赤色の伝説

DREAM MAKER

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砂漠の遺跡(上)

11。

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僕は闘技場の看板のところで見たことある人物を見つけた。
「ウェルザ・・・さん?」
僕は人混みから外れてその人物の元へ駆け寄った。
その人物は僕らに気付き、僕らに近づいてくる。
「また会いましたね、ロムル」
その紅い綺麗な髪を軽くなびかせ微笑む。
大神官ウェルザ。
この街では知らない人はいないと言われるほど有名で皆から敬愛されている。神官服を着ているので、彼は人混みの中でも目立つ。ので、闘技場に来た人は皆彼に一礼してから通り過ぎる。
「ロムル、この方は?」
シェルが自分より少し背の高いウェルザを見る。
「ウェルザだよ。神官なの。ウェルザ、こっちはシェル」
「初めまして、シェル」
一礼して彼はシェルに微笑む。
「こちらこそ初めまして」
シェルも一礼する。ところで・・・
「ねえ、ウェルザ。どうしてこんなところに?」
僕が尋ねるとウェルザは少し顔を曇らせた。
「闘技場に入ってみれば分かります。一緒に行きましょう」


「誰だ?お前らは。裏口から入ってはいかん」
表は込み合っているので裏口から入ろうとウェルザが案内してくれた、が兵士に止められてしまった。
「すみません。急いでいるもので。私はウェルザという者です。こちらは私の友人。どうかお通し下さい」
「駄目だ!よりにもよってウェルザ様の名を語る不届きものめ!そこにいろ!いいな?今上官を連れてきて処分してもらうから」
そう言うと兵士は走り去ってしまった。
あの兵士はどうやらウェルザの顔までは知らないらしい。偽物か何かと思われたらしい。
「どうしよう」
「平気ですよ」
本当かなあ・・・。

しばらくすると少し太り気味の男が兵士に連れられてやってきた。これが上官だろう。
「こいつです」
兵士に指さされたウェルザを上官である男はまじまじと見る。
整った端麗な顔や、流れるような長く綺麗な髪を。
上官は顔を赤らめながら悩んでいたが、ふと。
「すみませんが、お名前は・・・」
「ウェルザといいます」
ウェルザはにっこりと笑う。
途端に上官は我に返ったように大きく目を見開く。
「ウェルザ様っ!!!」
上官は慌ててウェルザに剣を突き立てていた兵士を叱り、自分は頭を深々と下げた。
「申し訳ありませんっ!!どうぞお通り下さい!!」
どうやらウェルザは顔パスしていいらしい。


闘技場は円形で中央が戦う場所。そこから三段くらいに分かれて徐々に高くなっていき、そこが客席になっている。
闘技場は人々の熱気と歓声で溢れていた。
僕らは三段ある客席のうちの一番上の客席の後ろに立っていた。満席でもう座るところがないからだ。
「ほら、見て下さい。これから始まる二人のうちの一人」
ウェルザはそっと中央を指さす。
中央では2人がそれぞれ武器を持って向かい合っている。
一人はかなりの大男で2メートルは軽くありそうな体格だった。筋肉質で片手には巨大な斧を持っていた。が、顔はあまり良い方とは言えなかった。ということは、女子の黄色い歓声はもう一人の方に向けられているんだろう。
もう一人は対照的に細身。大男より背も低い。頭にはターバンを巻いていたが・・・。

ただその男は見覚えがあった。

「ウォーク!?」
僕は唖然とした。そしてシェルも。ウェルザは片手を顔に当て、ため息をついてうつむいた。
「私は止めたんですけどね」
止められなかったのだろう。ウォークの顔はいかにも楽し気だ。
シェルは笑い出し、
「いいじゃないですか?楽しそうですし」
僕は半ば呆れていた。
そんなことをしているうちに試合が始まった。が、試合は一瞬で終わった。
試合が始まった途端、ウォークは相手の懐に飛び込んでいき、剣の柄で急所を叩いたらしい。
相手の男は気絶してしまっていた。
周りから一気に歓声が上がる。その内容を聞いているとウォークはどうやら優勝らしい。


