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出張先にて
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この日、ルーチェは田舎町から離れ、ニーズベルクという大都市を訪れていた。多彩な店や見事な煉瓦造りの家が並ぶこの町は観光スポットとしても有名だ。特に、ここの硝子細工は国の技術遺産としても登録されているほどだ。太陽にかざせば、また違う色味を見せる美しさに人々はこぞってそれを買い求める。このように、人が集まるこの土地では様々な国の人が訪れ、往来は常に賑やかである。
やることを終えた今でこそブラブラ見て回っているが、ルーチェがここに来たのは元々仕事のためだった。
「夫が浮気をしている。どうにか懲らしめたい」という女性の依頼を受け、ここまで出張してきたのだ。
依頼人とカフェで待ち合わせて計画を練った後、まずはその日の夜、探偵ばりに夫の行く先をロジーに追跡してもらい、愛人を突き止める。その愛人に向かって、「君だけを愛している。結婚指輪を渡すのも君が最初で最後だよ」とほざく男には流石に呆れた。
なので、その流れるように嘘をつく口を封じた。そして、彼が口を開いたならば、真実しか言葉に出来ないよう呪いをかける。すると、彼は自分の意志とは裏腹に、本当は妻子がいることや、貧乏な商人であることを暴露してしまった。もちろん、独り身の富豪だと聞かされていた愛人は、男をビンタして走り去って行った。
残された男は自分の口を慌てて押さえるが、時すでに遅し。その後、いつもと変わらず暖かなご飯を用意してくれていた妻に泣きついて謝ったらしい。「やっぱり僕には君しかいない」と言う夫に、ルーチェは冷めた気持ちを抱きつつも、取り敢えずは仕事完了ということで、たんまり報酬も頂いた。
そうして無事仕事も終えて、家族のために何かお土産を買おうと、先程から色々な店を巡っている最中なのだ。
お父様には素敵なカフスボタンを、お母様には硝子細工の美しいイヤリングを買おう。
そう思って、目に止まった小さな店へ足を踏み入れると、そこには可愛らしい先客がいた。
淡い金髪の髪を背中に流し、胸元に繊細なレースとフリルをあしらった桃色のワンピースを着こなす美少女がショーウィンドウの指輪を見つめていた。その完成された芸術品のような美しい絵に、私を含め店主も束の間見とれていた。
しかし、その美しい沈黙をぶち破ったのは乱暴に開けられた入口のドアの音だった。
柄の悪そうな男二人が店内を見回し、例の少女に目を止める。ニヤリと笑って、彼女に近づいていく男達に、少女は怯えるかのように店の奥へと逃げ込む。
それを見て嗜虐心が煽られたのか、男達が大声で笑い始めた。
「おいおい、そんな怖がんなよ!さっき道案内してくれた礼をしようってだけじゃねーか。何なら、そこにいる黒髪の嬢ちゃんと一緒でもいいぜ?」
黒髪の嬢ちゃん…私のこと?
何だかよく分からないが、妙なことになった。
やることを終えた今でこそブラブラ見て回っているが、ルーチェがここに来たのは元々仕事のためだった。
「夫が浮気をしている。どうにか懲らしめたい」という女性の依頼を受け、ここまで出張してきたのだ。
依頼人とカフェで待ち合わせて計画を練った後、まずはその日の夜、探偵ばりに夫の行く先をロジーに追跡してもらい、愛人を突き止める。その愛人に向かって、「君だけを愛している。結婚指輪を渡すのも君が最初で最後だよ」とほざく男には流石に呆れた。
なので、その流れるように嘘をつく口を封じた。そして、彼が口を開いたならば、真実しか言葉に出来ないよう呪いをかける。すると、彼は自分の意志とは裏腹に、本当は妻子がいることや、貧乏な商人であることを暴露してしまった。もちろん、独り身の富豪だと聞かされていた愛人は、男をビンタして走り去って行った。
残された男は自分の口を慌てて押さえるが、時すでに遅し。その後、いつもと変わらず暖かなご飯を用意してくれていた妻に泣きついて謝ったらしい。「やっぱり僕には君しかいない」と言う夫に、ルーチェは冷めた気持ちを抱きつつも、取り敢えずは仕事完了ということで、たんまり報酬も頂いた。
そうして無事仕事も終えて、家族のために何かお土産を買おうと、先程から色々な店を巡っている最中なのだ。
お父様には素敵なカフスボタンを、お母様には硝子細工の美しいイヤリングを買おう。
そう思って、目に止まった小さな店へ足を踏み入れると、そこには可愛らしい先客がいた。
淡い金髪の髪を背中に流し、胸元に繊細なレースとフリルをあしらった桃色のワンピースを着こなす美少女がショーウィンドウの指輪を見つめていた。その完成された芸術品のような美しい絵に、私を含め店主も束の間見とれていた。
しかし、その美しい沈黙をぶち破ったのは乱暴に開けられた入口のドアの音だった。
柄の悪そうな男二人が店内を見回し、例の少女に目を止める。ニヤリと笑って、彼女に近づいていく男達に、少女は怯えるかのように店の奥へと逃げ込む。
それを見て嗜虐心が煽られたのか、男達が大声で笑い始めた。
「おいおい、そんな怖がんなよ!さっき道案内してくれた礼をしようってだけじゃねーか。何なら、そこにいる黒髪の嬢ちゃんと一緒でもいいぜ?」
黒髪の嬢ちゃん…私のこと?
何だかよく分からないが、妙なことになった。
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