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妖氛の館
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しばらくするとラクナスがずぶ濡れになって戻ってきた。
「お帰り、ラクナス」
僕がそう言うとラクナスはまず身体を振って水を弾き飛ばした。
それから僕の服の袖をぐいぐいと引っ張り出したのだ。
「何?ラクナス、何かあるの?」
そう尋ねれば、ラクナスは頷いて再び雨の中を飛び出した。
僕らは雨の中、濡れながらラクナスの後を追った。
なぜか不思議な事にラクナスの行くところには、そこに道が作られているかのように木がないのだ。
その道をラクナスに連れられてずっと行くと、やがて大きな洋館が見えてきた。
「これは・・・?」
「大きいな。誰か住んでいるのか?」
「さあ?とりあえずこのまま立ってちゃずぶ濡れになるから入ろう」
クルスがそう言ったので僕は重々しい扉をそっと開けた。
「あのー、失礼しまーす。どなたかー・・・ねえ、いないみたい」
「言いかけでやめんなよ」
ウォーク、突っ込み激しすぎ。
「すいませーん!どなたかいらっしゃいますかー!?」
僕は前よりも更に声を上げて叫んだ。僕の声が入り口にある大きいホールにこだまする。
ぐるりと見回すと案外中は広く、豪華だ。
玄関を入るとすぐに視界が開ける大きなホールがある。その正面の突き当りには左右に分かれて階段があった。そしてホールのそれぞれの両端にはまたも大きなドアがそれぞれ3つずつある。
二階、つまり階段を登り切ったところはバルコニーのようになっていて、そこが二階の通路になっていた。
僕がその豪華さに見惚れていると、
「はい」
と、ホール右側の方から返事があった。
しばらくして右側のドアの一つが開き、まるで執事のような感じの歳を取ったおじいさんが出てきた。
「何か御用でしょうか?」
おじいさんはにっこり笑い、僕らの返事を待っていた。
「あの、道に迷っている内に雨が降ってきてしまったもので。すみませんが、雨宿りをさせていただけませんか?」
僕がそう言うと、おじいさんは憐れんだ顔をして、
「おやおや、それは寒かったでしょう。ささ、どうぞどうぞ。今、部屋を温めましょう。中へどうぞ」
僕達はその言葉に、それでは、とお邪魔させてもらうことにした。
中に入ってまた驚いた。天井に見事なシャンデリアが二つも飾ってあったのである。
「はあ~、すごいね」
「ああ」
僕らが感動している間、ラクナスは再び身体を振って水を弾き飛ばしていた。
「おや、可愛らしいお連れさんですね。竜とは珍しい」
ラクナスはそう言われると、身体を振るのを止めてキョトンとおじいさんの方を見つめた。
「ええ、ラクナスっていうんです」
「ほほ~。それにしても子供の竜が単独でいるのもまた珍しいですね」
「え?」
「おや、ご存じないのですか?ゴスタリア帝国の奥、つまり山脈の方には「竜の里」というところがありまして、そこには何十頭という竜がいるんですよ。そしてその竜達はそこから滅多に動いたりしない。ですからそこ以外の場所で見るのは例をみないことですし、ましてや子供が親と離れていることなんてありえないんですが」
「へぇ~」
僕はそう言ってラクナスを見る。ラクナスはちょこっと首を傾げてしっぽを振っている。どうやらあまり理解していないらしい。
「よく懐いてますなあ」
おじいさんはこっちを見て笑った。それから、
「あ、すみませんでした。うっかり忘れてしまって、ささこちらへどうぞ」
やがて僕らは暖炉のある温かい部屋に案内された。
「今着替えをお持ちしますのでお待ちください」
