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旅立ち
序
しおりを挟む魔法使いラクナスが「マスター」になる時は、今まで見てきたものの中で一番凄くて一番綺麗だと思った。
ここはクルリア大陸という大きな大陸を二分する二つの帝国、そのうちの一つ、フェザリア帝国の辺境の小さな村、ラウル。人口は百人足らず。だけど皆いい人達ばかりだ。
欲に突き出た者もなく、皆でお互いを助け合ってきた。
こんな小さな村だがちゃんと聖堂もあり、魔法を極める者はここに通っていた。
僕も、そして今魔法の修得者=マスターになるラクナスもこの聖堂で魔法を習っていた。
ラクナスは大きめのマントを羽織っている。儀式にはこのマントと金で縁取られた服を着るのが習わしである。
ラクナスは皆の見守る中、背中の半分くらいまで伸びている紅蓮の髪をなびかせゆっくりと神官のいる台まで上っていく。
歳は18。細身の優男だ。
人は見かけによらない。魔法使いがその象徴だ。こんな優しそうな顔をして国一つ滅ぼす力を持っている。まあそんなのが魔法使いの相場だ。
僕だって筋肉のついた大剣を振るう「戦う魔法使い」は嫌だし。
でも今儀式を始めようとするラクナスはちょっと間違えれば戦士にもなれそうな人だった。
こう色々考えている内に儀式は始まった。
神官が何やらぶつくさ呟いていて、自分の前で両手を何か持っているような形にすると、そこにまぶしく光る輪が現れた。
余りにもまぶしくて、僕も皆も一瞬身を翻したが再び振り返った時には台の上のラクナスは、気の抜けたような顔をして立っていて、それを見ながら神官は皆に笑って言った。
「だから言っただろう?いくら人が集まったところで、この儀式を最後まで見れるのは私とマスターになれるものだけだってね」
皆は唖然としていたが、しばらくして台を降りてきたラクナスに質問攻めをしていた。
一瞬で儀式が終わってしまったからだ。
僕は一人、そのあとをゆっくり降りてきた神官に一言。
「だったらこんな、長老がいつも皆を集める為に作った広場と台でやらなきゃいいじゃないか」
悔しさと嫌味も入れて言ったつもりだったが、
「私の勝手だろう」
当たり前のような顔をして去って行かれた。
「だからって村のど真ん中で派手な宣伝してから始めるなよ!この中年髭親父が!」
口に出したら去っていた神官がものすごい勢いで戻ってきた。
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