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第37話 鷹の国 頼まれごと
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「美味しい!」
出された食事をにこにこと食べるマオはとても可愛らしい。
「よく噛んで食べようマオ」
そう言いながら、マオの好きそうなものをさり気なく皿の上に移している。
マナーなど忘れてしまったのかのようなリオンの振る舞いだが、エリックは咎めることなどない。
その隣にいる王太子妃が微笑みを浮かべてマオを見ているからだ。
「妹がいたらこのような感じなのかしら。嬉しそうに食べるところを見ると、わたくしも食べさせてあげたくなるわ」
「そうなのですレナン様。食べる姿が可愛くて、つい沢山与えたくなるのですよ」
王太子妃相手に熱く語るリオンの様子にカミュは天を仰いだ。
一応臣下ではないという立ち位置のカミュは一緒の食卓に着かせてもらっているが、とても居心地が悪い。
マオは平民故なのか、動じてないどころかいつも通りだ。
(その図太さが羨ましい)
カミュの胃がキリキリと痛みを発してきた。
食事が終わると話をしたいと別な部屋へと移る。
そして人払いをするとエリックはすぐさまリオンに声を掛ける。
「リオン殿、ヴォールク国の事は俺も耳にした。クレイン殿及び親類の続けざまの訃報、リオン殿の悲しみを思うと何とも言葉が出ないのだが……お悔やみ申し上げる」
「兄達の為にありがとうございます。そして僕の正体を知りながら皆の前で言わないでいてくれた事も感謝しております」
リオンもクレイン達同様死んだ者として発表されている。
新たな国の為に、そしてリオンが自由を得るためには死んだ者としての方が都合がいいからだ。
「色々訳アリなのだなとは思ったよ。しかし伴侶の行動はもう少し諫めてくれたまえ」
くつくつと笑うエリックにレナンは首を傾げる。
「何があったのですか?」
「猫族の器用さに感心する出来事があったのだ」
羽があるからエリック達は思いつかないが、あの高い外壁を登るマオはなかなか見ものであった。
自分達にはない事として、深く関心が寄せられるものである。
「いつかわたくしも見てみたいわ」
キラキラとした目で見つめられ、マオは得意げに胸を張る。
「任せてなのです。レナン様は優しいので特別に見せてあげるです」
「でももう外壁は駄目だよ。矢を射られたりしたら、射った人を殺さなきゃいけないからね」
にこやかな笑顔でリオンは言い放つ。
「リオン様、言葉が過ぎますよ」
さすがに物騒な物言いにカミュが忠言する。
「最愛の人を傷つけられようとしたならば許しておけないよ。カミュもいずれはわかるさ」
カミュの言葉などどこ吹く風のリオンは今度は真面目な顔でエリックに向き直る。
「冗談はさておき外壁の件も咎めることなく収めて頂きありがとうございます。マオの命が失われてもおかしくない状況で助けて頂き有難かったです。ですが」
ぎゅっとマオを抱きしめた。
「マオは僕のなので抱っこはご遠慮ください」
「レナン、誤解するな。好きでしたのではない」
ショックを受けるレナンと、気持ちのコントロールが効かないリオンに非難がましい目を向けられ、苦笑した。
「外壁から落ちかけたマオ嬢を助けただけだ。他意はない」
「……はい」
それでもレナンのしょんぼりした顔が見える。
(夜に改めて謝り、うんと甘やかしてやろう)
嫉妬するレナンが可愛くてしょうがない。
「さてそんな危ない事をしてまでこの国に来た理由を教えてもらえるだろうか」
リオンは偽ることなく話をしてみる。
この国王太子である彼ならば、知らなくてももしかしたら情報を集めてくれるかもしれない。
「心当たりはある。だから頼みを聞いてくれるか?」
「本当ですか?!」
まさかここで有力な手掛かりに会えるとは。
「どこにいるですか? 教えて欲しいのです。頼み事聞くですから」
マオも身を乗り出し、エリックに話しの続きを促す。
「二コラは今仕事の為にこの国を離れているのだが、少々困っているようでね。獅子の国まで迎えに行って欲しい」
