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2.レオンの反抗期
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我がバンクロフト家の領地を継ぐ予定であるレオンがある日、視察に赴くことになった。私はもちろん護衛としてついていく気満々だったのだが、レオンにそれを控えめに断られた。
その時のショックときたら…常に持ち歩いている林檎を勢い良く粉砕してしまった。それを愛犬のゴンザレス(愛称ゴン)が舐めていたのだが、ゴンは床に飛び散った林檎ジュースをひとしきり舐め終わると、私にはもう用がないとばかりにタッタカ去っていった。
無駄に横に大きい愛犬の機敏に去る姿が、レオンが姉離れしていく幻覚と重なり、私はその場に崩れ落ちた。
嘘!誰か嘘だと言って!あんなに私の後ろを可愛く付いて回ってたレオンが…!もう私はいらないってことなの?
はっ…。ま、ままままさか、好きな子ができた?視察はただの口実で、実は好きな子と会うためのデートなの?
あ、あの子にデートなんてまだ早い!!か、仮にデートでも半端な女には任せられるか!この目で確かめさせて頂こう。
「よし!尾行する!」
そうと決まれば行動あるのみ、思い立ったが吉日である。レオンの視察の詳細情報を掴まねば!
…いや、まずは手を洗おう!ベタベタしてて気持ち悪いわ…。
私は手を洗ってから母親達の元へ向かった。
「母上、ご歓談中失礼します!」
息を切らして部屋のドアを開いた私に、実母のアンヌ、レオンの母レナーテが揃って目を向ける。彼女達は午後のティータイムを楽しんでいたところだ。
突然慌ただしく訪れた娘の姿に驚くことなく、母親達はリゼを迎えた。
「あら、リゼ。今日はまたどうしたの?レオンと喧嘩でもした?」
レナーテが微妙に惜しい問いかけをしてきた。レオンと喧嘩なんて…そんなことしたら私がまず私でなくなる。あれ、今そんな感じ?いやいや、喧嘩はしていない。
「尾行するのでレオンの視察の詳細を教えて下さいっ」
床に頭をすりつけて頼む私にアンヌが笑い出す。
「ふふ、面白そう!レナ、貴方なら詳しいこと知ってるでしょ?教えてあげてくれる?」
「尾行って堂々と言うのがリゼらしいわねぇ。いいわ、私も昔は旦那様の後をこっそりついていったもの」
特に否定されることもなく、私の要求は受け入れられたようだ。さすがうちの家族、話が早い!
レオンの視察は三日後の午前、領内の端の数ヶ所を見て回るという。大体の見込みとしては、午後三時に切り上げる予定だそうだ。
それ以降は暗くなっていくしね。帰る時間も考えれば妥当だ。暗い道をレオン一人で歩かせるわけにはいかない。
もちろん護衛はリゼの他にいるのだが、そこは考えていないリゼだった。
その時のショックときたら…常に持ち歩いている林檎を勢い良く粉砕してしまった。それを愛犬のゴンザレス(愛称ゴン)が舐めていたのだが、ゴンは床に飛び散った林檎ジュースをひとしきり舐め終わると、私にはもう用がないとばかりにタッタカ去っていった。
無駄に横に大きい愛犬の機敏に去る姿が、レオンが姉離れしていく幻覚と重なり、私はその場に崩れ落ちた。
嘘!誰か嘘だと言って!あんなに私の後ろを可愛く付いて回ってたレオンが…!もう私はいらないってことなの?
はっ…。ま、ままままさか、好きな子ができた?視察はただの口実で、実は好きな子と会うためのデートなの?
あ、あの子にデートなんてまだ早い!!か、仮にデートでも半端な女には任せられるか!この目で確かめさせて頂こう。
「よし!尾行する!」
そうと決まれば行動あるのみ、思い立ったが吉日である。レオンの視察の詳細情報を掴まねば!
…いや、まずは手を洗おう!ベタベタしてて気持ち悪いわ…。
私は手を洗ってから母親達の元へ向かった。
「母上、ご歓談中失礼します!」
息を切らして部屋のドアを開いた私に、実母のアンヌ、レオンの母レナーテが揃って目を向ける。彼女達は午後のティータイムを楽しんでいたところだ。
突然慌ただしく訪れた娘の姿に驚くことなく、母親達はリゼを迎えた。
「あら、リゼ。今日はまたどうしたの?レオンと喧嘩でもした?」
レナーテが微妙に惜しい問いかけをしてきた。レオンと喧嘩なんて…そんなことしたら私がまず私でなくなる。あれ、今そんな感じ?いやいや、喧嘩はしていない。
「尾行するのでレオンの視察の詳細を教えて下さいっ」
床に頭をすりつけて頼む私にアンヌが笑い出す。
「ふふ、面白そう!レナ、貴方なら詳しいこと知ってるでしょ?教えてあげてくれる?」
「尾行って堂々と言うのがリゼらしいわねぇ。いいわ、私も昔は旦那様の後をこっそりついていったもの」
特に否定されることもなく、私の要求は受け入れられたようだ。さすがうちの家族、話が早い!
レオンの視察は三日後の午前、領内の端の数ヶ所を見て回るという。大体の見込みとしては、午後三時に切り上げる予定だそうだ。
それ以降は暗くなっていくしね。帰る時間も考えれば妥当だ。暗い道をレオン一人で歩かせるわけにはいかない。
もちろん護衛はリゼの他にいるのだが、そこは考えていないリゼだった。
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