【本編完結】獣人国での異種族婚

しろねこ。

文字の大きさ
46 / 60

第46話 蛇は全てを飲み込むもの

しおりを挟む
 魔獣が増えた事、そして獅子と鷹の国を戦わせようとしたもの、狼の国の王家を滅ぼしたのも総ては蛇の国の仕業であった、

 このタイミングでの世界をひっくり返そうとしたのは諸々の国の関係性が変わり始めていた事だ。

 今まではそれぞれの国が独立して過ごしており、交流も少なかった、

 だがこうして世の中で外交が進むにつれ、蛇族は思う。

「こんなにも国同士が弱くなったのならば、全ての国を飲み込めるのでは?」
 と。

 外交が進めば国同士の交流が深くなり、そしてお互いを知る機会が増える、そうなると相手の特徴を知ることが出来、それは同時に弱みを握る事となる。

 蛇は狡猾だ。
 知られぬように悟られぬようにそれぞれの国に間者を送る。

 どの国も能天気だ、スパイがいるとは思っていないらしい。

 異種族の者との交わりも増えたから、別な種族がいてもおかしいとは思わないのだろう。

 見た目で顕現しなくても血に混じった蛇の性質はなくならない。

「新たな血を加えた王族に加えたファルケとレーヴェはもっと弱くなるだろう」
 他種族の血が混じるという事は少なからず特性が薄まる。

 蛇族は純血主義だ。

 王族であれば同族との婚姻を結び、純血種を生むべきだと考えている。

 それ故に他国に送るスパイの身分はそれほど高くはない。

 ヴォールクだけは別であった。

 王族への嫁ぎだった為に精査をし、なるべく性質を隠せる狡猾な女性を送った。

 だが内部から崩し乗っ取る計画は途中から崩されてしまい、計画は途中で頓挫してしまう。

 惜しいものであった。

「だがまだこちらには切り札がある」
 ファルケの手土産とした違法薬物の外にも、役に立つ薬はあるのだ。

 だが量産がなかなか出来ず、計画の為の必要量にはまだまだ足りない。

「その為にはレーヴェとファルケが邪魔だな……」
 蛇族の長は嘆息し、黒い舌をチロチロと動かした。





「それでこちらの道で合ってるの?」

「えぇ。二コラ様達の脱走が知れる少し前にレーヴェ国の紋が入った馬車がこちらの方向に走っていったそうですから。馬車は大きい。目撃者はすぐに見つかりました」
 舗装されている道だからもうだいぶ遠くには行っているだろう。

「間もなく夜になりますが、夜は俺が操縦します。夜目は利くのでご安心を」
 もうすぐ日が暮れるがどうやら夜通し走るつもりのようだ。

 時間をかければ連れて行かれたものの命も怪しい。もしかしたら既に殺されている可能性もあるし、急ぐに越したことはない。

「アタシは夜目が効かないのでお願いしますね」
 へらりとオスカーは言った。

「こういう人だとは思わなかったです」
 警戒するようにマオはリオンの後ろからオスカーを睨んでいる。

 初めて会う人種にどう接していいかわからないようだ。

「さっきは正式な場だったから遠慮していたのよ。今は王城を出たし、いいでしょ?」
 マオに向かいウインクまでしている。

 カミュは少々呆れたような顔で見ていた。

「エリック様は変わった人を好む方なのですね」

「あら、アタシは口調がこうなだけで普通の男よ。女の子が好きで、そしてドレスを作るのも好きなのよ。無事に戻ったらマオさんにもプレゼントしてあげるわ」

「遠慮します」
 至極真面目な顔でお断りをする。

「つれないわねぇ」
 それでも笑顔なオスカーは今度はリオンを見つめる。

「ねぇリオン様、まだ皆は無事かしら。心配なのよね」

「難しい問題だね。正直大勢で移動するのはリスクが伴うから。かと言って死体をそこらに置くのも身元が判明すると厄介だ。そうなると周囲の目がないところで少し間引きをする可能性があるね」
 時間もそこそこ経過している、一人二人くらいは既に死んでいる可能性は否定できない。

「そうなったらもう奴らは見つけられないのか? レーヴェ国を騙そうとした事、何が何でも償わせてやりてぇんだが」
 ライカは顔を合わせてからずっと表情を顰めている。

 眉間に刻まれた皺が消えることは今のところまだなさそうだ。

「何とか捕まえないとあの薬物を使用されたらいくら何でも逃げようがない。コニーリオなんて一夜で滅びちゃうかも」
 セシルは懸念を口にし、身震いをする。

「さっきはああいったけれど、その可能性は低いと思うんだよね」

「そうなのですか?」

「国を魔獣に滅ぼさせてもメリットは少ないんだ。土地は汚れ作物は取れなくなり、家畜は死ぬ。放った魔獣を倒さないと自分達も住めない。せいぜい脅しに使ったり戦力を減らすことぐらいではないかと思う」
 相手が自棄にならない限りは尽くせる手はそんなものだ。

