赤色の伝説

DREAM MAKER

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妖氛の館

28。

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「いきなりびっくりさせてしまってごめんなさい。改めて、ダリアです」
「はあ・・・」
ウォークを除いて、僕らは最初の事があまりにも過激すぎたため、少しびくびくしながら挨拶を交わした。
「あの・・・で、ウォークとはどういう関係で?」
「幼馴染だ」
ウォークが代わりに答えた。
「あ、ちなみにさっきの2発は、一発目はお父様からの、二発目はもし思い出せなかったらというやつね!」
「母からか?」
「そゆこと」
ダリアの言葉にウォークはがっくり肩を落とす。
「それは仕方ないわよ。ウォークったら勝手に家を抜けて戦士隊に入るんだもの」
「違うっ!親父が勝手に戦士隊から毎度来る勧誘員に負けて俺を売ったせいで、あのころ何も知らない俺は戦士隊の奴らによって連れていかれたんだ!」
「でもお父様は何もおっしゃってなかったわよ?」
「あの親父は自分にとって不必要な事は全て忘れる奴なんだ!」
なんか・・・ウォークのお父さんって感じだね、と僕はクルスにぼそりとつぶやくと、クルスは、でもウォークの方は自分にとって必要な事でさえ頭から抜けているからそれに比べれば親父の方がましだと答えたので、僕は思わず笑ってしまった。
するとウォークはぎろりとこちらを睨み付け、
「何か言ったか?二人とも」
と言ってきたので僕とクルスは合わせてふるふると首を振った。
「だけどウォークの家庭だと暗い過去かもしれないが、笑える過去だよな」
とクルスがいうと、ウォークが怒って睨み付けてきたのでクルスはそっぽを向いた。
「で?それはいいんだが何でダリアがここに?」
「私は気ままに旅を続けていただけ。そしたらたまたま貴方達に会ったのよ」
ふーん・・・。
「で?そちらの二人は?紹介してよ、ウォーク」
ダリアはにこにこしながらこちらを興味ある眼で見つめた。
ウォークは面倒くさそうな顔をしていたが、やがて僕の頭をぽんぽんと叩きながら、
「こっちは俺の友人、ラクナスの弟でロムルだ」
それから僕の隣にいたクルスを指さし、
「こっちはやはり俺の友人でクルスだ」
ダリアは僕らをまじまじと見ていたがやがてにっこり笑って、
「よろしく」
と言った。
僕は顔に血が上るのを感じた。だけどそれを誰にも気づいてほしくなくて慌ててラクナスを呼んだ。
「ほらダリアだよ。ラクナス」
「まあかわいい」
ラクナスはおじぎをした。
「この子もラクナスって言うの?」
「うん、まあ色々あって」
へぇ~、と言いながらダリアはその黒い大きな瞳を瞬きしながらラクナスを見つめる。
ラクナスを一通り見つめた後、彼女はウォークの胸を、ドアをノックするような感じで一度軽く叩き、
「なんだ、うまくやってるのね」
と微笑んだ。
「まあな」
そっけなく答えるウォーク。
「いい人達じゃない」
ダリアがそう言うと、ウォークは今度はもう少し嬉しそうな顔つきをして、
「まあな」
と答えた。
その時またドアがノックされ、それを開けたらおじいさんが立っていた。
「そちらの女性の方、着替えをお持ちしました。それからそちらの三名の方、雨も止みそうにないのでよろしければ今日はここでお泊りになられてはいかがですか?お急ぎなら・・・」
そこまで言った時、クルスが。
「いや、別に急ぐ旅じゃない。そうだよな?」
クルスは僕に向かって念を押す。僕は、ウォークの顔色を窺い、それからクルスに向かって頷いた。
「そうですか。では部屋に案内いたしますのでこちらにどうぞ」
僕ら三人は再びダリアに挨拶を交わし、部屋を出た。ラクナスは僕の肩に止まり、周りをきょろきょろと見回している。
僕はおじいさんの後について歩いている時に肖像画の事について聞いてみた。
おじいさんによると、
「ああ。あの方はここら辺り一帯の領主でして、この屋敷はその方の別荘なんです」
「その方は今は?」
「クロスダ帝国にいます」
クロスダ帝国。
それを聞いた時、僕はどきんとした。
クロスダ王国―そこにはゴスタリア帝国の皇帝がいる。同時に僕の兄、ラクナスもいるはず。
兄さんを助けるためにこんなところでゆっくりはしていられないのだが、僕らはゴスタリア帝国に対する知識がなさすぎて、あまりうかつには動けない。
僕はゴスタリア帝国には来たことないし、ウォークだってあまり来たことはないと言う。
だからこうやって帝国の人達と接し、出来るならクロスダ王国の状況も聞き出し、帝国の常識を知るとともに、僕らはこちらにあわせなきゃいけない。
なるべく目立たないように・・・。

