11 / 18
11
おはよう世界。
こんにちは地獄。
そんな挨拶がぴったりな現状に、私は今ノートを片手に教会を出ていた。
現在の日付は、変わらず私の誕生日当日。時刻はお昼前。
案の定また最初のループに戻ってしまった私は、食事もそこそこにノートと鉛筆片手に教会を飛び出した。
え? シスターのイビリという名のお仕事? 神父様に「誕生日プレゼントはいらないので今日一日お仕事お休みにさせてください」って許可貰ったから大丈夫。文句は言わせない。
「っと……ついた」
がさがさと木をかき分けてたどり着いたのは、海に面した崖の上だ。
場所はちょうど、前回私が死んだ洗濯物を干す、裏庭の奥。
鬱蒼とした森を通り抜けると、この場所にたどり着く。
「隠し事をするには最適だもんね、ここ……」
この教会の場所は、町はずれの小高い丘の上に位置する。
そしてその裏には、森と海に面する崖があるのだ。
割と高い崖になっているここは、とても見晴らしがいいのと同時に、とても危ない場所でもある。
なんてったて海の上に位置する崖。貧乏教会に手すりやら柵を設置する余裕があるわけもなく、子供たちがついうっかり足を滑らしたりしたら……想像したくもない。
一瞬浮かんだ光景に、思わず身震いしながら、崖っぷちから一番遠い森の終わり際の木陰に腰を下ろした。
だって今の私、死神に取りつかれてるもの。
どこにでも死亡フラグが転がってるんだもの。
用心するに越したことはないよね。
兎にも角にも、そんな危険な場所をあの優しい神父様が立ち入りを許すわけもなく、ここは子供たちは完全NGの領域と化している。
立ち入るとあの菩薩みたいな基本優しい神父様が般若のごとく怒るので、子供たちは絶っっっっっ対ここには来ない。
フリージア神父、怒ると死ぬほど怖いから……。
ちなみに私たち大人組はある程度黙認されているので、たまにイキシアやザンカがいることもあるけど、今日はレリアがやってくる日なので大丈夫。
「よし」
一応周りを見回して、誰もいないことを確認して、ノートを開いた。
一つずつ、状況を整理しようじゃないか。
とりあえず私がしなきゃいけないことは……、と考え、箇条書きに書き出していく。
その結果が、これ。
・ボロ小屋の撤去
・各種死亡フラグの回避
・レリアとの交友
・各ルートのバッドエンド回避←new!
「……いや多すぎでしょ」
ざっとまとめただけでこれ。
細かく纏めたらもっと増えるでしょこれ。
しかもこれに自分の仕事とシスターからの追加雑務、子供たちのお守りもしなきゃいけないの? なにそれブラック。
前世の連勤地獄が頭の中を走馬灯のように駆け抜けていく。
転生してまで社畜ってそんな馬鹿な。嘘だと言ってよ神様……。
唐突な社畜モードに一気に目からハイライトが消えた気がする。
だが、いくら絶望してもタスクは減らない。時間も止まらないし助けも来ない。わたし、よく、しってる。
ボロ小屋を撤去しつつ、死亡フラグを回避していくのは慣れた。
多分今回も問題ないだろう。
「……問題は、下の二つだよね……」
レリアとの交友と、バッドエンド回避。
これが目下の課題と言えるだろう。
なんてったて前回はバッドエンドルートに突っ走った結果の死だ。
まさか「ヒロイン」が選択肢ミスるなんて考えてなかった。
こういうのって、ノーマルエンドかメインヒーローのハッピーエンドにたどり着くもんだと思ってたんだけどね。世界は甘くなかったね。
過労死まっしぐらな仕事量。
それも一度こなせば終わる類のものじゃなく、永遠と続く系のモノばかり。
ぶっちゃけ、とても気が重い。
「……けど」
やらない、なんて選択肢は、ない。
ぐっと手を握り、目を閉じる。
思い出されるのは、前回の死に際。
レリアの言葉を聞いた瞬間の、息が止まるような感覚。
イキシアめがけて振り下ろされる、白刃。
脳裏に蘇る、イキシアの亡骸を抱えるレリアのスチル。
一瞬のことだったのに、全部全部、まるでコマ送りの映像のように鮮明に覚えてる。
私は、何故か死んでもループする。
誕生日のこの日へと、さかのぼる。
──けど、彼らは……イキシアは?
彼らが死んで、世界が戻らなくて、そのままだったら?
