22 / 57
3.体験入学へ
いざ、体験入学へ
しおりを挟む
兄から聞いた体験入学制度、これを利用しないでどうする。早速父へ掛け合い、体験入学の申し込みをした。
体験入学自体は、入学する半年前から決まった曜日に執り行われているらしい。し、知らなかった。基本、貴族でわざわざ体験入学に出る者はあまりいないようだ。
話を付けた後、いつでもどうぞという答えだったので、遠慮なく行かせていただく。魔法学園は郊外に位置するので、私の家からは距離がある。なので、朝から準備をしている。
はい、返事貰った次の日に行くぜ!とばかりに気合いを入れているわけです。
あまり目立たないように、地味な服を選ぶ。それも、男物を。体験入学に貴族といった貴族があまり来ないなら、下手に豪華な服の方が目立つはずだから。学生は基本制服着用だし。そしてどうせならと、動きやすいものを…男物を選んだ。
セパルにも突っこまれたので、明らかに男の振りをすることは控えるが、機能性を重視するならやっぱりドレスはちょっと微妙だったし。
衣装部屋でサリに髪を整えて貰ってから、荷物をとりに自室へ戻る。ちなみに、衣装部屋には私が着るためのドレスその他がズラリと並ぶ。ある意味凄い眺めである。隠れんぼするなら、ここは最高の隠れスポットだなと最初は思ったものだ。
ガチャリとドアノブを引き、部屋へ入る。資料などを貰った時のために、大きめのバッグを持っていくつもりだ。その大きめのバッグに最低限、必要な物を詰めていく。
よし、これで終わりだ。あとは、馬車に揺られるだけだ。いそいそとバッグを持ち、部屋を出ようとする私の肩に冷たいものが触れる。服越しでも冷たいって…。
「待て、楽しそうにどこへ行くのじゃ。妾にもその楽しさを分けんか」
わー。本当に暇な悪魔だー。居城にしてやる発言あったから居るかなとは思ったよ。
取り敢えず時間が無いので、要件を伝える。
「例の学校への体験入学です。来るなら、姿は消して下さい。もし、人前で姿を現したら速攻魔界へお引き取り願いますからね」
断るという選択肢はない。どうせ、彼女が来たいと思ったなら来るのだろうから。言っても無駄である。強制帰還ができるかは分からないが、一応脅しのつもりで言っておいた。私の本気度、伝われ。
急いでるので確認はしていないが、後ろの気配がフワリと朧気になり、消えて行く。どうやら、言うことを聞いてくれたようだ。
走りはしないが、早足で玄関へ向かう。家の前には、既に馬車が停まっていた。馬車での長時間移動はほぼ初めてだが、しのごの言ってはいられない。
私が馬車に乗り込もうとすると、馬車の横に立っている青年がペコリと頭を下げる。初めて見る顔だけど、こんな人いたっけ?
灰色の髪に、口元を覆う真っ黒なマスクを付けている。こんな特徴的な人を忘れるとは思えないのだが…。
御者だろうか?御者にしては異様な雰囲気だが…。いやいや、絶対こんな怪しい御者いないよな…冷静になれ。
謎の青年を一旦置いといて、私が馬車に乗った後で、馬車の窓から青年がボードを掲げているのが目に入った。
ボードには、『俺、お嬢様、護衛役してる。同乗、お願い』と単語が書かれていた。彼は話せないのか?窓を開けて、彼の顔を見つめるも、私が発見したことと言えば、彼から香ばしい匂いがするというくだらないことだった。
「お父様が付けた護衛の方ですか?」
直接聞いてみると、彼はそうだというように頷く。本当にこんなに怪しい人が護衛役なのか?私の護衛を騙っている犯罪者かもしれない。時間はないが、一度父に確認した方がいいだろう。
「………!」
私が疑っていることを察したのか、青年は「どうしよう」とばかりに焦り始める。
やはり、偽物の護衛か?
