33 / 60
第33話 裏切りの代償
しおりを挟む
「シェリーはサーペント国の王女だった。それは覚えているな?」
「えぇ」
「サーペント国?」
マオだけが首を傾げている。
「少し南下したところにあるのだけれど、ちょっと人に対しての愛が凄い国というか、とても一途な気質の人が多いところだよ」
シェリーがクレインを裏切ったのなら、その認識は間違っていたようだと訂正しなければならない。
二人は仲良しだと思っていた分ショックが大きい。
「そう。シェリーにサーペント国の蛇族のような特徴は外見上ではなかったけれど、彼女もまたとても執着心が強い者だった。その為愛する者の為ならば何でも出来たのだ、此度の密通もな」
その愛情の相手が自分ではなかった事にクレインは悲しそうな表情であった。
「密通? まさかアッシュは」
「そう俺の子ではない」
リオンは愕然とする。
「それって、かなりまずい事ですよね?」
マオですらその危険さに青くなっている。
じき国王になる跡継ぎが不義の子なんて、いやそれよりもずっと我が子だと思って大切に育てていた子が托卵とは……クレインの心情は計り知れない。
「相手は、誰ですか?」
「叔父上、レンブラントだ」
リオンは苦々しい顔をする。
傍目から見てもレンブラントはアッシュを可愛がっていたが、実の親子ならば頷けるものだ。
「だから俺がいなくなり好都合であったのだろうな。何度も遺体を探し、死んだ証を見つけたかったようだが、見つかるわけがない。俺はこうして生きているのだから」
レンブラントはクレインの捜索をする傍らで、アッシュの後見人になれるように画策していた。
「ギアンにも後見人を譲って欲しいと持ち掛けたが、頑として譲らなかった。当然だな、ギアンとて自分が王になりたかったのだから。本当であればアッシュすらも殺したかったはずだ」
野心家のギアンならそうだろう。中継ぎの王では数年で退位しなければいけない。
本当の王になるためならばアッシュは邪魔者でしかない。
「そうなると困るのはレンブラントだ。アッシュがいなくなればギアンが王位に近くなる。リオンがギアンの味方になれば尚更レンブラントが上につく事なんて出来なくなるだろう。現役の王子達に敵うわけがないのだから」
そもそもレンブラントは以前の王位争奪戦で負けている。クレインたちの父親が奥羽となってので、王弟であっても継承権はリオンの次だ。
「だからレンブラントはギアンも殺し、お前に罪をなすりつけようとしたんだ。二人を排除しようとしてな」
「……」
リオンはぎゅっと拳を握る。
自分をいじめる碌でもない男だったが、それでも死んだと聞けばショックだ。
あんな兄だったが身内の死は辛い。
「今そのレンブラントはどうしてるです?」
マオが手を上げて聞いてきた。
ここまでの事をした男をただ殺すのは、他人のマオが聞いていても勿体ない。
様々な罪を償わせてから命を奪いたいものだと、怒りを露わにしている。
「死なないように拘束している。まぁ無事とは言えないがな」
やはり何らかの形での処罰を検討しているのだろう。
国家転覆をはかったのだ。生半可な罰では済まないはずだ。
「それにしてもアッシュまで殺したのは何故です? まだほんの子どもだったのに」
リオンは記憶の中のアッシュを思い出す。
青い髪に青い目、利発そうな可愛い子ではあった。
リオンの事を「兄様」と呼び慕ってくれるなど、思い出が蘇る。
「無垢な子どもであったなら良かったのに」
自ら切り捨てた我が子だったアッシュを思い、剣を握る。
「もはやアッシュは俺の事など父とは呼ばなかったよ。本当の父、レンブラントに従うと言われてしまった」
「そうでしたか……申し訳ございません」
自分の軽率な言葉に恥ずかしくなる。
血の繋がりは育ての繋がりよりも強かったのか、残念で仕方がないが、禍根を残さないようにと子どもにまで手を掛けたクレインを思うと何とも言えない。
結局のところリオンは綺麗ごとしか口にしていないし、何もしていない。
安全圏からただ口を出す無責任なものだ。
やはり自分に王族は向いていないと自嘲してしまう。
「俺の事はいい。それよりもリオンはこの後どうするのだ?」
「え?」
「カミュに聞いた。お前は既にこの国に見切りをつけ、ラタへと行くとな。移住の目処もつき、移動するところだと聞いたが」
「そうです。でも」
それはクレインがもう死んだと思っていたからだ。
リオンが兄とは言え主と認めたクレインのいないこの国にいつまでも執着する気はなかったが、こうして再び会えたことで葛藤する。
自分はどうしたらいいのかと迷いが生じていた。
「えぇ」
「サーペント国?」
マオだけが首を傾げている。
「少し南下したところにあるのだけれど、ちょっと人に対しての愛が凄い国というか、とても一途な気質の人が多いところだよ」
シェリーがクレインを裏切ったのなら、その認識は間違っていたようだと訂正しなければならない。
二人は仲良しだと思っていた分ショックが大きい。
「そう。シェリーにサーペント国の蛇族のような特徴は外見上ではなかったけれど、彼女もまたとても執着心が強い者だった。その為愛する者の為ならば何でも出来たのだ、此度の密通もな」
その愛情の相手が自分ではなかった事にクレインは悲しそうな表情であった。
「密通? まさかアッシュは」
「そう俺の子ではない」
リオンは愕然とする。
「それって、かなりまずい事ですよね?」
マオですらその危険さに青くなっている。
じき国王になる跡継ぎが不義の子なんて、いやそれよりもずっと我が子だと思って大切に育てていた子が托卵とは……クレインの心情は計り知れない。
「相手は、誰ですか?」
「叔父上、レンブラントだ」
リオンは苦々しい顔をする。
傍目から見てもレンブラントはアッシュを可愛がっていたが、実の親子ならば頷けるものだ。
「だから俺がいなくなり好都合であったのだろうな。何度も遺体を探し、死んだ証を見つけたかったようだが、見つかるわけがない。俺はこうして生きているのだから」
レンブラントはクレインの捜索をする傍らで、アッシュの後見人になれるように画策していた。
