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第6話 報告
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「とんでもない事になってしまったわ……」
まさか自分の嫉妬心のせいで、あの後すぐにエーデルとの関係性が悪化していたなんてと、レナンは真っ青になった。
珍しく夕食の席を国王夫妻と取る事になり、世間話のような口調でその事を教えられて、思わず倒れそうになったのだ。
「大事な王太子妃を悲しませるような子を、今後ファルケに入れるつもりはないよ。それにその旨は書状に記してシスネの国王に渡すよう頼んだから大丈夫」
そう国王は言ったが、気が気ではない。
(他の国が帰国する際は挨拶をしたのだけれど、シスネ国だけは挨拶をさせて貰えなかったわ。おかしいとは思ったけど、普通ならわたくしの為にそこまで徹底するなんて思わなかったもの)
レナンの嫉妬と国全体の損失をかけた秤が、まさかあらぬ方向に大きく傾くとは思っていなかった。
「今度はせめて相談してください……」
知らないところで一日にしてこんな大事になるとは。
レナンの予想をはるかに超え過ぎて頭がパンクしそうだ。
「相談したら止めていただろう?」
「当然です! わたくしよりも国が大事ですもの、知っていたらこんな事させませんでしたのに」
「それは違う。どちらも大事な存在だからこそ、エーデルを切ったのだ」
「エーデル様にそのような事をしたらシスネ国王は怒りで何をしてくるかわからないじゃないですか。わたくしにそこまでの価値はありませんのに」
「君はラタとの交流を繋いでくれたし、次代の王を生む大切な人だ。国として守るべきものの最上級にいると、いい加減に自覚してくれ」
「わたくしがいなくても、ラタ国との交流は続くはずですわ」
「ラタがそれを許さないさ。商売は信用だ、君がいるから彼の国は我が国を信用してくれている。交流がなったからとレナンを切り捨てたら、あちらはこの国交をやめる。下手したら一生断絶だ」
「でも次代の子を産むのはわたくしでなくともよいではないですか。三年経っても出来なかった場合側室を、もしくは離縁という手もありますし」
「それも何度も言っているが、レナン以外とは無理だ。俺が愛しているのはレナンだけで、例え子が出来なくても死ぬまで添い遂げると決めてい」
力強く抱きしめられて、息が詰まる。
「そんな愛息子の望みを叶えてあげたい親ばかだから、今回の件はもう許してくれないか? レナンちゃんには悪いが、エリックの怒りを買うのも大きな損失なんだよ」
国王からのちゃんづけもびっくりだし、義両親の前で抱きつかれたままなのも恥ずかしい。
「エーデル嬢もなぁ、幼い頃は可愛かったのにだんだんと自惚れてきてなぁ。エリックに相応しいのは自分と思い込み、婚約者のようにふるまう事もあって。容姿も可愛いし、ファルケでも絆されるものも出てきていた。だが肝心のエリックは全く靡かないし、一時期は他国の王子と親密になってこちらから足が遠のいた。その間にパロマと話が進んだのだが。今ではレナンちゃんがお嫁に来てくれて良かったと、本当に感謝しているよ」
「そんな……わたくしには身に余るお言葉です」
「君は追いつめられようが誰かを見下すことも、蔑むこともしない。エリックを装飾品扱いもしない。侍らせて優越感に浸ることもないし、必要以上に怖がらない。とっても良い子だ」
「買いかぶり過ぎです、わたくしはそんな良い子ではありません」
「嫉妬心で苦しんでもエーデル嬢の悪口も言わず、我が儘も言わなかったと聞く。感心したが我慢のし過ぎは良くない。夫婦となったのだからエリックに何でも話した方がいいぞ」
じっと聞いていた王妃も口を開いた。
「そうよ、折角夫婦になったのだからもっとお話をして絆を深めないと。もしもエリックに言いづらかったら、私でもいいわ。いつでも相談に乗るわよ、レナンちゃん」
王妃にもちゃんづけで呼ばれ、挙動不審になってしまう。
「それに夫婦仲がより深まってもらわないと困るのよね。私早く孫が抱きたいのよ」
「まっ……?!」
その言葉にレナンは完全に固まった。
「そうよ。そうしてもっと仲睦まじい姿を見せれば、悪い噂何て全て吹き飛ぶわ。そうね、三人くらいは欲しいわね」
「三人?!」
その発言に尚更固まってしまう。
「そう言えばこの前の香は子宝に効くものだとクルーに聞いたよ。ならば今晩試してみよう。シュナイ医師にも診てもらったけれど特に怪しい成分はなさそうだって聞いたから」
「いつの間に?!」
食事をする気分はすっかり消え失せた。
赤くなった顔を隠すレナンを慰めるようにエリックは撫でる。
レナンにこのような明け透けな話の耐性はなく、穴があったら入りたい気持ちだ。
