赤色の伝説

DREAM MAKER

文字の大きさ
33 / 34
妖氛の館

27。

しおりを挟む
しばらくするとラクナスがずぶ濡れになって戻ってきた。
「お帰り、ラクナス」
僕がそう言うとラクナスはまず身体を振って水を弾き飛ばした。
それから僕の服の袖をぐいぐいと引っ張り出したのだ。
「何?ラクナス、何かあるの?」
そう尋ねれば、ラクナスは頷いて再び雨の中を飛び出した。
僕らは雨の中、濡れながらラクナスの後を追った。
なぜか不思議な事にラクナスの行くところには、そこに道が作られているかのように木がないのだ。
その道をラクナスに連れられてずっと行くと、やがて大きな洋館が見えてきた。
「これは・・・?」
「大きいな。誰か住んでいるのか?」
「さあ?とりあえずこのまま立ってちゃずぶ濡れになるから入ろう」
クルスがそう言ったので僕は重々しい扉をそっと開けた。
「あのー、失礼しまーす。どなたかー・・・ねえ、いないみたい」
「言いかけでやめんなよ」
ウォーク、突っ込み激しすぎ。
「すいませーん!どなたかいらっしゃいますかー!?」
僕は前よりも更に声を上げて叫んだ。僕の声が入り口にある大きいホールにこだまする。
ぐるりと見回すと案外中は広く、豪華だ。
玄関を入るとすぐに視界が開ける大きなホールがある。その正面の突き当りには左右に分かれて階段があった。そしてホールのそれぞれの両端にはまたも大きなドアがそれぞれ3つずつある。
二階、つまり階段を登り切ったところはバルコニーのようになっていて、そこが二階の通路になっていた。
僕がその豪華さに見惚れていると、
「はい」
と、ホール右側の方から返事があった。
しばらくして右側のドアの一つが開き、まるで執事のような感じの歳を取ったおじいさんが出てきた。
「何か御用でしょうか?」
おじいさんはにっこり笑い、僕らの返事を待っていた。
「あの、道に迷っている内に雨が降ってきてしまったもので。すみませんが、雨宿りをさせていただけませんか?」
僕がそう言うと、おじいさんは憐れんだ顔をして、
「おやおや、それは寒かったでしょう。ささ、どうぞどうぞ。今、部屋を温めましょう。中へどうぞ」
僕達はその言葉に、それでは、とお邪魔させてもらうことにした。
中に入ってまた驚いた。天井に見事なシャンデリアが二つも飾ってあったのである。
「はあ~、すごいね」
「ああ」
僕らが感動している間、ラクナスは再び身体を振って水を弾き飛ばしていた。
「おや、可愛らしいお連れさんですね。竜とは珍しい」
ラクナスはそう言われると、身体を振るのを止めてキョトンとおじいさんの方を見つめた。
「ええ、ラクナスっていうんです」
「ほほ~。それにしても子供の竜が単独でいるのもまた珍しいですね」
「え?」
「おや、ご存じないのですか?ゴスタリア帝国の奥、つまり山脈の方には「竜の里」というところがありまして、そこには何十頭という竜がいるんですよ。そしてその竜達はそこから滅多に動いたりしない。ですからそこ以外の場所で見るのは例をみないことですし、ましてや子供が親と離れていることなんてありえないんですが」
「へぇ~」
僕はそう言ってラクナスを見る。ラクナスはちょこっと首を傾げてしっぽを振っている。どうやらあまり理解していないらしい。
「よく懐いてますなあ」
おじいさんはこっちを見て笑った。それから、
「あ、すみませんでした。うっかり忘れてしまって、ささこちらへどうぞ」
やがて僕らは暖炉のある温かい部屋に案内された。
「今着替えをお持ちしますのでお待ちください」
そう言うとおじいさんは扉の向こうに消えた。

「ふー・・・」
おじいさんが消えるとクルスがため息をついた。
「あー、濡れた濡れた」
ウォークがそう言うと暖炉の前でアーマーを外した。
「ねえ、クルス」
僕もマントを外して暖炉の傍のソファに駆けつけながらクルスに話しかけた。
「ん?」
「竜の里って場所知ってる?」
「ん、まあな。ほら僕、シャイアのところに行くって言ったろ。あいつの家、竜の里の麓にあるんだよ」
「へぇ~、そうなんだ」
「ああ、行くなら案内しようか?クロスダ王国へ乗り込むならシャイアが仲間に加わればかなり優勢になるよ」
「ああでも、クルスも結構役に立つよな」
「でも僕は駄目だよ」
「どうして?」
僕が聞くとクルスは、
「それはこれから帝国のどちらかが動くと思うから、その事と、あとその他の連絡事項を仲間に伝えなきゃいけないんだ」
「まさかお前が連絡役を引き受けるとはな・・・」
「だってみんな血の気が多いんだもん。下手に暴れてお尋ね者になったら困るだろ?それに比べて僕なら暴れられないし、万が一争いに巻き込まれても僕には手を出せないだろ?」
「なんで?」
僕が聞けばウォークはクルスを親指で指しながら、
「こいつにはそういう力があるのさ」
「ふーん・・・」
僕は良く分からなかったが、とりあえずそういう力があるのと、クルスがなんか重要な役割を担っているんだなと思って納得しておいた。
僕はふとラクナスを見、
「お前は「竜の里」から来たの?」
ラクナスはじっと僕の顔を見ていたがやがてその顔のまま首を傾げた。
分からなかったかな?
僕も首を傾げる。
「何やってんだお前らは」
上からウォークに頭をはたかれた。
「で?どうするんだ?ロムル」
クルスが訪ねる。
「行くよ。行けばラクナスも分かるだろうし」
そう言って僕はラクナスを見た。
ラクナスはこっちを見て尾をぱたぱたと振っていた。