「ギアンにも後見人を譲って欲しいと持ち掛けたが、頑として譲らなかった。当然だな、ギアンとて自分が王になりたかったのだから。本当であればアッシュすらも殺したかったはずだ」
野心家のギアンならそうだろう。中継ぎの王では数年で退位しなければいけない。
本当の王になるためならばアッシュは邪魔者でしかない。
「そうなると困るのはレンブラントだ。アッシュがいなくなればギアンが王位に近くなる。リオンがギアンの味方になれば尚更レンブラントが上につく事なんて出来なくなるだろう。現役の王子達に敵うわけがないのだから」
そもそもレンブラントは以前の王位争奪戦で負けている。クレインたちの父親が奥羽となってので、王弟であっても継承権はリオンの次だ。
「だからレンブラントはギアンも殺し、お前に罪をなすりつけようとしたんだ。二人を排除しようとしてな」
「……」
リオンはぎゅっと拳を握る。
自分をいじめる碌でもない男だったが、それでも死んだと聞けばショックだ。
あんな兄だったが身内の死は辛い。
「今そのレンブラントはどうしてるです?」
マオが手を上げて聞いてきた。
ここまでの事をした男をただ殺すのは、他人のマオが聞いていても勿体ない。
様々な罪を償わせてから命を奪いたいものだと、怒りを露わにしている。
「死なないように拘束している。まぁ無事とは言えないがな」
やはり何らかの形での処罰を検討しているのだろう。
国家転覆をはかったのだ。生半可な罰では済まないはずだ。
「それにしてもアッシュまで殺したのは何故です? まだほんの子どもだったのに」
リオンは記憶の中のアッシュを思い出す。
青い髪に青い目、利発そうな可愛い子ではあった。
リオンの事を「兄様」と呼び慕ってくれるなど、思い出が蘇る。
「無垢な子どもであったなら良かったのに」
自ら切り捨てた我が子だったアッシュを思い、剣を握る。
「もはやアッシュは俺の事など父とは呼ばなかったよ。本当の父、レンブラントに従うと言われてしまった」
「そうでしたか……申し訳ございません」
自分の軽率な言葉に恥ずかしくなる。
血の繋がりは育ての繋がりよりも強かったのか、残念で仕方がないが、禍根を残さないようにと子どもにまで手を掛けたクレインを思うと何とも言えない。
結局のところリオンは綺麗ごとしか口にしていないし、何もしていない。
安全圏からただ口を出す無責任なものだ。
やはり自分に王族は向いていないと自嘲してしまう。
「俺の事はいい。それよりもリオンはこの後どうするのだ?」
「え?」
「カミュに聞いた。お前は既にこの国に見切りをつけ、ラタへと行くとな。移住の目処もつき、移動するところだと聞いたが」
「そうです。でも」
それはクレインがもう死んだと思っていたからだ。
リオンが兄とは言え主と認めたクレインのいないこの国にいつまでも執着する気はなかったが、こうして再び会えたことで葛藤する。
自分はどうしたらいいのかと迷いが生じていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。
たまこ
恋愛
公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。
ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。
※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り
楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。
たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。
婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。
しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。
なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。
せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。
「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」
「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」
かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。
執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?!
見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。
*全16話+番外編の予定です
*あまあです(ざまあはありません)
*2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪
英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です
氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。
英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。
専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
孤独なもふもふ姫、溺愛される。
遊虎りん
恋愛
☆☆7月26日完結しました!
ここは、人間と半獣が住んでいる星。いくつかある城の1つの半獣の王と王妃の間に生まれた姫は、半獣ではない。顔が『人』ではなく『獣』の顔をした獣人の姿である。半獣の王は姫を城から離れた塔に隠した。孤独な姫ははたして、幸せになれるのだろうか。。。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる