次期女王になる美姫はダメンズと言われる公爵令息を寵愛中

しろねこ。

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第9話 ティアシーアの恋

「ミカエル」
突如現れた弟にレナードは手を上げて挨拶する。

ティアシーアは避けていた人が現れ、驚いて固まっている。

「兄様達と一緒だったのですね。ずっと探していたのになかなか会えず困っていたのですよ。ねっ、ティアシーア様」

「その、お久しぶりです……」
ティアシーアが後ろの従者に何やら言っている。

(フゥ! きちんと見張っていてって頼んだじゃない!)

「うっかりです、うっかり。ほらミカエル様がお待ちですよ」
フゥはひょうひょうとしており、主に対する態度ではない。

「この前はありがとうございました。ずっとお礼が言いたくて探していたのですよ。今日のドレスも素敵です、瞳の色と同じ黄緑色でティアシーア様によく似合っていますね。今度私からも贈らせてください」

「いいえ、そんな!滅相もございませんわ!」
ミカエルの積極的なアプローチを見てレナード以外は察した。

明らかに気がある。

「あら素敵ですね、では今度ミカエル様とお買い物に行かれるといいと思いますわ。実際に見た方がいいもの。さぁさ、ぜひその予定を立てましょう。フゥ、ティアシーア姉様の予定はもちろん把握してますね?」

「勿論です、お任せするですよ」
リオーネがティアシーアのフォローをしつつ、話を進めていく。

「エレオノーラ姉様もお疲れではないですか? この時間中庭ならば人が少ないですよ。少しレナード義兄様と休まれるといいかもしれませんね」
そっとエレオノーラに伝える。

「こちらは私にお任せを。中庭ですが、少しの間人払いをお願いしましたのでゆっくりお過ごしください」
にこりとリオーネは微笑む。

この妹は人の恋に敏感すぎるだろう、手回しの速さに驚いてしまう。

好意に甘え、エレオノーラはしなだれかかる。

「レナード、わたくし少し疲れてしまいましたの。中庭で休みませんか?」

「それは大変だ。エレオノーラ様、あまり無理はされないでくださいね」
体を支えるように肩に手を回される。

普段は恥ずかしがるくせに、エレオノーラが体調が悪いなどやむを得ない時は積極的だ。

ギャップに驚いてしまう。

頬を可愛く染めたエレオノーラを見送り、リオーネは改めてティアシーアに向き直る。

(ティア姉様もあれくらい素直ならいいのですが)
これだけミカエルがアプローチをしてくれているのだから、ティアシーアが頷くだけで結ばれそうなものだ。

せっかく想い人が声をかけてくれてるのに勿体ない。

(じれったいのは嫌いじゃないけど、姉様達が結婚してくれないと私も想いを伝えられないのよね)
言われたわけではないが、やはり順番は気にしてしまう。

何よりレナードもミカエルも真面目だ、必ず姉達を幸せにしてくれるだろう。

「フゥ。ティア姉様とミカエル様を会わせてくれてありがとね」

「あのままでは進まないと思ったのです。主には幸せになって欲しいので」
勘の良いティアシーアはミカエルの気配を感じると避けに避けていた。

エレオノーラと会話している隙をついて、フゥはミカエルを見つけてわかるようにアピールしたのだ。

「ミカエル様ならティアシーア様を受け入れてくれそうですし。家柄も申し分ないです。それに騎士を辞めて淑女に為れなどとは言わないでしょうから」
ティアシーアは今まで幾度となくそのような事を言われてきた。

幼い頃からティアシーアに仕えるフゥとしては、そんな事をいう人間が信じられなかった。

主が選んだ道を他の者が口出しすることは許されない。


ティアシーアの家族は彼女の気持ちを尊重し、否定などしない。

反対する者は関係ない他人ばかり。

彼女に酷い事を言うものは、屠ることすら厭わなかった。

ティアシーアはフゥの恩人だ、何を捨てても守るべき人。

「少し妬けるわ、あなたはティアシーア姉様ばかり見ているから」

「おや、僕が抱くは忠義心だけですよ」
ミカエルのライバルになる気も、横恋慕する気もさらさらない。

ティアシーアとフゥの間にあるのは純然たる主従関係だけだ。

「そう。ではこのままティア姉様を見守ってあげてね。とても不器用だから」

「そうですね」
優しく話しかけるミカエルと、顔を赤くしながら受け答えをするティアシーアを、二人は少し離れた場所で微笑ましく見つめていた。







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