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第6話 幸せなやりとり
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「緊張するわね……」
本日は私、エストレアの十四歳の誕生日だ。
いつもは親族のみでちょっとしたパーティーを開くだけであったけれど、今年はディフェクト様とイティルラ様が来るから入念に準備する必要があった。
おかげでいつも以上に時間がかかってしまったけれど、とても素敵なパーティーになりそうで嬉しいわ。
お父様とお母様もそして使用人達も張り切ってくれて、豪華な料理やインテリアが数多く並ぶ会場に仕上がっている。私のドレスもいつも以上に重く、キラキラとした装飾品やレースがたくさんついていた。
(そこはそんなに頑張らなくてもよかったんじゃないかなぁ)
馬子にも衣装……そんな言葉が頭をよぎる。
私の不満そうな様子には見向きもせず、お母様はにこにこだ。
「とっても似合っているわよ、すごく可愛い。さっ、殿下達が来てくれるんだもの、最後に仕上げをしなくてはね」
そう言ってメイクもヘアセットも、いつも以上に凝ったものにされてしまった。いつもの倍はかかったんじゃないかしら、パーティが始まる前に既にヘロヘロになってしまったわ。
「もう駄目……」
殿下達が到着する前に力尽きて、椅子にぐったりと寄りかかってしまう。
「もうお嬢様、頑張ってください。ディフェクト殿下とイティルラ殿下に可愛いところを見せるって、張り切ってたじゃないですか」
「リーレン、私そんな事言ってないわ」
侍女のリーレンの大げさな言葉につい訂正してしまう。
私が言ったのは、二人が来る前に少し瘦せられたらなぁって事だけだったはずだわ。
「まぁ、お嬢様。痩せたいってつまりはよく見せたい、可愛いを見せたいって事ですよ。合ってます合ってます」
適当にも聞こえるおおらかな話しぶりだけれど、そのおかげで少し肩の力が抜ける。
「リーレンは本当に明るくて羨ましいわ」
「えへへ、それが取り柄ですから」
照れくさそうに笑うリーレン、時々信じられないミスをしてしまうのだけれど、なんだか憎めない。
(可愛いっていうのはこういう事なんじゃないかしら)
愛嬌があって肯定的な性格で、ちょっとどころか本当に羨ましいと思ってしまう。
私も少し見習ってみようかしら。
「あっ、そろそろ殿下達が到着する時間ですね」
「もうそんな時間? じゃあお出迎えの準備をしましょう」
疲れた体を奮い起こし、すっと立ち上がる。
そんな様子をリーレンはまじまじと見つめてきた。
「どうしたの? 私何かおかしい所あるかしら?」
「いえいえ、やはりお嬢様は可愛らしいなと思っただけですよ」
「急にどうしたの」
突然褒められて戸惑ってしまう。
「あんなに疲れてるといった顔だったのに、殿下達の事を出したら笑顔になりましたよ。殿下達の事がとても好きなんですね」
「そう……ね」
改めて人から言われると、なんだか照れくさい。
嬉しいのは事実だけど、そんなに浮かれてるように見えたのかしら。
私が淑女の笑みを身につけるのはまだまだ先の事かもしれない。
◇◇◇
殿下達が我が家に到着されたのは、昼の少し前だ。
家の前に並ぶ馬車の数に少し驚きながら、二人を出迎える。
「エストレア嬢、会いたかったよ!」
まずはディフェクト様の声が聞こえてきた。
(眩し……)
満面の笑顔が目に飛び込んできたため、思わず目を細めてしまった。
「お久しぶりです、エストレア様。ますます可愛らしくなったわね」
次いで姿を見せたイティルラ様も、優しい笑みをたたえている。
(二人とも、とても綺麗)
思わず見惚れてしまうくらいだ。
「本日はお越しいただきありがとうございます、ディフェクト様、イティルラ様。お二人も変わらず……いえ、とてもお綺麗になられていて、とても驚きました」
予想以上に素敵になっていて、感情が追い付かない。
「ありがとう。そう言われるの嬉しいな。エストレアに会えるからと、張り切ってお洒落をしたからね。ねぇ見てこのスカーフ、エストレアの瞳の色と同じにしたんだ、似合うかい?」
ディフェクト様が誇らしげに見せてくるのだけれど、横からイティルラ様を体を寄せて、私の前に来る。
「わたくしのイヤリングもエストレア様に合わせたのよ。このエメラルド、綺麗でしょ? 台座もエストレアの髪と同じピンクゴールドにしたんだから」
