塔の姫は隣国の王子と恋をする

しろねこ。

文字の大きさ
15 / 38

恋(宰相視点)

しおりを挟む
レナンは珍しい女性の宰相だ。

ミューズと同じく本好きで数々の本を読み漁った。
好奇心も強く、政治にも興味があったこと。
ミューズの母とも政治談義を重ね意気投合したことにより選ばれたのだ。

もちろんやっかみもあったのでひたすら努力した。
時には冤罪をかけられたりしたが、王家の助けを借りて頑張ってきた。

女性ながら政治を語ると言うことで婚約者探しも難航していた。

女性は男性に尽くすことという考えがまだまだ根深かったので、縁談自体も少なかったのである。
デビュタントでも盛大に転ぶ大失態をしてしまったので出会いすらなかった。

そんな中優しかったのが、目の前のエリック。
太陽のような金髪に優しい緑色の目。
助けて貰ったときは本気で拝んでしまい、「面白い人だ」
と褒められた。いや褒めてないか。

「こんな私を女性扱いしてくれるのは殿下以外おりません」
レナンはありがたやと両手を合わせ、拝んでしまう。

お祖母様にいい事があったときは神様に感謝するのよと教えられ、すぐに祈ってしまう。

「何を言う、君はとても美しい。君は仕事のしすぎで婚期を逃してしまったとミューズから聞いた。ぜひ俺のところに花嫁として来てくれないか?」
「なんと恐れ多い!」

さらりとスマートにプロポーズの言葉を口にするなどさすが殿下。
危うく口から心臓が飛び出すところでした、からかうのはご遠慮願いたい。

「私は27です、殿下よりも年上です。しかし、人性初のプロポーズ。良い経験になりました。この幸せは一生忘れないでしょう、胸にしたためて頑張って生きていきます」
「初めてのプロポーズだったのか、嬉しいな。俺も初めてだよ」
ニコニコと表情は変わらない。

「はい!このように胸がときめくのですね。ミューズ様が恋愛小説にハマるのもわかります、本当に素晴らしい」
ぐっと拳を握り、熱く語る。

「で、返事は?」
「返事?」
返事?Response?何について?

「結婚してくれる?」
2度目のその言葉を理解した後、あまりの衝撃に顔を赤くしてレナンは再び意識を失ってしまった。


「御冗談ではなかったのですか?」
火照る顔に濡れタオルを当て、寝込むレナンの側でじっとエリックが言葉を待つ。

返事を聞くまでは帰れないとずっと待っててくれたのだ。

「冗談ではない。冗談でこんなことは言わない。俺は王になるのだ、発言には責任を持つよ」

熱々の視線に毛布に潜り込みたい。
だが殿下に対しての不敬になってしまう、逃げられない。

「そもそも殿下は何故私などと」
「殿下は止めてくれ、名前で呼んでほしい」
「…エリック様は何故私にそのような世迷い言を申すのですか」

女性にしては背も高く、ミューズのように女性らしい身体つきもしていない。まるで枯れ木のようだと言われた事もある。

「レナン殿は美しい、そして話すととても楽しいのだ。今まで俺の話についてこれたのは君とミューズだけだ」
弟は脳まで筋肉だしなとさらりと毒舌を吐く。

「レナン殿は頭が良いし面白い。見ていて飽きないのだ」
「そのレナン殿というのを止めて下さい、体がムズムズします」

自分より格上の方に敬称で呼ばれるのは落ち着かない。さらに褒めちぎられるともう部屋から走って逃げたくなるほどだ。

「ではレナンは俺をどう思う?」
呼び捨ての方が凄い迫力だ。今にも天国へのぼれそう。

「素敵な方です」
「好き?嫌い?」
「その2択なら好き、です」
「恋人になったら嬉しい?嬉しくない?」
「嬉しい、です」
「じゃあ夫にしたいのは…」
「待ってください、誘導してますよね?!」
その2択でいけば断れない選択肢ばかりではないか。

憧れの方を否定する方など選ぶわけがない。

「私と婚姻なんて、エリック様の足枷にしかなりません。お荷物ですよ」
「10年以上も王宮に務め、ここ数年はひとりでリンドールを支えていたじゃないか。その功績は誰しもが認めている。今度は俺に支えさせてくれ」
「王妃など私には務まりません」
「構わない。公務についてはミューズも手助けしてくれると話していた。俺と結婚すればミューズと義姉妹にもなれるぞ」
「私の女神と義姉妹に…!人間には恐れ多いですが魅力的な話」
堂々と彼女と話せる立場につくのか。

しかし、目の前の太陽神との結婚なんて私には…。

「アドガルムの図書室も入り放題だ。王族にしか見ることが出来ない貴重な資料や、古書をレナンのために開放しよう」

「不束者ですがよろしくお願いします」
ベッドの上で土下座をする。

探究心には勝てなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

記憶喪失の婚約者は私を侍女だと思ってる

きまま
恋愛
王家に仕える名門ラングフォード家の令嬢セレナは王太子サフィルと婚約を結んだばかりだった。 穏やかで優しい彼との未来を疑いもしなかった。 ——あの日までは。 突如として王都を揺るがした 「王太子サフィル、重傷」の報せ。 駆けつけた医務室でセレナを待っていたのは、彼女を“知らない”婚約者の姿だった。

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...