今のところフェザリア帝国―つまり僕らの国とゴスタリア帝国との大きな違いを僕は一つ知っている。
シェルに教えてもらったのだが、ゴスタリア帝国には魔法使いがほとんどいない。多くて3、4人程度だとか。
それに対してフェザリア帝国は魔法使いがたくさんいる。日常生活に魔法が溶け込んでくるくらい、良く魔法を使うのだ。
だから戦争を起こせば魔法使いがいる分こちらが優勢なはずなのだが、過去に幾度か(今もだが)戦争を起こしているのだが、なぜか毎回決着がつかないままなのだ。
やはりそこにはゴスタリア帝国にもフェザリア帝国の魔法に匹敵するくらいの何かがあるのだろう。
それが何かは良く分からないが。フェザリア帝国の戦士隊の一員として何度か戦争に参加していたウォークなら知っているかもしれないが。
それでもゴスタリア帝国は魔法使いが欲しいらしく、帝国にいる魔法使いのほとんどが皇帝のいるクロスダ王国に徴兵されている。
その魔法使いの一人によって兄、ラクナスは消されたのだ。

「あのお方に何か心当たりが?」
おじいさんがそう尋ねてきたので、僕は何気なしに、
「いえ、別に。ただ僕の兄に良く似ているもので・・・」
そう言っておじいさんの顔を見た時、僕は背筋が寒くなった。
おじいさんが恨みがましい眼でこちらを睨み付けてきたのだ。それはまるで敵を見るような・・・。
しかしそれは一瞬の事で、すぐに満面の笑みを浮かべて、
「そうですか」
と言ってまた前を歩き出した。