「まったくもう!少し目を離したスキに。あんたは子供ですか!!」
僕は正面にいるウォークに叱る。が、当の本人は上機嫌で僕の言っている事は右の耳から左の耳へ通り抜けてしまう。
一応聞いている事は聞いているのだが。
「ごめんごめん。でも旅費も稼げたし。その魔法使いがいるクロスダ王国の往復は困らないぜ」
ウォークが顔をほころばせながら言う。
「一体いくらいただいたんですか?」
横で聞いていたシェルが問う。
「え・・・と。12、3人は抜いたから・・・そうだな。しめて3万セトラか」
「3万セトラ!?」
3万セトラもあれば、一等地に立派なお屋敷が建てられる。ここからクロスダの往復なんて100セトラあれば十分だろう。
だが、1セトラは金貨だ。どうやっても持ち歩けない。
「そんなにあっても仕方ないよ」
「ああ、だからウェルザに預かってもらうことにした」
「ウェルザ・・・さん・・・・、・・・・・・といえばっ!!ウォーク!!!」
僕はまた別の事を思い出していた。
「うわっ!何だロムル」
「ウェルザにも迷惑かけただろ!」
そうだ。彼は闘技場の外で置いてけぼりをくらっていた。だが彼はそんな事はもう気にしてないように別れる時は笑顔だった。その笑顔が反対に僕らに罪悪感を感じさせた。
約1名を除いて。
それは勿論ウォーク。
僕らはウォークが賞金をもらった後、ウォークとウェルザが2、3言葉を交わし、それから彼と別れて宿屋に戻ってきたのだ。
ウェルザは大聖堂へ。エリエラの事を思い出したらしく、慌てて帰って行った。
エリエラは僕の兄、ラクナスがウェルザに預けた子供だ。もう両親は他界してしまっているのでウェルザが育て親になっていた。
「うーん。そ・・・うだ・・・なー」
「自覚しなさい!」
「ロムル、落ち着いて」
吠えだした僕をシェルがなだめる。ウォークはびっくりして2,3歩後ずさる。
「分かった分かった。今度会ったら謝る、謝るからな?」
「今度じゃなくて今!」
「そんな無茶な」
「無茶じゃ・・・」
その時、
バン!
凄い音を立ててドアが開かれた。その先には青ざめた顔をしたウェルザが立っていた。
ウェルザは急いで来たらしく、肩で息をしている。
「ウェルザ・・・さん?ほらウォーク、無茶じゃないよ?」
「そーいう問題か?まあいいけど・・・。ウェルザ、さっきはすまんな」
ウォークの一言を聞いた途端、ウェルザはつかつかとウォークに足早に歩み寄り、いきなりウォークの襟首を掴んでがくがく揺らしながら、
「あなたですか!?人を心配させてっ!!」
ウェルザは混乱していた、ように見えた。いつも冷静なウェルザがこんな事をするなんて・・・・。あの時は笑顔だったけどきっとすごく怒っていたに違いない。
ウォークはかすかに声を出して、
「ウェ・・ル・・ザ・・。落ち着け・・・」
「これが落ち着いていられますかーーーーーっ!!!」
ウェルザの乱れっぷりに僕達はしばし唖然としていたが、ウォークが死にそうなので、とりあえずウェルザを止めることにしてみた。
「ウェルザさん、落ち着いて。何かあったんですか?」
それを聞いた途端、ウェルザはぴたりと動きを止める。はっと我に返ったような顔をして、
「あなたたちじゃ・・・ないんですか?」
「え?」
ウォークは激しく咳き込んでいたが、やがて落ち着いて、
「一体何があったんだ?ウェルザ」
僕達が違うという事を知ると、絶望したような感じで、両手で顔を覆いうずくまる。
そして絞り出したような声を出し、呟く。
「エリエラが攫われたらしいんです」


ウェルザが言うには、僕達と別れて急いで聖堂に戻ったらしい。するといつもエリエラの世話をしてくれている女神官達が変に慌ただしい。
それで理由を聞くと・・・。
「ってことか・・・」
「お願いです。どうかエリエラを探して下さい」
ウェルザは悲嘆にくれた顔で訴える。にしてもこんな広い街中、どこを探せば良いのやら・・・。
ラクナスなら匂いとかですぐ分かりそうだが、ウェルザの前で出すわけにはいかないだろう。そんな事を考えていたらシェルが立ち上がり、
「手分けして探しましょう。一刻も早く見つけないと」
その時、僕の服の中で大人しくしていたラクナスがいきなり飛び出した。
「うわっ馬鹿っ!ラクナスっ!!」
「ラクナス?」
ウェルザが驚いた顔でラクナスを見つめる。
「これは・・・」
やばい!
そう思っている間にもラクナスは僕の袖をぐいぐい引っ張り、外に連れて行こうとする。
どうやら急げ、ということらしい。
「みんな僕の後についてきて!」
僕は皆にそう言うと袖を離して飛んでいくラクナスの後を追った。
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