困ったようにため息をついてエリックは仔細を話し始めた。
出された食事をにこにこと食べるマオはとても可愛らしい。
「よく噛んで食べようマオ」
そう言いながら、マオの好きそうなものをさり気なく皿の上に移している。
マナーなど忘れてしまったのかのようなリオンの振る舞いだが、エリックは咎めることなどない。
その隣にいる王太子妃が微笑みを浮かべてマオを見ているからだ。
「妹がいたらこのような感じなのかしら。嬉しそうに食べるところを見ると、わたくしも食べさせてあげたくなるわ」
「そうなのですレナン様。食べる姿が可愛くて、つい沢山与えたくなるのですよ」
王太子妃相手に熱く語るリオンの様子にカミュは天を仰いだ。
一応臣下ではないという立ち位置のカミュは一緒の食卓に着かせてもらっているが、とても居心地が悪い。
マオは平民故なのか、動じてないどころかいつも通りだ。
(その図太さが羨ましい)
カミュの胃がキリキリと痛みを発してきた。
食事が終わると話をしたいと別な部屋へと移る。
そして人払いをするとエリックはすぐさまリオンに声を掛ける。
「リオン殿、ヴォールク国の事は俺も耳にした。クレイン殿及び親類の続けざまの訃報、リオン殿の悲しみを思うと何とも言葉が出ないのだが……お悔やみ申し上げる」
「兄達の為にありがとうございます。そして僕の正体を知りながら皆の前で言わないでいてくれた事も感謝しております」
リオンもクレイン達同様死んだ者として発表されている。
新たな国の為に、そしてリオンが自由を得るためには死んだ者としての方が都合がいいからだ。
「色々訳アリなのだなとは思ったよ。しかし伴侶の行動はもう少し諫めてくれたまえ」
くつくつと笑うエリックにレナンは首を傾げる。
「何があったのですか?」
「猫族の器用さに感心する出来事があったのだ」
羽があるからエリック達は思いつかないが、あの高い外壁を登るマオはなかなか見ものであった。
自分達にはない事として、深く関心が寄せられるものである。
「いつかわたくしも見てみたいわ」
キラキラとした目で見つめられ、マオは得意げに胸を張る。
「任せてなのです。レナン様は優しいので特別に見せてあげるです」
「でももう外壁は駄目だよ。矢を射られたりしたら、射った人を殺さなきゃいけないからね」
にこやかな笑顔でリオンは言い放つ。
「リオン様、言葉が過ぎますよ」
さすがに物騒な物言いにカミュが忠言する。
「最愛の人を傷つけられようとしたならば許しておけないよ。カミュもいずれはわかるさ」
カミュの言葉などどこ吹く風のリオンは今度は真面目な顔でエリックに向き直る。
「冗談はさておき外壁の件も咎めることなく収めて頂きありがとうございます。マオの命が失われてもおかしくない状況で助けて頂き有難かったです。ですが」
ぎゅっとマオを抱きしめた。
「マオは僕のなので抱っこはご遠慮ください」
「レナン、誤解するな。好きでしたのではない」
ショックを受けるレナンと、気持ちのコントロールが効かないリオンに非難がましい目を向けられ、苦笑した。
「外壁から落ちかけたマオ嬢を助けただけだ。他意はない」
「……はい」
それでもレナンのしょんぼりした顔が見える。
(夜に改めて謝り、うんと甘やかしてやろう)
嫉妬するレナンが可愛くてしょうがない。
「さてそんな危ない事をしてまでこの国に来た理由を教えてもらえるだろうか」
リオンは偽ることなく話をしてみる。
この国王太子である彼ならば、知らなくてももしかしたら情報を集めてくれるかもしれない。
「心当たりはある。だから頼みを聞いてくれるか?」
「本当ですか?!」
まさかここで有力な手掛かりに会えるとは。
「どこにいるですか? 教えて欲しいのです。頼み事聞くですから」
マオも身を乗り出し、エリックに話しの続きを促す。
「二コラは今仕事の為にこの国を離れているのだが、少々困っているようでね。獅子の国まで迎えに行って欲しい」
困ったようにため息をついてエリックは仔細を話し始めた。
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