【本編完結】獣人国での異種族婚

しろねこ。

文字の大きさ
27 / 60

第27話 狼の国 実態

しおりを挟む
 マオに食事を振る舞い、一息ついたところで話を切り出す。

「マオは何故この国に来たの?」

「この国が目的ではないのです。ぼくは人を探して各国を回っていたのですが、お金が無くなり途方に暮れていたのです。助けてもらえたことは本当に感謝しているです」
 深々と頭を下げ、感謝を述べる。

 このようにお腹いっぱいの食事などしばらくぶりだ。

「人探しか。それはどのような人?」

「豹族の特徴を持った人で、薄茶色の髪をした、目つきの鋭い人なのです。見かけた事はないですか?」
 マオにとって、とても大事な人だ。

「うーん、僕はしらないなぁ。カミュは」
 リオンの問いに顔を横に振る。

 一緒に話を聞いていた侍女たちも顔を横に振った。

「そうなのですか……」
 耳がぺたんと下がり、尻尾も力を失くす。

 獣人と言うものは身体での感情表現がわかり過ぎるなとリオンは思わず苦笑した。

「もし見かけたら教えてあげるよ。良かったら僕も探してあげる」

「リオン様?」
 カミュの方が驚いた。

 リオンにはそのような事をしている時間はない。急いですることが山のようにあるのだ。

「いいじゃないか。それにこの国に長居するのは危ない。それなら手伝って早く出国してもらった方がいいだろ?」

「この国に、何か問題があるですか?」
 マオはキョトンとした顔をする。

「うん。今凄く危ないの。下手したら戦争だ」
 絶やさぬ笑顔のままリオンは爆弾発言をした。







「恥ずかしながら、今のこの国は治安が悪い」
 リオンは諦めの表情だ。

「王が病気で死に、王太子は消えた。その王太子に子はいるけれどまだ小さい。しっかりとした後見人もいない。ならば後見人という立場、実質の次の王の座を二人の者が狙っている。王太子の弟である第二王子と、亡くなった国王の実の弟。二人は仲が悪く、貴族の派閥も同力程度に割れている」
 リオンは二人の為や国の為に何かをしようという気概が薄い。

 いなくなった王太子こそ国王に相応しいとリオンは今も思っているから、それ以外の者が王位についても支えようという気がないのだ

 誇り高いと言われた狼族がこうして平気で他の国の者や獣人を襲っているという事実に、軽い失望はしているが、そうなるのも納得な気持ちがある。

 絶対的な信頼を集めていた王太子の兄がいなくなり、大きな歪みが生まれてしまった。

 今では権力争いと税金の過剰徴収が横行している。止める者がいないとこんなことが平気で行なわれるのかと驚いた

 第二王子や王弟が代わりに指揮を揮っても立ち直れるかはわからない程荒廃している。

 それでも誰かが支えなくてはいけないのだが、お互いが足を引っ張り合うから、この不安定な情勢が長引いている。

 それに巻き込まれたくなくて、リオンはここ最近は王城に戻る事をせずに、街にある別邸にて過ごしているのだ。

 王族の義務を放棄しているとも言われるが、リオンもまた第三王子として微妙な立ち位置で苦悩していた。第二王子派と王弟派のどちらに付くかを何度も言われてきたので、頭が痛く、嫌なのである。

(兄様がいればな)
 実直で真面目な長兄が一番良かったとリオンは思う。

 ずっとリオンは兄が国王になると思って支えてきたし、彼のような男になりたかった。

「この国の為に共に頑張ろう。リオンの力が必要だ」
 長兄にそう言われ、頼りにされていると思ったからこそずっと頑張ってきた。

 体も小さく、力の弱いリオンの事も認めてくれ、言葉も意見も取り入れてくれて、見下されることもなかった。

 優しく、そして頼りになる兄が大好きだ。

 そんな兄が急に姿を消した。理由もわからず、生死もわからない。

「僕は国を捨てる気だ」
 そもそも長兄以外にリオンは認められていない。

 王族に生まれたのに小柄な体で威厳もないとよく言われる。

「狼? 狐だろ?」
 強いものの威を借る者と揶揄され、小賢しいだけで王族に到底相応しくないと馬鹿にされていた。

 リオンは国を捨てると言ったが、先にリオンを捨てたのは国だと思っている。

 こんな事態になるまで見向きもされたなかったのだから。

 今更国の為になれだなど言われても、死んでもごめんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...