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王太子シャルルの場合

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俺はシャルル、この国の王太子だ。そしてまだ婚約者はいない。一度サラと婚約したけど、傷つけてしまって解消になった。そのあと何度も再度婚約をと働きかけているがなかなか上手くいかない。そして、いつの間にか多くのライバルが彼女の周りをとりかこむようになった。ライバルに勝てるように、素敵な彼女を手に入れるために公務も勉強も頑張っている。多くの女性から声がかかることだってある。でも、一緒にいてほっとするのは、手に入れたいと熱望するのは彼女しかいない。

俺は高慢ちきな王子だった。幼少期から王宮に遊び相手の友人も多かったし、たくさんの可愛らしい女の子が婚約者候補として紹介された。その中で比較的可愛らしいが、すごく眼を惹くわけでもないサラと婚約させられたのはサラを気に入った母が決めた。
婚約者となった彼女との初めてのお茶会は9歳だった。優雅に微笑む彼女は可愛らしかったが、媚を全く感じず、自慢話ばかりする俺のことを全く褒めない彼女にイライラしていた。男はみんなすごいと思われたいのに。わずかに好意を持っていた彼女が俺を全く持ち上げない。不愉快でしかなかった。だから彼女を蔑ろにしていた。
しかし、11歳の時母が亡くなった。弟の出産が原因だった。ですぐに父の側妃を決めることが決まり周りは騒がしかった。居場所がないように感じた。黒い服しか着れなかった。母の好きだった薔薇園の中で隠れてじっとするとほっとした。そこに侵入してきたのが彼女だった。寂しい気もして、煩わしい気もして、でも友人の情のあった彼女に弱っているところを見られたくなかった。
数日そうして何も言わずに遅くまで一緒にいた。母の骸とお別れになった日。薔薇園であった彼女から慈しむような視線を感じて、涙が出てきた。彼女が抱きしめてくれて、俺は甘えた。柔らかく暖かい体から温もりを感じて慰められた。
しかし、もともとの俺の態度が悪かったことと王妃の死があり、俺たちの婚約は解消になったのだ。

周りは弟の後見となった側妃のこともあり、評判の悪い第一王子が王太子になれないと思ったのかまわりの様子を見る視線にむしゃくしゃしていた。そんな時期学園に入った12歳の時、気まずい気持ちもあったが変わらず暖かい眼で俺を受け入れてくれたのは彼女だった。 
 彼女に好意を持つのは当たり前だった。きちんと叱ってもくれるし、母のように抱きしめてもくれる彼女のことを15歳には1人の女性として意識していた。

「ねぇサラ、観念してまた俺と婚約してよ。」口付けて真っ赤になった彼女はすぐに余裕を取り戻して、「今のあなたなら、どんな女の子とも付き合えるじゃない」何度も俺はサラがいいんだってごねるんだけど、寂しそうに笑う彼女をみていたらいつも抱きしめたくなる。そして、彼女の周りにはいつも他の男がいるから気が気ではなかった。どんどん優しく威厳と優秀さを示すことになった俺には他国からも縁談が舞い込んでいた。その頃には彼女の父公爵も認めてくれるようにはなったが、この学園をさる18歳、彼女が婚約を決めるまでは縁談をうけるつもりはなかった。
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