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第29話 狼の国 謀略
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マオが来て数日、出来る限り時間を使って街中を探したが、マオの探す人は見つからない。
「この街には居ないかもしれないですね」
しょんぼりした声にリオンも心が痛む。
人づてにあれやこれや探したが、手掛かりもない。
「そうだね、他の街にいるかもしれない。この近くだとラタの国が近いかな。次はそこを目指すといいかも。あそこは商人の国だし。色々な国と交流があるはずだよ」
見つからなかったがせめて次の手がかりになる様な情報は得られた。
「ありがとですリオン様。ここまで親身になって頂いて」
最初は親切にしておいて良からぬところに売られるのかと心配したが、そんな事もなく屋敷の皆も優しかった。だが気になる事がある。
数日しか滞在していないがどんどんと家具や使用人が減っているのだ。何かあったとしか思えない。
「あぁ。実はこの国を離れる準備をしていてね」
嫌な予感がするのだ。
リオンは自分の勘とそして国の治安悪化に伴い、屋敷の者達と移住することを決めていた。
「僕はすぐには行けないけれど、良かったらマオも一緒に行かないかい? さっき話をしたラタの方に移住先は見つけているんだ。馬車も用意しているし、マオくらいなら一緒に乗せられるよ」
「良いのですか?」
思わぬ提案にマオは喜んだ。
このまま一人で行くよりはリオン達と行けるというのは安心だし、そして情も沸いている。
見知らぬ自分にここまで手を掛けてくれたのだ、ぜひ恩返しもしたい。
「明後日僕は王城へ出向かなければならない。その後で追いかけるから、マオは先に皆と一緒に向かってて」
よしよしと頭を撫でるとマオは嬉しそうに目を細める。
喉を鳴らすような音が聞こえるが気のせいだろうか。
「皆と一緒だし、大丈夫だからね。必ず行くよ」
リオンはいつもと変わらない笑顔を見せた。
(いつまでも逃げることは出来ないよなぁ)
リオンは憂鬱な気持ちで食卓へ着いた。
マオもいない、親しい侍従たちもいない。
連れてきたのはカミュだけだ。
堅苦しい正装、重苦しい空気、今すぐにでも逃げ出したいが、表情は笑顔だ。
リオンの武器だ。
笑顔の裏に本当に気持ちは隠し、けして見せることはない。
「久しぶりだな」
「ギアン兄様」
リオンはすぐ上の兄を見る。
自分よりも背が高くがっしりとした体格。そして立派な尾と耳をしている。
狐と揶揄される自分よりも雄々しい。
「タウンハウスで過ごすことが多いようだが、それでは駄目だぞ。王族の自覚をもっと持て」
「申し訳ございません」
頭を下げつつ、眉間に皺が寄ってしまう。
(王族の自覚? 小さい頃は僕の事を出来損ないと馬鹿にしていたのに?)
体も小さく、体力のないリオンよくこの兄に虐められていた。
力がない分知識を身につけていたら、
「悪知恵を付けているのか。本当に狐みたいだな。誇り高き狼族なら、力で示せ」
と言われていたものだ。
だが、国を維持するには力ばかりではない。
長兄はそれをよく理解しており、文武両道であった。
「ところでリオン。最近叔父上と会ったか?」
直球な質問だ。
「いいえ。全く」
正直に答えたのだが、探る様な目を向けられる。
(どうせ誰かを監視役としてつけていただろうに、わざわざそんな事を聞くんだもの。本当に面倒だよね)
とっとと帰りたいが、それももう出来ないだろう。
夜逃げするように屋敷の者は逃がしたが、恐らく自分はもうここから出られない。
「叔父上に政権を握られるわけにはいかないからな」
(つまり僕を自分の方に引き入れたいんだよね)
食事が運ばれて目の前に置かれる。
(叔父様に会わないよう、あちらの味方をしないように今日の食事会に呼んだはずだ。つまりこの後僕を味方につける話をされるはず)
そう考えると食が進まない。
(でもどちらかの味方になっても、結局タウンハウスに帰ることは出来ないだろうな。実権を握るまでは安心できないだろうし)
ナイフとフォークを持ったままため息をついてしまった。
「うっ」
呻き声が上がる。
思わずハッと顔を上げると苦悶の表情のギアン。
「兄様?!」
その意変に思わずリオンは駆け寄る、血と食物を吐きながらギアンはのたうち回った。
「まさか毒? 兄様!!」
何とか吐き出させようと水を取ろうとするが、ギアンが何を口にしていたか分からず、毒物が入っているかもと躊躇ってしまう。
「とにかく出して! 医師はまだか!」
バタバタとした足音が聞こえてくる。そしてリオンは拘束された。
「何をする!」
「リオン様、ギアン様を毒殺しようとした容疑で拘束させてもらいます」
「なっ?!」
カミュに視線を移すとあちらも衛兵に阻まれていた。
「本日の会食を知りえたのはリオン様だけです。そしてあなたは料理に口を付けていなかった。毒物の混入を知っていて、食事を避けたのでは?」
「違う、考え事をしていただけだ!」
取り押さえてきた衛兵の顔を見てリオンは歯噛みする。
(こいつら、確か叔父様の派閥の……!)
