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母は強し
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「ティタン様、娘のエスコートをありがとうございます。さあさあ可愛い顔を見せて?」
浄化の魔法をかけ、涙の跡を消す。
ミューズはティタンの胸から離れ、リリュシーヌがいる皆の方へ向き直った。
「お母様、来てらしたのね」
終焉はもうすぐ。
ラドンは動揺していた。
知らなかったのだろう、ミューズの素顔を。
魔法が解けたことを。
「ラドン殿。私の娘への言葉はどう聞いても侮辱としか取れませんな。同僚として嘆かわしい事です、そのような子育てしか出来ないとは」
「ディエス…殿」
ギリリと歯ぎしりをする。
確実に今日のことは大臣の地位を脅かす事件だ。
カレンの、娘の不出来はもはや覆るはずもないものだった。
「醜い醜いだなんて、酷いものよね。人間中身よ!」
リリュシーヌは言い放つ。
「まぁだからといって人の見た目を無理に変えるなんてしてはいけないわよね。それも人を陥れるためなんて悲しいわ。ラドン様もそう思わなかったかしら?
私の可愛い娘を醜く変えたのはあなたでしょ?ラドン様」
「何を馬鹿なことを!」
認められない言葉だ。
周囲の人は動揺に包まれており、カレンすら驚いていた。
「王家の魔法使いに協力してもらい、ミューズに掛けられた魔法を追跡したのよ。あなたの立場なら赤ちゃんの頃のミューズに触れたし、私に気付かれないよう刻印をするのも出来たでしょうね」
「刻印?」
ティタンの疑問にリリュシーヌは答える。
「それがあれば密かに且つ断続的に魔力を流すことが出来て、魔法を維持できるわ。ミューズの丁度後頭部のところ…髪に隠れてるところだから見えないところにあったの。令嬢ならば伸ばして当たり前のところだったから意外すぎて気づかなかったわ」
魔法の解除は主にリリュシーヌが請け負っていた。
ティタンは別な事で忙しく、細かく伝えていなかったのだ。
「あの頃はいがみ合いなどなかった気がするが、まさか娘にそのような魔法をかけて醜聞を流すとは。政界から追い出したいにしてはやりすぎではないか?」
ディエスは動機を知りたいようだ。
「……」
ラドンは何も答えない。
「黙秘してもいいが、うちの尋問官は少しばかり手荒だぞ?」
ティタンはふぅとため息をつきつつ、ようやく冷静さを取り戻した。
「何で?たかだか嫌がらせに過ぎない事じゃない!尋問だなんて、」
「人に害なす魔法を数年もの間かけておいて軽く済むと?そのせいで一人の令嬢の人生が変わりかけたのだ、下手したら命を落としていたかもしれない…」
ミューズが悲観し、自ら命を絶つ可能性もあった。
その可能性はもはやないものだが、ティタンは頭を振って考えないようにする。
「悪意ある噂を流布し、陥れようとした罪もある。そして俺の婚約者を侮辱した事は俺への不敬だ。そして王太子妃のレナン義姉上への侮辱もあったな、許されると思うなよ」
「一つ、私からお願いが」
リリュシーヌがティタンへ進言する。
「この者たちは我がスフォリア家の宝、ミューズへ辱めとしか思えない魔法を長年かけておりました。少しでもこの悔しい気持ちをわかってもらうため、この場での魔法の使用許可を頂きたいのです。一つだけでいいので」
「わかった。許可をする」
ティタンは即答していた。
「ひっ!」
「国王陛下の許可もなく何と勝手な事を!いくら第二王子とて許されませんぞ!」
怯え戸惑うカレンと、何とか回避したいラドン。
「そもそも国王陛下が一言も発しないという事は俺の発言が許されているということだ。俺を諫める事も止めることも何時でも出来るはずなのだから」
今日はデビュタントを迎える大事な日。
新たに社交界デビューをする令嬢達を国王や来賓が歓迎の意を表してここにいるわけで。
ティタン達から遠いものの、国王夫妻も王太子夫妻も最初からここデビュタント・ボールにいるのだ。
「まさか失念してたわけではないでしょうけど。
これだけ大勢の前で言ったことはなかったことには出来ないわ、悪いことなら尚更。七十五日どころか一生残るわね」
リリュシーヌはコツコツとヒールを鳴らし、二人に近づいた。
「何をする気だ?!」
「あら、私は優しいのよ。あなた達みたいな陰険な魔法は掛けないわ。寧ろ解いてあげる」
リリュシーヌが魔力を放つ。
キラキラとした火花のような光が周囲を包みこんだ。
浄化の魔法をかけ、涙の跡を消す。
ミューズはティタンの胸から離れ、リリュシーヌがいる皆の方へ向き直った。
「お母様、来てらしたのね」
終焉はもうすぐ。
ラドンは動揺していた。
知らなかったのだろう、ミューズの素顔を。
魔法が解けたことを。
「ラドン殿。私の娘への言葉はどう聞いても侮辱としか取れませんな。同僚として嘆かわしい事です、そのような子育てしか出来ないとは」
「ディエス…殿」
ギリリと歯ぎしりをする。
確実に今日のことは大臣の地位を脅かす事件だ。
カレンの、娘の不出来はもはや覆るはずもないものだった。
「醜い醜いだなんて、酷いものよね。人間中身よ!」
リリュシーヌは言い放つ。
「まぁだからといって人の見た目を無理に変えるなんてしてはいけないわよね。それも人を陥れるためなんて悲しいわ。ラドン様もそう思わなかったかしら?