「イティルラ。今エストレア嬢は僕と話していたんだ、邪魔をしないでおくれ」
「あら、ディフェクトを待っていたら日が暮れてしまうもの。エストレア様と話したいならわたくしの後にして頂戴」
いつの間にか服のアピールではなく、二人での競い合いが始まってしまった。
(手紙でも張り合うような事が多いのよね)
どちらも良いところが多いのに、すぐに喧嘩が始まってしまうのには辟易してしまう。
「二人とも今日は仲良くね」
このままでは話が進まないので、間に割って入るように言葉を挟む。
「そうだね、エストレア嬢の誕生日だもの。イティルラ、控えるんだよ」
「それはわたくしのセリフだわ。ディフェクト、あなたが自重すればすぐに解決することなのよ」
「もう、すぐ喧嘩しないでくださいな。私はどちらともお話したいのですから」
「エストレア嬢がそう言うなら」「エストレア様がそう言うなら」
二人の声がハモる。
そんな様子に思わず三人で笑い合ってしまった。
「ふふ、それじゃあ中に行きましょう。二人が来るから頑張って皆で飾り付けをしたんですよ」
「それは楽しみだ、でも今日の主役はエストレア嬢だから、僕たちの事は壁の花だと思ってくれていいからね」
「そんな事思いませんよ」
「ではディフェクトだけ壁の花になってもらいましょう、わたくしはエストレア様を引き立てる花になります」
「それはないです、イティルラ様の方が華やかですもの」
二人の発言につい苦笑してしまった。けれど二人はまじめな表情である。
「エストレア様の方が可愛いです」
「そうそう」
またそんな事ばかり。
「……ありがとうございます」
茶化して言っているのではないとは思っているけれど、だからこそこそばゆい思いだ。
いつか本当にそんな風に自信が持てる日がするのだろうか、自分が可愛いと、心から認められる日が来るのかしら。
素直に二人の言葉を受け入れる事が出来る日が訪れるかしら。
(そんな日が来るといいな……)
今はまだ無理かもしれないけれど、いつか二人が、私と友達で良かったと誇れる
ような人物になりたい。
(どうか、二人の本当の友達になれますように)
――そんな思いが数年で終わるだなんて、この時はまだ想像すらしていなかった。
本日は私、エストレアの十四歳の誕生日だ。
いつもは親族のみでちょっとしたパーティーを開くだけであったけれど、今年はディフェクト様とイティルラ様が来るから入念に準備する必要があった。
おかげでいつも以上に時間がかかってしまったけれど、とても素敵なパーティーになりそうで嬉しいわ。
お父様とお母様もそして使用人達も張り切ってくれて、豪華な料理やインテリアが数多く並ぶ会場に仕上がっている。私のドレスもいつも以上に重く、キラキラとした装飾品やレースがたくさんついていた。
(そこはそんなに頑張らなくてもよかったんじゃないかなぁ)
馬子にも衣装……そんな言葉が頭をよぎる。
私の不満そうな様子には見向きもせず、お母様はにこにこだ。
「とっても似合っているわよ、すごく可愛い。さっ、殿下達が来てくれるんだもの、最後に仕上げをしなくてはね」
そう言ってメイクもヘアセットも、いつも以上に凝ったものにされてしまった。いつもの倍はかかったんじゃないかしら、パーティが始まる前に既にヘロヘロになってしまったわ。
「もう駄目……」
殿下達が到着する前に力尽きて、椅子にぐったりと寄りかかってしまう。
「もうお嬢様、頑張ってください。ディフェクト殿下とイティルラ殿下に可愛いところを見せるって、張り切ってたじゃないですか」
「リーレン、私そんな事言ってないわ」
侍女のリーレンの大げさな言葉につい訂正してしまう。
私が言ったのは、二人が来る前に少し瘦せられたらなぁって事だけだったはずだわ。
「まぁ、お嬢様。痩せたいってつまりはよく見せたい、可愛いを見せたいって事ですよ。合ってます合ってます」
適当にも聞こえるおおらかな話しぶりだけれど、そのおかげで少し肩の力が抜ける。
「リーレンは本当に明るくて羨ましいわ」
「えへへ、それが取り柄ですから」
照れくさそうに笑うリーレン、時々信じられないミスをしてしまうのだけれど、なんだか憎めない。
(可愛いっていうのはこういう事なんじゃないかしら)
愛嬌があって肯定的な性格で、ちょっとどころか本当に羨ましいと思ってしまう。
私も少し見習ってみようかしら。