 わざわざ一国を滅ぼしても、得るものがなければ生き残った者からの恨みを買うだけだ。

「とにかく今は追いつく事だけを考えよう、そして助ける。それだけだ。マオは出来る限りは隠れていてね」
 置いてきたかったがもちろん断られたので連れてきた。

 戦わせる気はないのだけれど、何をするかはわからない。

「大丈夫なのです。きちんと見つからないように援護するです」

「いや戦わないで欲しいんだけど」
 マオもやはり参戦するようだ。

「馬車を止めてくれ」
 カミュの一言に馬車が止まる。

 促した先には大量の木片が燻っているのが見えた。

 僅かに残るその木片にはレーヴェの紋がごく僅かに見える。

「乗り換えたか……」
 証拠隠滅の為に違う馬車で行ったのだろう。

 セシルは軽く鼻を鳴らす。

「周囲から血の匂いはしません。犠牲者はいないようですね」
 ひとまず安心しつつもどんどん近づいている事が分かり、緊張が走る。

(あぁ。何事もありませんように)
 嫌な予感にリオンの胸はざわめく。
 日はもうすっかり山陰に入り、紺色の空が広がっていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

【完結】たれ耳うさぎの伯爵令嬢は、王宮魔術師様のお気に入り

楠結衣
恋愛
華やかな卒業パーティーのホール、一人ため息を飲み込むソフィア。 たれ耳うさぎ獣人であり、伯爵家令嬢のソフィアは、学園の噂に悩まされていた。 婚約者のアレックスは、聖女と呼ばれる美少女と婚約をするという。そんな中、見せつけるように、揃いの色のドレスを身につけた聖女がアレックスにエスコートされてやってくる。 しかし、ソフィアがアレックスに対して不満を言うことはなかった。 なぜなら、アレックスが聖女と結婚を誓う魔術を使っているのを偶然見てしまったから。 せめて、婚約破棄される瞬間は、アレックスのお気に入りだったたれ耳が、可愛く見えるように願うソフィア。 「ソフィーの耳は、ふわふわで気持ちいいね」 「ソフィーはどれだけ僕を夢中にさせたいのかな……」 かつて掛けられた甘い言葉の数々が、ソフィアの胸を締め付ける。 執着していたアレックスの真意とは?ソフィアの初恋の行方は?! 見た目に自信のない伯爵令嬢と、伯爵令嬢のたれ耳をこよなく愛する見た目は余裕のある大人、中身はちょっぴり変態な先生兼、王宮魔術師の溺愛ハッピーエンドストーリーです。 *全16話+番外編の予定です *あまあです(ざまあはありません) *2023.2.9ホットランキング4位 ありがとうございます♪

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

虐げられた私が姉の策略で結婚させられたら、スパダリ夫に溺愛され人生大逆転しました。

専業プウタ
恋愛
ミリア・カルマンは帝国唯一の公爵家の次女。高貴な皇族の血を引く紫色の瞳を持って生まれたワガママな姉の陰謀で、帝国一裕福でイケメンのレナード・アーデン侯爵と婚約することになる。父親であるカルマン公爵の指示のもと後継者としてアカデミーで必死に勉強してきて首席で卒業した。アカデミー時代からの恋人、サイラスもいる。公爵になる夢も恋人も諦められない。私の人生は私が決めるんだから、イケメンの婚約者になど屈しない。地位も名誉も美しさも備えた婚約者の弱みを握り、婚約を破棄する。そして、大好きな恋人と結婚してみせる。そう決意して婚約者と接しても、この婚約者一筋縄ではいかない。初対面のはずなのに、まるで自分を知っていたかのような振る舞い。ミリアは恋人を裏切りたくない、姉の思い通りになりたくないと思いつつも彼に惹かれてく気持ちが抑えられなくなっていく。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

山賊な騎士団長は子にゃんこを溺愛する

紅子
恋愛
この世界には魔女がいる。魔女は、この世界の監視者だ。私も魔女のひとり。まだ“見習い”がつくけど。私は見習いから正式な魔女になるための修行を厭い、師匠に子にゃんこに変えれた。放り出された森で出会ったのは山賊の騎士団長。ついていった先には兄弟子がいい笑顔で待っていた。子にゃんこな私と山賊団長の織り成すほっこりできる日常・・・・とは無縁な。どう頑張ってもコメディだ。面倒事しかないじゃない!だから、人は嫌いよ~!!! 完結済み。 毎週金曜日更新予定 00:00に更新します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

処理中です...