今こそ、私の通信機の出番だ。通信機は家族とシエルには渡してある。シエルは出なかったが…。つまり、今回が初使用になる。これは大きな賭けでもあるが、使えたら一石二鳥だ。緊張の中、シエルの時同様、ノイズが走りドキリとした。しかし、今回はちゃんと声が聞こえて来る。
「…ジジジ………ク……リス…?おぉっ、クリスの声が聞こ…えるぞ!」
私の通信機ちゃん、無事デビュー!少し音声が荒いのが改善点か。父よ、喜んでいるところ悪いのだが、今はそれどころではない。迅速に、この自称護衛役の正体を暴かなくてはならないのだ。
「…お父様、私の元に護衛を名乗る男がいて…彼は私の護衛で間違いないのですか?灰色の髪に黒いマスクの男です」
「…何…?護衛…?灰…にマ…スク、そいつは………だ。クリスの護衛……前から付けて…ぞ…」
…本物でした。疑ってすみませんでした。
父へ挨拶をし、通信を切り上げる。その勢いのまま、青年に全力で謝りった。彼は気にするなと言いたげに手を上げ、馬丁が連れてきた馬に乗ろうとする。
疑ってしまって申し訳ないので、お詫びに馬車への同乗を提案した。お詫びになるかは疑問だが、少しでも先程の非礼を詫びることができたらと思う。
体験入学自体は、入学する半年前から決まった曜日に執り行われているらしい。し、知らなかった。基本、貴族でわざわざ体験入学に出る者はあまりいないようだ。
話を付けた後、いつでもどうぞという答えだったので、遠慮なく行かせていただく。魔法学園は郊外に位置するので、私の家からは距離がある。なので、朝から準備をしている。
はい、返事貰った次の日に行くぜ!とばかりに気合いを入れているわけです。
あまり目立たないように、地味な服を選ぶ。それも、男物を。体験入学に貴族といった貴族があまり来ないなら、下手に豪華な服の方が目立つはずだから。学生は基本制服着用だし。そしてどうせならと、動きやすいものを…男物を選んだ。
セパルにも突っこまれたので、明らかに男の振りをすることは控えるが、機能性を重視するならやっぱりドレスはちょっと微妙だったし。
衣装部屋でサリに髪を整えて貰ってから、荷物をとりに自室へ戻る。ちなみに、衣装部屋には私が着るためのドレスその他がズラリと並ぶ。ある意味凄い眺めである。隠れんぼするなら、ここは最高の隠れスポットだなと最初は思ったものだ。
ガチャリとドアノブを引き、部屋へ入る。資料などを貰った時のために、大きめのバッグを持っていくつもりだ。その大きめのバッグに最低限、必要な物を詰めていく。
よし、これで終わりだ。あとは、馬車に揺られるだけだ。いそいそとバッグを持ち、部屋を出ようとする私の肩に冷たいものが触れる。服越しでも冷たいって…。
「待て、楽しそうにどこへ行くのじゃ。妾にもその楽しさを分けんか」
わー。本当に暇な悪魔だー。居城にしてやる発言あったから居るかなとは思ったよ。
取り敢えず時間が無いので、要件を伝える。
「例の学校への体験入学です。来るなら、姿は消して下さい。もし、人前で姿を現したら速攻魔界へお引き取り願いますからね」
断るという選択肢はない。どうせ、彼女が来たいと思ったなら来るのだろうから。言っても無駄である。強制帰還ができるかは分からないが、一応脅しのつもりで言っておいた。私の本気度、伝われ。
急いでるので確認はしていないが、後ろの気配がフワリと朧気になり、消えて行く。どうやら、言うことを聞いてくれたようだ。
走りはしないが、早足で玄関へ向かう。家の前には、既に馬車が停まっていた。馬車での長時間移動はほぼ初めてだが、しのごの言ってはいられない。
私が馬車に乗り込もうとすると、馬車の横に立っている青年がペコリと頭を下げる。初めて見る顔だけど、こんな人いたっけ?
灰色の髪に、口元を覆う真っ黒なマスクを付けている。こんな特徴的な人を忘れるとは思えないのだが…。
御者だろうか?御者にしては異様な雰囲気だが…。いやいや、絶対こんな怪しい御者いないよな…冷静になれ。
謎の青年を一旦置いといて、私が馬車に乗った後で、馬車の窓から青年がボードを掲げているのが目に入った。
ボードには、『俺、お嬢様、護衛役してる。同乗、お願い』と単語が書かれていた。彼は話せないのか?窓を開けて、彼の顔を見つめるも、私が発見したことと言えば、彼から香ばしい匂いがするというくだらないことだった。
「お父様が付けた護衛の方ですか?」
直接聞いてみると、彼はそうだというように頷く。本当にこんなに怪しい人が護衛役なのか?私の護衛を騙っている犯罪者かもしれない。時間はないが、一度父に確認した方がいいだろう。
「………!」
私が疑っていることを察したのか、青年は「どうしよう」とばかりに焦り始める。
やはり、偽物の護衛か?
今こそ、私の通信機の出番だ。通信機は家族とシエルには渡してある。シエルは出なかったが…。つまり、今回が初使用になる。これは大きな賭けでもあるが、使えたら一石二鳥だ。緊張の中、シエルの時同様、ノイズが走りドキリとした。しかし、今回はちゃんと声が聞こえて来る。
「…ジジジ………ク……リス…?おぉっ、クリスの声が聞こ…えるぞ!」
私の通信機ちゃん、無事デビュー!少し音声が荒いのが改善点か。父よ、喜んでいるところ悪いのだが、今はそれどころではない。迅速に、この自称護衛役の正体を暴かなくてはならないのだ。
「…お父様、私の元に護衛を名乗る男がいて…彼は私の護衛で間違いないのですか?灰色の髪に黒いマスクの男です」
「…何…?護衛…?灰…にマ…スク、そいつは………だ。クリスの護衛……前から付けて…ぞ…」
…本物でした。疑ってすみませんでした。
父へ挨拶をし、通信を切り上げる。その勢いのまま、青年に全力で謝りった。彼は気にするなと言いたげに手を上げ、馬丁が連れてきた馬に乗ろうとする。
疑ってしまって申し訳ないので、お詫びに馬車への同乗を提案した。お詫びになるかは疑問だが、少しでも先程の非礼を詫びることができたらと思う。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる