ひきこもりぽっちゃり令嬢とウールドール ~人形がつなぐ優しい恋~

しろねこ。

文字の大きさ
12 / 27

第11話 初訪店

しおりを挟む
「わぁ、凄い……」

 私のウールドールが本当にお店に置かれているのを見て、甚く感動してしまった。

 王都に来た一日目、私はずっと来たいと思っていたお父様のお店に連れてきてもらったのだ。

(ずっと来てみたいと思っていたのよね)

 話に聞いてはいたけれど、自分の目で直接見るのとはわけが違う。今日来られて本当に良かった。

「お父様連れて来て下さって、本当にありがとうございます」

「こちらこそありがとう。エストレアのウールドールはこの店の目玉商品でもあるからね、いつも助かっていたよ」

 こそっとお父様がお話してくれる。

 私が作っているのだという事は外ではお話しちゃいけないわね、私は慌てて口を閉じた。

(誰にも聞こえてないわよね)
 
 周囲を見るが皆商品を見るのに夢中で気付いていないようだ。

 お店にはたくさんの女性が来ており、その年齢層は様々である。けれど一つ共通点があって来店した人達は皆笑顔だった。

(こんなにもたくさんの品物があるお店で、私のウールドールを購入してくれる人がいるなんて)

 そう考えるとこそばゆい。そわそわとした気持ちになりつつ、私も他の人と同じように店内を見て回った。

 ウールドール以外の商品も充実していて、どこをみたらいいか少し悩んでしまうわ。

 ブレスレットやイヤリング、ネックレスなど様々な装飾品が置いてあった。

「本物の宝石を使用していますが、規定から少し外れたものが多いのでお求めやすい価格になっていますよ」

 店長さんが説明してくれるけれど、イマイチぴんと来ない。

(これくらいだと、私でも買えるのかしら?)

 そもそも自分で買い物をしたことがないので何ともわからないのだ。

(欲しいものがあるならお父様が出してくれると言われたけれど……)

 とりあえずもっと見て回ろう。

 見た事がないものが多く、見るだけでも楽しい。これだというものがまだ見つかっていないのもあり、ついあちこち目移りしてしまう。

 そうしてまわっている内に心惹かれるものに出会えた。

「ここ、すごいわね」

 ひと際人気のブース見つけ、近づいてみるとそこにはウールドールが置かれていた。

 私もウールドールを作るけれどアニマル系が多い、ここのブースにあるのは女の子がメインで、それもとびきり可愛らしいものばかりである。

「これ、誰が作ったんだろう」

 繊細で丁寧で、私が作っているのとはまるで違い、表情が豊かな子達ばかりだ。

「こちらはトリシュさんの作品ですね」

「トリシュさん?」

「あちらのアニマル系も人気ですが、トリシュさんの作品も希望される方が多いです。自分用だったりプレゼント用だったり、購入される方が結構いらっしゃいますよ」

「そうなんですね」

 私も皆に混じってトリシュさんのウールドールを手にする。

 どことなくイティルラ様に似た女の子のドールと、ディフェクト様に似たドールを見つけそれを買う事にした。そちらもドレス姿だけれど、概念という事で良いかしら。

「お父様、こちらが欲しいです」

「とても可愛らしいウールドールだね」

 お父様が店長にウールドールの購入を伝えると、すぐに包んでくれると言って、預かってくれた。

 その間お母様が小声で驚くべきことを教えてくれる。

「昔エストレアにウールドールの本を渡したでしょ? トリシュさんってその本を書いた人なのよ」

「え?」

 私はびっくりした。それはいわば師匠という事ではないか。

「トリシュさん、いえトリシュ先生にいつか会ってみたいな」

 今ならディフェクト様とイティルラ様の気持ちがわかるわ。

 こんな素敵なウールドールを作る人ってどんな方なんだろう、一目会ってみたいなぁ。

「忙しい人だから、難しいかもしれませんね。あ、でも今度の販売会に来るそうだから、その時なんていいかもしれませんよ」

「販売会?」

 包み終えたウールドールを受け取りながら、店長さんに詳しい話を教えてもらう。

「自分で作ったものを売りに出す会の事です。お店に出している人も素人の人もいる交流会のようなものですね。興味があるならぜひこちらをどうぞ」

 販売会の日時や出店される達の名前が書いてあるパンフレットをもらう。

 それにはウールドールの他、フェルトマスコットやぬいぐるみなども出されるという情報も書かれていた。

「わぁ、楽しみです」

 数か月先の事だけれど、今からワクワクだわ。

(ディフェクト様とイティルラ様も誘ってみようかしら)

 二人も可愛い物が好きだと話していたし、喜んでくれるかも。楽しみ過ぎてワクワクする。

「ありがとうございます、ぜひ行ってみたいと思います」

「えぇぜひ」

 お店を見て回った後は、お父様おすすめのおいしいスイーツの店に行く。

 メニュー表には綺麗でおいしそうなものばかりがあって、なかなか決められないわ。

「食べたいものがあるならばいくら頼んでも良いんだよ」

 お父様はそう言ってくれるけれど、折角ダイエットしたのだから、リバウンドはしたくない。それにまだ痩せた姿をディフェクト様に見せてないのだから、ぽっちゃりに戻るわけにはいかないのだ。

