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七不思議の七番目、爆発の怪 その参
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「先輩...。他に話しが聞けそうな人物はいるのか?」
「そうですね...。人物じゃなくて団体ならひとつあるのよ。八坂中学校の部活でオカルト研究部と同じくらい奇妙な部活『七不思議研究部』というものよ」
「七不思議研究部って?」
「B棟五階に位置している。我が校の七つの奇妙な事件を解決するための部活だが、今年で創設十五年。しかし、七不思議のひとつも解決できていない」
ヘッポコ七不思議研究部は部員が三人しかいないらしく、文芸部と同じ人数だ。土方も仕方なく着いていくことになった。
「うう。ちょっと、疲れたわね。休もうかしら」
「先輩、あと少しだよ」
新島は土方を支えてB棟五階に向かった。高田は先頭を歩いていた。
「文芸部ですけど...七不思議研究部さんはいますかね?」
「何だね? 今は忙しいんだが?」
「部長さんはいますか?」
「その部長さんがこの俺、富津(ふっつ)だが、何か?」
「そうでしたか、失礼しました。それで、話しがあるんですが...いいですか?」
「駄目なんだよ。今、ある謎を解いている最中なんだから」
「謎、ですか」
「ああ。明日にでもまた来てくれ」
「わかりました」
高田はため息をついて扉を閉めた。待っていた土方と新島に合流して、今の話しをした。
「せっかく来たのに、明日なのね」
「すんませんね。部長。俺が行こうなんて言ったから」
「大丈夫だよ。私が七不思議研究部の話しをしたからよ」
「それより、これからどうするんだ?」
「もうやることもないし六時。私は帰ってもいいと思うけど」
「俺も大丈夫だ」
「俺も」
「じゃあ、今日は家に帰ろうか」
三人は帰路についた。
次の日の放課後。新島は高田と一緒に部室に向かった。
「きたか。遅いぞ」
土方はすでに準備ができていた。
三人で七不思議研究部を訪ねた。
「文芸部部長だが、昨日言っていた謎は解けたのか?」
「まだなんだよ」
富津は首を傾げていた。
「では、富津君。我が文芸部がどんな謎でも解決してあげよう」
「七不思議? 違う違う。もっと重大な謎だ。推理小説好きの朝日という部員がいるんだが、本を読むために休んでいるんだ。朝日は有名作家の作品、特に芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)や太宰治(だざいおさむ)、夏目漱石(なつめそうせき)みたいな奴のは絶対に読まないんだ。だが、休んでまで読んでいる本は夏目漱石の『吾輩は猫である』なんだ。休む前日に部室で『吾輩は猫である』の本を自慢していたんで、もう意味がわからなくてな」
「確かに、不思議だな。その件が解決するまで話しは聞いてもらえないんだな?」
「もちろん」
「じゃあ、その件の解決は文芸部も手伝わせてもらおう」
「いいのか? だったらうちも願ったり叶ったりだよ」
「新島。今の話しでわかったことはあるか」
「もう少しキーワードが欲しいな。推理小説好きの朝日は『吾輩は猫である』を読むために休んだ...。それはなぜか」
新島は円を描くように回ってから、口を開いた。
「『「吾輩は猫である」殺人事件』だ。奥泉光さんの推理小説で、『吾輩は猫である』の小説のその後の話しだ。密室殺人で、この物語を読むには必須ではないが『吾輩は猫である』を読んだ方がいい。つまり、朝日は『「吾輩は猫である」殺人事件』を読むために『吾輩は猫である』を読んでいるんだ」
新島は説明を終えても、話しを続けた。
「文芸部は七不思議の七番目を現在は調べています。先程、あなた方が気になっていたことはこちらが解決したので、七不思議について教えてください」
