絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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3.体験入学へ

いざ、体験入学へ

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兄から聞いた体験入学制度、これを利用しないでどうする。早速父へ掛け合い、体験入学の申し込みをした。


体験入学自体は、入学する半年前から決まった曜日に執り行われているらしい。し、知らなかった。基本、貴族でわざわざ体験入学に出る者はあまりいないようだ。




話を付けた後、いつでもどうぞという答えだったので、遠慮なく行かせていただく。魔法学園は郊外に位置するので、私の家からは距離がある。なので、朝から準備をしている。



はい、返事貰った次の日に行くぜ!とばかりに気合いを入れているわけです。


あまり目立たないように、地味な服を選ぶ。それも、男物を。体験入学に貴族といった貴族があまり来ないなら、下手に豪華な服の方が目立つはずだから。学生は基本制服着用だし。そしてどうせならと、動きやすいものを…男物を選んだ。


セパルにも突っこまれたので、明らかに男の振りをすることは控えるが、機能性を重視するならやっぱりドレスはちょっと微妙だったし。


衣装部屋でサリに髪を整えて貰ってから、荷物をとりに自室へ戻る。ちなみに、衣装部屋には私が着るためのドレスその他がズラリと並ぶ。ある意味凄い眺めである。隠れんぼするなら、ここは最高の隠れスポットだなと最初は思ったものだ。


ガチャリとドアノブを引き、部屋へ入る。資料などを貰った時のために、大きめのバッグを持っていくつもりだ。その大きめのバッグに最低限、必要な物を詰めていく。



よし、これで終わりだ。あとは、馬車に揺られるだけだ。いそいそとバッグを持ち、部屋を出ようとする私の肩に冷たいものが触れる。服越しでも冷たいって…。



「待て、楽しそうにどこへ行くのじゃ。妾にもその楽しさを分けんか」


わー。本当に暇な悪魔だー。居城にしてやる発言あったから居るかなとは思ったよ。


取り敢えず時間が無いので、要件を伝える。

「例の学校への体験入学です。来るなら、姿は消して下さい。もし、人前で姿を現したら速攻魔界へお引き取り願いますからね」


断るという選択肢はない。どうせ、彼女が来たいと思ったなら来るのだろうから。言っても無駄である。強制帰還ができるかは分からないが、一応脅しのつもりで言っておいた。私の本気度、伝われ。


急いでるので確認はしていないが、後ろの気配がフワリと朧気になり、消えて行く。どうやら、言うことを聞いてくれたようだ。


走りはしないが、早足で玄関へ向かう。家の前には、既に馬車が停まっていた。馬車での長時間移動はほぼ初めてだが、しのごの言ってはいられない。


私が馬車に乗り込もうとすると、馬車の横に立っている青年がペコリと頭を下げる。初めて見る顔だけど、こんな人いたっけ?
灰色の髪に、口元を覆う真っ黒なマスクを付けている。こんな特徴的な人を忘れるとは思えないのだが…。


御者だろうか?御者にしては異様な雰囲気だが…。いやいや、絶対こんな怪しい御者いないよな…冷静になれ。


謎の青年を一旦置いといて、私が馬車に乗った後で、馬車の窓から青年がボードを掲げているのが目に入った。


ボードには、『俺、お嬢様、護衛役してる。同乗、お願い』と単語が書かれていた。彼は話せないのか?窓を開けて、彼の顔を見つめるも、私が発見したことと言えば、彼から香ばしい匂いがするというくだらないことだった。



「お父様が付けた護衛の方ですか?」



直接聞いてみると、彼はそうだというように頷く。本当にこんなに怪しい人が護衛役なのか?私の護衛を騙っている犯罪者かもしれない。時間はないが、一度父に確認した方がいいだろう。


「………!」


私が疑っていることを察したのか、青年は「どうしよう」とばかりに焦り始める。


やはり、偽物の護衛か?



今こそ、私の通信機の出番だ。通信機は家族とシエルには渡してある。シエルは出なかったが…。つまり、今回が初使用になる。これは大きな賭けでもあるが、使えたら一石二鳥だ。緊張の中、シエルの時同様、ノイズが走りドキリとした。しかし、今回はちゃんと声が聞こえて来る。


「…ジジジ………ク……リス…?おぉっ、クリスの声が聞こ…えるぞ!」



私の通信機ちゃん、無事デビュー!少し音声が荒いのが改善点か。父よ、喜んでいるところ悪いのだが、今はそれどころではない。迅速に、この自称護衛役の正体を暴かなくてはならないのだ。


「…お父様、私の元に護衛を名乗る男がいて…彼は私の護衛で間違いないのですか?灰色の髪に黒いマスクの男です」



「…何…?護衛…?灰…にマ…スク、そいつは………だ。クリスの護衛……前から付けて…ぞ…」



…本物でした。疑ってすみませんでした。



父へ挨拶をし、通信を切り上げる。その勢いのまま、青年に全力で謝りった。彼は気にするなと言いたげに手を上げ、馬丁が連れてきた馬に乗ろうとする。



疑ってしまって申し訳ないので、お詫びに馬車への同乗を提案した。お詫びになるかは疑問だが、少しでも先程の非礼を詫びることができたらと思う。

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