そう言うとおじいさんは扉の向こうに消えた。
「ふー・・・」
おじいさんが消えるとクルスがため息をついた。
「あー、濡れた濡れた」
ウォークがそう言うと暖炉の前でアーマーを外した。
「ねえ、クルス」
僕もマントを外して暖炉の傍のソファに駆けつけながらクルスに話しかけた。
「ん?」
「竜の里って場所知ってる?」
「ん、まあな。ほら僕、シャイアのところに行くって言ったろ。あいつの家、竜の里の麓にあるんだよ」
「へぇ~、そうなんだ」
「ああ、行くなら案内しようか?クロスダ王国へ乗り込むならシャイアが仲間に加わればかなり優勢になるよ」
「ああでも、クルスも結構役に立つよな」
「でも僕は駄目だよ」
「どうして?」
僕が聞くとクルスは、
「それはこれから帝国のどちらかが動くと思うから、その事と、あとその他の連絡事項を仲間に伝えなきゃいけないんだ」
「まさかお前が連絡役を引き受けるとはな・・・」
「だってみんな血の気が多いんだもん。下手に暴れてお尋ね者になったら困るだろ?それに比べて僕なら暴れられないし、万が一争いに巻き込まれても僕には手を出せないだろ?」
「なんで?」
僕が聞けばウォークはクルスを親指で指しながら、
「こいつにはそういう力があるのさ」
「ふーん・・・」
僕は良く分からなかったが、とりあえずそういう力があるのと、クルスがなんか重要な役割を担っているんだなと思って納得しておいた。
僕はふとラクナスを見、
「お前は「竜の里」から来たの?」
ラクナスはじっと僕の顔を見ていたがやがてその顔のまま首を傾げた。
分からなかったかな?
僕も首を傾げる。
「何やってんだお前らは」
上からウォークに頭をはたかれた。
「で?どうするんだ?ロムル」
クルスが訪ねる。
「行くよ。行けばラクナスも分かるだろうし」
そう言って僕はラクナスを見た。
ラクナスはこっちを見て尾をぱたぱたと振っていた。
「あれ?」
ふと周りを見回していたウォークが言う。
「どうしたの?」
僕が尋ねると、
「いや、あれさ。ラクナスに似てねー?」
「え?」
僕はびっくりしてウォークがみている方向を見た。
「あ、本当だ」
クルスも言う。
「え?え?」
僕は更に慌てて一生懸命探した。
「だから、えーと」
ウォークは僕の視線のところまでしゃがんで合わせてくれ、ほら、あそこだよ、と指さしてくれた。
「あ・・・」
僕は目を見張った。
暖炉より右側の壁の方に、大きい肖像画らしきものが飾られていた。
額縁には立派な木彫りが施され、その中に飾られている絵は重々しい、威厳のある感じがした。
立派な服装を着ているのを見ると領主だろうか・・・。
しかし、僕が目を見張ったのはそんな事ではなく、その肖像画の顔があまりにも兄、ラクナスに似すぎていたからだ。
「あ、でも眼も髪も青いね、この人」
クルスが僕の後ろから呟く。
「でも似てるよなー」
ウォークも呟く。
僕は黙ってその肖像画をずっと見ていた。まるでその絵に目が吸い込まれたかのように目が離せない。
どこが、というわけではない。
本当に見れば見るほど何から何までそっくりなのだ。
世の中には三人、自分と同じ顔の人がいるというが、まさかこんなに似る者だとは思わなかった。
「ロムル・・・?」
「おーい、ロムル君」
「え?は?」
僕ははっとして後ろを向く。
絵に集中しすぎてて周りが全然分からなくなっていた。
「お前も服、乾かしたら?風邪引くぞ」
ウォークがいつの間にか暖炉の前に座りながら手招きする。
二人とも既に服を暖炉の傍で乾かしていて、上半身は裸だった。
その時、ドアがコンコン、と叩かれた。
「はい」
僕が返事をするとドアがゆっくりと開かれた。
