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第三部
閑話:バルバラとアレクの密談
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「ちょっとだけバルバラを借りていいかな」
部屋でせっせと刺繍をしていたカミーユにアレクが問いかけると、彼は軽く首を傾げた。
「構いませんけど、何か不始末でも?」
「いやいや、ちょっと頼みたいことがあるだけだから」
アレクは慌てて否定した。
何かあったとしても、かの伝説の「血まみれ熊騎士バルバラ」に僕がお説教できるわけないじゃん。無理。
確認したのもバルバラは形式的にはカミーユが祖国から連れてきた侍女だからというだけで、別にお説教するつもりもない。
「じゃあ、バルバラ。ちょっと来てくれるかな」
そう声をかけるとカミーユの側に控えていた小柄な侍女は一礼してこちらに歩いてきた。
アレクは自分の事を過大評価はしていない。だから、自分が王太子に決まったことで、今後もあれやこれやと難癖をつけて決闘を申し込んで来る輩はいるだろうと覚悟していた。
けれど、カミーユが王太子妃に決まったことにケチをつけてくる者がいるとは思わなかった。決闘の申し込みが届いてからそれに気づいて、自分の迂闊さを悔やんだ。
王太子争いで負けた異母弟レイモンドの婚約者マーガレット嬢。まあ、きっと決闘は実家の思惑なんだろうけれど。
「決闘ですか。問題ないでしょう。カミーユ様は女性に手を上げることは嫌がるでしょうけど、あちらは代理人を立てるでしょうし」
事情を説明するとバルバラはあっさりとそう答えた。カミーユ本人が出ても負けるとは微塵も思っていない強い目で。
……まあ、そうだよね。バルバラとカミーユの剣の稽古を見て、領軍の兵士たちがビビってたくらいだし。
それを思い出してアレクはふっと口元を緩めた。
「わかった。じゃあ正直に話すことにするよ。何か心配事はあるかな?」
「カミーユ様はご自分専用の剣をお持ちではありません。決闘ということならぜひともいい武器を誂えたいところですが、時間がございませんし」
バルバラは決闘がすでに決まったとばかりに、剣の心配をしている。
たしかに、稽古用に使っているのは量産品の丈夫なだけの安い剣だ。ただ、新しいものを職人に鍛えてもらう時間はない。
魔法が専門なので剣の善し悪しがわからないアレクはバルバラに問いかけた。
「バルバラならいい剣を選べる? 僕の剣がいくつかあるんだけど、使えそうならカミーユにあげてしまっていいよ。見繕ってくれないかな」
この国では力がものを言うので、祝い事の贈り物は武具や武器などが多い。一応第一王子という身分なので、アレクも父母を始めあちこちから何かしらで剣を贈られている。
魔法専門だから剣なんてまず使わないからなあ……。一応手入れはしてもらってるけどさっぱり価値がわからない。嫌がらせみたいに僕が扱えない大剣とか贈ってくる奴もいたし。
「かしこまりました」
武具の管理をしている侍従に声をかけて、アレクの所有している剣を持って来させた。
それを見てバルバラは少し興奮したように目を輝かせていた。やはり普段侍女をしていてもかつて無双と言われた剣士だったのだから血が騒ぐのかもしれない。
「これは……素晴らしいものばかりですね」
「残念なのは僕が使いこなせないってことだけかもしれないね」
「殿下は魔法がお得意なのですから必要ないのでしょうけれど……これほどの剣を寝かせておくのは惜しいですね」
