【完結済】999本のひまわりを君に

こゆき

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プロローグ

 青空の下で、君が笑う。

 春の花のような、木漏れ日のような、大好きな笑顔で。

 君の瞳によく似た、大輪のおひさま色の花が咲き誇るそこ。
 夏の日差しは眩しくて、麦わら帽子をかぶる君の肌が光って見える。

 俺は、はしゃぐ君の手を、繫いでいる。

 もう二度と、離さないように。
 もう二度と、喪わないように。

 ……? この子を喪ったことなんてないはずなのに、なぜ『二度と』なんて思うんだ?

 ふとした疑問は、彼女のキラキラとした声にすぐ霧散した。

 楽しそうに俺の手を引く彼女の手は小さくて、それを言えば「イキシアが大きくなったんだよ」なんて、少しむくれたように言う。

 そんな些細なことすら、愛おしい。

 思わず笑って、額にキスを落とす。
 あいさつと変わらないことなのに、君はすぐに真っ赤になってしまう。

 ああ、かわいい。
 好きだと、心からそう思う。

 そうだ、君に伝えたいことがあるんだ。
 ずっと言えなかったことがあるんだ。

 ああ、やっと言える。

 振り向いた彼女の手を両手で包み込み、瞳を合わせる。

 真っすぐに俺の目を見返す彼女が、泣きたいくらいに愛おしくて。

 ラーレ、ラーレ。
俺は、君が、君のことが──……


 ──リンゴーン。


 ……ああ、また、鐘の音が聞こえる。
 鳴らないでくれ。響かないでくれ。

 重厚で厳かなそれは、徐々に俺の意識を遠くに運んでいく。

 夏の日差しが、大輪の花が、──彼女が。
 少しずつ、けれど確実に遠くになっていく。

 どれだけ手を伸ばしても、どれだけ叫んでも。
 彼女にこの手は届かない。

 何度、俺はこの音を聞いたのだろう。
 初めてのような気もするし、気が遠くなるほど聞いた気もする。

 けど、ただ一つ、はっきりとしていることがある。


 この音は、俺から全てを……彼女を、奪うものだということ。



 ──これは、彼女を取り戻すための物語。
感想 4

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