 迷った末に、果物がたっぷりと乗ったフルーツタルトと紅茶をお願いした。

 お父様は生クリームたっぷりのショートケーキを、お母様はオペラを頼む。

 届いたものはどれも美味しそうで綺麗で、絵に残したいくらいだわ。

「どれも美味しそう……」

 届いたケーキ達を見て、思わずうっとりと見つめてしまった。

 タルトの上にはイチゴにブルーベリー、そしてマスカットなどがたくさん乗っている、どの果物もキラキラしていて、宝石箱のようだ。

 お父様のショートケーキは生クリームが凄いボリュームだ。でもかかっている粉糖のおかげで上品さも感じられる、なんだかスノードームの得お思い出すわね。

 お母様のオペラは層がとても綺麗だし、上にかかっているチョコのグラサージュの艶が高級さを感じるわ。これもまたおいしそう。

「さぁ頂きましょう」

 お母様の促しに私はフォークを入れた。

「瑞々しくて美味しい~」

 フルーツは新鮮だし、その下のカスタードも甘くておいしいし、ぜひまた来たい味ね。

(そう言えば昔ディフェクト様とイティルラ様への誕生日に、似たようなものを作ったなぁ)

 チェリちゃんと果物盛り合わせのウールドールを、お祝いで贈ったのを思い出す。

 そう言えばそのウールドールが話をしだしたというのは聞かなかった。

(何でかしら?)

 私が美味しいタルトと紅茶を楽しみながら、そんな事を考えていると、いつの間にかお父様とお母様がお互いのケーキを食べさせ合っているのに気が付いた。

(二人共いつまでも仲が良くていいなぁ。私も将来ディフェクト様とあんな風になれるかしら)

 ディフェクト様は優しいから、もしかしたらしてくれるかも……?

 想像すると恥ずかしいけれど、いつか出来たらなぁ想像してしまう。

(早く会いたいな、痩せた私もぜひ見てもらいたいもの)

 もうすぐね。

 家族で過ごすのも楽しいけれど、ディフェクト様とイティルラ様に会えるのも待ち遠しいわ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月
恋愛
(週一更新になります。楽しみにしてくださる方々、申し訳ありません。) この物語の主人公、ソフィアは五歳の時にデメトリアス公爵家の養女として迎えられた。 両親の不幸で令嬢になったソフィアは、両親が亡くなった時の記憶と引き替えに前世の記憶を思い出してしまった。 この世界が乙女ゲームの世界だと気付くのに時間がかからなかった。 自分が悪役令嬢と知ったソフィア。 婚約者となるのはアレン・ミットライト王太子殿下。なんとしても婚約破棄、もしくは婚約しないように計画していた矢先、突然の訪問が! 驚いたソフィアは何も考えず、「婚約破棄したい!」と、言ってしまう。 死亡フラグが立ってしまったーー!!?  早速フラグを回収してしまって内心穏やかではいられなかった。 そんなソフィアに殿下から「婚約破棄はしない」と衝撃な言葉が……。 しかも、正式に求婚されてしまう!? これはどういうこと!? ソフィアは混乱しつつもストーリーは進んでいく。 なんとしてても、ゲーム本作の学園入学までには婚約を破棄したい。 攻略対象者ともできるなら関わりたくない。そう思っているのになぜか関わってしまう。 中世ヨーロッパのような世界。だけど、中世ヨーロッパとはわずかに違う。 ファンタジーのふんわりとした世界で、彼女は婚約破棄、そして死亡フラグを回避出来るのか!? ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体などに一切関係ありません。 誤字脱字、感想を受け付けております。 HOT ランキング 4位にランクイン 第1回 一二三書房WEB小説大賞 一次選考通過作品 この作品は、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

思い込み、勘違いも、程々に。

恋愛
※一部タイトルを変えました。 伯爵令嬢フィオーレは、自分がいつか異母妹を虐げた末に片想い相手の公爵令息や父と義母に断罪され、家を追い出される『予知夢』を視る。 現実にならないように、最後の学生生活は彼と異母妹がどれだけお似合いか、理想の恋人同士だと周囲に見られるように行動すると決意。 自身は卒業後、隣国の教会で神官になり、2度と母国に戻らない準備を進めていた。 ――これで皆が幸福になると思い込み、良かれと思って計画し、行動した結果がまさかの事態を引き起こす……

【完結短編】真実の愛を見つけたとして雑な離婚を強行した国王の末路は?

ジャン・幸田
恋愛
真実の愛を見つけたとして政略結婚をした新妻を追い出した国王の末路は、本人以外はハッピーになったかもしれない。

処理中です...