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第45話 獅子の国 依頼
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「リー殿は心当たりがあると先程言っていたし、ある程度敵がどのような出方をするか予測もできているのでは? そうなれば解決が早いだろう」
いい案だとティタンは頷いている。
「心当たりだけで確信はありません。それにこの人数では解決なんて……」
「手数が少ないならば兵を貸そう。他にも内通者がいるかもしれないから俺の私兵をな。けして裏切る事のない優秀な者達ばかりだから安心してくれ」
ティタンは側近に声を掛けて、すぐ来るように頼んだようだ。
「うわぁ。これは強制って事ですね」
「他に適当な者がいないし、正直今のリー殿の地位はとても自由なものだ。ファルケもレーヴェも関係がないともいえる」
万が一命を落とすことがあっても両国とも、知らない、関係ないと言える、者だ。
「僕へのメリットが薄い気がするのですが」
「無事に解決したらレーヴェもリー殿の後ろ盾になり、身分の保証をしよう。もしも受けてもらえないとすれば、ファルケの違法薬物の責任を取ってもらおうかと思うのだが」
「選択肢はないようですね。頑張りましょう、リー様」
オスカーもリオンに問題解決を促し、既に受ける気満々だ。
断れば投獄だから、選びようがないけれど。
「君の事もこき使ってあげるから覚悟してね」
「ファルケの為ならば喜んで。どうぞ手足のように使ってください」
ニコリと綺麗な笑顔を見せてくれる。
中性的な顔立ちの美人だが、まだあまり話したことがない為に人となりが分からない。
「機動力のある有翼獣人なのだから沢山動いてもらうよ」
「はい」
やや意地悪く言ったのだが、特に異論はないようだ。
(真っ白な羽だけれど、彼は一体何の種族だろう)
エリックともレナンとも違う形状の羽をしている為、いまいち種族が分からない。
そこは今考える事ではないので切り替える。
「リー殿が解決に乗り出してくれるという事を、ファルケの方にも知らせを出す。その為に教えてくれないか? その疑わしい国の名を」
「もしかしたら、というくらいですね。その為に僕が国を捨てた理由を少し聞いてくれますか?」
ヴォールクで起きた裏切りをリオンは話した。
まだ可能性だけの話だがこの近隣の国で一番疑わしいのは、あの国だ。
「リオン様、貧乏くじばかり引かせられてません?」
「奇遇だね、僕もそう思うよ」
カミュの言葉にリオンは頷いた。
「このまま逃げてしまおうかとも思ったけれど、マオの兄かもしれない二コラさんを見捨てるわけには行かない」
「申し訳ないのです、リオン様」
「マオのせいではないから安心して。はぁそれにしてもティタン様も意外と強かだな。あんな頼みをされるとは思っていなかったよ」
てっきり自分で解決に乗り出すかと思ったのに。
「この不安な情勢の中でミューズ様をお一人に出来ないとおっしゃってました。足手まといにならないように気を付けますので、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる男性はとても戦えるような人には見えなかった。
「えっとコニーリオの者かな。よろしくね」
長い耳と弱弱しい雰囲気にそう思ったが、彼はこくんと頷いた。
「コニーリオから来ました薬師のセシルです。薬に関する事や怪我などしたら僕に任せてください」
背負った鞄には色々な薬が入っているらしい。
「それでそちらの彼は?」
赤い髪と耳、長い尻尾はティタンの側近と同じ色をしていた。
「ライカと申します。我が国の沽券に掛け、必ず犯人を殺……捕まえましょう」
少し不穏な言葉が聞こえたが、気のせいとしておこう。
ピリピリした雰囲気が感じられる、あまり気の長いものではないかもしれないとリオンは思った。
「サーペント国の者の仕業かもしれないと聞きましたが、その根拠はあるのですか? 確かにヴォールク国を傾かせた元凶とは言え、レーヴェとファルケに喧嘩を売るとは思えない。あんな根暗な者達、俺達であればすぐに潰せる」
「サーペント国はその昔他国を攻めた時に、レーヴェとファルケに追い返された過去がある。こちらとしては防衛だが、あちらとしては妨害されたとしか思っていない。サーペントの者はねちっこく恨みがましい。両国を一挙に潰せる好奇があるならば仕掛けるだろう」
歴史の勉強をしていて良かったと思う。
過去の色々な事を知っていたおかげで、こうして現在に活かせるというのは幸運だ。
「そして簡単に倒せるとは思えない。内通者がいるのだから、攻め入っているうちに内部を崩される可能性もある。そうなればレーヴェだろうとファルケだろうと危ないよ。しかも相手は魔獣を呼び寄せる違法薬物を所持している。それを大量にまかれたら戦どころではないだろう」
「むっ」
ライカが眉間に皺を寄せ、低く呻いた。
「それに戦えない者達だって多い。それらを守りながらサーペント国と魔獣を相手にするのか? ただでさえ戦士は減り、魔獣も増えているというのに」
「うぐ……」
ライカがますます眉間に皺を寄せている。
自分の力に自信があるのは良いが、少し短絡的すぎる。