私の可愛い娘を醜く変えたのはあなたでしょ?ラドン様」
「何を馬鹿なことを!」
認められない言葉だ。
周囲の人は動揺に包まれており、カレンすら驚いていた。
「王家の魔法使いに協力してもらい、ミューズに掛けられた魔法を追跡したのよ。あなたの立場なら赤ちゃんの頃のミューズに触れたし、私に気付かれないよう刻印をするのも出来たでしょうね」
「刻印?」
ティタンの疑問にリリュシーヌは答える。
「それがあれば密かに且つ断続的に魔力を流すことが出来て、魔法を維持できるわ。ミューズの丁度後頭部のところ…髪に隠れてるところだから見えないところにあったの。令嬢ならば伸ばして当たり前のところだったから意外すぎて気づかなかったわ」
魔法の解除は主にリリュシーヌが請け負っていた。
ティタンは別な事で忙しく、細かく伝えていなかったのだ。
「あの頃はいがみ合いなどなかった気がするが、まさか娘にそのような魔法をかけて醜聞を流すとは。政界から追い出したいにしてはやりすぎではないか?」
ディエスは動機を知りたいようだ。
「……」
ラドンは何も答えない。
「黙秘してもいいが、うちの尋問官は少しばかり手荒だぞ?」
ティタンはふぅとため息をつきつつ、ようやく冷静さを取り戻した。
「何で?たかだか嫌がらせに過ぎない事じゃない!尋問だなんて、」
「人に害なす魔法を数年もの間かけておいて軽く済むと?そのせいで一人の令嬢の人生が変わりかけたのだ、下手したら命を落としていたかもしれない…」
ミューズが悲観し、自ら命を絶つ可能性もあった。
その可能性はもはやないものだが、ティタンは頭を振って考えないようにする。
「悪意ある噂を流布し、陥れようとした罪もある。そして俺の婚約者を侮辱した事は俺への不敬だ。そして王太子妃のレナン義姉上への侮辱もあったな、許されると思うなよ」
「一つ、私からお願いが」
リリュシーヌがティタンへ進言する。
「この者たちは我がスフォリア家の宝、ミューズへ辱めとしか思えない魔法を長年かけておりました。少しでもこの悔しい気持ちをわかってもらうため、この場での魔法の使用許可を頂きたいのです。一つだけでいいので」
「わかった。許可をする」
ティタンは即答していた。
「ひっ!」
「国王陛下の許可もなく何と勝手な事を!いくら第二王子とて許されませんぞ!」
怯え戸惑うカレンと、何とか回避したいラドン。
「そもそも国王陛下が一言も発しないという事は俺の発言が許されているということだ。俺を諫める事も止めることも何時でも出来るはずなのだから」
今日はデビュタントを迎える大事な日。
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ティタン達から遠いものの、国王夫妻も王太子夫妻も最初からここデビュタント・ボールにいるのだ。
「まさか失念してたわけではないでしょうけど。
これだけ大勢の前で言ったことはなかったことには出来ないわ、悪いことなら尚更。七十五日どころか一生残るわね」
リリュシーヌはコツコツとヒールを鳴らし、二人に近づいた。
「何をする気だ?!」
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