「着替えをお持ちしました。それと、あの、出来ましたらもうお一方、同室させてもらっても宜しいでしょうか?」
おじいさんが両手に折りたたまれた服を持ちながら、しどろもどろに尋ねてくる。
「別に構わんが」
ウォークがけろりと応えると、おじいさんは僕に三人分の着替えを渡し、
「では、その・・・、急いで服を整えていただけませんか?」
「どうして?」
僕が聞くと、
「女性の方なんです」
それを聞いた僕らは一瞬で紅潮し、急いで着替えた。
おじいさんが持ってきてくれた服は貴族が着るようなチュニックで、僕らには全然似合わなかったが、ただ一人ウォークだけが似合っていたのがなんか異様だった。
僕らが着替え終った事を見届けると、おじいさんは再び姿を消し、扉の外側で誰かと話していた。
しばらくすると、部屋に女性が入ってきた。
やはり彼女も雨に降られたらしい。びしょぬれだ。
彼女は見た感じ、女戦士らしかった。
全身に赤紫のアーマーを身にまとい、青のマントを羽織っていた。
アーマーの下は絹で出来た半袖と長ズボンを着ている。
彼女の髪はシェルよりも明るい茶色で、そのウェーブがかった髪は肩の辺りまでで切りそろえられていた。
彼女はぱっちりとした大きな黒い瞳でこっちを見ていたが、不意に、
「ウォーク・・・?」
と、ウォークを見て最初は驚いていたが、段々と訝し気な顔つきになって問いかけてきた。
ウォークはというと、顔は笑っていたが少々口元を引きつらせ、
「・・・よ、よお。ダリア」
としどろもどろになりながらも片手を上げた。
「ウォーク?本当にウォークなの?」
「ああ」
その返事に、彼女は眼を潤ませうつむいた。
どうやらウォークの知り合いらしい。
ウォークは彼女の肩をそっと抱く。好きな女性はいないような事を言っていたが、ひょっとしたらウォークの恋人だろうか?
久しぶりの再会。
感動的な場面だなあ・・・。
と思ったら。
「この親不孝者―――っ!!」
いきなり彼女のパンチがウォークの顔に炸裂した。
「え?」
クルスと僕は、彼女のいきなりの行動に面食らい、ウォークと言えば鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
彼女はというと、先ほどのしおらしい彼女はどこへやら。ウォークの顔を、怒った顔をして睨み付けている」
「その顔は・・・・何のことだかさっぱり分からないって顔ね!!」
ウォークは素直に頷く。
彼女に再び殴られたのは言うまでもない。
「お帰り、ラクナス」
僕がそう言うとラクナスはまず身体を振って水を弾き飛ばした。
それから僕の服の袖をぐいぐいと引っ張り出したのだ。
「何?ラクナス、何かあるの?」
そう尋ねれば、ラクナスは頷いて再び雨の中を飛び出した。
僕らは雨の中、濡れながらラクナスの後を追った。
なぜか不思議な事にラクナスの行くところには、そこに道が作られているかのように木がないのだ。
その道をラクナスに連れられてずっと行くと、やがて大きな洋館が見えてきた。
「これは・・・?」
「大きいな。誰か住んでいるのか?」
「さあ?とりあえずこのまま立ってちゃずぶ濡れになるから入ろう」
クルスがそう言ったので僕は重々しい扉をそっと開けた。
「あのー、失礼しまーす。どなたかー・・・ねえ、いないみたい」
「言いかけでやめんなよ」
ウォーク、突っ込み激しすぎ。
「すいませーん!どなたかいらっしゃいますかー!?」
僕は前よりも更に声を上げて叫んだ。僕の声が入り口にある大きいホールにこだまする。
ぐるりと見回すと案外中は広く、豪華だ。
玄関を入るとすぐに視界が開ける大きなホールがある。その正面の突き当りには左右に分かれて階段があった。そしてホールのそれぞれの両端にはまたも大きなドアがそれぞれ3つずつある。
