話は簡単なように思えた。
そうしない理由は何か、そう考えた時、アイリスの脳裏に浮かんだのは、姉の妨害だった。
「不躾な事をお聞きしますが、妹君とはあまり仲がよろしくないのですか?」
「……私はあの子の味方よ、それ以上でも以下でもないわ」
「失礼いたしました」
しかし、返答は予想外だった。
まさか、アルサメナに横恋慕しているとは知らないアイリスには、もはや状況が理解できなかった。
これで多少仲が悪そうならば、姉の妨害の為に隠したとしても、おかしくなかったかもしれなかったが、そうでもなさそうな様子にしか見えなかった。
ベルミダの方は、この質問でナローシュが軽々しく口を開いたのだと思い、下がり続ける彼の好感度が底を抜いてしまった。
もう考えても、分かりそうにないのでアイリスは諦めて観察をしようと決めた時──
「失礼、ベルミダ様はいらっしゃいますでしょうか、ナローシュ様がお呼びです」
戸を叩き、部屋へ現れたのは兵士。
再びナローシュから呼び出しがかかった。
「今度は何かしら、たいした用事じゃあ、ないのでしょうけど……騎士様、行きましょう?」
アイリスは混迷極まる事態に、少しでも光明が指すことを祈った。
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