絶対零度の悪役令嬢

コトイアオイ

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3.体験入学へ

なりたいもの:ジャック

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 この国では、王を始めとして、宰相、大臣といった国の運営や管理に携わる者が当然、権力を有しており身分も高い。それは誰にでも分かることだ。

その後に続くのが各専門部署のトップである魔術総長、博士、開発総長、経済総長、そして、騎士団長だ。彼らは魔法学園で専門知識を学び、優れた成績と経験を積んだ者から選ばれる。

 僕の父は、現騎士団長であり伯爵位を持つ。さらに言うならブラウン伯爵家は各部署で唯一、血族のみでトップを独占してきた。だからこそ、その誇りは他の誰よりも強い。ブラウン一族ならば、常に騎士団長を目指せ、そういう教育を子供の頃から叩き込まれるのだ。それによって、子供達もまた、自分が騎士になり、いづれは騎士団長になることを当たり前のように受け入れる。


しかし、それは自分の意思なんかじゃない。勝手に決められて、それに唯唯諾諾と従うなど僕には耐えられそうもない。逆に、何故その凝り固まった思想を疑問に思わない?おかしいだろ、こんな洗脳のような教育は。


一応、騎士になるためだと言われ、訓練も行ってきたが、それは操り人形になるためではない。単純に身体を鍛えるため、ただ、それだけだ。



僕は、騎士になどなりたくない。家族と違う道を歩もうとも。



魔法の仕組みや歴史、種類について学びたいのだ。騎士では学べないことが沢山ある、その世界で生きたい。



 もうすぐ、僕は魔法学園に入学することになる。1年次のクラス分けには興味が無いものの、2年次になれば専門分野が明確に分かれる。その時、魔法騎士になるための実用科を無視して、研究科を選べば、家族が黙っていないはず。



非常に難しい問題だが、誰かに相談しようにも下手に喋るわけにもいかない。家族に言っても意味がないだろう。早速、躓いたが魔法学園の体験入学制度を人伝に聞き、これだと思った。


自分が学ぶ学舎を見ておきたい気持ちもあったし、何より第三者として相談に乗ってもらえるかもしれない。淡い希望だとは思うが、このまま一人で考えても埒が明かない。


そう考え、近くはない学園へ何度も足を運んだ。


そして、その中で同じ体験入学者に出会った。そいつは綺麗な顔立ちをしているのに、いかにも平民の振りをしてますといった服装の胡散臭い奴だった。行動などからしても、洗練された姿は、どこからどう見ても貴族そのものだ。


どこかの貴族が道楽として、体験入学に紛れ込んだ?


自分を偽っているという点が妙に癪に触り、つい声をかけてしまった。お遊びなら帰りなよ。そう思っていたのだが、実際に授業が始まると、そいつは随分と真剣に話に聞き入っていた。


一体この奇妙なやつは何者だろう。



あと、眼光の鋭い男の視線が地味に目障り。僕、何かした?まるで心当たりがない。



 先祖の功績に縋って見栄を張る貴族、それが嫌いだった僕は社交の場にも一切出なかった。


だからこそ、この時はまだ、あいつが王子の婚約者だとは分からなかった。
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