赤色の伝説

DREAM MAKER

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砂漠の遺跡(上)

12。

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みんな追ってきてくれるだろうか・・・。
そんな思いを残しながら僕はラクナスの後を追いかけていく。
ラクナスは路地の奥へ奥へと入っていく。
と、その時。
先頭を飛んでいたラクナスが暗闇の中でけたたましく叫ぶ。辺りが暗いので少し先でもあまり見えないのだ。
「ラクナス!?」
僕は慌てて名前を呼んだ。すると、
「ほお・・・。まだ誰かいるのか?」
暗闇の中から三人の男達が出てきた。三人とも体格ががっしりとしていて、いかにも凶悪そうな顔をしていた。
それぞれの片手には大剣、そしてその内二人のもう片方の手には・・・。
「エリエラ!ラクナス!」
ラクナスは首を掴まれていた。叫んだ後すぐに捕まったらしく、苦しそうにもがいている。
「助けて!」
エリエラが男の腕の中でもがきながら僕に向かって叫ぶ。僕は呪文を唱えようと胸の前で球を掴むような感じに両手を構える。
その時、僕の後ろから何かが飛んでいくような感じがした。
気が付くと、短剣(ダガー)を持ったシェルが僕を軽々と飛び越え、足早に男達の中に飛び込んでいった。
彼女は遺跡荒らしで有名な大盗賊シェラ・フィータである。こんな行動はお手の物だ。
だが、男達は戸惑うことなく軽々とシェルの短剣を叩き落す。
「あっ・・・」
とうとうシェルまで人質に加わってしまった。冷静に考えれば男の力に女が勝てるはずないではないか。
だがしかし僕もここで呪文をやめるわけにはいかない。
どうすれば・・・。
そう思っていると、肩にずしりと重みがかかった。
それは本当に一瞬で。
次の瞬間、目前に壁があった。
赤い髪の。
ウォーク。
「はっ!」
ウォークは短く叫んで男達に斬りかかり、次々と相手の剣を跳ね飛ばしていく。シェルとは違いやはり威圧感がある。
「さあ、さっさとそのちっこいのと女性と女の子を離しな」
ウォークは剣をまっすぐ一番前に立っていた男に突き立てる。ここの路地はとにかく狭いので大人二人が並んで通れるかどうかというくらいだ。
その時、僕の呪文が完成した。
「ウォーク!!ふせて!」
ウォークはびっくりして後ろを振り返らずにとにかく慌てて伏せた。それと同時に、
「氷よ!!」
僕の手の中で出来た光の球が眩しく光る。男達は一瞬たじろいだ。
その球から氷の竜が男達めがけて一気に襲い掛かった。
氷なら巻き込まれても助け出すことは出来る!

が、男達は襲ってくる氷竜には動じずウォークに跳ね飛ばされた剣を素早く拾い、剣で僕の放った氷竜を叩き切った。
「え・・・?」
信じられない。
魔法が剣で切れるなんて・・・。叩き壊された氷竜はそのまま消えた。
「ふ、ふふふふ・・・」
なんだ?この声。まるで闇の奥から聞こえてきそうな声。そしてそれは幾重にも重なって聞こえた。
ウォークは怯まず、更に突っかかっていき、彼らと剣を交える。
剣に関してはまだウォークが強い。
闘っているぶんには、彼はまだ格好良いし頼りになるが、
「お前等、そのちっちゃいのはともかく、その女の子を離さないと極度のロリコン性のねーちゃんのようなにーちゃんから怒られるぞ」
一言多い。
と、その時背後に人の気配が!