「大事な大事な俺の花嫁、離さないよ。もう絶対に」
そんな言葉を愛しい夫が言ってくれるが、羞恥に耐えることしか出来ず、返事をする気力もなかった。
まさか自分の嫉妬心のせいで、あの後すぐにエーデルとの関係性が悪化していたなんてと、レナンは真っ青になった。
珍しく夕食の席を国王夫妻と取る事になり、世間話のような口調でその事を教えられて、思わず倒れそうになったのだ。
「大事な王太子妃を悲しませるような子を、今後ファルケに入れるつもりはないよ。それにその旨は書状に記してシスネの国王に渡すよう頼んだから大丈夫」
そう国王は言ったが、気が気ではない。
(他の国が帰国する際は挨拶をしたのだけれど、シスネ国だけは挨拶をさせて貰えなかったわ。おかしいとは思ったけど、普通ならわたくしの為にそこまで徹底するなんて思わなかったもの)
レナンの嫉妬と国全体の損失をかけた秤が、まさかあらぬ方向に大きく傾くとは思っていなかった。
「今度はせめて相談してください……」
知らないところで一日にしてこんな大事になるとは。
レナンの予想をはるかに超え過ぎて頭がパンクしそうだ。
「相談したら止めていただろう?」
「当然です! わたくしよりも国が大事ですもの、知っていたらこんな事させませんでしたのに」
「それは違う。どちらも大事な存在だからこそ、エーデルを切ったのだ」
「エーデル様にそのような事をしたらシスネ国王は怒りで何をしてくるかわからないじゃないですか。わたくしにそこまでの価値はありませんのに」
「君はラタとの交流を繋いでくれたし、次代の王を生む大切な人だ。国として守るべきものの最上級にいると、いい加減に自覚してくれ」
「わたくしがいなくても、ラタ国との交流は続くはずですわ」
「ラタがそれを許さないさ。商売は信用だ、君がいるから彼の国は我が国を信用してくれている。交流がなったからとレナンを切り捨てたら、あちらはこの国交をやめる。下手したら一生断絶だ」
「でも次代の子を産むのはわたくしでなくともよいではないですか。三年経っても出来なかった場合側室を、もしくは離縁という手もありますし」
「それも何度も言っているが、レナン以外とは無理だ。俺が愛しているのはレナンだけで、例え子が出来なくても死ぬまで添い遂げると決めてい」
力強く抱きしめられて、息が詰まる。
「そんな愛息子の望みを叶えてあげたい親ばかだから、今回の件はもう許してくれないか? レナンちゃんには悪いが、エリックの怒りを買うのも大きな損失なんだよ」
国王からのちゃんづけもびっくりだし、義両親の前で抱きつかれたままなのも恥ずかしい。
「エーデル嬢もなぁ、幼い頃は可愛かったのにだんだんと自惚れてきてなぁ。エリックに相応しいのは自分と思い込み、婚約者のようにふるまう事もあって。容姿も可愛いし、ファルケでも絆されるものも出てきていた。だが肝心のエリックは全く靡かないし、一時期は他国の王子と親密になってこちらから足が遠のいた。その間にパロマと話が進んだのだが。今ではレナンちゃんがお嫁に来てくれて良かったと、本当に感謝しているよ」
「そんな……わたくしには身に余るお言葉です」
「君は追いつめられようが誰かを見下すことも、蔑むこともしない。エリックを装飾品扱いもしない。侍らせて優越感に浸ることもないし、必要以上に怖がらない。とっても良い子だ」
「買いかぶり過ぎです、わたくしはそんな良い子ではありません」
「嫉妬心で苦しんでもエーデル嬢の悪口も言わず、我が儘も言わなかったと聞く。感心したが我慢のし過ぎは良くない。夫婦となったのだからエリックに何でも話した方がいいぞ」
じっと聞いていた王妃も口を開いた。
「そうよ、折角夫婦になったのだからもっとお話をして絆を深めないと。もしもエリックに言いづらかったら、私でもいいわ。いつでも相談に乗るわよ、レナンちゃん」
王妃にもちゃんづけで呼ばれ、挙動不審になってしまう。
「それに夫婦仲がより深まってもらわないと困るのよね。私早く孫が抱きたいのよ」
「まっ……?!」
その言葉にレナンは完全に固まった。
「そうよ。そうしてもっと仲睦まじい姿を見せれば、悪い噂何て全て吹き飛ぶわ。そうね、三人くらいは欲しいわね」
「三人?!」
その発言に尚更固まってしまう。
「そう言えばこの前の香は子宝に効くものだとクルーに聞いたよ。ならば今晩試してみよう。シュナイ医師にも診てもらったけれど特に怪しい成分はなさそうだって聞いたから」
「いつの間に?!」
食事をする気分はすっかり消え失せた。
赤くなった顔を隠すレナンを慰めるようにエリックは撫でる。
レナンにこのような明け透けな話の耐性はなく、穴があったら入りたい気持ちだ。
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