絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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2.さらなる出会い

巡り合わせ:リュドシエル

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昔から、この目に苦しめられてきた。双子で生まれるも、この双眸を目の当たりにすれば、忌み子とされた。左右で異なる瞳を持つ者は、一般的に魔物の生まれ変わりだと考えられている。それほど、珍しい存在なのだ。



ぱっと見は、同じように見えるこの瞳、明らかに色が違うよりはマシだろうと思っていたのは初めのうちだけだった。その考えが間違っていると気づいたのはまだ幼い頃。



初めて友人が出来たと浮かれた。しかし、ある時偶然、片方だけ伸ばしていた前髪から瞳が見えた時があった。それだけだった、友情に亀裂が入ったのは。明らかに怯えた視線、態度、もう元には戻れない関係になったと気付き、俺から離れた。



隠していてもばれるなら、もはや隠す必要などない。そうして、伸ばしていた前髪も切り捨てた。


普段はフードなどを被ってなるべく人とは目線が合わないようにした。それだけでも、効果は合った。あからさまに避けられることは減ったからだ。



 その日もいつもと同じようにフードを被ったまま、下町に遊びに来ていた。遊ぶといっても、相手がいないのでブラブラして、いいもんあったら買うか、という程度だ。


適当に入った店のテラス席で、サンドイッチを食べていると、やけにキョロキョロしながら歩いているやつがいた。


淡いピンクのワンピースに白いエプロンをつけている。町娘にしては変に挙動不審だし、どこかの貴族の召使いか?


怪しい女の子と女性は、一軒の店の前で立ち止まる。そこで、女の子と女性は別れた。女の子はそのまま、店へと入っていく。


丁度飯食べ終わって暇だしな…。特に用事もないし、同じ店に向かう。


チリリンとドアに付いた鈴が揺れ、客の訪れを告げる。しかし、女の子は店主と話が盛り上がっているのか、こちらには気づいていないようだった。店主は知った顔の俺を見て、軽く目配せをする。



今、手が離せない…と。まぁ、別に買いに来たわけじゃないから、お互い気にはしない。店主のおっさんも俺が世間話を聞きに来たと思っただろうし。


品物を適当に見ながら、耳を澄ます。盗み聞きにはなるが、本当に聞かれたくないなら、別の部屋で話せばいいだけだ。


そうして聞いていると、驚くべきことに少女は途中で帽子を取ってみせたかと思えば、貴族のくせに庶民のためになる物について語り始めた。


貴族ってのもびっくりだが…まぁ、それは置いといて。貴族が庶民を思いやるとは。よくいる偽善者ぶって快感を覚えている類のやつなのか。


ちょっと試してみるか。



話を終えた少女の後ろから声をかけてみる。すると、少女は驚かせるなと少し不満げに言う。
…残念ながら、全然驚いているようには見えなかった。どうせなら、みっともない声を上げるくらい驚いても良かったのに。



少女の名前はティーヌというそうだ。まぁ、貴族のお忍びだから、本名ではないだろうけど。それでも、咄嗟に口にする程度には愛着を持った名前なのだろう。それに、不思議と彼女に似合った名前のように感じる。



ティーヌは俺の目を見て、左右の違いに気付いた。まぁ、これほど近くで喋ってたらばれるか。この子ともこれで終わりだろうなぁ、と半分諦めの気持ちだった。足も自然と店から出ようと足先に力が入っていた。



「…悪いもん見せちまったな」



幼い頃の友人にばれた時のこともあって、片手を目の前にかざし、なるべくティーヌの目に入らないようにしていた。



「なぜ?あなたの目、とても神秘的で綺麗」



それなのに、ティーヌはこんな事を言うのだ。俺が目を隠すことが心底理解できないという顔をしている。何なんだ、こいつ、何で恐れない?



驚きながらも、ティーヌの言葉を信じ切れない俺は、彼女から目を逸らす。それでも彼女は真っ直ぐ言葉をぶつけてきた。



「だから隠さないで。他の人がどう思うかなんて知らない。私は綺麗だと思った、それだけ」



「…ふ、はは…。あんた、ほんっと変わってんなァ。そんなこと言うやつ初めてだよ」


こいつ、馬鹿か相当な変わりモンに違いねぇわ。おまけに、いかにもビビりそうなお貴族様だというのに。でも、初めてこの目を受け入れてくれた。いや、初めては幼い頃死んだ母さんだった…。母さんの色と同じこの目を、俺は嫌いにはなれなかった。




そして、ティーヌはさらに変なことを言ってきた。俺に友達にならないか?と。こいつと話すのは嫌いじゃないしな。しかし、素直にはいって言うのも何だから、お嬢様に相応しい答え方にしてみよう。



ふざけた口調で答えると、ティーヌは嬉しそうに、そして楽しそうに笑った。


あぁ、ウロウロしてみるもんだなァ…。とんでもない奴とこんな所で出会えるとは。謎の通信機なるものを渡され、店を出る。



 口笛を吹いて、俺は下町をまたブラリと歩く。
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