「それって私のことですか?」
僕は即座に後ろを振り向いた。
「ウェルザさん・・・」
今は“さん”を付けていた方が良いだろう。
ウェルザは顔をうつむかせていたので今どんな表情かいまいち分からない。
ウォークはさっきの体勢からずっと動かない。でもきっと冷や汗をかいているだろう。
僕も少し焦っている。
ウォークはそろりそろりと後ろを振り向き、愛想笑いを浮かべた。
「ウェルザ・・・もしかしてさっきからずっと?」
ウェルザはゆっくりと顔を上げる。特に表情を変えようとはしない。
「はい。さっきから」
ウェルザの顔は別に怒ってはいないようだった。が、なぜか緊迫した空気が辺り一面に張り詰め、僕達はもちろん男達まで怯み、動けなくなってしまっている。
「誰が極度のロリコン性ですか?ウォーク」
「い、いや。それは言葉のアヤというもので・・・」
ウォークの顔が引きつっている。
「まあいいでしょう。話はあの男達を倒してからです。その後・・・皆の為に血を取らせていただきますよ、ウォーク」
ウォークの顔がみるみる青ざめていく。そんなウォークをよそにウェルザは呪文を唱えていく。
「光の精霊(ウィルオー・ウィスプ)。ここに来たれ」
ウェルザがそう言いながら右手を胸のあたりまで掲げる。
すると次々とその周りに球の形をした光の塊が現れる。
全部で3つの光球がその右手を中心に浮いている。
それを見た男達が一歩後ずさる。
いけない。
「ウェルザ、そいつら魔法が・・・」
そこまでいいかけた僕をウェルザが左手で制す。「まあ、見ていなさい」とでも言うように。
ウェルザの呪文は更に続く。そして最後にこう唱えた。
「光の精霊(ウィルオー・ウィスプ)よ。闇の神ラゼルより送られし闇を光によって打ち砕け」
それに反応するかのように、光球はすぐさま凄い速さで男達の方へ飛んでいく。その様は虚空に光る線のようだった。
男達は慌てふためき、ラクナスやシェルやエリエラをその場に置いて逃げようとする。
そこに光球が男達の胸を貫いた。
男達は次々と呻きながら倒れていく。
「今だ!シェル、エリエラとラクナスを連れてこっちへ!!」
ウォークが手で合図する。シェルは頷き、ラクナスを拾い上げ、エリエラの手を引いてこちらに走ってくる。
一方僕とウェルザは男達の様子を伺っていた。
「ねえ、もしかして殺しちゃったの?」
さっきまで呻いていた男達は今はぴくりとも動かなくなった。
「いいえ。この者達は闇に操られていたのです、無意識の内に。ですから光を送ったのです。今はあの体内で光と闇が対立しあっています」
なるほど。行動がいやに冷静かと思えば、ウェルザはまた呪文を唱えだした。するとウェルザの指先が淡く光った。
「シェル、すみません。短剣をお借りします」
そういうとウェルザは男達の近くまで歩み寄り、さっきシェルが男達によって叩き落された短剣を拾った。
ウェルザが淡く光る指先でその剣をなぞると、その淡い光は指先から短剣の方へ移っていった。
「シェル、この短剣で男達から出てくる黒い“もや”を斬ってください」
そういうとウェルザはシェルに短剣を渡す。
「ウォークじゃないの?」
シェルでは危険じゃないか?そう思っていたが・・・。
「ウォークではその呪文効力がなくなってしまうんです」
「どうして?」
「彼はその役割ではないからです」
その役割(・・・・)?
僕の頭は混乱した。それを悟ったかのようにウェルザは僕の頭を軽く撫でてくれ、
「いずれ教えてもらう時がくるでしょう、この世界が平和でない限り。ラクナスかウォークか、それとも他の人から・・・」
どういうことか分からない。が、今は関係ないということなのだろう。それは“いずれ”なんだから。
しかし、呪文がまだまだ甘かったのだろうか?それとも氷の耐性をもつ者だったのだろうか。
「どうして僕の時は呪文が聞かなかったんだろう?」
「呪文の属性が違うんですよ」
「属性?」
「ええ、相性、とでもいいましょうか。でも今は・・・。後でゆっくり教えてあげます。そろそろ出てきます」
「来たわ」
言うと同時にシェルが走り出した。
男達の身体から黒い煙のようなものが出てくる。それは絶え間なく次々と出てきて、それによって男達の姿がかき消されそうになった。
シェルが軽やかに躍り出て、次々とそれらを斬っていく。
斬っている方はそれこそ空を切り裂いているようなものだから手ごたえなどなさそうに見える。が、黒いもやはシェルの光る剣に触れた途端、次々と霧散していった。


かくしてこの一件は幕を閉じた。

が、この一件を機に、ウェルザはまた新たな悩みを抱え込む羽目になった。
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