バルバラは一振りずつ抜いて造りを確かめている。
「いずれは全部カミーユにあげてもかまわない。でも、一度に渡したら遠慮するだろうし、とりあえず一本選んでくれる?」
「かしこまりました。ではこちらがよろしいかと」
バルバラは一番飾り気のない長剣を選んだ。
それはアレクの成人祝いだと父が贈ってくれたものだった。
確か凄く貴重な鋼が手に入ったとか言ってたな……。
その剣をバルバラが迷わず選んだということは、よほどいいものだったんだ。父は僕のことを気にかけてくださったんだな。
アレクはその剣をカミーユへの贈り物にすることに決めた。
カミーユは代理人を立てたりせず自分が戦うことを選ぶという予想はしていたけれど、それをバルバラも確信しているのがわかった。
穏やかで世間知らずで優しいのに、向上心が強くて剣術に関しては譲らない印象がある。それはそれで可愛らしいんんだけど。
僕の時は【祝福】をくれた。そのお返しには足りないけれど。
この剣を振るうカミーユを見てみたい、と思ってしまう。
「……ところで、バルバラ。カミーユにはいつまで黙っておく気なの?」
他の剣を片付けてからアレクはふと思い出して問いかけた。
「はて? 何のことでございますか?」
「カミーユのドレスやコルセットに重りをつけてたこと」
バルバラはそれを聞いて口元に笑みを浮かべる。
「お気づきでしたか」
「うん……僕はご婦人の服には詳しくないけど、カミーユが身につけていたコルセットやドレスは異常に重かった。バルバラが仕込んだんでしょ?」
最初にカミーユを塔から連れ出した時、宿屋で着替えさせてからカミーユが着ていたドレスを置いた椅子を動かそうとして気づいた。
ただでさえドレスは動きにくいのに、こんなに重いなんておかしい。
探ってみるとドレープや縫い目に紛れて金属が仕込まれている。コルセットに至っては、芯が金属でできている。
カミーユは塔にいたころはこの窮屈なドレスで剣術の稽古をしていたと言っていた。まさか、こんな重いドレスでやっていたのか?
それでバルバラを問いただしたいと思っていたけれど、彼女はいつもカミーユの側にいるからなかなか訊けなかった。
「狭い塔の中でできる鍛錬は限られていましたから。少しずつドレスに重りを仕込んでいたのです。ただ、カミーユ様は素直なご性分なので全く気づいていなかったようです」
「だよねえ……この国に来てから身体が軽いって喜んでたし」
この国に来てからはアレクが仕立て屋に指示して軽くてコルセットがなくても身体の線が出ない服を作らせている。
けれど、ついこの間まで身体に重りを纏わされて【祝福】を与えられたバルバラと剣の稽古をしていたのだ。しかも年嵩とはいえバルバラは亜人の中でも最強種だ。
……勝てないって悔しがっていたけど、これって詐欺じゃないか。
人族でバルバラに対等に打ち合いができるだけで相当凄いことだけど、カミーユは勝つつもりだったんだよね。
「ただ、その小細工もカミーユ様も上手くなられると意味がなかったようで、次第にこちらも加減が利かずうっかりお体に痣をつけてしまったりして、申し訳なくは思っておりました」
「……え?」
アレクが訪れるたびにカミーユはあちこちに痣を作っていた。自分が未熟だからだと本人は言っていたけれど、それは手加減無しにバルバラが相手をしたということだったのか。
重りのついたドレスを身につけているにもかかわらず、バルバラと真剣勝負をしていたということ? いや待って。相手は最強種の亜人なんだけど。しかも、カミーユは彼女に【祝福】まで与えているのに?
