日常探偵団

髙橋朔也

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五十円玉二十枚の謎

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 帰りのホームルームは終わり、新島は同じ文芸部部員の高田の席に向かった。
「高田。部室に行くぞ」
「早いな。ま、俺も準備は出来てるからな」
 高田は新島より先に教室を出た。新島は後を追った。
「前の偽札犯を探すのは面白かったな。それにしても、新島はよくわかったな」
「ああ。楽勝だったよ」
 前回、新島たちは文芸部部長の土方の親が営む書店に手紙が届き、偽札を使用したことを謝る文面だった。だが、レジの中には偽札はなかった。その手紙から、新島は推理をして手紙が届いた理由を当てた。
「もうすぐ、夏休みだな」
「高田は夏休みに何かするのか?」
「いや、これといってないな」
「そうか」
「新島は何かないのか」
「そうだな...夏休みが終わったら稲穂祭があるから、文集をつくるために図書館にでも行くか」
「じゃあ、文芸部全員で行こう」
「お、いいな」
「だろ?」
 高田はA棟七階の文芸部部室に入った。土方はソファで横になっていた。
「二人とも、遅い。またうちの書店で不思議なことが起こったんだ」
「またか?」
「ああ。私は毎週土曜日と日曜日にレジを任されるんだが、おかしな客が来るんだ。毎週土曜午後三時くらいに男が手に五十円玉二十枚を握りしめて、千円札に両替にくるんだ」
「謎だな」
「五十円玉二十枚の謎っすか」
「そう。そのことが非常に気になるんだ。そこで、君たち二人も協力して謎を解いてほしいんだ」
「だったら、簡単だ。今週の土曜日...明日だな。明日に先輩の親が営む本屋でその男が来るのを待って、尾行すればいい」

 次の日の土曜日。新島と高田は本屋に来ていた。その本屋では、今は土方がレジに立っていて、お客さんの手に持たれた本を袋に入れてその分の代金をもらっていた。
 現在の時刻は午後二時五十一分。もうそろそろ例の五十円玉男が来るはずだ。土方はレジに立っていながら周囲を警戒していた。すると、奥の方からニット帽をかぶった男がレジの前に立った。
「五十円玉を千円札に両替してくれ」
「承知いたしました」
 土方は五十円玉が二十枚あるのを確認して、レジに入れて千円札を一枚取りだして渡した。
「高田。あいつを追うぞ」
「ああ」
 新島は急いでその男を追った。高田は新島を追いかけた。男は本屋の隣りにあるファミリーレストランに入った。二人もファミリーレストランに入って席に座った。
「お客様。どれにしますか?」
「いつものを頼むよ」
「わかりました」
 どうやら、男はこのファミリーレストランの常連客のようだ。そして、その男の注文を聞いた店員は新島と高田の席にきた。
「ご注文はお決まりですか?」
「ドリンクバー二つをお願いします」
「お二つですね、わかりました」
 店員は奥の方へと下がっていった。
「なあ、新島。あの店員さん、可愛かったな。部長の方が可愛いがな」
「まあ、美人ではあるな」
「だろ? あの店員さんを目当てで男が来てるんじゃないのか?」
「だとすると、両替をなぜするのかな?」
「それもそうだな」
 高田は腕を組んで悩んでいた。
 ちょっとして、二人はドリンクを取ってきた。
「でも、どうして五十円玉を二十枚も両替するんだ?」
「わかんないな。五十円玉が重かったんじゃないか?」
「まあ、結局、部長が納得する答えなら嘘でも良いんだろうな。嘘も方便だ」
「おっ! 高田もわかってるじゃないか」
「ああ」
 やがて、男は注文したものを食べ終えてレジに向かった。二人もレシートを持って、その後ろに並んだ。
「合計で千三百円です」
「わかった」
 男は千円札一枚と百円玉三枚を出した。店員は合計してレジに千三百円を入れた。二人も会計をして男を追った。男はどこへも寄らずに家へと帰っていった。
「さて。新島は何かわかったか? なぜ五十円玉二十枚を毎週土曜日に千円札に両替するのか」
「なんとも言えないな。ただ、予想くらいはできる」
「そうか。言ってみろ」
「まだ、確証がないから言えない」
「そうか、まあいい。本屋に戻ろう」
「ああ」
 二人は元来た道を引き返して、本屋に戻った。レジには土方がいて、そろそろレジ打ちも終わる頃だった。午後六時を過ぎて、土方は本屋を出た。
「お、新島。何かわかったか?」
「先輩が聞きたいことはわかったか」
「来週も尾行する必要がある」
 その後、二週間に渡って尾行した。

 尾行を終えてすぐの月曜日の学校。その放課後のことだ。新島は急いで準備をして、高田の席の前に立った。
「どうした、新島」
「確証は持てないから俺の予想になるが、推理を話す」
「そうか。じゃあいこう」
 二人はカバンをつかむと、七階の部室に向かった。部室には土方がいて、珍しく立っていた。
「待っていたぞ。今度こそ、話してくれるんだろうな?」
「ああ、もちろん」
 新島はカバンを床に置いて話し始めた。
「最初、話しを聞いたときはこう考えた。新しいお金が発行されるが、現在の野口英世(のぐちひでよ)の千円札の価値が上がると誤認して両替してるんだと思った。実際は価値なんて変わらないがな。
 だが、尾行してわかった。あの人はおそらく、五十円玉貯金をしていた。そして、本屋の隣りにあるファミリーレストランの美人店員に恋をしていた。そして、毎週土曜日にファミリーレストランで千三百円もする同じものを注文していたんだ。千三百円は五十円玉にして二十六枚。五十円玉で会計をしたときに、硬貨二十一枚以上は店側が断れるから、美人店員に断られてショックを受けたんだろうな。だから、毎回ファミリーレストランの隣りの本屋で五十円玉を千円札に両替していたんだ。それに、百円玉くらいなら社会人は持っているはずだ。理由は実に単純だったんだ」
 土方はうなづいていた。高田も納得しているようだった。
「それにしても、もうすぐ夏休みだな。この一件であっという間にだ」
「あっ! 忘れてた」
「私もだ」
 新島の言葉で、二人は我に返った。新島は笑いながら文庫本を開いて読み始めた。
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