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第28話 狼の国 つかの間の平和
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「見つからないものだねぇ」
マオと共に街中を歩きながらそういう。
店や人通りの多いところで何か知る人はいないかと聞いて回っているのだが、それらしい話はない。
元よりそんなすぐに情報が入るとは思わなかったが、何も手がかりはないというのはやはり落ち込む。
「困ったです。本当にぼくを置いてどこに行ったのですか」
ぷんぷんと怒るマオは今日はズボンにシャツという格好だ。
髪も短いし、ぱっと見は猫族の男の子。リオンも今日は神を隠すように防止に押し込めて、口元を隠すようなスカーフを巻いている。
昨日は何も対策をしていなかったけれど、今日は余計なトラブルを引き寄せないようにと軽い変装をしているのだ。
一応王族なので。
「それにしても、その人はマオとどういう関係? 家族?」
豹族とは聞いたが、異種族同士の結婚なら兄弟姉妹でも特徴が分かれる。
あんなにボロボロになりながらも住み慣れた国を離れてまで探しに来たのだ。家族としか思えない。
「そうですね、家族です」
(嘘だ)
頬を赤らめるマオの様子にリオンの直感が働いた。
(恋人? 元カレ?)
何だか嫉妬めいた気持ちを抱いてしまう。そんな関係でもないし資格もないのに何故かそう思ってしまう。
「要するに大事な人という事だね」
「そうなのです」
マオが間髪入れずに答えるのを聞いて、やや不機嫌になる。
「意外と純情なんだなぁ、僕って」
思わず嘆息してしまう。
侍女以外でまともに話した女性は少ない。その中でもマオは王子と知っても気兼ねなく話をしてくれる。
リオンが王族らしくない、というのもあるかもしれないが、この猫族の細かいところを気にしない性格はだいぶリオンの心を軽くした。
(狼族は上下に厳しいからな)
リオンは王族でもその中では下のものだ。
実績もない、実力もないリオンは上辺では敬られても、実際に慕う者は少なかった。
人気があるのは長兄と次兄、故にリオンはなりを潜め、静かに暮らし、幼い頃よりタウンハウスに身を寄せたりしていた。
この屋敷は亡き父に貰ったものの中で一番のプレゼントであった
「リオン様?」
落ち込むリオンの顔を覗き込むようにマオは見つめる大きな黒い瞳はとても可愛らしい。
少し日に焼けたその肌は貴族のように綺麗ではないけれど、好感が持てる。元気の象徴だ。
「大丈夫、それよりも少し休む?」
「でもぼくお金持ってないですよ?」
「大丈夫、奢るよ」
気後れするマオの手を引き、リオンはケーキの店へと入る。
昨日甘いものを食べるマオが目を輝かせていたのを覚えていたから、スイーツの店が良いと思ったのだ。
「綺麗……」
店内もだが、ガラスケースに並べられた色とりどりのケーキに目を奪われる。
「こんなところ初めて入ったです」
「僕もだよ」
マオは生活が豊かではなかったから、そしてリオンは入る機会がなかったから。
異なる緊張を抱え、二人は案内された席に着く。
「あれは持ち帰り用なんだね。あとで皆に買って帰ろう」
「はいです」
うきうきとした気分でメニュー表を開くマオだが、耳が目に見えて垂れた。
「どうしたの?」
「あっいや、綺麗なケーキが多くて目移りしちゃうなって……」
どう見てもそうではなさそうだが。
「値段は気にしないで食べたいものを選ぶといいよ。こういう時に遠慮すると損するよ」
想定以上の値段に驚いたであろうマオに優しく声を掛ける。
「君が喜んでくれるなら、僕は嬉しい」
微笑まれ、マオは顔を赤くした。
(そんなに優しくしないで欲しいのです)
リオンと違って異性と話したことがない、というわけではないが、このように優しくされた経験はない。
気まぐれで施しを受けたりなどはあるが、見返りなくここまで自分の為に動いてくれたのは兄だけだ。
(兄さん……)
両親の顔なんて知らない。マオの家族は兄だけだった。
血の繋がりも本当にあるかもわからない、似ていない兄だ。
でも彼だけがマオに優しく、そしてマオを育てる為に何でもしてくれた。
ある時ぷつりと消息が切れた。
それにかこつけてマオを攫おうとしたものがいたからマオは逃げた。
本当は家で兄の帰りを待ちたかったけれど、それも出来なかった。
着の身着のまま逃げ出したマオは兄に教わった生きるための技術を使ってここまで来た。
兄について聞かれた時はそんな生活を話したくなくて目を逸らしてしまった。
こんな真っ当な生活をしてきたリオンにマオの薄汚れた人生を語るのは恥ずかしいからだ。
正直この国で破落戸に絡まれた時はもう死んでもいいと思った。
疲れすぎて考えることもしたくなかった。
それを何かの縁でこうしてこの国の王子に拾われ、こんな美味しいものまでご馳走になった。
嬉しいし幸せだけど、これもまたいつかなくなるのかと思うと恐怖を覚える。
(兄のようにリオン様も居なくなる?)
