日常探偵団

髙橋朔也

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七不思議の四番目、漏水の怪 その肆

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「改めて見ると、貯水タンクも意外と大きいな」
「で? どうだ、高田?」
「ああ、うん。ホースがつなげそうな部分はないぞ」
「やっぱりか。じゃあ、帰ろう」
「早いな」
「いや、先輩は多分すでに俺の家に入っているはずだ。急ごう」
「まあまあ。そう急がすなよ」
 高田は策を乗り越えて、体育館連絡通路に戻ってきた。
「カバン持ってくれば良かったよ」
「カバンあったら、今みたいに高田は策を乗り越えられないだろ」
「それもそうだな」
 部室に向かって歩き出すと、部活動終了のチャイムが響いた。時間が思った以上にかかったから、新島は眉をひそめた。
 戸締まりをしっかりすると、部室の扉を施錠した。鍵はちゃんと職員室に戻す。
 正門を出て右に曲がり、徒歩数分。マンションが見えてくる。入り口に人影がぼんやりとあったので、新島は目を凝らした。
 人影はビニール袋を持ち、制服姿。女性。ビニール袋には缶が入っている。彼女とは土方だった。
「よお! 新島」
「先輩。鍵は持っているでしょ? 家に入れなかったのか?」
「四人を待っていたんだ。新島の家はある程度広いだろ?」
「ああ......」
「広いから、あそこで十分か二十分待つと寂しくなるんだ」
「静寂って、長いとうるさく感じるからな」
「言い得て妙だな」
「そうか?」
 新島はカバンを開けて、自宅の鍵を取りだした。その鍵をロビーのオートロックシステムの鍵穴に差し込んだ。
「先輩がいたらテンキーで部屋番号打ち込めばいいだけだったんだが......」
「新島。私に文句があるのか?」
「あっ......文句、ないです......」
「よろしい」
 自動ドアをくぐり、エレベーターに乗りこんだ。二階のボタンを押して、扉が閉まる。扉が開くと、二階に着いている。縄文人ならびっくりだ。
 エレベーターを降りて、左に曲がり突き当たりまで進むと206号室がある。鍵で解錠すると、中に入る。靴を脱いだ。
「イチゴ、元気だな」高田は靴を脱ぎながら言った。
「こいつ、俺の家に来てからすでに二年は経ったんだ。元気だろ? イチゴは縁日で取ったんだがピンピンしてるんだ」
「そういえば、金魚すくいで一匹しか取れなかったのか?」
「二匹だ。イチゴともう一匹いた。黒色で腹が大きい。八幡(はちまん)っていう名前だった。だが、二週間程度で死んでしまったんだ」
「八幡? なんで名前が八幡なんだ?」
「金魚すくいがあったのが、なんちゃらっていう八幡神社だったんだよ」
「そうなのか」
「ちなみに補足すると、金魚すくいで一匹もすくえなかった。だが、その金魚すくいでは、すくえなかった人は二匹自由に選んで持って帰れたんだ」
「それは酷いな」
「かなりすくえなかったよ」
 五人が靴を脱ぐと、新島は明かりを付けた。リビングにカバンを置くと、コップを五つ出して紅茶の粉末清涼飲料を入れてお湯を注いだ。
「たまには、会議中に熱い飲み物も飲みたいだろ? いつも冷たいコーヒーってのもね」
「なら、私が買ってきた缶コーヒーはどうする?」
「一応、冷蔵庫に入れよう。飲みたい人は飲むことにする」
「そうしよう」
 新島は土方から缶コーヒーを五つ受け取って、冷蔵庫に入れた。
 新島がリビングの床に座ると、他の四人も円を描くように床に腰を下ろした。
「まず、七不思議の四番目の進捗情報を私に教えてくれ」
「わかった。高田、お前が話せ」
「OK」高田は立ち上がって、手帳とボールペンを取りだした。「まず、実際に七不思議の四番目が起こったんす」
「マジ?」
「マジっすね。俺がちゃんと見た。で、兼島とかいう奴の依頼でテニスコートをスポンジで綺麗にした。動機は暫定で、テニスコートでのテニス部の練習試合を阻止するため。相手は強豪校っす。
 プールの水をどうやってテニスコートまで漏水させるか。最初に水を抜く機械を探したんですが、それらしいことは見つからず。俺の考えたトリックも水道の都合上無理だったっす」
「高田が考えたトリックはどんなものだったんだ?」
「プールの栓を外して、水を抜くっす。そして、テニスコート近くの水道の蛇口から水を流して、プールから水が漏れたと思わせるトリック」
「なるほど。面白いトリックだな」
「だが」新島は紅茶を口に運んだ。「その面白いトリックも、夜は水道の水が止められているから無理なんだ。だから、どんなトリックを使ったのか考えていた途中だ」
「難しいことを言うね」
「当たり前だ。あと、バケツでプールの水を外に出したってのは無しだ。四人が6リットルバケツを持って、一回で24リットルのプールの水が抜ける。で、約17582回で一回にかかる時間を0.5分にする。すると、146時間31分かかるからだ」
「随分ややこしいな」
「簡単に言うと、時間がかかり過ぎるんだ」
「なら、怪奇現象で片付けるか」
「それは駄目だ。鈴木先輩は七つ全て解いたんだ。だから、七つ全てに納得のいく結論がつくということだ」
「それもそうか......。だったら鈴木に聞こうか?」
「それも駄目だから苦労しているんだ」
「やたら注文が多いな」
「料理店か? 小学校の夏休みの読書感想文で書いたな」
「全然違う。脱線しているじゃないか」
 新島はニヤけながら、紅茶を飲み込んだ。そして、プールの水を外に移すトリックに考えを巡らせた。
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