絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

文字の大きさ
28 / 57
3.体験入学へ

小さなプレゼント

しおりを挟む
あの体験入学の日以来、グレイが視界に入ることが増えた気がする。何となく気配を感じて振り返ると、彼は慌てて隠れて…の繰り返しである。彼は真面目に働いているのに、隠れんぼや「だるまさんがころんだ」で遊んでいるように見えてしまって困る。別にもう私知ってるし、そこまで隠れなくてもいいんじゃ?



 そう、体験入学と言えばだ。あのグレイを怒らせた少年は、攻略対象の一人だったことが分かった。結局、お互い名乗らなかったのだが、その話を兄にしていたら、あっさり判明した。その時のことを思い返す。






「それって多分、ブラウン家の子だよ。騎士団長の息子さんで、名前は…何だったかな」


騎士団長の、息子…。この流れ、確実に私を追い詰めるやつだ。ここまで来といて別人のはずがない。この世界で騎士団長の息子と言われるのは、間違いなく攻略対象者の彼だろう。


私の確信は、数秒後に兄によって証明された。思い出したと言いながら、兄はその名を口にする。


「ジャック、ジャック・ブラウンだよ」


驚きなどしない。ある意味、必然であろう。私が悪役の設定であり、ヒロインの恋する相手を奪おうとするなら、関わりがないわけがない。


奪う、ねぇ。そんなつもり微塵もないんだけどなぁ…。


『新たな男の登場じゃの』


セパル…その言い方、何か嫌だ。







 そうして、例の少年の正体は、随分と簡単に知ることが出来た。攻略対象者達と知り合って、着々と物語の下地が出来上がってきているようで恐ろしい。


私、学園生活を無事に切り抜けられるだろうか…。


 セパルは予想を遥かに上回るレベルで私に協力的なので、そこは非常に助かる。ただ、悪魔の気分次第で行動を起こさないかと言われると、否定できない。今でこそほぼゼロ距離の生活を送っているが、いつか「飽きた」と言われるかもしれない。そうなった場合を考えると、セパルに依存し過ぎてはならない。


セパル以外にも、協力者を見つけられれば良いのだが、中々難しいだろう。グレイはセパルのことを知っている点では、他の人よりも私の秘密に近い。しかし普通の人間が、転生した話を信じるか?


グレイが首を傾げる様子が頭をよぎる。多分そんな風な反応が返ってくるだろう。


 私が今後の学園生活について考えを巡らせていると、どこか聞き覚えのある音が聞こえてきた。


この、ノイズ音は…!



それが意味するものに思い至り、私は急いで通信機を手に取った。通信機からはノイズの他にも音が混じっていて、次第にはっきりとした声が聞こえてくる。



「あー…、…、ほんと…聞こえ…かァ?」


久し振りに友人の声を聞いた。先程まで悩んでいたのが嘘のように、私は目を輝かせた。ようやく、我が発明品を使用したか友よ!


「聞こえているから安心して頂戴。御機嫌よう、シエル。ティーヌよ」


「…おー、久し……。すげ…!ちょ……ノイズもすげぇけど…」



一言多い…だがそれはまぁ、私もこの間思った。しかし、どうも現時点ではこれが精一杯のようなのだ。忘れてはいけないが、私は学園にも入学していない子供である。まだ、力が足りないということだ。


その後、シエルと最近の事を報告し合った。シエルは色々なところをブラブラしているらしい。…家のことを手伝わなくていいのか?少なくとも、彼が長男でないことは分かる。気楽な次男三男といったところか。



そして、話の最後にシエルはこう告げた。


「じゃ、またな」 


それは、以前下町で交わした別れと同じだったので、私も何も疑わずに答えていたが、その意味はすぐに私の理解するところとなる。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...