「あれ?」
ふと周りを見回していたウォークが言う。
「どうしたの?」
僕が尋ねると、
「いや、あれさ。ラクナスに似てねー?」
「え?」
僕はびっくりしてウォークがみている方向を見た。
「あ、本当だ」
クルスも言う。
「え?え?」
僕は更に慌てて一生懸命探した。
「だから、えーと」
ウォークは僕の視線のところまでしゃがんで合わせてくれ、ほら、あそこだよ、と指さしてくれた。
「あ・・・」
僕は目を見張った。
暖炉より右側の壁の方に、大きい肖像画らしきものが飾られていた。
額縁には立派な木彫りが施され、その中に飾られている絵は重々しい、威厳のある感じがした。
立派な服装を着ているのを見ると領主だろうか・・・。
しかし、僕が目を見張ったのはそんな事ではなく、その肖像画の顔があまりにも兄、ラクナスに似すぎていたからだ。
「あ、でも眼も髪も青いね、この人」
クルスが僕の後ろから呟く。
「でも似てるよなー」
ウォークも呟く。
僕は黙ってその肖像画をずっと見ていた。まるでその絵に目が吸い込まれたかのように目が離せない。

どこが、というわけではない。
本当に見れば見るほど何から何までそっくりなのだ。
世の中には三人、自分と同じ顔の人がいるというが、まさかこんなに似る者だとは思わなかった。
「ロムル・・・?」
「おーい、ロムル君」
「え?は?」
僕ははっとして後ろを向く。
絵に集中しすぎてて周りが全然分からなくなっていた。
「お前も服、乾かしたら?風邪引くぞ」
ウォークがいつの間にか暖炉の前に座りながら手招きする。
二人とも既に服を暖炉の傍で乾かしていて、上半身は裸だった。

その時、ドアがコンコン、と叩かれた。
「はい」
僕が返事をするとドアがゆっくりと開かれた。
「着替えをお持ちしました。それと、あの、出来ましたらもうお一方、同室させてもらっても宜しいでしょうか?」
おじいさんが両手に折りたたまれた服を持ちながら、しどろもどろに尋ねてくる。
「別に構わんが」
ウォークがけろりと応えると、おじいさんは僕に三人分の着替えを渡し、
「では、その・・・、急いで服を整えていただけませんか?」
「どうして?」
僕が聞くと、
「女性の方なんです」

それを聞いた僕らは一瞬で紅潮し、急いで着替えた。
おじいさんが持ってきてくれた服は貴族が着るようなチュニックで、僕らには全然似合わなかったが、ただ一人ウォークだけが似合っていたのがなんか異様だった。
僕らが着替え終った事を見届けると、おじいさんは再び姿を消し、扉の外側で誰かと話していた。
しばらくすると、部屋に女性が入ってきた。
やはり彼女も雨に降られたらしい。びしょぬれだ。
彼女は見た感じ、女戦士らしかった。
全身に赤紫のアーマーを身にまとい、青のマントを羽織っていた。
アーマーの下は絹で出来た半袖と長ズボンを着ている。
彼女の髪はシェルよりも明るい茶色で、そのウェーブがかった髪は肩の辺りまでで切りそろえられていた。
彼女はぱっちりとした大きな黒い瞳でこっちを見ていたが、不意に、
「ウォーク・・・?」
と、ウォークを見て最初は驚いていたが、段々と訝し気な顔つきになって問いかけてきた。
ウォークはというと、顔は笑っていたが少々口元を引きつらせ、
「・・・よ、よお。ダリア」
としどろもどろになりながらも片手を上げた。
「ウォーク?本当にウォークなの?」
「ああ」
その返事に、彼女は眼を潤ませうつむいた。
どうやらウォークの知り合いらしい。
ウォークは彼女の肩をそっと抱く。好きな女性はいないような事を言っていたが、ひょっとしたらウォークの恋人だろうか?
久しぶりの再会。
感動的な場面だなあ・・・。

と思ったら。
「この親不孝者―――っ!!」
いきなり彼女のパンチがウォークの顔に炸裂した。
「え?」
クルスと僕は、彼女のいきなりの行動に面食らい、ウォークと言えば鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
彼女はというと、先ほどのしおらしい彼女はどこへやら。ウォークの顔を、怒った顔をして睨み付けている」
「その顔は・・・・何のことだかさっぱり分からないって顔ね!!」
ウォークは素直に頷く。

彼女に再び殴られたのは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。 ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。 そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。 荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。 このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。 ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。 ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。 ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。 さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。 他サイトにも掲載

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...