……考えるだけで、氷水を頭の先から浴びたような感覚になる。
それだけは、避けなければいけない。
そう、決意を新たに、ノートを閉じて立ち上がった。
のが、三回前のループの初日。
ええ、死にましたよ。言うまでもなく。
ルートを知ってるからといってレリアの行動や心情、イキシアたちの選択を全て把握している訳もない。
どこぞの王子やヒーローみたく高度な教育を受けたわけでも才能があるわけでもない一介の小娘には出来る範囲なんぞ限られてるって話だ。
いや、ほんと前世で読んでた小説のヒロインたちすごいと思う。
よく頭パンクしないよね。私は無理だった。
そんな泣き言を言いながらも、慣れるより慣れろという言葉は偉大なもんで、冬の直前──カラン王子の登場までは難なく生き延びられるようにはなっていたんだけど。
これがまあ大変で。
レリアはよくバッドエンドルートに進みたがるし、カラン王子はストーリー上仕方ないけど、しょっちゅう私を殺しにかかってくるし。
四苦八苦しつつもなんとか色んなフラグを叩き追っていた今だってさ?
「すいませんねぇ、お嬢さんに恨みはないんですけど」
運が悪かったと諦めて、さくっと成仏してくださいな。
なんて言ってのける、茶髪にピンクの瞳が特徴的なイケメン。
カラン王子の側近、プラムに殺されそうになってるしね!!
こんにちは地獄。
そんな挨拶がぴったりな現状に、私は今ノートを片手に教会を出ていた。
現在の日付は、変わらず私の誕生日当日。時刻はお昼前。
案の定また最初のループに戻ってしまった私は、食事もそこそこにノートと鉛筆片手に教会を飛び出した。
え? シスターのイビリという名のお仕事? 神父様に「誕生日プレゼントはいらないので今日一日お仕事お休みにさせてください」って許可貰ったから大丈夫。文句は言わせない。
「っと……ついた」
がさがさと木をかき分けてたどり着いたのは、海に面した崖の上だ。
場所はちょうど、前回私が死んだ洗濯物を干す、裏庭の奥。
鬱蒼とした森を通り抜けると、この場所にたどり着く。
「隠し事をするには最適だもんね、ここ……」
この教会の場所は、町はずれの小高い丘の上に位置する。
そしてその裏には、森と海に面する崖があるのだ。
割と高い崖になっているここは、とても見晴らしがいいのと同時に、とても危ない場所でもある。
なんてったて海の上に位置する崖。貧乏教会に手すりやら柵を設置する余裕があるわけもなく、子供たちがついうっかり足を滑らしたりしたら……想像したくもない。
一瞬浮かんだ光景に、思わず身震いしながら、崖っぷちから一番遠い森の終わり際の木陰に腰を下ろした。
だって今の私、死神に取りつかれてるもの。
どこにでも死亡フラグが転がってるんだもの。
用心するに越したことはないよね。
兎にも角にも、そんな危険な場所をあの優しい神父様が立ち入りを許すわけもなく、ここは子供たちは完全NGの領域と化している。
立ち入るとあの菩薩みたいな基本優しい神父様が般若のごとく怒るので、子供たちは絶っっっっっ対ここには来ない。
フリージア神父、怒ると死ぬほど怖いから……。
ちなみに私たち大人組はある程度黙認されているので、たまにイキシアやザンカがいることもあるけど、今日はレリアがやってくる日なので大丈夫。
「よし」
一応周りを見回して、誰もいないことを確認して、ノートを開いた。
一つずつ、状況を整理しようじゃないか。
とりあえず私がしなきゃいけないことは……、と考え、箇条書きに書き出していく。
その結果が、これ。
・ボロ小屋の撤去
・各種死亡フラグの回避
・レリアとの交友
・各ルートのバッドエンド回避←new!
「……いや多すぎでしょ」
ざっとまとめただけでこれ。
細かく纏めたらもっと増えるでしょこれ。
しかもこれに自分の仕事とシスターからの追加雑務、子供たちのお守りもしなきゃいけないの? なにそれブラック。
前世の連勤地獄が頭の中を走馬灯のように駆け抜けていく。
転生してまで社畜ってそんな馬鹿な。嘘だと言ってよ神様……。
唐突な社畜モードに一気に目からハイライトが消えた気がする。
だが、いくら絶望してもタスクは減らない。時間も止まらないし助けも来ない。わたし、よく、しってる。
ボロ小屋を撤去しつつ、死亡フラグを回避していくのは慣れた。
多分今回も問題ないだろう。
「……問題は、下の二つだよね……」
レリアとの交友と、バッドエンド回避。
これが目下の課題と言えるだろう。
なんてったて前回はバッドエンドルートに突っ走った結果の死だ。
まさか「ヒロイン」が選択肢ミスるなんて考えてなかった。
こういうのって、ノーマルエンドかメインヒーローのハッピーエンドにたどり着くもんだと思ってたんだけどね。世界は甘くなかったね。
過労死まっしぐらな仕事量。
それも一度こなせば終わる類のものじゃなく、永遠と続く系のモノばかり。
ぶっちゃけ、とても気が重い。
「……けど」
やらない、なんて選択肢は、ない。
ぐっと手を握り、目を閉じる。
思い出されるのは、前回の死に際。
レリアの言葉を聞いた瞬間の、息が止まるような感覚。
イキシアめがけて振り下ろされる、白刃。
脳裏に蘇る、イキシアの亡骸を抱えるレリアのスチル。
一瞬のことだったのに、全部全部、まるでコマ送りの映像のように鮮明に覚えてる。
私は、何故か死んでもループする。
誕生日のこの日へと、さかのぼる。
──けど、彼らは……イキシアは?
