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「あの、エレオノーラ様?」
ミリアを見送ってからもエレオノーラは無言だ。
怒ってますか? という言葉は飲み込んだ。
だって絶対に怒っている。
唇は引き締められ、眉間には皺が寄っている。
キュリアンもずっと青白い顔で何も言わず立ち尽くしていた。
レナードは先程の事を弁解しようと、頭の中で言葉を整理し、いよいよ話そうと口を開いたところで、エレオノーラが声を出す。
「レナードは、ああいう可愛い子が好きなの?」
言われたのは予想だにしない言葉だ。
「ミリア様を? いえ、好きではないです」
「そう。あの令嬢に好意を持っているわけではないのなら、いいのです」
「好意など全くありません。だから、何があったのか聞いてください」
ミリアには失礼かもしれないが、エレオノーラの方がとっても大事なので、これ以上悲しい顔にさせたくない。
レナードは躊躇った後に、エレオノーラの手を取ってしっかりと握り、真っすぐに見つめた。
「僕が好きなのはエレオノーラ様だけです。信じてください」
エレオノーラはレナードを見つめ返す。
「声を掛けたのはあちらからです。僕はこの間の謝罪をし、キュリアンにも促されてすぐにエレオノーラ様の元に戻ろうとしてました。それをミリア様が話をしたいと引き止め、泣き出したのです。さすがにそのままで立ち去るわけには行かず、ハンカチを差し出したら手を掴まれてしまいました」
自ら握ったわけではないと弁明する。
確認するようキュリアンを見ると首がもげそうなほど頷いていた。
「レナード様の優しさに惚れ込んだようで、初恋だと言い無理に引き止められてしまいました。防げなかったことは申し訳ありません。今後は触れることも禁じ、魔法を使用したいと思います」
腰から体を折り、深く頭を下げるキュリアンを見て、レナードも援護する。
「いや、キュリアンのせいじゃないよ。抱きつかれるなんて予測出来なかったし、僕が油断していたから悪いんだ」
「抱きつかれた?」
キュリアンが息を飲む周囲の温度が急降下したのだ。
丁度戻ってきたニコルも空気の寒さに身震いしている。
「それは、許せませんね。わたくしのレナードに対して触れるだけならいざ知らず、抱きつくなんて……何を考えているのかしら」
「後ろから、後ろからだから避けられなかったのです!」
レナードもエレオノーラの怒りに気づき、言い訳を繰り返す。
「落ち着いてください、エレオノーラ様! 怒らないでください!」
「わたくしはレナードには怒っていませんよ。怒るとして……ねぇ、キュリアン」
「はい……」
名を呼ばれ、キュリアンはかすれた声で返事した。
「挽回のチャンスは上げるわ。どうすればいいかはわかるわね?」
今後似たような事が起きないよう、レナードに好意を持つ女性を一切近づけない事を厳命された。
「ニコル。もしもクノーツ子爵令嬢が、こちらに価値のない者ならば容赦なく切り捨てて」
「はっ」
王女の婚約者にも手を出そうとする女性。
もしかしたら社交界にとってもいい影響を与えない女性なのかもしれないと、情報収集をお願いする。
そうならば速やかに退場をさせるだけだ。
「レナードに、わたくしの大事な人に手を出すものなんて、必要ないわ」
ばっさりと言い切るエレオノーラを見て、レナードはちょっと前の言動を撤回したくなった。
見た目が綺麗な分、こういう容赦ないところがえげつない程に怖い。
「これからもっと皆に知らしめなきゃね。レナードに手を出したらどうなるかを」
レナードの手に指を絡ませていく。
離さぬように、逃がさぬように、エレオノーラはにこりと笑ってレナードとの距離を詰めた。
「わたくしもレナードが大好きよ、誰にも渡したくないくらい。だから、離れないでね」
愛の告白のような、呪縛のような言葉だ。
「はい」
レナードは何度も頷き、心に刻み込んでいく。
