遭難していた熊さんを助けたのですが、後の旦那さんになりました

しろねこ。

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第11話 暖かな

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シグルドの許しを得て、屋敷の一室を借りた。

 若干ピリッとした空気である。

「無事に妖精は成敗して元の姿に戻ることが出来た、ありがとう」

 あの後問題なく呪いは解けたという事で、二人は安心した。

 しかし熊の姿と声のティに慣れていたので、まだ少しだけ違和感はあるが、さすがにそれは口に出さない。

「はぐれた供の者達も無事であった。最初俺がこちらのリンドールの方を彷徨っているとは思わなかったそうだ。だがしばらくして、こちらにも捜索の手が伸び、そこで俺の噂を聞いたらしい」

 ティが供の者たちと会えなかったのは、違うところを捜索していたからとは。でも妖精の犠牲になっていたわけではない事を聞けたのはよかった。

「時期と内容から、もしかしたら俺達が探しているティではないかと思い、詳しく調べたのだ。そうしたらシグルド殿に行き着き、居ても立っても居られず、話を聞きに来たのだ。急な事で申し訳なかった」

 エリック達があの日シグルドの屋敷を訪れたのはその為とのことだ。

「僕の探知魔法で会う事は出来たのですが、お礼とあと情報収集も兼ねて話を聞きに来たのです。あの妖精、意外と素早く捕まえる事が出来ずにいたのですが、二人のおかげでこうして元に戻れました。本当に感謝していますありがとうございます」

リオンは頭を軽く下げる。

ティも神妙な顔でシグルド達を見遣った。

「シグルド殿もディエス殿も、そして二人共ありがとう。熊の姿である俺を信用し、匿ってくれたおかげで、再び生きて母国の者とも会うことが出来た。特に二人は妖精を捕まえるところまで手伝ってもらった、本当に感謝してもし足りないくらいだ」

 人の良さそうなティは熊の状態で会った時と同じくおおらかな話し方をする。

 その様子に安堵する。

「元に戻れて良かったわ。頑張った甲斐があったわね」

「えぇ。こうして人間に戻れて、国にも帰れるようになったのだもの。喜ばしい事だわ」

 レナンもミューズも嬉しそうにしている。

「それ以外にも大事な話があって」

 ティがコホンと咳払いをすると、皆の視線が集まる。

 お礼と報告以外にも話があるそうだ、皆が見つめる中で改まってティが頭を下げる。

「ミューズ、ぜひ俺と結婚して欲しい」

 そう言うティタンの目はミューズを見つめていた。
 
「俺からも失礼する。レナン嬢、俺の伴侶になって欲しい。不自由はさせないから」

 エリックもまたレナンを真っ直ぐに見つめている。

「僕はただの見届け人なので」

 リオンは口を閉ざし、気配を消す。

「ミューズの行動力と勇気は素晴らしい。そしてお互いを大切に思い、離れたくないという気持ちを俺も共に守っていきたい。その為の力を俺たちは持っている」

 余程自信があるのか、それともミューズを離したくないのか。ティは堂々と言い放った。

「もしも求婚を受けて貰えれば、俺も二人が離れる事がないように配慮しよう。それにうちの護衛は優秀だ、今後は危険な目に合う事もない」

 エリックは表情も変えず、二人の為の護衛を呼ぶ。

 護衛は女性らしい、これならどこにいても離れる事はないだろうという事らしい。

 でもこんな話を唐突に言われてどうしたらいいのか。

 二人は困って両親の方に視線を移した。

 父の方を見れば頭を抑え、困った顔をしている。

 対照的にリリュシーヌはにこやかであった。

「いいんじゃない? どこよりも良い条件だわ。勿論決めるのは二人だけれど、別々な所に行くよりは安心ね」

 母は賛同してくれた。

「ぼ、僕も娘たちが納得し、そして蔑ろにされないならば反対はしない。けれど、遠くに行ってしまう事は少し寂しいかな」

 最終判断は二人に委ねるとして、ディエスも渋々ながら了承する。

 意外にも両親が大きな反対をしない事に驚くも、だからといって即了承は出来ない。

「そもそもあなた方の事を詳しく知らないので」

 ミューズとレナンは戸惑っている。

 どんな人かは中身は少しわかるけど、身分も立場も聞いてない。結婚以前の問題だ。

 それを聞いてティは少し面食らうが、直ぐに気を取り戻した。

「そうかシグルド殿達から聞いていなかったか。名乗るのが遅れたが、俺の本当の名はティタン。実家は……アドガルム王家だ」

 身分あるものだとは思ったけれど、王族とは。 

「似ていないが俺はティタンの兄だ。いわゆる王子と呼ばれる身分だよ」

 ティタンとエリックの自己紹介に二人は、ただただ恐縮してしまった。 

 すぐには返事は出来ないとした二人は、返事を保留にし、自領に戻る。

 けれど、マメに届く手紙や二人で一緒に居られるという好条件に、やがて頷くこととなる。

 久々に顔合わせをすることになり、改めてミューズはティに問いかけた。

「本当に私で良かったの?」

「あぁ。熊の姿だろうが、今の姿だろうが、怖がる事無く接してくれるだろう? そんな者は今までいなかった」

 大柄なティタンは自国の女性に怖がられており、ミューズの優しさはとても嬉しかったそうだ。

「中身はとても優しいのに」

 皆見る目がないのね、とミューズはティタンを元気づけるように言う。

「君がそう言ってくれるなら、それだけで十分だ」

 ミューズの優しさにティタンは励まされる。

 一方のレナンはエリックと話していたが、不機嫌であった。

「王太子妃なんて聞いてませんけど」

 後出しの情報に口を尖らすレナンだか、エリックは微かに口の端を上げるだけだ。

「ティタンとリオンの兄ということで、少し考えればわかるはずだが? 本当に君は迂闊だな、これからも目が離せないよ」

 見た目的な変化はわかりづらいけれど、エリックは笑っている。

 レナンはからかわれているのを感じ、ますます口を尖らした。

「もう、やっぱりこの話しはなしにしましょう」

「気に障ったならすまない、だがもう離さないと言っただろ。必ず幸せにするから」

 レナンの手を繋ぎ、エリックは真っ直ぐにレナンを見つめる。

 異性とこのようなやり取りをしたことがないレナンは真っ赤だ。

 そしてエリックは顔が良い。

 抗おうにもついには屈してしまう。

 雪の降る日に始まったお話は、二人の素直さと勇気、そして優しさによって、暖かな春のようになった。


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