「わかった。中に入ってくれ。こちらが知っていることは全て話そう」
土方、高田、新島の三人は椅子に座った。富津は急いでインスタントコーヒーを三つのコップに注いで三人に出した。富津ともう一人の部員である市原(いちはら)は三人の正面に座った。
「では、七不思議研究部が知り得た七番目の情報を全て話す。まず、こちらの考えからだ。おそらく、マッチの火が榊原の背中に着いて引火。爆発した原因は『ホットケーキミックス』にある。家庭科教師の榊原は家庭科の授業でホットケーキをつくっている。ホットケーキミックスの粉が背中に付着していてもおかしくない。寒がりの榊原はカイロを背中に貼っていたらしいし、マッチの火でカイロの袋が破けて燃え上がる可能性がある。どちらも調べている最中だが、完璧だろ?」
どうやら、七不思議研究部たちも粉塵爆発について考えていたようだ。
「何でホットケーキミックスが燃えると?」
「粉塵爆発というキーワードで調べてみると、小麦粉やホットケーキミックスが燃えると知ってな。それに、小麦粉は指定可燃物だ」
「なるほど。その考えは間違いだ。確かに小麦粉とホットケーキミックスは燃えるが、粉塵として宙に舞っているときだ。カイロは袋が破けても熱いだけだな」
「そうなのか? だとすると、七不思議研究部の知っている情報は他と変わらないな」
「そうですか」
新島はがっかりした。土方はインスタントコーヒーの入ったコップを口に運んでいた。
「七不思議研究部としては以上だ。市原は何かないのかな?」
「ないな。俺もホットケーキミックスが原因だと考えていたから...違うとするともうお手上げだ」
「一応、参考になった。これで失礼しよう」
それからは何も進展せず、本日は解散となった。
次の日の放課後。新島はポケットから使用済みの使い捨てカイロを取りだした。
「なあ、高田。爆発実験をやる」
「それで解決するのか?」
「ああ」
「なら、ぶちかませ」
「そのつもりだ」
二人は走って文芸部部室に向かった。部室には土方がいて、ソファに座っていた。新島は実験の主旨を説明して、実験を始めた。
「家から酸化銅粉末を持ってきた。結構値の張る物だったよ。そして、アルミニウム粉末。これら二つを混ぜて、一つの混合物をつくる。袋にその混合物と火のついたマッチを入れて、窓から─」
投げた。すると、すぐに空中で大爆発が起こった。
「この爆発は『テルミット反応』という。金属酸化物と金属アルミニウムを混ぜることでできる反応だ。だが、別に酸化銅だけでなくても爆発はする。ポピュラーなもので酸化鉄粉末とアルミニウム粉末を混ぜる奴だ。酸化鉄は言わばサビだな」
新島は酸化鉄粉末とアルミニウム粉末を混ぜて袋に入れて、火の着いたマッチを入れて窓から投げた。すると、また爆発が起こった。
「でも、まさか榊原の背中に酸化鉄粉末とアルミニウム粉末の混合物があったとでも言うのかしら?」
「そのまさかだ」
「!」
「カイロだ。さっきまで俺が使っていたカイロだが、これに火を着けて空中に投げる」
すると、たちまち大爆発が起きた。
「おい、新島。カイロって燃やすと爆発するほど危険なのか?」
「それは私も気になるしところだ」
新島は咳払いをして話し始めた。
「普通のカイロは危険ではないんだ。内容物は『鉄粉』『活性炭(かっせいたん)』『バーミキュライト』『水』『木粉』『塩類』だ。そもそも、カイロが熱を発生させるのは鉄が酸化する時に出る熱を利用している。これを発熱反応という。『水』は鉄と酸化するから、『木粉』や『バーミキュライト』は保水として、『活性炭』は炭素成分が酸化反応を高めて、『塩類』は酸化を進める。袋を開けると鉄が酸素と触れて発熱反応が起こる。つまり、カイロを使い切ると酸化鉄ができる。そのカイロの中にアルミニウム粉末を入っていたとして、そこに火が着いて爆発した。
