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番外編:二面性隷従従者と片恋護衛術師②
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「言いたいことや目的はわかるけれど、それでは手段がよくないわ」
キュアは諭すように話していく。
「エリック様が絡むとあなたは盲目的になってしまうけれど、落ち着いてほしいの。それで不幸な子を作ってしまってはレナン様が悲しむし、ひいてはエリック様も悲しむから」
「それは良くないですね……」
ニコラは少し俯き考える素振りを見せてくれた。
エリックの名を出せば二コラは一旦立ち止まってくれるので、そこは助かる。
「ですが養子の件は譲れません」
ニコラは不意にキュアの頬に触れる。
思わぬ行動にキュアは固まってしまった。
「僕とそのような行為が出来ますか?」
眼鏡の奥の黒い瞳が真っ直ぐにキュアを映していた。
光はなく感情も読み取れない、昏い目だ。
「それは、無理……かも」
こうして触れられて嫌悪はないが、好意もない。
そしてニコラからの愛情も感じられない。
「ですよね。だから養子は取りましょう」
ニコラの手が今度はキュアの肩に移る。
「……うん」
温かい手の温もりにちょっとだけキュアは戸惑った。
こんなに近くまで異性が寄ることは早々ない。
(今無理って思ったところじゃない!)
長く一緒に働いているからそういう意味での情はあるだろうが、胸の奥がムズムズするような変な気持ちだ。
「あなたとは目指す場所が似てる同士だと思っています。主を思う強い気持ちに共感出来ますし、長年一緒に働いていますので気心もしれている。だからこれからも僕の発言で気になることがあったら言ってください。話し合いましょう」
ニコラは真面目な顔でそう言った。
「僕とではまともな家庭は作れないでしょうから、せめてあなたや家族となる者が幸せになれるように頑張ります。良い結婚生活を送りましょう」
「なかなかズルい事いうわねぇ」
契約結婚だし、まともな夫婦にはおそらくなり得ない。
でもこちらを思い遣る気持ちはあるようだ、だから幸せにするなんて言えるのだろう。
「その幸せの中に、あなたは含まれている?」
「僕はエリック様の元に居られればそれだけで幸せですから」
その忠誠は揺るぎないものだ。
(それ以外にも色々な幸せがあると思うけど、今のニコラではそんな事を言っても変わらなそうね)
折角家族になるのだから、ニコラもぜひ幸せにしてあげたい。
「そう言えばあたし、あなたの好きなものや趣味を全然知らないわ」
はたと気づく。
これだけ共に過ごし、話をしてきたが、仕事以外の話は覚えていない。
雑談はキュアとオスカーがしていて、ニコラは相槌を打つか静かに聞くばかりだ。
エリックとニコラの会話でもそう。仕事の話以外は主の言葉に耳を傾けるしかしていないことを思い出す。
「まずは話し合いね、ちょっとずつお互いを知っていきましょう」
俄然やる気になるキュアにニコラは戸惑う。
「僕に関して知ろうとしなくていいですよ? 必要な情報はもう既に知ってるでしょう、ほら家族構成とか生い立ちとか」
「もっと深い情報を教えてほしいの。仕事仲間以上にならなきゃ、家族とは言えないでしょ」
それぞれの複雑な事情はお互いに共有し、強固な絆はある。
でもキュアはそれ以外の事も知りたいのだ。
「……驚きだわ。あたしレナン様以外に興味持ってる。しかもニコラなんて」
自分の行動に首を傾げ、キュアは唸る。
「僕も驚いていますよ。あなたがこのように迫る人とは思っていませんでした」
「じゃあ契約結婚はなしにする?」
「それもまた面倒くさいと思います。まずレナン様を泣かせてしまう事が目に見えている、多分離縁は無理かと」
契約結婚だとは伝えたが、レナンはきっと本心でそうは思っていない。
最初の報告からの祝福っぷりからそんな感じだ。
「レナン様を泣かせたら、それこそエリック様に放り出されてしまう。それは避けたいのですが」
「あたしも泣くレナン様も、静かに怒るエリック様は見たくないわね」
期待は裏切りたくないし、エリックの不興を買うのはごめんだ。
「見誤りましたかね」
「まぁいいじゃない。他に適当な人もいないんだから」
キュアはすっと手を出した。
「今更撤回は難しいし、仲良くやるしかないでしょ? よろしくね、旦那様」
「わかりましたよ、奥様」
軽い握手を交わした後は急いで他の話し合いに移った。
その後は大きな意見の相違もなく、またお互いのしたい事、したくない事、好きな事嫌いなものをさらけ出していく。
「そうそう大事な事なんだけど、あたしグウィエン様苦手なんで」
「僕もです。心根は良い人なのでしょうが、軽薄な態度が受け付けませんね」
そこはすんなりと一致した。
キュアは諭すように話していく。
「エリック様が絡むとあなたは盲目的になってしまうけれど、落ち着いてほしいの。それで不幸な子を作ってしまってはレナン様が悲しむし、ひいてはエリック様も悲しむから」
「それは良くないですね……」
ニコラは少し俯き考える素振りを見せてくれた。
エリックの名を出せば二コラは一旦立ち止まってくれるので、そこは助かる。
「ですが養子の件は譲れません」
ニコラは不意にキュアの頬に触れる。
思わぬ行動にキュアは固まってしまった。
「僕とそのような行為が出来ますか?」
眼鏡の奥の黒い瞳が真っ直ぐにキュアを映していた。
光はなく感情も読み取れない、昏い目だ。
「それは、無理……かも」
こうして触れられて嫌悪はないが、好意もない。
そしてニコラからの愛情も感じられない。
「ですよね。だから養子は取りましょう」
ニコラの手が今度はキュアの肩に移る。
「……うん」
温かい手の温もりにちょっとだけキュアは戸惑った。
こんなに近くまで異性が寄ることは早々ない。
(今無理って思ったところじゃない!)