「もしかして、カミーユってかなり強い……?」
「少なくとも、剣術に関しては人族には敵はいないでしょう。本人はまったくご存じではありませんけれど」
バルバラはそう言いながらどこか誇らしげに見えた。
……淑女教育もそうだけど、なんて育て方をされてたんだ。カミーユは。
そう思うとアレクの背筋に冷たいものが触れた気がした。
「でも……せっかくきちんと強くなっているのなら、この前の【祝福】の件もそうだけど、ちゃんとドレスのことも説明しておいたほうが良くない? あんまり欺すようなことしてたらグレちゃうかもしれないよ?」
「大丈夫でしょう。カミーユ様は素直な方ですから。話したとしても訓練だと説明すれば納得なさいます」
バルバラはドレスの細工がバレても、カミーユに嫌われたりしないと自信を持っているようだった。確かにカミーユはたまにバルバラのことを愚痴るけれど本気で嫌ってはいない様子だった。
母親も父親も知らずに育ったカミーユにとってバルバラは大切な家族なんだろう。その自信が羨ましい。
それに。
「そうなんだよ……素直なんだ。無邪気に最近身体が軽いって喜んでるのを見てると、可愛くて可愛くて。僕も何にも言えないんだよ……」
自分より逞しくて力強い男なのに、なよなよしているわけでもないのに、カミーユはどこのご令嬢よりも可愛く思える。
バルバラは少し目を細めて、アレクの顔を見上げてきた。
「殿下はカミーユ様を存分に甘やかしてくださいませ。憎まれ役はこの婆が全て引き受けますので」
「……カミーユがバルバラを憎むわけないじゃないか」
そう答えたらバルバラはふっと得意げな笑みをこぼした。
カミーユの紺碧の瞳は穏やかに凪いだ海の水面のようで。どんな感情を抱いてもそれを全て受け入れてしまうかのように思える。
けど、彼はそうするしかなかったんだ。辛いとも苦しいともこぼす相手がいなかった。
王女と偽って育てられて、そして、幽囚として塔に閉じこめられて。それを全て自分の内に取り込んできた。あの深い色の瞳を見つめているとそんな気がする。
彼は驚くほど無垢で素直で、優しい青年だ。
これからも彼が辛い思いをしたり、今回の決闘のように逆恨みされることもあるだろう。
……僕にできることがあるのなら。そりゃあもう、滅茶苦茶に甘やかしてあげたいけど。それ以上に彼のことを守れるように僕も強くなりたい。
「まあ……もちろん、僕はこの国の歴史上最高に妃を甘やかす気は満々だからね。周囲がどん引きしても構わないくらいに。そこは協力してもらうよ? バルバラ」
アレクがそう言うと、バルバラは一礼してから答えた。
「もちろんでございます。殿下のお心のままに」
ドレスのことをいずれカミーユが知ることになっても、ちょっとだけむくれた顔をするかもしれないけれどそれでも怒らないだろう。バルバラが言うとおりに。
……ああもう、カミーユはそんな様子もきっと可愛いだろう。
部屋でせっせと刺繍をしていたカミーユにアレクが問いかけると、彼は軽く首を傾げた。
「構いませんけど、何か不始末でも?」
「いやいや、ちょっと頼みたいことがあるだけだから」
アレクは慌てて否定した。
何かあったとしても、かの伝説の「血まみれ熊騎士バルバラ」に僕がお説教できるわけないじゃん。無理。
確認したのもバルバラは形式的にはカミーユが祖国から連れてきた侍女だからというだけで、別にお説教するつもりもない。
「じゃあ、バルバラ。ちょっと来てくれるかな」
そう声をかけるとカミーユの側に控えていた小柄な侍女は一礼してこちらに歩いてきた。
アレクは自分の事を過大評価はしていない。だから、自分が王太子に決まったことで、今後もあれやこれやと難癖をつけて決闘を申し込んで来る輩はいるだろうと覚悟していた。
けれど、カミーユが王太子妃に決まったことにケチをつけてくる者がいるとは思わなかった。決闘の申し込みが届いてからそれに気づいて、自分の迂闊さを悔やんだ。
王太子争いで負けた異母弟レイモンドの婚約者マーガレット嬢。まあ、きっと決闘は実家の思惑なんだろうけれど。