ミリアを見送ってからもエレオノーラは無言だ。
怒ってますか? という言葉は飲み込んだ。
だって絶対に怒っている。
唇は引き締められ、眉間には皺が寄っている。
キュリアンもずっと青白い顔で何も言わず立ち尽くしていた。
レナードは先程の事を弁解しようと、頭の中で言葉を整理し、いよいよ話そうと口を開いたところで、エレオノーラが声を出す。
「レナードは、ああいう可愛い子が好きなの?」
言われたのは予想だにしない言葉だ。
「ミリア様を? いえ、好きではないです」
「そう。あの令嬢に好意を持っているわけではないのなら、いいのです」
「好意など全くありません。だから、何があったのか聞いてください」
ミリアには失礼かもしれないが、エレオノーラの方がとっても大事なので、これ以上悲しい顔にさせたくない。
レナードは躊躇った後に、エレオノーラの手を取ってしっかりと握り、真っすぐに見つめた。
「僕が好きなのはエレオノーラ様だけです。信じてください」
エレオノーラはレナードを見つめ返す。
「声を掛けたのはあちらからです。僕はこの間の謝罪をし、キュリアンにも促されてすぐにエレオノーラ様の元に戻ろうとしてました。それをミリア様が話をしたいと引き止め、泣き出したのです。さすがにそのままで立ち去るわけには行かず、ハンカチを差し出したら手を掴まれてしまいました」
自ら握ったわけではないと弁明する。
確認するようキュリアンを見ると首がもげそうなほど頷いていた。
「レナード様の優しさに惚れ込んだようで、初恋だと言い無理に引き止められてしまいました。防げなかったことは申し訳ありません。今後は触れることも禁じ、魔法を使用したいと思います」
腰から体を折り、深く頭を下げるキュリアンを見て、レナードも援護する。
「いや、キュリアンのせいじゃないよ。抱きつかれるなんて予測出来なかったし、僕が油断していたから悪いんだ」
「抱きつかれた?」
キュリアンが息を飲む周囲の温度が急降下したのだ。
丁度戻ってきたニコルも空気の寒さに身震いしている。
「それは、許せませんね。わたくしのレナードに対して触れるだけならいざ知らず、抱きつくなんて……何を考えているのかしら」
「後ろから、後ろからだから避けられなかったのです!」
レナードもエレオノーラの怒りに気づき、言い訳を繰り返す。
「落ち着いてください、エレオノーラ様! 怒らないでください!」
「わたくしはレナードには怒っていませんよ。怒るとして……ねぇ、キュリアン」
「はい……」
名を呼ばれ、キュリアンはかすれた声で返事した。
「挽回のチャンスは上げるわ。どうすればいいかはわかるわね?」
今後似たような事が起きないよう、レナードに好意を持つ女性を一切近づけない事を厳命された。
「ニコル。もしもクノーツ子爵令嬢が、こちらに価値のない者ならば容赦なく切り捨てて」
「はっ」
王女の婚約者にも手を出そうとする女性。
もしかしたら社交界にとってもいい影響を与えない女性なのかもしれないと、情報収集をお願いする。
そうならば速やかに退場をさせるだけだ。
「レナードに、わたくしの大事な人に手を出すものなんて、必要ないわ」
ばっさりと言い切るエレオノーラを見て、レナードはちょっと前の言動を撤回したくなった。
見た目が綺麗な分、こういう容赦ないところがえげつない程に怖い。
「これからもっと皆に知らしめなきゃね。レナードに手を出したらどうなるかを」
レナードの手に指を絡ませていく。
離さぬように、逃がさぬように、エレオノーラはにこりと笑ってレナードとの距離を詰めた。
「わたくしもレナードが大好きよ、誰にも渡したくないくらい。だから、離れないでね」
愛の告白のような、呪縛のような言葉だ。
「はい」
レナードは何度も頷き、心に刻み込んでいく。
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