日常探偵団

髙橋朔也

文字の大きさ
35 / 59

卒業 その漆

しおりを挟む
 高田も、七不思議の三番目について情報があるようだ。手帳を取りだして、開いてから話し始めた。
「窓ガラスが割れた後、破片は全て内側に落ちるらしい」
「じゃあ」新島が言った。「外側から力が加えられたということか?」
「俺の調べた限りでは、そのようだよ」
「低く小さい音と外側からの力。なんとなくだが、何か閃きそうだ」
 新島は再度思考を凝らしたが、結局閃かなかった。
 その後も三人は話し合い、八時を回った頃に高田と土方は新島の家を出た。

 さて。色々とぶっ飛ばして話しが進み、現在は卒業式なわけだ。決して広いとは言えない体育館で、始められた。長々と校長がつまらない話しを続けるのは、毎回恒例の生徒が嫌う行事なわけだが、今はそのつまらない行事が行われている真っ最中だった。
「──であるから、生徒皆さんがちゃんと校則を守る必要があるのです」
 などと、校長の肩書きを持つ白髪の初老がほざいていた。
 生徒は、校長の話しの最中は立たされることはないが飽き飽きしている。次に、卒業生の合唱が始まり、在校生が退屈になる。そんな時間が続いていると、体育館の窓ガラスが一つ、割れた。破片が外に飛び散ったようだから、内側から力がかけられたようだ。
「「キャー」」
 生徒の、特に女子がそう叫んだ。それから、恐怖が伝染するかたちで、体育館内はプチパニックになった。教職員数人は原因を解明して生徒を静めるために急いで、割れた窓ガラスの周辺に近づいた。割れた窓ガラスは二階の高さに取り付けられた細い通路、ギャラリーの位置にある。はしごでギャラリーに上がるのだが、教職員がはしごからギャラリーに向かう途中で別の窓ガラスが割れた。生徒がまた騒ぎ立てる。プチパニックを超えて、パニックと呼べるレベルになった。この状態で卒業式は続けられないだろう。教頭は焦りつつも、生徒を教室に帰すことを進めた。だが、それは無意味だ。すでに、体育館の窓ガラスは全て割れてしまったのだ。

 卒業式は延期された。窓ガラスを修復し、破片を回収するためだろう。来週の金曜日に卒業式が移った。卒業式延期ですぐに
放課後になり、高田は新島の席に向かった。
「七不思議の三番目が起こったな」
 高田の声に新島は反応した。「だな」
「急いで部室に行って、急遽三番目を解決する必要がある。そこで、新島の頭脳が活躍するわけだ」
「俺任せかよ」
「しょうがねえだろ? ガリが無いんだ」
「また、しょうもない洒落を......」
「こういうのは得意なんだ」
「そうか。よかったな」
 新島はカバンを持って、立ち上がった。
「部室行くぞ」
「新島もやる気だな」
「そりゃ、どーも」
 二人は階段を上がって、部室に向かった。部室には土方がいると、二人は考えていたが思いのほかいなかった。それから、扉が開く音がして振り返ると土方が入ってきた。
「七不思議の三番目を解決しよう」土方は息を切らせながら言った。
「やっぱり、卒業式での窓ガラス破損事件は解決しないとな。だが、七不思議の三番目の高田の情報と、今回の窓ガラス破損は少し違う。破片が飛び散る方向だ」
「確かに、逆っすね」
「そして、低く小さい音もしなかった。つまり、以前の七不思議の三番目と今回の窓ガラスを割ったトリックは違うというわけだ」
「なるほどっすね。だけど、だとしたら犯人は誰でしょう?」
「だよな......」新島は眉間に親指を当てた。
「私の意見だが、犯人を探すよりトリック解明の方が優先すべきだ」
「それもそうか。だったらまず、卒業式での件から解明しようか。
 内側から力が加えられたから、おそらく体育館の窓ガラスに何らかの仕掛けがあった可能性がある。例えば規模の小さい時限爆弾、とか。だが、爆発音はしなかった。別の方法があるのかわからんが、少なからず窓ガラスに細工はしただろう」
「細工って?」
「それがわかったら苦労はしないだろ」
「だよな......」
 新島は椅子に腰をおろした。高田は本棚に近づき、板を外して漫画を取りだした。
「高田、漫画読むのか?」土方は腰に手を当てながら言った。
「あ、気晴らしに読むだけっすよ......?」
「そうか」
 土方は毛布に包まって、ソファに座った。高田は漫画を開いて読み始めた。
 少しして、新島が声を上げた。
「鈴木真美先輩に聞けばいいんじゃないか!」
「なるほど」

 鈴木は軽音楽部で、作曲を任されている。しかし、最近はスランプでろくな曲が出来ない。七不思議も、八坂中学校に言及できぬまま卒業だ。自分の人生を振り返ってため息をついた。それから、五時に家に帰るために正門を出ようとしたら、見覚えのある顔が三つあった。文芸部の三人だ。
「鈴木先輩。七不思議の三番目について聞きたいことがあります」
「新島......。それに土方、高田か」
「七不思議の三番目。あなたは卒業式の事件のトリックと七不思議の三番目のトリックが違うと気づいてますよね?」
 そのことか。鈴木は安堵のため息をもらした。
「もちろん、私もちゃんとその点は気づいているわ」
「なら、話しが早そうですね。情報共有しましょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

【完結】限界離婚

仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
もう限界だ。 「離婚してください」 丸田広一は妻にそう告げた。妻は激怒し、言い争いになる。広一は頭に鈍器で殴られたような衝撃を受け床に倒れ伏せた。振り返るとそこには妻がいた。広一はそのまま意識を失った。 丸田広一の息子の嫁、鈴奈はもう耐える事ができなかった。体調を崩し病院へ行く。医師に告げられた言葉にショックを受け、夫に連絡しようとするが、SNSが既読にならず、電話も繋がらない。もう諦め離婚届だけを置いて実家に帰った。 丸田広一の妻、京香は手足の違和感を感じていた。自分が家族から嫌われている事は知っている。高齢な姑、離婚を仄めかす夫、可愛くない嫁、誰かが私を害そうとしている気がする。渡されていた離婚届に署名をして役所に提出した。もう私は自由の身だ。あの人の所へ向かった。 広一の母、文は途方にくれた。大事な物が無くなっていく。今日は通帳が無くなった。いくら探しても見つからない。まさかとは思うが最近様子が可笑しいあの女が盗んだのかもしれない。衰えた体を動かして、家の中を探し回った。 出張からかえってきた広一の息子、良は家につき愕然とした。信じていた安心できる場所がガラガラと崩れ落ちる。後始末に追われ、いなくなった妻の元へ向かう。妻に頭を下げて別れたくないと懇願した。 平和だった丸田家に襲い掛かる不幸。どんどん倒れる家族。 信じていた家族の形が崩れていく。 倒されたのは誰のせい? 倒れた達磨は再び起き上がる。 丸田家の危機と、それを克服するまでの物語。 丸田 広一…65歳。定年退職したばかり。 丸田 京香…66歳。半年前に退職した。 丸田 良…38歳。営業職。出張が多い。 丸田 鈴奈…33歳。 丸田 勇太…3歳。 丸田 文…82歳。専業主婦。 麗奈…広一が定期的に会っている女。 ※7月13日初回完結 ※7月14日深夜 忘れたはずの思い~エピローグまでを加筆修正して投稿しました。話数も増やしています。 ※7月15日【裏】登場人物紹介追記しました。 2026年1月ジャンルを大衆文学→ミステリーに変更しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...