「こちらでございます。どうぞ」
おじいさんが案内してくれた部屋は広く、かなり豪華だった。部屋の両端には四方にカーテンのかかったベッドがあり、ベッドとベッドの間には小さな窓がついていた。
部屋の中央には円形のテーブルが置いてあり、それには白いテーブルクロスがかけられていた。テーブルの高さはさほど高くなく、テーブル脇には4つの深緑色のソファが置かれていた。
「では、夕食になりましたらお呼びしますので」
そう言うとおじいさんは最後に一礼をして部屋を出ていった。
ドアが完全にしまり、足音が遠のいていくのを確認してからウォークが。
「何かあるな、ここは」
と言って僕の方を見た。
さすが戦士なだけの事はある。彼はきっとおじいさんのあの一瞬の表情を見逃さなかったのだ。
「うん。僕もそう思う。でもそれ以上の事は分からない。なぜおじいさんが僕に対してあんな顔をしたのか」
「でもどっちにしろ、こう降りが激しくちゃここから身動き出来ないぜ」
クルスが窓の外を眺めながらそう言う。するとウォークがびっくりしたような、呆れたような顔をクルスに向け、
「何言ってんだお前。お前ならこんな雨、ものともしないだろうが」
「何で?」
僕が聞くと、
「あー!もう!!だーかーらーあ、こいつにはそーゆー力があるの!」
ウォークはクルスを指さしながら僕に向かって叫んだ。
僕は何だかわからないけどこれ以上クルスを怒らせてはいけないと思い、ただ一生懸命に何度も頷いた。
クルスはそんな僕らを見て笑い、それから、
「ほら、ロムル。見てみろよ」
と僕を呼んだ。
僕は窓の方に行き、外を眺めた。
「わあ・・・」
そこには天、地、共にある一色をしていた。点は灰色、地は緑の海原。
「なんか・・・すごい・・・」
僕はどこまでもその関係が続きそうな風景に感動を覚えた。
「あそこ」
「え?」
僕はクルスが指さした方を向いた。見るとずっと先の方に小さく、山らしきものが見える。その山はなんか赤かった。
「あれが「竜の里」だ。あの山はゴスタリア帝国にある山脈の中でも、ひときわこちら側に突き出ていることから「山脈の入り口」とも言われている。つまり人から見れば一番山脈に入りやすいんだ。だが、山脈は今まで誰も登ったことがないと噂されている」
「どうして?」
「山脈に行く人は確かに多い。だが、「竜の里」から山脈に入った者はまだ一人もいないらしい。あそこは「山脈の入り口」と共に、「竜の里」でもあるからな。竜達はプライドが高い。故に自分たちの領域に無断で立ち入られるのは我慢がならないらしい」
「・・・それなのに人は何故山脈に行きたがるの?」
「一つには山脈には色々な鉱石があると言われている。つまり宝石の事さ。もう一つは・・・これは俺も興味があるんだが、山脈の向こうには港町があり、その港町からここよりもっと広い大陸に行くことができるらしい」
「え!?ここ以外にも大陸ってあったの?」
「信じられないな」
「ところがそれが本当らしいのさ」
「って事は実際行って帰ってきたやつが」
「ああ。いるらしい。まあ、詳しい事はシャイアのに聞いてみ」
「それはいいんだ。話は変わるが・・・」
そういうとウォークは厳しい顔つきでこちらを向く。
「ここは早めに出た方が良い」
「うん」
「さっきも言ったが、ここには何かある。それは危険な事だ」
「うん」
僕は頷いた。でもこのまま逃げても良いのだが、気になることが一つだけある。
「でも原因を突き止めてみたい気もするよな」
あのおじいさんの表情の意味を。
「うん」
そう、それだ。クルスが言ったことに僕が同意すると、ウォークが怒りだした。
「むざむざ危険に身をさらすのか?」
「別に原因が危険とは限らないじゃん」
ウォークの力説をクルスはいとも簡単にはねのける。
「~~~~~~っ!!」
ウォークは悔しそうな顔をして、だけど言い返せずに黙ってしまった。
その時、僕達の部屋のドアを叩く音が聞こえた。

僕が「どうぞ」と答えると、入ってきたのはドレス姿のダリアだった。
「ダリアさん・・・」
「こんにちは、ええと・・・」
「ロムルです」
まだ覚えていなくてごめんなさい、とダリアは申し訳なさそうに笑った。
「ダリア?」
後ろから信じられないというような声が聞こえた。
「なによ?ウォーク、その顔は」
「え?いや、別に・・・」
ウォークは、はっとしたように答える。
そんなウォークを庇うようにクルスは、
「いや、それにしてもドレス似合いますね~」
と褒めた。その途端、ダリアは視線をウォークの方から僕らの方に向け、嬉しそうに顔を赤らめながら「ありがとう」と言った。
しかし、次の瞬間ダリアはその顔を厳しいものに変え、周囲を見回してドアの外も確認し、用心深くドアを閉めた後、ゆっくりと僕らの方を向いて、
「ここは何かあるわ。早めにここを出た方が良い」
と、さっきのウォークと同じような事を言った。

その時、大きな音が鳴り響いて雷が落ちた。

ダリアまでが同じ事を言うのでは、もうここがやばいところと言うのは確信されてしまったようなものだった。
そんな確信を信じたくないのか、それともダリアという一人の女の人に、彼女の予想を彼女には予想で留めてあげたいのか。
ウォークとクルスの二人は。
「そーいえばそーだねー」
話逸らしているし。
「もうっ!真面目に聞いてよ!さては冗談だと思っているでしょ!」
「いや?別に~・・・」
ウォークはそう言って目を逸らす。
その時ダリアの後ろにあったドアがノックされた。
「あの、お食事の用意が出来ましたので皆さま、一階の大広間までいらしてください。
声は若い女の人のものだった。きっとメイドさんだろう。
ダリアの発言はなかったことにして、とりあえず食事に行こうと部屋を出た。
階段を下りている途中、ダリアは僕の隣で、
「もうっ!どうして人の言う事を真面目に聞かないのかしら!」
とぶつぶつ不貞腐れていた。
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