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帰宅のはずが…

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「本当にすまない、妹を甘やかしすぎたようだ」

4人はサロンに移動をし、グウィエンは謝り倒している。

「情報が甘いぞグウィエン。婚約者がいないから妹の恋を後押ししようとしたのだろうが、ティタンはもう伴侶を見つけた」
「ぐっ、反論は出来ん。本当に二人には不愉快な思いをさせてしまった」

困り顔が大きいワンコが叱られた時とそっくりで、ミューズも溜飲を下げる。

「もう良いのですよグウィエン様。あなたが悪いわけではないですし」
「いやダメだ、許しません」

ぶっきらぼうにティタンに言い放たれ、グウィエンは目を潤ませる。

「ティタン、本当に悪かった。だから…」
「ミューズは甘味が好きです」
グウィエンの言葉を遮る。

「ですので、許して欲しければこの国のスイーツをミューズに出してください。ミューズ、シェスタには珍しいスイーツが沢山ある。グウィエン様がきっと自慢のものをご馳走してくれるはずだ」

その言葉にグウィエンは安堵したようだ。
「任せろ!」



薄く氷を削ぎ、果汁をかけ、果物で彩られた物や、果実水を固め中には瑞々しい果物が入ったもの。

牛の乳を冷やし固め、滑らかなクリーム状にしているもの。

暑いこの国でピッタリだ。

「独自の魔道具を用いて食材の冷蔵保存が出来ているのだ。なのでこういうスイーツを作れる」

初めて食べるスイーツに目を輝かせて食べている。
「一気に食べすぎると体が冷えすぎるからな、ゆっくりとこちらも摘みながら食べるといい」

可愛らしい小さなクッキーも出される。
口にいれるとほろほろ崩れ、程よく口内が温まる。

「ありがとうございます」
美味しさについ表情が緩んでしまう。

たくさんのスイーツに囲まれ、ミューズは幸せいっぱいだった。

「そんなに喜んでもらえるとこちらも嬉しいな、こいつらは全くそういう顔をしてくれない。そうだお土産も持っていってくれ」

用意させたのは可愛らしい小箱だ。

「氷魔法を応用して作った土産用の箱だ。中にはスイーツが入っている。開けてしまったり、一週間程経つと効力が切れるからその後は小物入れなどに使ってくれ」
不思議なお土産にテンションが上がってしまう。

「あのグウィエン様、図々しいお願いではあるのですが、こちらもう一つ貰えます?」
「もちろん」
気に入ってもらえたようでとニコニコしている。

「先生にもあげたいのです。私が森を離れた後お忙しい中魔の森の管理をしてくれたのです」
「先生とは、森の術師殿か」
エリックの問いにティタンが応える。

「そうです。そして彼女の育ての親でもあるので、近々俺も婚約の挨拶に行きたいと思ってました」

戦後の処理に追われ、まだ一度も森に帰れてない。

「今度一緒にいこう、しっかりと無事な姿を見せないとな」
「はい」



アドガルムへ戻り、ティタンもミューズとは別で訪問用に手土産を買う。

しばらくぶりの転移術で久々に森の家まで帰ってきた。

ノックをすると少し置いてドアが開く。



「あぁお前か。結界が反応しなかったから人が来たのに気づかなかった」

出てきたのはジュエルではなく、違う男だ。

「お帰り、とりあえず入りな」
「サミュエル、あなたが何故ここに?」
促され二人は家の中に入る。

急に現れた男に、そして親しげな口調にティタンは警戒心を強めた。

事前に術師の先生は女性だと聞いていたので、尚更警戒している。

「ミューズの代わりにここの任をお願いされた。先生はお忙しくてな、長くいられなかったんだよ」
くわぁとあくびをして、椅子に腰掛ける。

「そうなのね、お土産持ってきたのに」
「仕方ないさ。今はムシュリウの後始末で忙しい。
失踪したはずの元弟子がやらかしたからな。少しでもと復興の手伝いに行ったらしい」
「あっ…」

イーノのことを思い出し、しょんぼりとする。

「まずゆっくり話そう、そちらのティタン殿も良ければ聞かせてほしい。
俺とミューズとイーノは同じ孤児院にいたんだが、ムシュリウで何があったのか。俺はここから動けず先生も忙しくて滅多に通信も来なくて内情がさっぱりだ、話くらい聞かせてくれ」

ティタンとミューズは戦であったことや、終戦後の尋問で聞いたことを説明していく。
イーノが何故あのような事になってしまったのか。

ジュリアに孤児院を出るよう促されたので、イーノは魔力の高さを売りに、自分を大事にしてくれる国を探した。

喧嘩の原因は魔力の高い者は偉いのだと、孤児院にて偉ぶっていた事によるものだ。
それが人を傷つけるまでなればそのままにしてはおけない。

反省するか、別な孤児院に移るか。
どちらも選ばなかったイーノは孤児院を飛び出していった。

得た知識からムシュリウなら魔法大国だし、魔力の高い自分の凄さをすぐに認めてもらえると思い行ったらしい。

狙い通りムシュリウはイーノを登用し、魔力の高さに優遇した。
それに加え魔道具作りの才能も目覚め、メキメキと頭角を現したのだ。

それだけでは飽き足らず国王陛下を陥落し、女の武器で権力も手にする。

シェスタの特殊な魔道具の力を欲し、今回戦になったようだ。

「ミューズ、ティタン殿。彼女の暴走を止めてくれてありがとう」
深々とサミュエルは頭を下げた。

「イーノは人一倍承認欲求が強く、孤児院でも自分が上に立ちたいと思っていた。先生は皆仲良くしてほしいといつも話をしてたんだけど…」

残念ながら国家転覆の罪で死罪は免れないだろう。

「自業自得だが、先生の気持ちを思うとやるせないな。俺から伝えようかと思ったが、ミューズが直接話したほうが良さそうだ。戻ってきたら通信石で知らせるよ」
「?私がここに戻ってきたのよ、サミュエルも戻るんじゃないの?」
「さっき俺がお前の代わりに術師の任を受けたって言っただろ?ミューズがここを出ていくんだよ」

思いも寄らない言葉にミューズは大声で叫んでしまった。


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