「決闘ですか。問題ないでしょう。カミーユ様は女性に手を上げることは嫌がるでしょうけど、あちらは代理人を立てるでしょうし」
事情を説明するとバルバラはあっさりとそう答えた。カミーユ本人が出ても負けるとは微塵も思っていない強い目で。
……まあ、そうだよね。バルバラとカミーユの剣の稽古を見て、領軍の兵士たちがビビってたくらいだし。
それを思い出してアレクはふっと口元を緩めた。
「わかった。じゃあ正直に話すことにするよ。何か心配事はあるかな?」
「カミーユ様はご自分専用の剣をお持ちではありません。決闘ということならぜひともいい武器を誂えたいところですが、時間がございませんし」
バルバラは決闘がすでに決まったとばかりに、剣の心配をしている。
たしかに、稽古用に使っているのは量産品の丈夫なだけの安い剣だ。ただ、新しいものを職人に鍛えてもらう時間はない。
魔法が専門なので剣の善し悪しがわからないアレクはバルバラに問いかけた。
「バルバラならいい剣を選べる? 僕の剣がいくつかあるんだけど、使えそうならカミーユにあげてしまっていいよ。見繕ってくれないかな」
この国では力がものを言うので、祝い事の贈り物は武具や武器などが多い。一応第一王子という身分なので、アレクも父母を始めあちこちから何かしらで剣を贈られている。
魔法専門だから剣なんてまず使わないからなあ……。一応手入れはしてもらってるけどさっぱり価値がわからない。嫌がらせみたいに僕が扱えない大剣とか贈ってくる奴もいたし。
「かしこまりました」
武具の管理をしている侍従に声をかけて、アレクの所有している剣を持って来させた。
それを見てバルバラは少し興奮したように目を輝かせていた。やはり普段侍女をしていてもかつて無双と言われた剣士だったのだから血が騒ぐのかもしれない。
「これは……素晴らしいものばかりですね」
「残念なのは僕が使いこなせないってことだけかもしれないね」
「殿下は魔法がお得意なのですから必要ないのでしょうけれど……これほどの剣を寝かせておくのは惜しいですね」
バルバラは一振りずつ抜いて造りを確かめている。
「いずれは全部カミーユにあげてもかまわない。でも、一度に渡したら遠慮するだろうし、とりあえず一本選んでくれる?」
「かしこまりました。ではこちらがよろしいかと」
バルバラは一番飾り気のない長剣を選んだ。
それはアレクの成人祝いだと父が贈ってくれたものだった。
確か凄く貴重な鋼が手に入ったとか言ってたな……。
その剣をバルバラが迷わず選んだということは、よほどいいものだったんだ。父は僕のことを気にかけてくださったんだな。
アレクはその剣をカミーユへの贈り物にすることに決めた。
カミーユは代理人を立てたりせず自分が戦うことを選ぶという予想はしていたけれど、それをバルバラも確信しているのがわかった。
穏やかで世間知らずで優しいのに、向上心が強くて剣術に関しては譲らない印象がある。それはそれで可愛らしいんんだけど。
僕の時は【祝福】をくれた。そのお返しには足りないけれど。
この剣を振るうカミーユを見てみたい、と思ってしまう。
「……ところで、バルバラ。カミーユにはいつまで黙っておく気なの?」
他の剣を片付けてからアレクはふと思い出して問いかけた。
「はて? 何のことでございますか?」
「カミーユのドレスやコルセットに重りをつけてたこと」
バルバラはそれを聞いて口元に笑みを浮かべる。
「お気づきでしたか」
「うん……僕はご婦人の服には詳しくないけど、カミーユが身につけていたコルセットやドレスは異常に重かった。バルバラが仕込んだんでしょ?」
最初にカミーユを塔から連れ出した時、宿屋で着替えさせてからカミーユが着ていたドレスを置いた椅子を動かそうとして気づいた。
ただでさえドレスは動きにくいのに、こんなに重いなんておかしい。
探ってみるとドレープや縫い目に紛れて金属が仕込まれている。コルセットに至っては、芯が金属でできている。
カミーユは塔にいたころはこの窮屈なドレスで剣術の稽古をしていたと言っていた。まさか、こんな重いドレスでやっていたのか?
