手のひらサイズの令嬢はお花の中におりました

しろねこ。

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婚約者

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ミューズが歩けば皆が振り返る。

誰も彼もがこの城で見たことのない令嬢を見て驚いた。

美しく着飾る妙齢の女性、その前を歩くはティタンの従者であるマオだ。

そして向かう先を考えればそうだとしか思えない。

ティタンに会いに来た女性だと、城内がざわつき始める。

「ミューズ様、ですよね」
ティタンの部屋の前に居たルドすらも驚いた。

服装を変え、きちんとメイクをしたミューズはどこからどうみても申し分ない、高貴な身分の令嬢だ。

「呪いが無事に解けて良かったです。今ティタン様に伝えますね」
ルドは驚きの表情を抑えるとすぐに気持ちを切り替えて、ノックをする。

ティタンから入室の許可を得て、ルドがドアを開けた。

緊張しながらミューズはティタンの部屋へと入る。

部屋に入ってきた人物を見たティタンが椅子から立ち上がり、そして硬直した。

見惚れてしまったのだ。

「お待たせしました、皆に身支度をしてもらったのですが……いかがでしょう?」

「とても良く似合っている、美しいよ」
ティタンはミューズから目を離せずにいる。

「嬉しい……」
照れくさそうに笑うミューズにティタンはため息をついた。

「ヤバい、リンドールに返したくない……」
今まで婚約者がいなかったのが不思議なくらい、ミューズは輝いている。

見た目の美しさもだが、ちょっとした仕草からも上品さが垣間見える。

他の男性が放っておくとは思えない。

「頼むから、このままアドガルムにいてくれないか?」
ティタンは非常に心配していた。

形振り構って居られない程に。

良くも悪くもティタンが側にいれば、男性からのアプローチはないだろう。

「そうしたいとは思いますが、せめて父とはきちんとお話したいのです」
何も話せずにアドガルムへと来てしまった。

小さい手では手紙を書くことも出来なかったので、きっと心配してるだろう。

「そうだな……ディエス殿も心配してるだろうし、その時は俺も一緒に行って挨拶するから」
認めてもらうよう、誠心誠意話すつもりだ。

「父はすぐにティタン様を認めてくれると思います。だって私の命の恩人ですから」
ミューズはティタンの手を取って見上げた。

「私を助けてくれたのが、あなたで良かった。一生お側に置いてください」

「もちろんだ」
潤んだ瞳で上目遣いをされ、ティタンは思わず抱き締めようとしたが。


「そこまでなのです、それ以上はまだ早いのです」
マオが横入りしてきた。

「婚約をきちんと結んでからなのですよ。ティタン様、順番を違えてはいけないです」

「……わかっている」
渋々とミューズから離れた。

「マオは応援したいのか、邪魔したいのか、どちらなんだ」
忌々しげにティタンに言われて、マオはキョトンとする。

「無論応援ですが、何か?」
マオに悪びれる様子はない。

「じゃあ少しは目を瞑ってくれても……」

「いけません、万が一何かあって傷つくのは女性なのですから」
マオの正論にティタンはたじろいだ。

「確かにそうだが、俺はもう裏切らない」

「でもダメです、我慢です」

「二人共、落ち着いて」
じゃれ合いのようなものを二人はしょっちゅう起こしているため、ミューズは慣れた様子で宥めた。

「マオ、いつも心配してくれてありがとう。助かってるわ。でも、ケンカになることはダメよ」

「……すみません」
ミューズの言葉にマオは素直に従う。

「ティタン様、落ち着いて下さいね。これからお互いをゆっくりと知っていけばいいのですから」

「そうだな、時間はまだまだあるな」
ティタンも気持ちを落ち着かせようと深呼吸している。

「皆さんの助けで、ようやく本当の姿を取り戻せたのですから。これからはお茶をしたり、お出かけしたり、気兼ねなく親交を深めましょう」
普通の婚約者みたいに色々な事がしたいとミューズに言われ、ティタンの心は弾んだ。

「そうだな、これからはずっと俺の共にいてくれ」
これからの事を考えると期待に胸が高鳴る。

ティタンは跪いてミューズの手を取った。

「まずは婚約、そしてお披露目をして皆に知らしめよう。君は俺のものだ」
ミューズの手の甲にキスをし、立ち上がる。

「これからは何があっても俺が守るからな」

「もちろん僕も力を貸すです、いつでもなんでも言ってほしいのです。サミュエルもですよ」
サミュエルの名にミューズは驚く。

「サミュエルもいたのね、気づかなかった」
目深にフードを被り、マントを羽織ったサミュエルはずっと椅子に座っていた。

静か過ぎたのと、ティタンばかりに目が言ってしまい、気づかなかったのだ。

「どうせ寝てるですよ」
何かをした時サミュエルは大概寝てしまう。

術に体力が追いつかず、回復薬を使う事がしばしばあるからだ。

「今日は起きてるよ、話すタイミングが分からなかっただけだ」
サミュエルは三人にやっと声を掛けることが出来た。




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