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第32話 狼の国 真相
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「何?」
クレインは自分の腕にしがみつく人物に戸惑った。
見覚えもない猫族の少年、それが必死の形相で剣を振らせまいと掴まっている。
立てられた爪に痛みを覚え顔を顰める。
振りほどこうと腕を振るうが離れない。
「マオ!」
その隙をつきリオンも牢の入口に向かって駆け出した。
逃げるのではない、マオを助けるためにだ。
リオンの体が変化する。
その姿は青い狼だ。小柄ではあるが跳躍力は飛躍的に伸び、爪も牙も鋭い。
武器を持たないリオンにはそうするしか攻撃方法がない。
「くっ!」
クレインは向かってくるリオンに対し、その攻撃を躱す。勢いよく動かれたマオはとうとうしがみついていた手を離した。
「マオ!」
床に叩き落ちたマオの側に駆け寄り、威嚇するようにクレインに牙を向けた。
「いくら兄様でも許せない」
「待てリオン、俺はお前と話がしたくてここに来たのだ」
「話? 何を今更」
リオンは警戒を解かずにちらりとマオを見る。
痛みに顔は歪めているもののそれ程酷くはなさそうだ。
「俺はお前を殺す気はない、お前は可愛い弟だからな」
それこそ今更だ。
「あなたは国を捨てた、ならば僕を捨てたと同義だ」
クレインがいなくなり残されたリオンがどうなるか容易に想像できたはずだ。
甘言に飲まれるつもりはない。
「お待ちを、リオン様」
「カミュ?」
クレインに集中し過ぎていてわからなかったが、いつの間にか牢の外には大勢の者が集まっている。
「クレイン様は国を捨てたのではなく、再建したいそうなのです」
自分の部下の言葉にリオンは獣化を解く。
獣の姿だと、獣の本能に引きずられやすい。
話し合いをするならば、こちらの姿の方が良かった。
「詳しい話を聞かせてください兄様。ですがマオに手を出したことは許せません」
庇うように立つのを止めないリオンにカミュは嫌そうな顔をし、クレインは意外そうな顔をする。
「その少女は何者だ?」
見たところ平民の猫族だ。
「僕の大事な人です」
命の恩人だ、間違いではないだろう。
身を呈してリオンを守ろうとしたのだ、誤解を生む言い方をしたが、これでマオに手出しは出来ないはずだ。
クレインの後ろの者達も抜き身の武器を持っているし、カミュがいたとしても一斉に襲われたのでは防ぎようがない。
今出来る最大の方法でマオを守ろうと考えた結果、こうなった。
「リオンの大事な人?」
まさかそう言われるとは思ってなくて、クレインは戸惑うし、マオは顔を赤くしていた。
カミュなんかは青褪めている。
至極真面目な顔をしたリオンだけは冷静であった。
「では兄様、話してください。何を計画しているのかを」
クレインが失踪した理由、それは自身の命を狙う者がいたからだ。
王太子である自分の命を狙うのはまだいい。しかし、次代を担う息子まで狙われてはたまらないと考えた。
そして妻は身籠っている、何とかしなくてはと考えていた。
「外交に出た時に賊に襲われた。それを逆に利用して、行方をくらまし、誰が犯人なのかを捜していたのだ」
賊は返り討ちにしたが、生きているのか死んでいるのか分からない状態というのはやきもきするものだ。
クレインについてくれている貴族たちに情報を集めさせ、暗殺を目論んだものを見つけようと思ったのだが……
「予想外の者が犯人だったよ」
やや表情は翳りを帯びている。
「ギアン兄様? それとも叔父様ですか?」
どちらであってもおかしくはないが、クレインの声音からしたらそうではなさそうだ。
「シェリーだ」
「!!」
さすがに信じがたい人物であった。
クレインは自分の腕にしがみつく人物に戸惑った。
見覚えもない猫族の少年、それが必死の形相で剣を振らせまいと掴まっている。
立てられた爪に痛みを覚え顔を顰める。
振りほどこうと腕を振るうが離れない。
「マオ!」
その隙をつきリオンも牢の入口に向かって駆け出した。
逃げるのではない、マオを助けるためにだ。
リオンの体が変化する。
その姿は青い狼だ。小柄ではあるが跳躍力は飛躍的に伸び、爪も牙も鋭い。
武器を持たないリオンにはそうするしか攻撃方法がない。
「くっ!」
クレインは向かってくるリオンに対し、その攻撃を躱す。勢いよく動かれたマオはとうとうしがみついていた手を離した。
「マオ!」
床に叩き落ちたマオの側に駆け寄り、威嚇するようにクレインに牙を向けた。
「いくら兄様でも許せない」
「待てリオン、俺はお前と話がしたくてここに来たのだ」
「話? 何を今更」
リオンは警戒を解かずにちらりとマオを見る。
痛みに顔は歪めているもののそれ程酷くはなさそうだ。
「俺はお前を殺す気はない、お前は可愛い弟だからな」
それこそ今更だ。
「あなたは国を捨てた、ならば僕を捨てたと同義だ」
クレインがいなくなり残されたリオンがどうなるか容易に想像できたはずだ。
甘言に飲まれるつもりはない。
「お待ちを、リオン様」
「カミュ?」
クレインに集中し過ぎていてわからなかったが、いつの間にか牢の外には大勢の者が集まっている。
「クレイン様は国を捨てたのではなく、再建したいそうなのです」
自分の部下の言葉にリオンは獣化を解く。
獣の姿だと、獣の本能に引きずられやすい。
話し合いをするならば、こちらの姿の方が良かった。
「詳しい話を聞かせてください兄様。ですがマオに手を出したことは許せません」
庇うように立つのを止めないリオンにカミュは嫌そうな顔をし、クレインは意外そうな顔をする。
「その少女は何者だ?」
見たところ平民の猫族だ。
「僕の大事な人です」
命の恩人だ、間違いではないだろう。
身を呈してリオンを守ろうとしたのだ、誤解を生む言い方をしたが、これでマオに手出しは出来ないはずだ。
クレインの後ろの者達も抜き身の武器を持っているし、カミュがいたとしても一斉に襲われたのでは防ぎようがない。
今出来る最大の方法でマオを守ろうと考えた結果、こうなった。
「リオンの大事な人?」
まさかそう言われるとは思ってなくて、クレインは戸惑うし、マオは顔を赤くしていた。
カミュなんかは青褪めている。
至極真面目な顔をしたリオンだけは冷静であった。
「では兄様、話してください。何を計画しているのかを」
クレインが失踪した理由、それは自身の命を狙う者がいたからだ。
王太子である自分の命を狙うのはまだいい。しかし、次代を担う息子まで狙われてはたまらないと考えた。
そして妻は身籠っている、何とかしなくてはと考えていた。
「外交に出た時に賊に襲われた。それを逆に利用して、行方をくらまし、誰が犯人なのかを捜していたのだ」
賊は返り討ちにしたが、生きているのか死んでいるのか分からない状態というのはやきもきするものだ。
クレインについてくれている貴族たちに情報を集めさせ、暗殺を目論んだものを見つけようと思ったのだが……
「予想外の者が犯人だったよ」
やや表情は翳りを帯びている。
「ギアン兄様? それとも叔父様ですか?」
どちらであってもおかしくはないが、クレインの声音からしたらそうではなさそうだ。
「シェリーだ」
「!!」
さすがに信じがたい人物であった。
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