二階、つまり階段を登り切ったところはバルコニーのようになっていて、そこが二階の通路になっていた。
僕がその豪華さに見惚れていると、
「はい」
と、ホール右側の方から返事があった。
しばらくして右側のドアの一つが開き、まるで執事のような感じの歳を取ったおじいさんが出てきた。
「何か御用でしょうか?」
おじいさんはにっこり笑い、僕らの返事を待っていた。
「あの、道に迷っている内に雨が降ってきてしまったもので。すみませんが、雨宿りをさせていただけませんか?」
僕がそう言うと、おじいさんは憐れんだ顔をして、
「おやおや、それは寒かったでしょう。ささ、どうぞどうぞ。今、部屋を温めましょう。中へどうぞ」
僕達はその言葉に、それでは、とお邪魔させてもらうことにした。
中に入ってまた驚いた。天井に見事なシャンデリアが二つも飾ってあったのである。
「はあ~、すごいね」
「ああ」
僕らが感動している間、ラクナスは再び身体を振って水を弾き飛ばしていた。
「おや、可愛らしいお連れさんですね。竜とは珍しい」
ラクナスはそう言われると、身体を振るのを止めてキョトンとおじいさんの方を見つめた。
「ええ、ラクナスっていうんです」
「ほほ~。それにしても子供の竜が単独でいるのもまた珍しいですね」
「え?」
「おや、ご存じないのですか?ゴスタリア帝国の奥、つまり山脈の方には「竜の里」というところがありまして、そこには何十頭という竜がいるんですよ。そしてその竜達はそこから滅多に動いたりしない。ですからそこ以外の場所で見るのは例をみないことですし、ましてや子供が親と離れていることなんてありえないんですが」
「へぇ~」
僕はそう言ってラクナスを見る。ラクナスはちょこっと首を傾げてしっぽを振っている。どうやらあまり理解していないらしい。
「よく懐いてますなあ」
おじいさんはこっちを見て笑った。それから、
「あ、すみませんでした。うっかり忘れてしまって、ささこちらへどうぞ」
やがて僕らは暖炉のある温かい部屋に案内された。
「今着替えをお持ちしますのでお待ちください」
そう言うとおじいさんは扉の向こうに消えた。
「ふー・・・」
おじいさんが消えるとクルスがため息をついた。
「あー、濡れた濡れた」
ウォークがそう言うと暖炉の前でアーマーを外した。
「ねえ、クルス」
僕もマントを外して暖炉の傍のソファに駆けつけながらクルスに話しかけた。
「ん?」
「竜の里って場所知ってる?」
「ん、まあな。ほら僕、シャイアのところに行くって言ったろ。あいつの家、竜の里の麓にあるんだよ」
「へぇ~、そうなんだ」
「ああ、行くなら案内しようか?クロスダ王国へ乗り込むならシャイアが仲間に加わればかなり優勢になるよ」
「ああでも、クルスも結構役に立つよな」
「でも僕は駄目だよ」
「どうして?」
僕が聞くとクルスは、
「それはこれから帝国のどちらかが動くと思うから、その事と、あとその他の連絡事項を仲間に伝えなきゃいけないんだ」
「まさかお前が連絡役を引き受けるとはな・・・」
「だってみんな血の気が多いんだもん。下手に暴れてお尋ね者になったら困るだろ?それに比べて僕なら暴れられないし、万が一争いに巻き込まれても僕には手を出せないだろ?」
「なんで?」
僕が聞けばウォークはクルスを親指で指しながら、
「こいつにはそういう力があるのさ」
「ふーん・・・」
僕は良く分からなかったが、とりあえずそういう力があるのと、クルスがなんか重要な役割を担っているんだなと思って納得しておいた。
僕はふとラクナスを見、
「お前は「竜の里」から来たの?」
ラクナスはじっと僕の顔を見ていたがやがてその顔のまま首を傾げた。
分からなかったかな?