榊原先生が怒らなかったのは自分が他人を驚かす為にカイロにアルミニウム粉末を入れたからだな」
「なるほど」
三人は後に榊原に今の新島の推理を説明した。すると、榊原の顔が青くなったという。
「そうですね...。人物じゃなくて団体ならひとつあるのよ。八坂中学校の部活でオカルト研究部と同じくらい奇妙な部活『七不思議研究部』というものよ」
「七不思議研究部って?」
「B棟五階に位置している。我が校の七つの奇妙な事件を解決するための部活だが、今年で創設十五年。しかし、七不思議のひとつも解決できていない」
ヘッポコ七不思議研究部は部員が三人しかいないらしく、文芸部と同じ人数だ。土方も仕方なく着いていくことになった。
「うう。ちょっと、疲れたわね。休もうかしら」
「先輩、あと少しだよ」
新島は土方を支えてB棟五階に向かった。高田は先頭を歩いていた。
「文芸部ですけど...七不思議研究部さんはいますかね?」
「何だね? 今は忙しいんだが?」
「部長さんはいますか?」
「その部長さんがこの俺、富津(ふっつ)だが、何か?」
「そうでしたか、失礼しました。それで、話しがあるんですが...いいですか?」
「駄目なんだよ。今、ある謎を解いている最中なんだから」
「謎、ですか」
「ああ。明日にでもまた来てくれ」
「わかりました」
高田はため息をついて扉を閉めた。待っていた土方と新島に合流して、今の話しをした。
「せっかく来たのに、明日なのね」
「すんませんね。部長。俺が行こうなんて言ったから」
「大丈夫だよ。私が七不思議研究部の話しをしたからよ」
「それより、これからどうするんだ?」
「もうやることもないし六時。私は帰ってもいいと思うけど」
「俺も大丈夫だ」
「俺も」
「じゃあ、今日は家に帰ろうか」
三人は帰路についた。
次の日の放課後。新島は高田と一緒に部室に向かった。
「きたか。遅いぞ」
土方はすでに準備ができていた。
三人で七不思議研究部を訪ねた。
「文芸部部長だが、昨日言っていた謎は解けたのか?」
「まだなんだよ」
富津は首を傾げていた。
「では、富津君。我が文芸部がどんな謎でも解決してあげよう」
「七不思議? 違う違う。もっと重大な謎だ。推理小説好きの朝日という部員がいるんだが、本を読むために休んでいるんだ。朝日は有名作家の作品、特に芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)や太宰治(だざいおさむ)、夏目漱石(なつめそうせき)みたいな奴のは絶対に読まないんだ。だが、休んでまで読んでいる本は夏目漱石の『吾輩は猫である』なんだ。休む前日に部室で『吾輩は猫である』の本を自慢していたんで、もう意味がわからなくてな」
「確かに、不思議だな。その件が解決するまで話しは聞いてもらえないんだな?」
「もちろん」
「じゃあ、その件の解決は文芸部も手伝わせてもらおう」
「いいのか? だったらうちも願ったり叶ったりだよ」
「新島。今の話しでわかったことはあるか」
「もう少しキーワードが欲しいな。推理小説好きの朝日は『吾輩は猫である』を読むために休んだ...。それはなぜか」
新島は円を描くように回ってから、口を開いた。
「『「吾輩は猫である」殺人事件』だ。奥泉光さんの推理小説で、『吾輩は猫である』の小説のその後の話しだ。密室殺人で、この物語を読むには必須ではないが『吾輩は猫である』を読んだ方がいい。つまり、朝日は『「吾輩は猫である」殺人事件』を読むために『吾輩は猫である』を読んでいるんだ」
新島は説明を終えても、話しを続けた。
「文芸部は七不思議の七番目を現在は調べています。先程、あなた方が気になっていたことはこちらが解決したので、七不思議について教えてください」
「わかった。中に入ってくれ。こちらが知っていることは全て話そう」
土方、高田、新島の三人は椅子に座った。富津は急いでインスタントコーヒーを三つのコップに注いで三人に出した。富津ともう一人の部員である市原(いちはら)は三人の正面に座った。
