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第41話 獅子の国 交錯②

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「リー殿、何度も中座をしてしまいすまない。しかし有力な情報が得られた」
 ティタンはそう言うと、困った顔をしてリオンを見る。

「虫のいい話ですまないが、先程は脅すような事を言ってすまない。もしも許されるならば、あなたの意見を聞きたいのだが」

「冤罪が晴らせるのならば喜んで謝罪を受け入れますよ。しかしどのような話です?」
 真意を探ろうとティタンの挙動を観察する。

「ファルケ国の者でも、レーヴェ国の者でないリー殿の忌憚ない意見を聞かせてもらいたい。ファルケとレーヴェは国力的に大差はない、そう思っているのだがどうだ?」
 リオンはオスカーに視線を移してから、頷いた。

「えぇ。どちらも大国で戦士が多く、戦ってもどちらが勝つかわからないほど武力は拮抗していると思います。そして経済面、こちらも両国とも新たな交易先を見つけ、財政も良いと思われます。故に全体の国力にそれ程大きい差はないかと」
 軽く両国の街を通ったが、どちらも酷い生活を送る民は少なかったように思われる。

 ある程度は仕方ないが、それでも全体を見れば恵まれており、また整備されているところが多い。
 これはしっかりと行政が動いている証拠だ。

「では二国が争う事に益はないと思うのだが、その意見については?」

「僕もそう思います。わざわざ敵対するよりも、ファルケもレーヴェもお互い手を取り合って協力体制を築く方が安定しますし、犠牲も少なくて済む。他国の侵略も少なくなると思います。陸にも空にも強くなり、また薬師の多いコニーリオ、経済を支えるラタの国がいるので、概ね隙はないかと」
 リオンは様子を伺いながら慎重に話す。

 嘘は言っていないが、内容に充分注意をしたつもりだ。

(何を探っているのだろうか?)
 エリックのように裏をかこうという様子はないが、それでも油断してはいけない。

「では、二国が争う事になった時に、得をする国はあると思うか?」

(なるほど)
 ようやくティタンは本題を言ってくれた。

 リオンは自分がヴォールクに居る時に聞いた他国の情報や今までの知識を総動員する。

 二つの強国が争い国力が弱まったとして、得をする国とは……。

「心当たりはありますが、それには交換条件があります。今の僕はファルケの使者なので、望みはわかりますよね?」

「あぁ、心得ている。二コラ殿と他の使者を見つけたら、生かしてファルケへ返す、そういう要望だな」

「そうです。絶対に約束を反故しないで下さいね」

「あぁ。だがこちらの命が脅かされた時はその限りではないがな」

「そうですね、そうならない事を望みます」
 下手な抵抗をしなければ皆無事に帰って来るはずだ、大丈夫だと信じたい。

「それで、一体何の話を王子妃様とされたのですか?」
 オスカーはティタンが意見を翻す事になった話の内容が気になって仕方ない。

 ティタンの険も取れた様子から、概ねの誤解は解けたように見えたのだが。

 ティタンが眉間に皺を寄せしばしの沈黙を見せた後、言いにくそうに話しをしてくれる。

「……二コラ殿の脱走を知らせに来た兵から、件の違法薬物の匂いがした。と、ミューズが教えてくれた」






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