「武力は大事だけれど、何でも解決できるわけではないよ。そうでなければ、ヴォールクはあんなことにならなかった」
力は強い者が多かったのに、今はガタガタだ。
リオンはかつての自分の国を思い、哀惜に目を細めた。
いい案だとティタンは頷いている。
「心当たりだけで確信はありません。それにこの人数では解決なんて……」
「手数が少ないならば兵を貸そう。他にも内通者がいるかもしれないから俺の私兵をな。けして裏切る事のない優秀な者達ばかりだから安心してくれ」
ティタンは側近に声を掛けて、すぐ来るように頼んだようだ。
「うわぁ。これは強制って事ですね」
「他に適当な者がいないし、正直今のリー殿の地位はとても自由なものだ。ファルケもレーヴェも関係がないともいえる」
万が一命を落とすことがあっても両国とも、知らない、関係ないと言える、者だ。
「僕へのメリットが薄い気がするのですが」
「無事に解決したらレーヴェもリー殿の後ろ盾になり、身分の保証をしよう。もしも受けてもらえないとすれば、ファルケの違法薬物の責任を取ってもらおうかと思うのだが」
「選択肢はないようですね。頑張りましょう、リー様」
オスカーもリオンに問題解決を促し、既に受ける気満々だ。
断れば投獄だから、選びようがないけれど。
「君の事もこき使ってあげるから覚悟してね」
「ファルケの為ならば喜んで。どうぞ手足のように使ってください」
ニコリと綺麗な笑顔を見せてくれる。
中性的な顔立ちの美人だが、まだあまり話したことがない為に人となりが分からない。
「機動力のある有翼獣人なのだから沢山動いてもらうよ」
「はい」
やや意地悪く言ったのだが、特に異論はないようだ。
(真っ白な羽だけれど、彼は一体何の種族だろう)
エリックともレナンとも違う形状の羽をしている為、いまいち種族が分からない。
そこは今考える事ではないので切り替える。
「リー殿が解決に乗り出してくれるという事を、ファルケの方にも知らせを出す。その為に教えてくれないか? その疑わしい国の名を」
「もしかしたら、というくらいですね。その為に僕が国を捨てた理由を少し聞いてくれますか?」
ヴォールクで起きた裏切りをリオンは話した。
まだ可能性だけの話だがこの近隣の国で一番疑わしいのは、あの国だ。
「リオン様、貧乏くじばかり引かせられてません?」
「奇遇だね、僕もそう思うよ」
カミュの言葉にリオンは頷いた。
「このまま逃げてしまおうかとも思ったけれど、マオの兄かもしれない二コラさんを見捨てるわけには行かない」
「申し訳ないのです、リオン様」
「マオのせいではないから安心して。はぁそれにしてもティタン様も意外と強かだな。あんな頼みをされるとは思っていなかったよ」
てっきり自分で解決に乗り出すかと思ったのに。
「この不安な情勢の中でミューズ様をお一人に出来ないとおっしゃってました。足手まといにならないように気を付けますので、よろしくお願いします」
そう言って頭を下げる男性はとても戦えるような人には見えなかった。
「えっとコニーリオの者かな。よろしくね」
長い耳と弱弱しい雰囲気にそう思ったが、彼はこくんと頷いた。
「コニーリオから来ました薬師のセシルです。薬に関する事や怪我などしたら僕に任せてください」
背負った鞄には色々な薬が入っているらしい。
「それでそちらの彼は?」
赤い髪と耳、長い尻尾はティタンの側近と同じ色をしていた。
「ライカと申します。我が国の沽券に掛け、必ず犯人を殺……捕まえましょう」
少し不穏な言葉が聞こえたが、気のせいとしておこう。
ピリピリした雰囲気が感じられる、あまり気の長いものではないかもしれないとリオンは思った。
「サーペント国の者の仕業かもしれないと聞きましたが、その根拠はあるのですか? 確かにヴォールク国を傾かせた元凶とは言え、レーヴェとファルケに喧嘩を売るとは思えない。あんな根暗な者達、俺達であればすぐに潰せる」
「サーペント国はその昔他国を攻めた時に、レーヴェとファルケに追い返された過去がある。こちらとしては防衛だが、あちらとしては妨害されたとしか思っていない。サーペントの者はねちっこく恨みがましい。両国を一挙に潰せる好奇があるならば仕掛けるだろう」
歴史の勉強をしていて良かったと思う。
過去の色々な事を知っていたおかげで、こうして現在に活かせるというのは幸運だ。
「そして簡単に倒せるとは思えない。内通者がいるのだから、攻め入っているうちに内部を崩される可能性もある。そうなればレーヴェだろうとファルケだろうと危ないよ。しかも相手は魔獣を呼び寄せる違法薬物を所持している。それを大量にまかれたら戦どころではないだろう」
「むっ」
ライカが眉間に皺を寄せ、低く呻いた。
「それに戦えない者達だって多い。それらを守りながらサーペント国と魔獣を相手にするのか? ただでさえ戦士は減り、魔獣も増えているというのに」
「うぐ……」
ライカがますます眉間に皺を寄せている。
自分の力に自信があるのは良いが、少し短絡的すぎる。
「武力は大事だけれど、何でも解決できるわけではないよ。そうでなければ、ヴォールクはあんなことにならなかった」
力は強い者が多かったのに、今はガタガタだ。
リオンはかつての自分の国を思い、哀惜に目を細めた。
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