「では、七不思議研究部が知り得た七番目の情報を全て話す。まず、こちらの考えからだ。おそらく、マッチの火が榊原の背中に着いて引火。爆発した原因は『ホットケーキミックス』にある。家庭科教師の榊原は家庭科の授業でホットケーキをつくっている。ホットケーキミックスの粉が背中に付着していてもおかしくない。寒がりの榊原はカイロを背中に貼っていたらしいし、マッチの火でカイロの袋が破けて燃え上がる可能性がある。どちらも調べている最中だが、完璧だろ?」
どうやら、七不思議研究部たちも粉塵爆発について考えていたようだ。
「何でホットケーキミックスが燃えると?」
「粉塵爆発というキーワードで調べてみると、小麦粉やホットケーキミックスが燃えると知ってな。それに、小麦粉は指定可燃物だ」
「なるほど。その考えは間違いだ。確かに小麦粉とホットケーキミックスは燃えるが、粉塵として宙に舞っているときだ。カイロは袋が破けても熱いだけだな」
「そうなのか? だとすると、七不思議研究部の知っている情報は他と変わらないな」
「そうですか」
新島はがっかりした。土方はインスタントコーヒーの入ったコップを口に運んでいた。
「七不思議研究部としては以上だ。市原は何かないのかな?」
「ないな。俺もホットケーキミックスが原因だと考えていたから...違うとするともうお手上げだ」
「一応、参考になった。これで失礼しよう」
それからは何も進展せず、本日は解散となった。
次の日の放課後。新島はポケットから使用済みの使い捨てカイロを取りだした。
「なあ、高田。爆発実験をやる」
「それで解決するのか?」
「ああ」
「なら、ぶちかませ」
「そのつもりだ」
二人は走って文芸部部室に向かった。部室には土方がいて、ソファに座っていた。新島は実験の主旨を説明して、実験を始めた。
「家から酸化銅粉末を持ってきた。結構値の張る物だったよ。そして、アルミニウム粉末。これら二つを混ぜて、一つの混合物をつくる。袋にその混合物と火のついたマッチを入れて、窓から─」
投げた。すると、すぐに空中で大爆発が起こった。
「この爆発は『テルミット反応』という。金属酸化物と金属アルミニウムを混ぜることでできる反応だ。だが、別に酸化銅だけでなくても爆発はする。ポピュラーなもので酸化鉄粉末とアルミニウム粉末を混ぜる奴だ。酸化鉄は言わばサビだな」
新島は酸化鉄粉末とアルミニウム粉末を混ぜて袋に入れて、火の着いたマッチを入れて窓から投げた。すると、また爆発が起こった。
「でも、まさか榊原の背中に酸化鉄粉末とアルミニウム粉末の混合物があったとでも言うのかしら?」
「そのまさかだ」
「!」
「カイロだ。さっきまで俺が使っていたカイロだが、これに火を着けて空中に投げる」
すると、たちまち大爆発が起きた。
「おい、新島。カイロって燃やすと爆発するほど危険なのか?」
「それは私も気になるしところだ」
新島は咳払いをして話し始めた。
「普通のカイロは危険ではないんだ。内容物は『鉄粉』『活性炭(かっせいたん)』『バーミキュライト』『水』『木粉』『塩類』だ。そもそも、カイロが熱を発生させるのは鉄が酸化する時に出る熱を利用している。これを発熱反応という。『水』は鉄と酸化するから、『木粉』や『バーミキュライト』は保水として、『活性炭』は炭素成分が酸化反応を高めて、『塩類』は酸化を進める。袋を開けると鉄が酸素と触れて発熱反応が起こる。つまり、カイロを使い切ると酸化鉄ができる。そのカイロの中にアルミニウム粉末を入っていたとして、そこに火が着いて爆発した。
榊原先生が怒らなかったのは自分が他人を驚かす為にカイロにアルミニウム粉末を入れたからだな」
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