長く一緒に働いているからそういう意味での情はあるだろうが、胸の奥がムズムズするような変な気持ちだ。
「あなたとは目指す場所が似てる同士だと思っています。主を思う強い気持ちに共感出来ますし、長年一緒に働いていますので気心もしれている。だからこれからも僕の発言で気になることがあったら言ってください。話し合いましょう」
ニコラは真面目な顔でそう言った。
「僕とではまともな家庭は作れないでしょうから、せめてあなたや家族となる者が幸せになれるように頑張ります。良い結婚生活を送りましょう」
「なかなかズルい事いうわねぇ」
契約結婚だし、まともな夫婦にはおそらくなり得ない。
でもこちらを思い遣る気持ちはあるようだ、だから幸せにするなんて言えるのだろう。
「その幸せの中に、あなたは含まれている?」
「僕はエリック様の元に居られればそれだけで幸せですから」
その忠誠は揺るぎないものだ。
(それ以外にも色々な幸せがあると思うけど、今のニコラではそんな事を言っても変わらなそうね)
折角家族になるのだから、ニコラもぜひ幸せにしてあげたい。
「そう言えばあたし、あなたの好きなものや趣味を全然知らないわ」
はたと気づく。
これだけ共に過ごし、話をしてきたが、仕事以外の話は覚えていない。
雑談はキュアとオスカーがしていて、ニコラは相槌を打つか静かに聞くばかりだ。
エリックとニコラの会話でもそう。仕事の話以外は主の言葉に耳を傾けるしかしていないことを思い出す。
「まずは話し合いね、ちょっとずつお互いを知っていきましょう」
俄然やる気になるキュアにニコラは戸惑う。
「僕に関して知ろうとしなくていいですよ? 必要な情報はもう既に知ってるでしょう、ほら家族構成とか生い立ちとか」
「もっと深い情報を教えてほしいの。仕事仲間以上にならなきゃ、家族とは言えないでしょ」
それぞれの複雑な事情はお互いに共有し、強固な絆はある。
でもキュアはそれ以外の事も知りたいのだ。
「……驚きだわ。あたしレナン様以外に興味持ってる。しかもニコラなんて」
自分の行動に首を傾げ、キュアは唸る。
「僕も驚いていますよ。あなたがこのように迫る人とは思っていませんでした」
「じゃあ契約結婚はなしにする?」
「それもまた面倒くさいと思います。まずレナン様を泣かせてしまう事が目に見えている、多分離縁は無理かと」
契約結婚だとは伝えたが、レナンはきっと本心でそうは思っていない。
最初の報告からの祝福っぷりからそんな感じだ。
「レナン様を泣かせたら、それこそエリック様に放り出されてしまう。それは避けたいのですが」
「あたしも泣くレナン様も、静かに怒るエリック様は見たくないわね」
期待は裏切りたくないし、エリックの不興を買うのはごめんだ。
「見誤りましたかね」
「まぁいいじゃない。他に適当な人もいないんだから」
キュアはすっと手を出した。
「今更撤回は難しいし、仲良くやるしかないでしょ? よろしくね、旦那様」
「わかりましたよ、奥様」
軽い握手を交わした後は急いで他の話し合いに移った。
その後は大きな意見の相違もなく、またお互いのしたい事、したくない事、好きな事嫌いなものをさらけ出していく。
「そうそう大事な事なんだけど、あたしグウィエン様苦手なんで」
「僕もです。心根は良い人なのでしょうが、軽薄な態度が受け付けませんね」
そこはすんなりと一致した。
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