僕も首を傾げる。
「何やってんだお前らは」
上からウォークに頭をはたかれた。
「で?どうするんだ?ロムル」
クルスが訪ねる。
「行くよ。行けばラクナスも分かるだろうし」
そう言って僕はラクナスを見た。
ラクナスはこっちを見て尾をぱたぱたと振っていた。
「あれ?」
ふと周りを見回していたウォークが言う。
「どうしたの?」
僕が尋ねると、
「いや、あれさ。ラクナスに似てねー?」
「え?」
僕はびっくりしてウォークがみている方向を見た。
「あ、本当だ」
クルスも言う。
「え?え?」
僕は更に慌てて一生懸命探した。
「だから、えーと」
ウォークは僕の視線のところまでしゃがんで合わせてくれ、ほら、あそこだよ、と指さしてくれた。
「あ・・・」
僕は目を見張った。
暖炉より右側の壁の方に、大きい肖像画らしきものが飾られていた。
額縁には立派な木彫りが施され、その中に飾られている絵は重々しい、威厳のある感じがした。
立派な服装を着ているのを見ると領主だろうか・・・。
しかし、僕が目を見張ったのはそんな事ではなく、その肖像画の顔があまりにも兄、ラクナスに似すぎていたからだ。
「あ、でも眼も髪も青いね、この人」
クルスが僕の後ろから呟く。
「でも似てるよなー」
ウォークも呟く。
僕は黙ってその肖像画をずっと見ていた。まるでその絵に目が吸い込まれたかのように目が離せない。
どこが、というわけではない。
本当に見れば見るほど何から何までそっくりなのだ。
世の中には三人、自分と同じ顔の人がいるというが、まさかこんなに似る者だとは思わなかった。
「ロムル・・・?」
「おーい、ロムル君」
「え?は?」
僕ははっとして後ろを向く。
絵に集中しすぎてて周りが全然分からなくなっていた。
「お前も服、乾かしたら?風邪引くぞ」
ウォークがいつの間にか暖炉の前に座りながら手招きする。
二人とも既に服を暖炉の傍で乾かしていて、上半身は裸だった。
その時、ドアがコンコン、と叩かれた。
「はい」
僕が返事をするとドアがゆっくりと開かれた。
「着替えをお持ちしました。それと、あの、出来ましたらもうお一方、同室させてもらっても宜しいでしょうか?」
おじいさんが両手に折りたたまれた服を持ちながら、しどろもどろに尋ねてくる。
「別に構わんが」
ウォークがけろりと応えると、おじいさんは僕に三人分の着替えを渡し、
「では、その・・・、急いで服を整えていただけませんか?」
「どうして?」
僕が聞くと、
「女性の方なんです」
それを聞いた僕らは一瞬で紅潮し、急いで着替えた。
おじいさんが持ってきてくれた服は貴族が着るようなチュニックで、僕らには全然似合わなかったが、ただ一人ウォークだけが似合っていたのがなんか異様だった。
僕らが着替え終った事を見届けると、おじいさんは再び姿を消し、扉の外側で誰かと話していた。
しばらくすると、部屋に女性が入ってきた。
やはり彼女も雨に降られたらしい。びしょぬれだ。
彼女は見た感じ、女戦士らしかった。
全身に赤紫のアーマーを身にまとい、青のマントを羽織っていた。
アーマーの下は絹で出来た半袖と長ズボンを着ている。
彼女の髪はシェルよりも明るい茶色で、そのウェーブがかった髪は肩の辺りまでで切りそろえられていた。
彼女はぱっちりとした大きな黒い瞳でこっちを見ていたが、不意に、
「ウォーク・・・?」
と、ウォークを見て最初は驚いていたが、段々と訝し気な顔つきになって問いかけてきた。
ウォークはというと、顔は笑っていたが少々口元を引きつらせ、
「・・・よ、よお。ダリア」
としどろもどろになりながらも片手を上げた。
「ウォーク?本当にウォークなの?」
「ああ」
その返事に、彼女は眼を潤ませうつむいた。
どうやらウォークの知り合いらしい。
ウォークは彼女の肩をそっと抱く。好きな女性はいないような事を言っていたが、ひょっとしたらウォークの恋人だろうか?
久しぶりの再会。
感動的な場面だなあ・・・。
と思ったら。
「この親不孝者―――っ!!」
いきなり彼女のパンチがウォークの顔に炸裂した。
「え?」
クルスと僕は、彼女のいきなりの行動に面食らい、ウォークと言えば鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
彼女はというと、先ほどのしおらしい彼女はどこへやら。ウォークの顔を、怒った顔をして睨み付けている」
「その顔は・・・・何のことだかさっぱり分からないって顔ね!!」
ウォークは素直に頷く。
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