そんなことになったら、とても恐ろしいし、もう耐えられない。
頭を振って悪い考えをはね飛ばす。
精一杯のお礼を伝え、感謝の意を示す。
リオンは終始にこにことしていた。
優しく包みこむような声と態度に、マオも惹かれていく。
マオと共に街中を歩きながらそういう。
店や人通りの多いところで何か知る人はいないかと聞いて回っているのだが、それらしい話はない。
元よりそんなすぐに情報が入るとは思わなかったが、何も手がかりはないというのはやはり落ち込む。
「困ったです。本当にぼくを置いてどこに行ったのですか」
ぷんぷんと怒るマオは今日はズボンにシャツという格好だ。
髪も短いし、ぱっと見は猫族の男の子。リオンも今日は神を隠すように防止に押し込めて、口元を隠すようなスカーフを巻いている。
昨日は何も対策をしていなかったけれど、今日は余計なトラブルを引き寄せないようにと軽い変装をしているのだ。
一応王族なので。
「それにしても、その人はマオとどういう関係? 家族?」
豹族とは聞いたが、異種族同士の結婚なら兄弟姉妹でも特徴が分かれる。
あんなにボロボロになりながらも住み慣れた国を離れてまで探しに来たのだ。家族としか思えない。
「そうですね、家族です」
(嘘だ)
頬を赤らめるマオの様子にリオンの直感が働いた。
(恋人? 元カレ?)
何だか嫉妬めいた気持ちを抱いてしまう。そんな関係でもないし資格もないのに何故かそう思ってしまう。
「要するに大事な人という事だね」
「そうなのです」
マオが間髪入れずに答えるのを聞いて、やや不機嫌になる。
「意外と純情なんだなぁ、僕って」
思わず嘆息してしまう。
侍女以外でまともに話した女性は少ない。その中でもマオは王子と知っても気兼ねなく話をしてくれる。
リオンが王族らしくない、というのもあるかもしれないが、この猫族の細かいところを気にしない性格はだいぶリオンの心を軽くした。
(狼族は上下に厳しいからな)
リオンは王族でもその中では下のものだ。
実績もない、実力もないリオンは上辺では敬られても、実際に慕う者は少なかった。
人気があるのは長兄と次兄、故にリオンはなりを潜め、静かに暮らし、幼い頃よりタウンハウスに身を寄せたりしていた。
この屋敷は亡き父に貰ったものの中で一番のプレゼントであった
「リオン様?」
落ち込むリオンの顔を覗き込むようにマオは見つめる大きな黒い瞳はとても可愛らしい。
少し日に焼けたその肌は貴族のように綺麗ではないけれど、好感が持てる。元気の象徴だ。
「大丈夫、それよりも少し休む?」
「でもぼくお金持ってないですよ?」
「大丈夫、奢るよ」
気後れするマオの手を引き、リオンはケーキの店へと入る。
昨日甘いものを食べるマオが目を輝かせていたのを覚えていたから、スイーツの店が良いと思ったのだ。
「綺麗……」
店内もだが、ガラスケースに並べられた色とりどりのケーキに目を奪われる。
「こんなところ初めて入ったです」
「僕もだよ」
マオは生活が豊かではなかったから、そしてリオンは入る機会がなかったから。
異なる緊張を抱え、二人は案内された席に着く。
「あれは持ち帰り用なんだね。あとで皆に買って帰ろう」
「はいです」
うきうきとした気分でメニュー表を開くマオだが、耳が目に見えて垂れた。
「どうしたの?」
「あっいや、綺麗なケーキが多くて目移りしちゃうなって……」
どう見てもそうではなさそうだが。
「値段は気にしないで食べたいものを選ぶといいよ。こういう時に遠慮すると損するよ」
想定以上の値段に驚いたであろうマオに優しく声を掛ける。
「君が喜んでくれるなら、僕は嬉しい」
微笑まれ、マオは顔を赤くした。
(そんなに優しくしないで欲しいのです)
リオンと違って異性と話したことがない、というわけではないが、このように優しくされた経験はない。
気まぐれで施しを受けたりなどはあるが、見返りなくここまで自分の為に動いてくれたのは兄だけだ。
(兄さん……)
両親の顔なんて知らない。マオの家族は兄だけだった。
血の繋がりも本当にあるかもわからない、似ていない兄だ。
でも彼だけがマオに優しく、そしてマオを育てる為に何でもしてくれた。
ある時ぷつりと消息が切れた。
それにかこつけてマオを攫おうとしたものがいたからマオは逃げた。
本当は家で兄の帰りを待ちたかったけれど、それも出来なかった。
着の身着のまま逃げ出したマオは兄に教わった生きるための技術を使ってここまで来た。
兄について聞かれた時はそんな生活を話したくなくて目を逸らしてしまった。
こんな真っ当な生活をしてきたリオンにマオの薄汚れた人生を語るのは恥ずかしいからだ。
正直この国で破落戸に絡まれた時はもう死んでもいいと思った。
疲れすぎて考えることもしたくなかった。
それを何かの縁でこうしてこの国の王子に拾われ、こんな美味しいものまでご馳走になった。
嬉しいし幸せだけど、これもまたいつかなくなるのかと思うと恐怖を覚える。
(兄のようにリオン様も居なくなる?)
そんなことになったら、とても恐ろしいし、もう耐えられない。
頭を振って悪い考えをはね飛ばす。
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