それでバルバラを問いただしたいと思っていたけれど、彼女はいつもカミーユの側にいるからなかなか訊けなかった。
「狭い塔の中でできる鍛錬は限られていましたから。少しずつドレスに重りを仕込んでいたのです。ただ、カミーユ様は素直なご性分なので全く気づいていなかったようです」
「だよねえ……この国に来てから身体が軽いって喜んでたし」
この国に来てからはアレクが仕立て屋に指示して軽くてコルセットがなくても身体の線が出ない服を作らせている。
けれど、ついこの間まで身体に重りを纏わされて【祝福】を与えられたバルバラと剣の稽古をしていたのだ。しかも年嵩とはいえバルバラは亜人の中でも最強種だ。
……勝てないって悔しがっていたけど、これって詐欺じゃないか。
人族でバルバラに対等に打ち合いができるだけで相当凄いことだけど、カミーユは勝つつもりだったんだよね。
「ただ、その小細工もカミーユ様も上手くなられると意味がなかったようで、次第にこちらも加減が利かずうっかりお体に痣をつけてしまったりして、申し訳なくは思っておりました」
「……え?」
アレクが訪れるたびにカミーユはあちこちに痣を作っていた。自分が未熟だからだと本人は言っていたけれど、それは手加減無しにバルバラが相手をしたということだったのか。
重りのついたドレスを身につけているにもかかわらず、バルバラと真剣勝負をしていたということ? いや待って。相手は最強種の亜人なんだけど。しかも、カミーユは彼女に【祝福】まで与えているのに?
「もしかして、カミーユってかなり強い……?」
「少なくとも、剣術に関しては人族には敵はいないでしょう。本人はまったくご存じではありませんけれど」
バルバラはそう言いながらどこか誇らしげに見えた。
……淑女教育もそうだけど、なんて育て方をされてたんだ。カミーユは。
そう思うとアレクの背筋に冷たいものが触れた気がした。
「でも……せっかくきちんと強くなっているのなら、この前の【祝福】の件もそうだけど、ちゃんとドレスのことも説明しておいたほうが良くない? あんまり欺すようなことしてたらグレちゃうかもしれないよ?」
「大丈夫でしょう。カミーユ様は素直な方ですから。話したとしても訓練だと説明すれば納得なさいます」
バルバラはドレスの細工がバレても、カミーユに嫌われたりしないと自信を持っているようだった。確かにカミーユはたまにバルバラのことを愚痴るけれど本気で嫌ってはいない様子だった。
母親も父親も知らずに育ったカミーユにとってバルバラは大切な家族なんだろう。その自信が羨ましい。
それに。
「そうなんだよ……素直なんだ。無邪気に最近身体が軽いって喜んでるのを見てると、可愛くて可愛くて。僕も何にも言えないんだよ……」
自分より逞しくて力強い男なのに、なよなよしているわけでもないのに、カミーユはどこのご令嬢よりも可愛く思える。
バルバラは少し目を細めて、アレクの顔を見上げてきた。
「殿下はカミーユ様を存分に甘やかしてくださいませ。憎まれ役はこの婆が全て引き受けますので」
「……カミーユがバルバラを憎むわけないじゃないか」
そう答えたらバルバラはふっと得意げな笑みをこぼした。
カミーユの紺碧の瞳は穏やかに凪いだ海の水面のようで。どんな感情を抱いてもそれを全て受け入れてしまうかのように思える。
けど、彼はそうするしかなかったんだ。辛いとも苦しいともこぼす相手がいなかった。
王女と偽って育てられて、そして、幽囚として塔に閉じこめられて。それを全て自分の内に取り込んできた。あの深い色の瞳を見つめているとそんな気がする。
彼は驚くほど無垢で素直で、優しい青年だ。
これからも彼が辛い思いをしたり、今回の決闘のように逆恨みされることもあるだろう。
……僕にできることがあるのなら。そりゃあもう、滅茶苦茶に甘やかしてあげたいけど。それ以上に彼のことを守れるように僕も強くなりたい。
「まあ……もちろん、僕はこの国の歴史上最高に妃を甘やかす気は満々だからね。周囲がどん引きしても構わないくらいに。そこは協力してもらうよ? バルバラ」
アレクがそう言うと、バルバラは一礼してから答えた。
「もちろんでございます。殿下のお心のままに」
ドレスのことをいずれカミーユが知ることになっても、ちょっとだけむくれた顔をするかもしれないけれどそれでも怒らないだろう。バルバラが言うとおりに。
……ああもう、カミーユはそんな様子もきっと可愛いだろう。
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