彼らが死んで、世界が戻らなくて、そのままだったら?
……考えるだけで、氷水を頭の先から浴びたような感覚になる。
それだけは、避けなければいけない。
そう、決意を新たに、ノートを閉じて立ち上がった。
のが、三回前のループの初日。
ええ、死にましたよ。言うまでもなく。
ルートを知ってるからといってレリアの行動や心情、イキシアたちの選択を全て把握している訳もない。
どこぞの王子やヒーローみたく高度な教育を受けたわけでも才能があるわけでもない一介の小娘には出来る範囲なんぞ限られてるって話だ。
いや、ほんと前世で読んでた小説のヒロインたちすごいと思う。
よく頭パンクしないよね。私は無理だった。
そんな泣き言を言いながらも、慣れるより慣れろという言葉は偉大なもんで、冬の直前──カラン王子の登場までは難なく生き延びられるようにはなっていたんだけど。
これがまあ大変で。
レリアはよくバッドエンドルートに進みたがるし、カラン王子はストーリー上仕方ないけど、しょっちゅう私を殺しにかかってくるし。
四苦八苦しつつもなんとか色んなフラグを叩き追っていた今だってさ?
「すいませんねぇ、お嬢さんに恨みはないんですけど」
運が悪かったと諦めて、さくっと成仏してくださいな。
なんて言ってのける、茶髪にピンクの瞳が特徴的なイケメン。
カラン王子の側近、プラムに殺されそうになってるしね!!
あなたにおすすめの小説
【完結】祈りの果て、君を想う
とっくり
恋愛
華やかな美貌を持つ妹・ミレイア。
静かに咲く野花のような癒しを湛える姉・リリエル。
騎士の青年・ラズは、二人の姉妹の間で揺れる心に気づかぬまま、運命の選択を迫られていく。
そして、修道院に身を置いたリリエルの前に現れたのは、
ひょうひょうとした元軍人の旅人──実は王族の血を引く男・ユリアン。
愛するとは、選ばれることか。選ぶことか。
沈黙と祈りの果てに、誰の想いが届くのか。
運命ではなく、想いで人を愛するとき。
その愛は、誰のもとに届くのか──
※短編から長編に変更いたしました。
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
悪女は愛より老後を望む
きゃる
恋愛
――悪女の夢は、縁側でひなたぼっこをしながらお茶をすすること!
もう何度目だろう? いろんな国や時代に転生を繰り返す私は、今は伯爵令嬢のミレディアとして生きている。でも、どの世界にいてもいつも若いうちに亡くなってしまって、老後がおくれない。その理由は、一番初めの人生のせいだ。貧乏だった私は、言葉巧みに何人もの男性を騙していた。たぶんその中の一人……もしくは全員の恨みを買ったため、転生を続けているんだと思う。生まれ変わっても心からの愛を告げられると、その夜に心臓が止まってしまうのがお約束。
だから私は今度こそ、恋愛とは縁のない生活をしようと心に決めていた。行き遅れまであと一年! 領地の片隅で、隠居生活をするのもいいわね?
そう考えて屋敷に引きこもっていたのに、ある日双子の王子の誕生を祝う舞踏会の招待状が届く。参加が義務付けられているけれど、地味な姿で壁に貼り付いているから……大丈夫よね?
*小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
【完結】時計台の約束
とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。
それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。
孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。
偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。
それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。
中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。
※短編から長編に変更いたしました。
【完結】この地獄のような楽園に祝福を
おもち。
恋愛
いらないわたしは、決して物語に出てくるようなお姫様にはなれない。
だって知っているから。わたしは生まれるべき存在ではなかったのだと……
「必ず迎えに来るよ」
そんなわたしに、唯一親切にしてくれた彼が紡いだ……たった一つの幸せな嘘。
でもその幸せな夢さえあれば、どんな辛い事にも耐えられると思ってた。
ねぇ、フィル……わたし貴方に会いたい。
フィル、貴方と共に生きたいの。
※子どもに手を上げる大人が出てきます。読まれる際はご注意下さい、無理な方はブラウザバックでお願いします。
※この作品は作者独自の設定が出てきますので何卒ご了承ください。
※本編+おまけ数話。
【完結】どくはく
春風由実
恋愛
捨てたつもりが捨てられてしまった家族たちは語る。
あなたのためだったの。
そんなつもりはなかった。
だってみんながそう言うから。
言ってくれたら良かったのに。
話せば分かる。
あなたも覚えているでしょう?
好き勝手なことを言うのね。
それなら私も語るわ。
私も語っていいだろうか?
君が大好きだ。
※2025.09.22完結
※小説家になろうにも掲載中です。