「あっ、そろそろ殿下達が到着する時間ですね」
「もうそんな時間? じゃあお出迎えの準備をしましょう」
疲れた体を奮い起こし、すっと立ち上がる。
そんな様子をリーレンはまじまじと見つめてきた。
「どうしたの? 私何かおかしい所あるかしら?」
「いえいえ、やはりお嬢様は可愛らしいなと思っただけですよ」
「急にどうしたの」
突然褒められて戸惑ってしまう。
「あんなに疲れてるといった顔だったのに、殿下達の事を出したら笑顔になりましたよ。殿下達の事がとても好きなんですね」
「そう……ね」
改めて人から言われると、なんだか照れくさい。
嬉しいのは事実だけど、そんなに浮かれてるように見えたのかしら。
私が淑女の笑みを身につけるのはまだまだ先の事かもしれない。
◇◇◇
殿下達が我が家に到着されたのは、昼の少し前だ。
家の前に並ぶ馬車の数に少し驚きながら、二人を出迎える。
「エストレア嬢、会いたかったよ!」
まずはディフェクト様の声が聞こえてきた。
(眩し……)
満面の笑顔が目に飛び込んできたため、思わず目を細めてしまった。
「お久しぶりです、エストレア様。ますます可愛らしくなったわね」
次いで姿を見せたイティルラ様も、優しい笑みをたたえている。
(二人とも、とても綺麗)
思わず見惚れてしまうくらいだ。
「本日はお越しいただきありがとうございます、ディフェクト様、イティルラ様。お二人も変わらず……いえ、とてもお綺麗になられていて、とても驚きました」
予想以上に素敵になっていて、感情が追い付かない。
「ありがとう。そう言われるの嬉しいな。エストレアに会えるからと、張り切ってお洒落をしたからね。ねぇ見てこのスカーフ、エストレアの瞳の色と同じにしたんだ、似合うかい?」
ディフェクト様が誇らしげに見せてくるのだけれど、横からイティルラ様を体を寄せて、私の前に来る。
「わたくしのイヤリングもエストレア様に合わせたのよ。このエメラルド、綺麗でしょ? 台座もエストレアの髪と同じピンクゴールドにしたんだから」
「イティルラ。今エストレア嬢は僕と話していたんだ、邪魔をしないでおくれ」
「あら、ディフェクトを待っていたら日が暮れてしまうもの。エストレア様と話したいならわたくしの後にして頂戴」
いつの間にか服のアピールではなく、二人での競い合いが始まってしまった。
(手紙でも張り合うような事が多いのよね)
どちらも良いところが多いのに、すぐに喧嘩が始まってしまうのには辟易してしまう。
「二人とも今日は仲良くね」
このままでは話が進まないので、間に割って入るように言葉を挟む。
「そうだね、エストレア嬢の誕生日だもの。イティルラ、控えるんだよ」
「それはわたくしのセリフだわ。ディフェクト、あなたが自重すればすぐに解決することなのよ」
「もう、すぐ喧嘩しないでくださいな。私はどちらともお話したいのですから」
「エストレア嬢がそう言うなら」「エストレア様がそう言うなら」
二人の声がハモる。
そんな様子に思わず三人で笑い合ってしまった。
「ふふ、それじゃあ中に行きましょう。二人が来るから頑張って皆で飾り付けをしたんですよ」
「それは楽しみだ、でも今日の主役はエストレア嬢だから、僕たちの事は壁の花だと思ってくれていいからね」
「そんな事思いませんよ」
「ではディフェクトだけ壁の花になってもらいましょう、わたくしはエストレア様を引き立てる花になります」
「それはないです、イティルラ様の方が華やかですもの」
二人の発言につい苦笑してしまった。けれど二人はまじめな表情である。
「エストレア様の方が可愛いです」
「そうそう」
またそんな事ばかり。
「……ありがとうございます」
茶化して言っているのではないとは思っているけれど、だからこそこそばゆい思いだ。
いつか本当にそんな風に自信が持てる日がするのだろうか、自分が可愛いと、心から認められる日が来るのかしら。
素直に二人の言葉を受け入れる事が出来る日が訪れるかしら。
(そんな日が来るといいな……)
今はまだ無理かもしれないけれど、いつか二人が、私と友達で良かったと誇れる
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(どうか、二人の本当の友達になれますように)
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