ここでようやくリオンは嵌められたことに気づく。
「兄様!」
せめてギアンには助かって欲しい。
まさかこのような血なまぐさい展開になるとは思ってなかったのだ。
引きずられるようにしてリオンは衛兵たちに連れ出されてしまった。
「この街には居ないかもしれないですね」
しょんぼりした声にリオンも心が痛む。
人づてにあれやこれや探したが、手掛かりもない。
「そうだね、他の街にいるかもしれない。この近くだとラタの国が近いかな。次はそこを目指すといいかも。あそこは商人の国だし。色々な国と交流があるはずだよ」
見つからなかったがせめて次の手がかりになる様な情報は得られた。
「ありがとですリオン様。ここまで親身になって頂いて」
最初は親切にしておいて良からぬところに売られるのかと心配したが、そんな事もなく屋敷の皆も優しかった。だが気になる事がある。
数日しか滞在していないがどんどんと家具や使用人が減っているのだ。何かあったとしか思えない。
「あぁ。実はこの国を離れる準備をしていてね」
嫌な予感がするのだ。
リオンは自分の勘とそして国の治安悪化に伴い、屋敷の者達と移住することを決めていた。
「僕はすぐには行けないけれど、良かったらマオも一緒に行かないかい? さっき話をしたラタの方に移住先は見つけているんだ。馬車も用意しているし、マオくらいなら一緒に乗せられるよ」
「良いのですか?」
思わぬ提案にマオは喜んだ。
このまま一人で行くよりはリオン達と行けるというのは安心だし、そして情も沸いている。
見知らぬ自分にここまで手を掛けてくれたのだ、ぜひ恩返しもしたい。
「明後日僕は王城へ出向かなければならない。その後で追いかけるから、マオは先に皆と一緒に向かってて」
よしよしと頭を撫でるとマオは嬉しそうに目を細める。
喉を鳴らすような音が聞こえるが気のせいだろうか。
「皆と一緒だし、大丈夫だからね。必ず行くよ」
リオンはいつもと変わらない笑顔を見せた。
(いつまでも逃げることは出来ないよなぁ)
リオンは憂鬱な気持ちで食卓へ着いた。
マオもいない、親しい侍従たちもいない。
連れてきたのはカミュだけだ。
堅苦しい正装、重苦しい空気、今すぐにでも逃げ出したいが、表情は笑顔だ。
リオンの武器だ。
笑顔の裏に本当に気持ちは隠し、けして見せることはない。
「久しぶりだな」
「ギアン兄様」
リオンはすぐ上の兄を見る。
自分よりも背が高くがっしりとした体格。そして立派な尾と耳をしている。
狐と揶揄される自分よりも雄々しい。
「タウンハウスで過ごすことが多いようだが、それでは駄目だぞ。王族の自覚をもっと持て」
「申し訳ございません」
頭を下げつつ、眉間に皺が寄ってしまう。
(王族の自覚? 小さい頃は僕の事を出来損ないと馬鹿にしていたのに?)
体も小さく、体力のないリオンよくこの兄に虐められていた。
力がない分知識を身につけていたら、
「悪知恵を付けているのか。本当に狐みたいだな。誇り高き狼族なら、力で示せ」
と言われていたものだ。
だが、国を維持するには力ばかりではない。
長兄はそれをよく理解しており、文武両道であった。
「ところでリオン。最近叔父上と会ったか?」
直球な質問だ。
「いいえ。全く」
正直に答えたのだが、探る様な目を向けられる。
(どうせ誰かを監視役としてつけていただろうに、わざわざそんな事を聞くんだもの。本当に面倒だよね)
とっとと帰りたいが、それももう出来ないだろう。
夜逃げするように屋敷の者は逃がしたが、恐らく自分はもうここから出られない。
「叔父上に政権を握られるわけにはいかないからな」
(つまり僕を自分の方に引き入れたいんだよね)
食事が運ばれて目の前に置かれる。
(叔父様に会わないよう、あちらの味方をしないように今日の食事会に呼んだはずだ。つまりこの後僕を味方につける話をされるはず)
そう考えると食が進まない。
(でもどちらかの味方になっても、結局タウンハウスに帰ることは出来ないだろうな。実権を握るまでは安心できないだろうし)
ナイフとフォークを持ったままため息をついてしまった。
「うっ」
呻き声が上がる。
思わずハッと顔を上げると苦悶の表情のギアン。
「兄様?!」
その意変に思わずリオンは駆け寄る、血と食物を吐きながらギアンはのたうち回った。
「まさか毒? 兄様!!」
何とか吐き出させようと水を取ろうとするが、ギアンが何を口にしていたか分からず、毒物が入っているかもと躊躇ってしまう。
「とにかく出して! 医師はまだか!」
バタバタとした足音が聞こえてくる。そしてリオンは拘束された。
「何をする!」
「リオン様、ギアン様を毒殺しようとした容疑で拘束させてもらいます」
「なっ?!」
カミュに視線を移すとあちらも衛兵に阻まれていた。
「本日の会食を知りえたのはリオン様だけです。そしてあなたは料理に口を付けていなかった。毒物の混入を知っていて、食事を避けたのでは?」
「違う、考え事をしていただけだ!」
取り押さえてきた衛兵の顔を見てリオンは歯噛みする。
(こいつら、確か叔父様の派閥の……!)
ここでようやくリオンは嵌められたことに気づく。
「兄様!」
せめてギアンには助かって欲しい。
まさかこのような血なまぐさい展開になるとは思ってなかったのだ。
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