塔の姫は隣国の王子と恋をする

しろねこ。

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ひと休み

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ダンスを終え、お茶などを飲みながら休憩する。

先程エリック達が話していた、合同で結婚式を挙げる話を切り出した。

「それなら嬉しいです。ミューズ様と一緒なら、緊張しすぎて倒れなくて済みそう」
「レナン様と一緒ならとても楽しそうです。ドレスのデザインもなるべく揃えればもっと華やかになりそうですね」

キャッキャとはしゃぎつつ、二人も賛成のようだ。

本当に姉妹のように仲が良く、可愛らしい。

花嫁であれば、自分が主役なのだからイヤと主張しても良さそうだが、そんな争いはないようだ。

「衣装も皆が違いすぎると違和感になるな。そこも良く話し合うとする。他に希望があればいつでも言ってくれ、ある程度取りまとめて国王に進言してくるが、押し通して見せる」

「あとは招待客だな、君達の呼びたい人をリストにしていてくれ。身内や友人など」
「呼びたい人…」
ミューズが考え込み、表情が暗くなる。

「大丈夫か、ミューズ」
そっと肩を抱き寄せ、ティタンが優しく髪を撫でる。

「お父様に、見てもらいたいな」

俯いたまま遠慮がちにそう言う。


国を離れ数ヶ月。
いまだ目覚める兆候はないと、シュナイ医師から報告は来ている。
エリックが送った密偵からも同じだ。

国王の身体は健康なのに何故か目覚めない。



「そうですね、私にとっても恩のある方なので、ぜひご報告させてもらいたかった」
しょんぼりとするレナンに、エリックも慰め始める。

身体を密着させ、手を繋ぐ。

「リンドール国王、ディエス殿が倒れた時は二人は傍にいたのか?」
少しでも手がかりがあればと話を聞いてみる。

「いえ。ですがあのときは丁度シュナイ医師の診察中だったので、すぐに処置をしてもらえたので運がよかったです。
お父様はお母様が亡くなり気落ちしていました。食欲もなくなり、心配したシュナイ医師が度々診てくれていましたので、その時も診てもらってたところなのです」
「確かレナンを診てくれたのもシュナイ医師だよな。どんな方だ?」
「えっと優しい方ですね。治癒の魔法を使えますが医術も凄いです。注射も痛くありません」
「私が小さい頃からずっとおりますよ。確かお父様とお母様の同級生なのだそうです。王宮医師のトップとして、私もリオンも何かあればシュナイ医師に診てもらいました」
「…」
ティタンは軽くヤキモチを焼き、ミューズを抱きしめる手に力を込める。

「王族専属なら大変であろう、何かあって居ないのは困るな。彼の家族も王宮にいるのか?」
「シュナイ医師は独身です、婚期を逃したと笑いながら話していました。おかげで私とリオンを実の子どものように可愛がってくれましたし、お父様やお母様ともとても仲が良かったです」
ミューズが話す様子に信頼しているのだとわかる。

レナンが倒れた時もすぐさま対応してくれ助かったし、エリックとしても婚約者を助けてくれた恩人だ。




「その彼は、今のディエス殿をどう見立てた?」
「お母様を亡くしたショックで心を病んでしまわれたのでないか。お母様を喪った現実に戻りたくないのではないかと、話されてます」

心と言われると難しい。
目に見えないものなので、医学の心得がないエリックではなんともわからない。

「ミューズの父上に無礼を言うようだが……ディエス殿はそんなに心が弱かったのか?」
愛する人を失うのはショックだ。




しかし彼は国王。

守るべき民も、守るべき子どもたちもいる。

妻を愛してるからこそ、彼女が愛していた国を守ろうと躍起になるのでは?

「そこまで弱かったとは思えません。私とリオンの中では優しいけれど、厳格な強い父でした」
弱っていたとしても、親友のシュナイ医師が話を聞いたり診察したりと、支えてくれていたのに。

休憩時間が終わり、皆執務に戻ろうと話す。
ダンスをしていた二人は一度汗を流してから、夕飯まで座学に移るそうだ。

「シャワー…」
ティタンは想像し、抑えられなくなる。

「ミューズ」
ぎゅっと抱きしめられ、ミューズは慌てた。

「ティタン、待って!今は汗が…」
「ん、大丈夫。とてもいい匂いだ」
胸いっぱいに吸い込み、頬にキスをする。

むしろいつもより濃厚な匂いで芳しく感じる。

額にもキスをして優しく送り出す。




それを見ていたレナンは、顔を真っ赤にして頬を両手で抑えていた。

「なんと、お若い!」
人前であのように出来るなんて、レナンなら無理だ。
でもちょっと羨ましいなと思ってしまった。

ティタンは大胆ながらも、ミューズにかける愛情は見ている方も感じられる。

とても深い慈しみだ。




エリックもすっと近づき、レナンの額にキスをした。

「えっ?!」
慌ててエリックを見ると、いたずらっ子のような表情をしている。

「いや、羨ましいのかと思って」
「そういうわけでは……」

とてもとても羨ましかったなんては言えない。

表情で読み取り、エリックはレナンの髪をかき上げ首元にキスをする。

「エリック様!」
それこそ汗が!

「本当だ。いい匂い」
真っ赤になり、目が泳ぎだしたレナンをよしよししながら、座学の教室まで送り出す。





二人とも授業に身が入らず、先生を困らせてしまっていた。
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